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第一部 現実になった異世界生活

ジェンside-7. 異世界148~151日目 首都サクラへ

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 イチと出会ってから3ヶ月たった頃に、イチの知り合いのコーランという商人から食事の招待を受けたというので行ってみることになった。この町に来たときにもお世話になった人らしい。
 招待されたのはかなり高そうなお店だったので驚いたのだけれど、対応がどう考えても接待されている側という印象だった。どういうことなのかしら?

 コーランという人の話を聞くと、かなりのやり手という感じで私の祖父や父を彷彿とさせる。他の国にまで支店を出しているかなり大きな商会の会長がここまでイチに気を遣っているのか不思議だった。
 話を聞いていると、地球にいたときの商売の方法を色々と話していたようだった。地球では結構普通になってきている内容だったけれど、こちらの世界ではかなり斬新なアイデアだったらしく、実践したところかなりの効果があったみたい。
 ただ、知識を強引に得ようとしているわけではなく、対価を払って情報をもらっているという印象なのでまだ大丈夫かな?商売の話も直接聞くのではなく、雑談の中でいろいろとヒントとなることを聞いているという感じだしね。

 食事の途中で首都のサクラに行かないかという話がでた。聞いた話を参考に実際に始めた事業について、助言がほしいみたい。途中の移動費はすべて出してくれる上、冒険者として護衛依頼も出してくれるみたい。日程もないため明日までに返事をもらえないかと言うことで宿まで送ってもらった。


 宿に戻ってからなんでそんなに親切にされるのかと今までのことを聞いてみたんだけど、思った以上に地球の商売についていろいろと話をしていたようだった。
 本当だったら対価を払って教えるべき内容だとは思うんだけど、イチは「どうせ自分では本格的に商売をやるまで手を出せないから、やれる人がいたらやってもらった方がいいよ。自分がやったとしても、資金があるところにまねされて潰される可能性の方が高いと思うしね。うまくやってくれたらやってくれたで、その方が自分たちも便利になるんだからいいんじゃない?」と気にもとめていなかった。
 まだ完全に信用したわけでもないけれど、この世界で大きな商会の援助を受けられるというのはかなり大きなアドバンテージというのは間違いないわ。今までの対応や今日話した感じからしても、そこまで変なことにはならないかな。
 イチは特に意識はしていないようだけれど、いろいろと聞かれたことに対して知っていることをできるだけ丁寧に伝えているので、コーランさんからかなりの信頼を得ているみたい。知り合いのいない世界でこういう信頼を得るというのはすごく大切なことだと思うわ。

 首都のサクラというところにも興味はあるし、私も一緒に行くことにした。一人で行くことになるかもと心配していたようだけど、今更別の人とパーティーを組む気なんてないわよ。


 それとは別にイチがいろいろと試作していたインスタントラーメンを売り込んでみることにしたみたい。こっちの保存食は魔法で腐食を防止した値段の高いものしかないので、ある程度安く作ることができるのなら確かに売れそうな気もする。生産や販売は完全に委託して、アイデア料と言うことで固定収入を得られるように考えているらしい。



 インスタントラーメンの試食はかなり好評だった。これは売れると判断したのか、すぐに特許申請することになり、アイデア料の交渉をすることになったけれど、最初から利益の15%の数値が提示されて驚いたわ。しかも初期投資の費用別での利益に対して15%だからね。どう考えてもかなり破格の金額になるのだけれど、おそらく今後もいろいろとアイデアを出してもらいたいという意思の表れなのだろうな。


 そのあとお世話になった人たちに挨拶に行った。よく行っていたお店や食堂、鍛冶屋などを回っていく。夕方に役場に行くと多くの冒険者がいた。アキラとマラルは「ぜったいまた会おうね!」と泣きながら見送ってくれた。「結婚式には呼べよ!」と言ってくる人もいたんだけど、イチは「そんな関係じゃないですよ。」と普通に流していたのはなんかいやだった。



 翌朝には宿が忙しいにもかかわらず、メイサンとルミナ夫妻は見送りをしてくれた。私が地球に帰れないと分かったときに慰めてくれたルミナさん、いつも優しく助けてくれたメイサンさん、ほんとうにありがとう。


 カサス商会に行って護衛の風の翼のメンバーと顔合わせをしたのだけれど、かなり静かな人たちだった。なんかかなり落ち込んでいるように見えるのは気のせいだったのかな?
 このあと車に分乗して出発したのだけれど、思いのほか乗り心地が良くてびっくりした。ただしかなりうるさくて車内での会話は厳しいので、イチに言われていたとおり移動中はずっと勉強をしていた。最初に聞いたガイド本の使い方には驚いたけどね。


 最初の町に到着して宿に入ったのだけど、イチと同室と言われて困ってしまった。どうやら他に部屋がないというのでさっさとイチを誘って部屋に入った。気にしない、気にしない。イチはパーティーメンバー、ただのパーティーメンバー。

 食事の後、シャワーを浴びてから荷物の整理をしてベッドに入った。大丈夫だよね、大丈夫だよね。えっと、下着は新しいものにしておいたし、シャワーで体も磨いていたから・・・って、違う!!
 緊張しながらベッドに入ってイチと話をしていたんだけれど、途中で返事がなくなってしまった。あれ?寝ちゃったの?ほんとに寝てるの?私がいるのに?寝たふりをしてちょっかいを出してくるとかじゃないよね?あとでこっちのベッドに入ってきたらどうしよう。

 いろいろぐるぐる考えていたんだけれど、ふと気がつくと目の前にイチの顔があった。「やっぱりきたっ!!」と思っていると「おはよう」と言ってきた。「え?朝?朝なの?」しばらく思考が停止してしまった。
 急に恥ずかしくなり「寝顔をのぞくなんて最低!!」といって枕を投げつけてしまった。「ごめん、ごめん、なんかかわいい寝顔だったから見とれていたんだ。」と言われてちょっと混乱してしまった。かわいいって・・・気のないふりはしていたけど、一応そう思ってくれているんだ。ちょっとうれしくなったけど、そんな顔は見せられないので布団に潜り込んだ。
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