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北城高校 入学編!
第13走 夢駆荘
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北城高校は長年に渡り寮制度を取り入れている。
そもそもキタ高の近隣にある5つの中学校の内、2校はギリギリ徒歩で行ける距離だが、それ以外の3つは歩けば60~70分近く、電車でも50分はかかる場所にある。
加えてキタ高周辺は、電車の本数が少ない上に坂道も多く、まさに田舎の不便さを集約したような立地なのだ。
こういった不便さを極力解消するために、キタ高は30年以上前に生徒専用の寮を作った。
◇
ちなみに数年前からは、基本的に部活に入っている学生だけが寮に入るルールに変わった。
さらにこの寮は4年前に全面改修されたばかりなので、現在の内装は非常にキレイであり、設備も学生が住むにはあまりに充実し過ぎている。
そういった経緯もあって、結城は陸上部に入った時点で寮に入ると決めていたのだ。
なにより遠方から通う事に早くもしんどさを感じていた結城にとって、入寮しない理由など無かったのだ。
「今日って見学できますか?一応入る前に見ておきたいんで」
結城は隼人に問いかける。
「もちろん大丈夫だよ!ぜひ隅々まで見ていってくれ!」
こうして2人は、30分後に寮の前で待ち合わせをすることになったのだった。
————————
結城が寮の前に着くと、隼人に加え、もう1人男が立っていた。
その男は身長170cmほどだが非常に身体に厚みのある体格をしており、結城もスグに陸上部の先輩だと気付く。
「佐々木先輩、遅くなってすいません」
「大丈夫だよ!それよりコイツの事まだ知らないよね?」
「は、はい……」
「えっと、俺と同じ3年で短距離の山口渚。うちの※4継のアンカーだよ」
「よろしくな早馬。分からない事あったらなんでも聞いてくれ」
「はい、よろしくお願いします!」
渚は少しムスッとした顔で語りかけていた。
しかし怒っている訳ではない。元々そういう顔なのだ。
少し強面で、ピリピリとしたオーラを漂わせている、それが結城の山口渚に対する第一印象だった。
————————
早速隼人は寮の紹介を始めていく。
「ここがキタ高陸上部と水泳部の寮、その名も”夢駆荘”だ!この寮が出来た時の校長が名付けたみたいだね。その名の通り、夢に向かって駆け抜けて欲しいって事らしいよ」
「え!そもそも部活ごとに寮が違うんですか!?」
「そうだよ、知らなかった?ここは陸上部と水泳部。他の寮は野球部とサッカー部とか、ソフトボール部とテニス部とかに分かれてるよ。ちなみにこの夢駆荘は男女兼用の寮で、西側が男、東側が女って分かれてるんだ。間違って男が東側に入ったら、それはすなわち”死”を表すと思ってくれていいからね。だから死なないように気をつけて。お墓は作ってあげないよ?」
「は、はい……」
結城は絶対に東には行かないと、そう心に誓っていた。
————————
いよいよ寮内に入っていくと、左右に大量の下駄箱が並んでいた。
そして(臭い)下駄箱ゾーンを抜けると、まるでホテルのロビーのような空間がサァッと広がっていた。
おおよそ縦横30mといったところか。
そして西の寮に繋がる扉には”男子寮”、東側には”女子寮”と書いており、女子寮の文字の下には赤く太い文字で”男子禁制!入ったら死刑”と書かれている。
どうやらこの寮において、東側に男子の人権は無いようだ。
「結構広いでしょ?改修の時、先輩と先生達がかなり頑張ってくれたみたいなんだ。おかげで広い共有スペースができて、時間制限はあるけど大型テレビも付いた。風呂も20人は軽く入れるぐらい広いんだよ!」
「いや旅館かよ」
「ちなみにマッサージチェアを買ってもらおうとした先輩もいたみたいだけど、さすがにそれは却下されたらしい。あとは……とりあえず食堂の時間とかは寮に入ったら教えるよ」
そう言って隼人はソファに座った。
ちなみにこのソファも、日常生活では中々お目にかかれない程の大きさであり、夢駆荘の為だけに作られた特注品だ。
結城は思っていた以上の高待遇に、ワクワクを通り越して少し引きはじめている。
「えっと、もう充分です……。なんかお腹いっぱいです。高級料理食べすぎたみたいな気分です。とりあえず来週には寮入るつもりなんで、よろしくおねがいします」
「おう!楽しみに待ってるよ!今日は久しぶりの練習だったし、ゆっくり休んでな」
そして今までに経験した事のない種類の興奮と疲労を抱えたまま、結城は帰路につくのだった。
————————
※4継(よんけい)・・・4×100mリレーの略称。トラック一周を4人でバトンを繋いでタイムを競う競技。
そもそもキタ高の近隣にある5つの中学校の内、2校はギリギリ徒歩で行ける距離だが、それ以外の3つは歩けば60~70分近く、電車でも50分はかかる場所にある。
