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第一部 異世界ものに出てくる賢者

107. 異世界471日目 緊急事態

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 昨日と同じように朝の訓練を終えてから朝食をとり、再び遺跡の中へと入る。今回は飛翔の魔法を使ってホールの上の方まで調査することにした。

 一般的に飛翔の魔法は古代の魔道具なしではできないという認識となっている。これは重量軽減の魔法がうまく使えないためだ。車などのサイズを軽減する魔道具はあまり見つかってないが、人レベルのものであればある程度見つかっているのでまだ使ってもなんとか説明はつく。
 ただ重量軽減と言っても0にする魔道具は少ないので飛翔の魔法と言ってもいろいろと魔道具を使わなければ浮かぶくらいしかできない。ホールには人はほとんどいないんだが、もし見られたときのいいわけは考えておかないといけないからね。


 壁画が描かれているホールを調べてみると、下からは死角になっているところに小さな穴を発見する。よく見てみると中が空洞になっているみたいだった。探索してみると、奥に通路がつながっているみたいだ。

 その部分は壁画も描かれていないので、壁のブロックを外すことができた。なんとか人が通れる隙間を作ってから光魔法で確認すると奥にはちょっと広い空間になっているようだ。索敵でも特に魔獣の気配を感じないので大丈夫と思いたい。
 こんなところには蝙蝠のようなものがいることが多いんだが、遺跡は完全に埋もれていたみたいで大きめの動物は入り込んでいなかったらしい。

 注意しながら中に入ってみると、通路の少し先は10畳くらいの広さで祭壇のようなものがあった。中にも壁画があるんだが、こちらはなにかで描かれているせいかかなり劣化していた。表と同じように神様の絵のようなんだが、説明が古代ライハン語のような感じだ。
 もともとはこっちがあって、そのあと今の施設が増設されたものなのだろうか?結構多くの古代ライハン語が書かれているので珍しいものなのかもしれない。
 残念ながら文字は読めないので何が書いているのかわからないが、感じ的に表の壁画と同じようなものなので古代ライハン語の解読には役に立つかもしれないね。ロゼッタストーンみたいな感じかもしれない。


 祭壇のようなところにはいくつか宝物が置かれていた。これがあるって言うことは、ここはまったく調査されていないのだろう。まあ入口も封鎖されていたからね。

 持ってきていたカメラのような魔道具で撮影していく。これは調査するのに必要と言われて借りてきたものだ。一般的にはあまり売られていないようだし、値段もかなり高いので簡単に購入はできない。
 原理はわからないがメモリのようなものにデータを残せるものらしい。目に入ったものを取り込むからかなりの大きさを取り込める。そのデータを部分的に書き出すものもあるらしい。デジカメにプリンターみたいなものかな。


 宝石や装飾品の中にリストバンドのようなものがあったんだが、鑑定してみるとなんと収納の宝玉というものだった。そういえば収納バッグのような宝石があるという話は前に聞いたことはあるな。数はほとんど出ないんだが、かなり小さいので使い勝手がいいと言うことだった。

名称:収納の宝玉(良)
詳細:生物以外のものを収納する宝玉。収納の際に分解され、取り出す際に収納時の状態に再構成される。空間拡張により分解後の**に相当する***容量分を収納できる。重量は収納した重量を10万分の1まで軽減する。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:分解、構成、空間拡張-2、重量軽減-3

 真ん中の宝玉のようなところに収納するみたいだ。空間拡張が2だが、重量軽減の機能が大きいね。容量は後で調べてみよう。


 周りに落ちているのは中から出てきたものかもしれない。神様への奉納品だったんだろうか?宝石や宝飾品の他に魔符核がいくつかあり、対象物の重量を0にするものや火や水や空気などを発生させるものだった。重量を0にするものは結構貴重だろうな。


 この発見だけでもやってきた甲斐もあるし、この壁画に描かれている内容も結構重要な気もするので推薦してくれたジョニーファン様の顔も立てられるだろう。



 もとのホールに戻り、調査を継続する。壁の中なども探索しながら進んでいくと、奥の方で何やら崩れる音がした。何事かと思って、索敵をすると魔獣が出てきたようだ。

「まずい、なんかレベルが高そうな魔獣がいる。」

 これは今の自分たちでは絶対にかなわない相手だ。こんなレベルの魔獣が出るなんて聞いてないぞ・・・。

 警報を鳴らし、大急ぎで通路を戻るがどう考えても追いつかれそうだ。逃げていてもやられる可能性が高いため、戦うしかない。
 ホールに出る直前で魔獣を待ち構えて魔法の準備をする。姿を現したところで風魔法と雷魔法を仕掛けるがよけられてしまった。威力は上がっているはずなんだが、当たらなければ意味が無い。

 姿を現したのは白狼だった。

「良階位の魔獣かよ!」

 自分が前に出てから白狼と対峙する。少しでも時間を稼げば兵士が応援に来てくれるはずだ。

 白狼が一気に間合いを詰めてきた。盾で防御と思ったが、自分の横をすり抜けて後ろにいたジェンに攻撃を仕掛けていた。

「やられた!」

 ジェンも急いで魔法を展開するが、肩から爪で引き裂かれて壁に吹き飛ばされてしまった。

「ジェーン!!」

 後ろから斬りかかるがあっさりと避けられてしまう。壁にもたれかかり意識があるのかわからないジェンの前に移動して魔法を展開する。とりあえず応援がくるまで耐えるしかない。
 白狼が攻撃してくるのを水魔法と盾でなんとか防ぐが、徐々に手足の感覚がなくなってきた。体も徐々に切り裂かれていく。

 まずい、このままでは・・・。

 そう思ったときに盾がはじきとばされ体当たりを受けてしまった。

 壁に打ち付けられて意識が遠のく。


 だめなのか?ここまでなのか?自分は大切な人すら守れなかったのか?すぐ横には意識があるのかわからないジェンが横たわっている。

 意識がなくなっていく。できるだけ慎重に頑張ってきたはずなんだけど、調子に乗っていたのかなあ。

~魔獣紹介~
白狼:
良階位上位の魔獣。寒い地域の森に多く生息する狼系の魔獣。単体でも良階位中位の脅威であるが、通常は3~5匹の群れを形成しており、集団での狩りが得意。体長は2キヤルドを超えるものもいる。
牙と爪で攻撃してくるが、風魔法も使えるため遠くにいても油断はできない。また風魔法を使って木々の間を縦横無尽に動き回るため、魔法や弓の攻撃も当たりにくい。弓矢は風魔法で軌道を曲げられて届かないことが多い。まずは動きを止めて接近戦に持ち込んだ方がよいだろう。
素材として牙と毛皮が使用されるが、毛皮の需要は非常に高く、特に傷がないものは重宝される。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。
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