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第一部 異世界の貴族達

116. 異世界499日目 新たな町へ

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 クリアレントを出発してから西にある建設中の町へと向かう。もともと小さな前線基地のようなところはあったんだが、魔獣討伐の基地と王都クリアレントからの新たなルート確保の拠点として町を大きく変えることにしたらしい。
 今はまだクリアレントからの街道が整備されていないのでクリアミント経由で行かなければならないがこれはしょうが無いだろう。

 バスだとかなりの時間がかかるが、車でいつものペースで走って行けばおそらく10日はかからないだろう。二人には拠点の話はすでにしているので大丈夫だ。

 ここからの街道はかなり整備されており、車の往来も結構多いので盗賊の心配は無いと考えていいだろう。まあ一応索敵だけはしておくけどね。


 この日は拠点の改造をしなければならないので少し早めに場所を決めて拠点を出す。前はちょっと見せただけだったので簡単に設備の説明をしていく。
 壁には出入り口はないので中に入るには飛んでいくしかないのでここは自分とジェンが手をつないで連れて行くことにしたが、さすがに飛翔の魔法には驚いていた。前は建物とキッチンセットしか出さなかったから、こんなに高い塀を出すとは思っていなかったようだ。

 中にあるトイレとシャワーについては基本的に家にあるものと同じなので大丈夫そうだ。消音や消臭の効果もあるので喜んでいた。浄化魔法は簡単なものは使えるようなのでトイレの後のことは問題無いらしい。

 台所になるところには冷蔵庫も出して食材を一通り入れておいた。さすがに毎回収納バッグから出すわけにもいかないからね。調味料関係も購入していたので調理については問題ないはずだ。調理用具も一通りそろっていたし、追加で購入しているからね。
 部屋は今から改造を行うので後で説明することにして、その間に夕食の準備に取りかかってもらう。

 拠点にある建物は最初作ったときよりも少し大きくしていたのでよかった。前は10畳くらいの部屋(4m四方)だったんだが、今は15畳(5m四方)くらいの部屋だからね。ちょっと狭くはなってしまうが、部屋の仕切りを入れて分けておいた方がいいだろう。

「狭くはなるけど、やっぱり彼女たちのプライベートのことを考えると部屋を仕切った方がいいと思うんだ。ジェンは自分と同じ部屋になってもかまわないか?ベッドがすぐ隣になるけど。」

「いまさらでしょ。」

「まあ、今までも特に仕切っていたわけじゃないけどね。それじゃあ、イメージはこんな感じでいいかな?」

 ある程度の枠組みを決めてからいったん荷物を部屋のしきりに合わせておいてみる。一部屋だったところを”円”の字みたいな形で3つの部屋に別けて左上は自分たちの寝室、右上は彼女たちの寝室、下の長方形のところはソファーなどを置いた共用スペースとした。ベッドの大きさの関係で、自分たちの部屋が6畳、彼女たちの寝室が4畳くらいとなったのは我慢してもらおう。
 事前に固めて付与魔法まで刻印した壁を取り出して部屋を仕切り、それぞれの寝室から長方形の共用スペースに扉でつながるようにする。簡単だけど扉もつけているし、壁には簡単な防音の効果を入れておいたので、話声くらいは聞こえないだろう。プライベートも考えておかないと困るだろうしね。

 一通り配置が終わった頃に食事の準備ができたというので外のテーブルへ。

「お口に合うかわかりませんが、とりあえずいろいろと作ってみました。」

 テーブルにはお肉の炒めたものやシチューのようなもの、サラダなど色々と並んでいた。美味しそうだけどかなり多くないか?

「保存はできると言うことでしたのでちょっと多めに作っています。残ったもので明日の朝食やお昼を作りますよ。」

 さっそく席についていただくことにした。お店の食事という感じではないけど、家庭料理という感じでなんか懐かしい感じがした。

「なんか懐かしい感じの味だなあ・・・。最近は外で食べることがほとんどだったからねえ。」

「かなり立派なコンロセットがあったので張り切りましたよ。すごいですね。普通の家庭にあるものよりも立派ですよ。」

「せっかくだから買ったんですけど、なかなか使う機会もなくてね。」

「お料理はされないのですか?」

「一応自分もジェンもできるけど、本格的にはやっていなかったのでそこまで得意じゃないんですよ。」

「もしよかったら今回の移動の間だけでも教えましょうか?」

「お願いします!!」

 なぜかジェンが食い気味に返事をしていた。

「それじゃあ、1日に走るペースは少し落ちるけど夕食はきっちり料理することでやってみようか?もともと10日はかかる日程だからあまり強行軍で行くのも大変だからね。」

 後片付けは浄化魔法を使って速攻で終わらせるのを見て驚いていた。

 部屋の中に案内して申し訳ないけど小さい方のベッドでお願いというと、十分な大きさですと言われて助かった。消音の簡単な魔道具もあるので少々話をしても問題ないこと、明かりなどの使い方などを説明していく。光魔法がないので今回は照明を用意しておいたのである。

 この後シャワーに入ってもらい、ソファーでお茶を飲みながら色々と話をしてからそれぞれの部屋に分かれて寝ることとなった。


~ミルファーとスイートSide~

「二人に再会してから驚くことばかりですね。」

「そうね、町であんなことになってどうしようもなくなっていたけど、二人に連れ出してもらえて希望が出てきたわ。」

「移住のことはとても助かりましたし、まさか魔道士様の紹介状までもらえるなんてとてもびっくりしましたわ。」

「ほんとにびっくりだわ。でもいろいろと見ていると、魔道士様と知り合いって言うのもうなずけるのよね。」

「たしかにそうですね。話している内容もそうなのですが、持っている魔道具もかなり効力の高いものですよね。冒険者だけではなくて他にも副収入があるからなんとかなっているとは言っていましたが、あの年齢であの知識と行動力は正直信じられないくらいです。」


「かなりの優良物件だけど、ジェニファーさんのことを考えると手を出せないわよねえ。」

「そうですよね。あれで付き合ってないって信じられません。この部屋割りにしても、私たちが気を遣うからと言っても、付き合っていない男女で同じ部屋ってあまり聞きませんよね?
 宿に泊まった時も普通に同じ部屋に泊まっていましたからね。おそらく二人の中ではこれが普通なのでしょう。」

「ジュンイチさんはジェニファーさんの気持ちに気がついていないみたいだし、ジェニファーさんは告白できなくて悩んでいるみたいだし、なんとか応援してあげたいんだけどね。」

「まだ若いからなんとかなるのではないでしょうか?」

「そうだね。なにかきっかけがあれば一気に進展しそうだけど、さすがに私たちだとそこまで突っ込めないからねえ。」

 二人のことでかなり盛り上がっていることは全く知らないまま、ジュンイチとジェンは普通に眠りについていた。
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