103 / 136
兵庫県予選大会 1日目
第101走 余韻と予感
しおりを挟む
【続いて男子4×100mリレー、第2組のスタートです。出場は9組……】
緑山記念競技場では、次のレースを伝えるアナウンスが響き渡っている。
だがスタンドの観客たちは、まだ先ほどの第1組で目撃したヤマジツ木村の圧巻の走りの余韻に浸っていた。
「いやヤバかったな、木村」
「あんなの誰が勝てるの?」
「1人だけ格が違うわ」
木村という兵庫トップスプリンターが与えた衝撃は、あまりに大きかったようだ。
そしてもちろん、結城もその衝撃を受けている1人である。
(木村さん、前見た時よりもっと速く感じた!いくら山口先輩でも、一騎討ちになったら厳しいなアレは……)
結城は自分が走る訳でもないのに、なぜか謎の絶望感に襲われていた。
◇
だがそんなスタンドの空気などお構いなしに、レースは続いていく。
次の第2組には強豪のタケニ、そしてキタ高が登場するのだ!
————————
【武川第二高校】4レーン
準決勝 リレーオーダー
第1走 黒木雨(2年)
第2走 虎島勇気(1年)
第3走 西村俊樹(3年)
第4走 竹安元彌(3年)
【北城高校】5レーン
準決勝 リレーオーダー
第1走 黒崎慎吾(2年)
第2走 佐々木隼人(3年)
第3走 郡山翔(1年)
第4走 山口渚(3年)
————————
「きたぜ結城!進めるかな、決勝?」
結城の隣でずっと興奮気味の康太は、キラキラとした目で結城に問いかける。
「そりゃまぁ、予選1位のタイムだし?普通にバトンをミスらなければいけるでしょ。でもタケニには勝って欲しいよな」
「でも予選で走ったエースの早馬結城は、この準決勝では走らないからなー?」
「なんかウザい」
「えぇ!?別に悪く言ってないじゃん!?」
「皮肉にしか聞こえないだろ!」
「いやいや、未来のエースって事でいいじゃん!てかさ、黒崎先輩大丈夫かな?さっきテントでめっちゃ腰冷やしてたじゃん」
「まあ無理なら無理って言ってるだろ。幅跳び専門だし、腰痛めやすいんだろ」
「そうか?俺も幅跳びやってるけど、痛めた事ないぜ?」
「痛める程のジャンプしてないんだろ」
「でた、ナチュラル悪口。もう結城とは話さないわ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……いやウソウソ!ごめん!な?話そ?な?結城くーん!?」
「……フッ」
「いや、”フッ”じゃなくてさぁ!?」
生産性のないやり取りをする結城と康太。
だが結城もこのような会話が出来るほどには康太と仲良くなっていた。
中学で早々に部活をやめて以降は、あまり味わえなかった楽しさである。
【第5レーン、北城。6レーン……】
するとそのタイミングで、聞きなれた自校の名前が場内に流れた。
いよいよレースの開始を予感させる瞬間だ。
【チラッ】
すると結城は、アンカーの渚の方に視線をやっていた。
先ほど”木村には勝てない”と思ってしまった影響なのか、自然と渚の方に注目がいってしまったのだ。
なんなら角度的にも距離的にも、渚の表情は結城には1番見えやすい。
だがその表情を見た結城の身体に、突然”ある変化”が起こった。
【ゾクゥ……!】
結城の全身に、間違いなく”寒気”が走ったのだ。
だがそれもそのはず、結城の目に映った渚の眼は”最前線で戦う兵士”のようだった。
その鋭すぎる視線は、今にも周りの人間を殺してしまうのではないかと錯覚するほどである。
だが結城が震えた理由は、その力強い眼光だけではない。
そう、渚の口角はレース直前とは思えぬほどに上がっていたのだ……!
【————On Your Marks】
————————
緑山記念競技場では、次のレースを伝えるアナウンスが響き渡っている。
だがスタンドの観客たちは、まだ先ほどの第1組で目撃したヤマジツ木村の圧巻の走りの余韻に浸っていた。
「いやヤバかったな、木村」
「あんなの誰が勝てるの?」
「1人だけ格が違うわ」
木村という兵庫トップスプリンターが与えた衝撃は、あまりに大きかったようだ。
そしてもちろん、結城もその衝撃を受けている1人である。
(木村さん、前見た時よりもっと速く感じた!いくら山口先輩でも、一騎討ちになったら厳しいなアレは……)
結城は自分が走る訳でもないのに、なぜか謎の絶望感に襲われていた。
◇
だがそんなスタンドの空気などお構いなしに、レースは続いていく。
次の第2組には強豪のタケニ、そしてキタ高が登場するのだ!
————————
【武川第二高校】4レーン
準決勝 リレーオーダー
第1走 黒木雨(2年)
第2走 虎島勇気(1年)
第3走 西村俊樹(3年)
第4走 竹安元彌(3年)
【北城高校】5レーン
準決勝 リレーオーダー
第1走 黒崎慎吾(2年)
第2走 佐々木隼人(3年)
第3走 郡山翔(1年)
第4走 山口渚(3年)
————————
「きたぜ結城!進めるかな、決勝?」
結城の隣でずっと興奮気味の康太は、キラキラとした目で結城に問いかける。
「そりゃまぁ、予選1位のタイムだし?普通にバトンをミスらなければいけるでしょ。でもタケニには勝って欲しいよな」
「でも予選で走ったエースの早馬結城は、この準決勝では走らないからなー?」
「なんかウザい」
「えぇ!?別に悪く言ってないじゃん!?」
「皮肉にしか聞こえないだろ!」
「いやいや、未来のエースって事でいいじゃん!てかさ、黒崎先輩大丈夫かな?さっきテントでめっちゃ腰冷やしてたじゃん」
「まあ無理なら無理って言ってるだろ。幅跳び専門だし、腰痛めやすいんだろ」
「そうか?俺も幅跳びやってるけど、痛めた事ないぜ?」
「痛める程のジャンプしてないんだろ」
「でた、ナチュラル悪口。もう結城とは話さないわ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……いやウソウソ!ごめん!な?話そ?な?結城くーん!?」
「……フッ」
「いや、”フッ”じゃなくてさぁ!?」
生産性のないやり取りをする結城と康太。
だが結城もこのような会話が出来るほどには康太と仲良くなっていた。
中学で早々に部活をやめて以降は、あまり味わえなかった楽しさである。
【第5レーン、北城。6レーン……】
するとそのタイミングで、聞きなれた自校の名前が場内に流れた。
いよいよレースの開始を予感させる瞬間だ。
【チラッ】
すると結城は、アンカーの渚の方に視線をやっていた。
先ほど”木村には勝てない”と思ってしまった影響なのか、自然と渚の方に注目がいってしまったのだ。
なんなら角度的にも距離的にも、渚の表情は結城には1番見えやすい。
だがその表情を見た結城の身体に、突然”ある変化”が起こった。
【ゾクゥ……!】
結城の全身に、間違いなく”寒気”が走ったのだ。
だがそれもそのはず、結城の目に映った渚の眼は”最前線で戦う兵士”のようだった。
その鋭すぎる視線は、今にも周りの人間を殺してしまうのではないかと錯覚するほどである。
だが結城が震えた理由は、その力強い眼光だけではない。
そう、渚の口角はレース直前とは思えぬほどに上がっていたのだ……!
【————On Your Marks】
————————
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる