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兵庫県予選大会 1日目
第99走 ヤマジツvs二木山【4】
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割れんばかりの歓声がこだまする緑山記念競技場。
アンカー勝負となった4継(4×100mリレー)準決勝第1組は、二木山高校の第3走根本裕からアンカー今田へとバトンが繋がれ、対するヤマジツは県内最強の呼び声高いスプリンター、アンカー木村へとバトンが繋がれていた。
そもそもこのアンカー2人の100mベストタイムは、木村が今田に対して圧倒的な差をつけている。
100回勝負すれば、100回木村が勝つ。
それ程の埋められない差が2人の間にはあるのだ。
だがそんな中でも二木山のバトンパスの安定感は変わらない。
一切スピードを落とす事なく、練習通りに美しいアンダーハンドバトンパスを決めていたのだ。
対するヤマジツはというと、木村が少し早く動き出した影響なのかギリギリのバトンパスになってしまった!
つまり木村は、大きく減速した所からのスタートになっていたのだ。
「ヤマジツ、バトンギリギリ……!?」
スタンドからは若干の悲鳴が混じった声も上がる。
加えてこの2校の対照的なバトンパスは、このレースの中で最大の”差”も生み出していた。
100mでは絶対に見られない、”木村が大きなリードを奪われた展開”である。
その距離、約2m……。
だが後に二木山のアンカー今田は、チームメイトにこう語った。
「正直逃げ切れる自信はあった」
そして続けてこうも語った
「俺、高校で陸上辞めるわ」ーーー
————————
兵庫県内における山足実業といえば、武川第二高校と並んで有名なスポーツ強豪校である。
兵庫が"陸上大国"と呼ばれ始めた時代から常に県内、そして全国でもトップレベルの実力を保ち続けてきたのだ。
その強い理由として筆頭に挙げられるのは、やはりスポーツ推薦入学だろう。
中学時代から名の通った選手達は、有名選手が多数輩出されてきた"ヤマジツ"のユニフォームに袖を通す事を夢見て入学を希望するのだ。
そしてその層の厚さは陸上だけではなく、野球やサッカー、ラグビーなど多岐に渡る。
「結局は才能か」
このような声も少なくはない。
だが勘違いして欲しくないのは、彼らは元々持ち合わせた才能に加え、ハードな練習量と多くのスポーツ科学の知識を日々詰め込む事も疎かにはしていない。
事実、山足実業陸上部には
・トレーニングコーチ
・栄養管理士
・ボディメンテナンスコーチ
といった専属のコーチが在籍している。
加えてほとんどの運動部が所属する体育科では、授業でも度々身体の知識を学ぶ事が出来た。
このように“才能に恵まれた選手"が"恵まれた環境"で過ごした結果こそが、現在の【ヤマジツブランド】を創り上げたのだ。
とはいえ、部員全員がスーパーアスリートになれるのかというと、そんなに甘い世界でもない。
激しい競争に敗れ、競技から離れる者。
ハードな練習に身体や精神が持たなかった者。
そして思春期にありがちな"管理された環境からの非行に走る者”も毎年一定数は現れる。
だがそんな中でも己を信じ、この環境を自らの糧とする事が出来た人間は、驚く程の成長を見せた。
そう、それを現在のヤマジツで最も体現している選手こそが、ヤマジツ陸上部のエース・木村春彦だった。
彼の走りはまさに“完璧“と呼ぶに相応しかった。
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アンカー勝負となった4継(4×100mリレー)準決勝第1組は、二木山高校の第3走根本裕からアンカー今田へとバトンが繋がれ、対するヤマジツは県内最強の呼び声高いスプリンター、アンカー木村へとバトンが繋がれていた。
そもそもこのアンカー2人の100mベストタイムは、木村が今田に対して圧倒的な差をつけている。
100回勝負すれば、100回木村が勝つ。
それ程の埋められない差が2人の間にはあるのだ。
だがそんな中でも二木山のバトンパスの安定感は変わらない。
一切スピードを落とす事なく、練習通りに美しいアンダーハンドバトンパスを決めていたのだ。
対するヤマジツはというと、木村が少し早く動き出した影響なのかギリギリのバトンパスになってしまった!
つまり木村は、大きく減速した所からのスタートになっていたのだ。
「ヤマジツ、バトンギリギリ……!?」
スタンドからは若干の悲鳴が混じった声も上がる。
加えてこの2校の対照的なバトンパスは、このレースの中で最大の”差”も生み出していた。
100mでは絶対に見られない、”木村が大きなリードを奪われた展開”である。
その距離、約2m……。
だが後に二木山のアンカー今田は、チームメイトにこう語った。
「正直逃げ切れる自信はあった」
そして続けてこうも語った
「俺、高校で陸上辞めるわ」ーーー
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兵庫県内における山足実業といえば、武川第二高校と並んで有名なスポーツ強豪校である。
兵庫が"陸上大国"と呼ばれ始めた時代から常に県内、そして全国でもトップレベルの実力を保ち続けてきたのだ。
その強い理由として筆頭に挙げられるのは、やはりスポーツ推薦入学だろう。
中学時代から名の通った選手達は、有名選手が多数輩出されてきた"ヤマジツ"のユニフォームに袖を通す事を夢見て入学を希望するのだ。
そしてその層の厚さは陸上だけではなく、野球やサッカー、ラグビーなど多岐に渡る。
「結局は才能か」
このような声も少なくはない。
だが勘違いして欲しくないのは、彼らは元々持ち合わせた才能に加え、ハードな練習量と多くのスポーツ科学の知識を日々詰め込む事も疎かにはしていない。
事実、山足実業陸上部には
・トレーニングコーチ
・栄養管理士
・ボディメンテナンスコーチ
といった専属のコーチが在籍している。
加えてほとんどの運動部が所属する体育科では、授業でも度々身体の知識を学ぶ事が出来た。
このように“才能に恵まれた選手"が"恵まれた環境"で過ごした結果こそが、現在の【ヤマジツブランド】を創り上げたのだ。
とはいえ、部員全員がスーパーアスリートになれるのかというと、そんなに甘い世界でもない。
激しい競争に敗れ、競技から離れる者。
ハードな練習に身体や精神が持たなかった者。
そして思春期にありがちな"管理された環境からの非行に走る者”も毎年一定数は現れる。
だがそんな中でも己を信じ、この環境を自らの糧とする事が出来た人間は、驚く程の成長を見せた。
そう、それを現在のヤマジツで最も体現している選手こそが、ヤマジツ陸上部のエース・木村春彦だった。
彼の走りはまさに“完璧“と呼ぶに相応しかった。
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