加えてキタ高周辺は、電車の本数が少ない上に坂道も多く、まさに田舎の不便さを集約したような立地なのだ。
こういった不便さを極力解消するために、キタ高は30年以上前に生徒専用の寮を作った。
◇
ちなみに数年前からは、基本的に部活に入っている学生だけが寮に入るルールに変わった。
さらにこの寮は4年前に全面改修されたばかりなので、現在の内装は非常にキレイであり、設備も学生が住むにはあまりに充実し過ぎている。
そういった経緯もあって、結城は陸上部に入った時点で寮に入ると決めていたのだ。
なにより遠方から通う事に早くもしんどさを感じていた結城にとって、入寮しない理由など無かったのだ。
「今日って見学できますか?一応入る前に見ておきたいんで」
結城は隼人に問いかける。
「もちろん大丈夫だよ!ぜひ隅々まで見ていってくれ!」
こうして2人は、30分後に寮の前で待ち合わせをすることになったのだった。
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結城が寮の前に着くと、隼人に加え、もう1人男が立っていた。
その男は身長170cmほどだが非常に身体に厚みのある体格をしており、結城もスグに陸上部の先輩だと気付く。
「佐々木先輩、遅くなってすいません」
「大丈夫だよ!それよりコイツの事まだ知らないよね?」
「は、はい……」
「えっと、俺と同じ3年で短距離の山口渚。うちの※4継のアンカーだよ」
「よろしくな早馬。分からない事あったらなんでも聞いてくれ」
「はい、よろしくお願いします!」
渚は少しムスッとした顔で語りかけていた。
しかし怒っている訳ではない。元々そういう顔なのだ。
少し強面で、ピリピリとしたオーラを漂わせている、それが結城の山口渚に対する第一印象だった。
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早速隼人は寮の紹介を始めていく。
「ここがキタ高陸上部と水泳部の寮、その名も”夢駆荘”だ!この寮が出来た時の校長が名付けたみたいだね。その名の通り、夢に向かって駆け抜けて欲しいって事らしいよ」
「え!そもそも部活ごとに寮が違うんですか!?」
「そうだよ、知らなかった?ここは陸上部と水泳部。他の寮は野球部とサッカー部とか、ソフトボール部とテニス部とかに分かれてるよ。ちなみにこの夢駆荘は男女兼用の寮で、西側が男、東側が女って分かれてるんだ。間違って男が東側に入ったら、それはすなわち”死”を表すと思ってくれていいからね。だから死なないように気をつけて。お墓は作ってあげないよ?」
「は、はい……」
結城は絶対に東には行かないと、そう心に誓っていた。
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いよいよ寮内に入っていくと、左右に大量の下駄箱が並んでいた。
そして(臭い)下駄箱ゾーンを抜けると、まるでホテルのロビーのような空間がサァッと広がっていた。
おおよそ縦横30mといったところか。
そして西の寮に繋がる扉には”男子寮”、東側には”女子寮”と書いており、女子寮の文字の下には赤く太い文字で”男子禁制!入ったら死刑”と書かれている。
どうやらこの寮において、東側に男子の人権は無いようだ。
「結構広いでしょ?改修の時、先輩と先生達がかなり頑張ってくれたみたいなんだ。おかげで広い共有スペースができて、時間制限はあるけど大型テレビも付いた。風呂も20人は軽く入れるぐらい広いんだよ!」
「いや旅館かよ」
「ちなみにマッサージチェアを買ってもらおうとした先輩もいたみたいだけど、さすがにそれは却下されたらしい。あとは……とりあえず食堂の時間とかは寮に入ったら教えるよ」
そう言って隼人はソファに座った。
ちなみにこのソファも、日常生活では中々お目にかかれない程の大きさであり、夢駆荘の為だけに作られた特注品だ。
結城は思っていた以上の高待遇に、ワクワクを通り越して少し引きはじめている。
「えっと、もう充分です……。なんかお腹いっぱいです。高級料理食べすぎたみたいな気分です。とりあえず来週には寮入るつもりなんで、よろしくおねがいします」
「おう!楽しみに待ってるよ!今日は久しぶりの練習だったし、ゆっくり休んでな」
そして今までに経験した事のない種類の興奮と疲労を抱えたまま、結城は帰路につくのだった。
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※4継(よんけい)・・・4×100mリレーの略称。トラック一周を4人でバトンを繋いでタイムを競う競技。
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