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北城高校 入学編!
第11走 決心までの道筋
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結局は陸上部への入部を決めた結城。
だが彼も完全に頭の整理がついたわけではなく、走る恐怖感も無くなった訳ではなかった。
————————
事実、キャプテンの隼人にも”苦しいなら無理はしなくていい”とも言われていた。
隼人は優しい男だ、そこで無理に部活に入らせるような事はしなかったのだ。
だがそれに対して、同級生の郡山翔の反応は少し違っていた。
「別に走れへんのやったら走らんでいいやんけ。陸上の種目は走るだけちゃうやろ」
結城も正直”その視点は無かった”と少し驚かされた。
そもそも自分の走りに憧れていたと言った人間が、自分に走る事以外をススめたのも意外だったからだ。
だが翔は同時に付け足す。
「ま、俺がお前の100mの記録をとっとと抜いて、高校ナンバー1スプリンターなるのを指くわえて見とけや。ハッハッハ!!」
この余計な一言は、ある意味”翔らしい”と言えた。
————————
そして結城は人生で初めて、姉の咲にも真剣な相談をしていた。
こんな”自分の弱み”を曝け出すような話は少し恥ずかしかったが、別に咲とは仲が悪い訳では無い。
むしろ陸上から目を背ける結城を一番近くで見ていた咲は、相談をすんなりと受け入れ、真剣に考えてくれたのだ。
何より咲自身も全国レベルの陸上選手なだけに、結城の才能がこのまま終わってしまうのが耐えられなかったようだ。
「高校で絶対に結果残さなきゃいけない訳じゃないからさ。別に時間かかっても少しずつ走れるようになっていけばいいじゃん。大学でも社会人でも陸上はずっと続けていけるんだから」
咲は言葉を選びながら結城に語りかける。
「それにキタ高卒業した人に吉田先生の話聞いたけど、めっちゃ良い人らしいよ。スランプの時もメッチャ気にかけてくれたって。しかも若い時は200mの日本代表にも選ばれた事あるらしいし、結構凄い人みたいだよ。でね、奥さんは~……」
「いや姉貴、いきなり情報量多いわ」
このように女性の情報網というものはクモの巣のように広がっている……。
それはそれとして、結城はこの時点で既に逃げ続けていた1年間に終止符を打ちたくなっていた。
スローに進んでいた人生が、再びハイスピードで走り出した感覚に興奮を覚えていたからだ。
”陸上をまだ好きとは言えないけど、走る事も諦められない”
今の理由はそれで十分だった。
————————
そして結城が入部届を吉田先生に届けに行った際、こんな事も言われていた。
「気楽にやりなさい。ウチの部はレベルこそ高いけども、厳しい雰囲気とかは無いからね。キャプテン見れば分かるでしょう」
(キャプテン怒ったら怖いけどなぁ……)
だが吉田先生はブラックコーヒーを口に運び、そして続ける。
「それに君の才能は素晴らしいものがあるからね。もちろんそれを活かして欲しいけど、まずは走ることは楽しいと思い出してからで良いよ。競うだけじゃあ面白く無い無い。とにかく楽しくやりなさい。勝つのはそれからだね」
そして吉田先生は白毛の混ざったヒゲを触っていた。
結城も話を聞いて、吉田先生に対して”優しさ”だけではなく”勝負には勝つ”という強い意志も感じていた。
だがプレッシャーとは違う、程よい緊張感だ。
気付けば結城の肩は、少し軽くなっていたのだった。
————————
だが彼も完全に頭の整理がついたわけではなく、走る恐怖感も無くなった訳ではなかった。
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事実、キャプテンの隼人にも”苦しいなら無理はしなくていい”とも言われていた。
隼人は優しい男だ、そこで無理に部活に入らせるような事はしなかったのだ。
だがそれに対して、同級生の郡山翔の反応は少し違っていた。
「別に走れへんのやったら走らんでいいやんけ。陸上の種目は走るだけちゃうやろ」
結城も正直”その視点は無かった”と少し驚かされた。
そもそも自分の走りに憧れていたと言った人間が、自分に走る事以外をススめたのも意外だったからだ。
だが翔は同時に付け足す。
「ま、俺がお前の100mの記録をとっとと抜いて、高校ナンバー1スプリンターなるのを指くわえて見とけや。ハッハッハ!!」
この余計な一言は、ある意味”翔らしい”と言えた。
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そして結城は人生で初めて、姉の咲にも真剣な相談をしていた。
こんな”自分の弱み”を曝け出すような話は少し恥ずかしかったが、別に咲とは仲が悪い訳では無い。
むしろ陸上から目を背ける結城を一番近くで見ていた咲は、相談をすんなりと受け入れ、真剣に考えてくれたのだ。
何より咲自身も全国レベルの陸上選手なだけに、結城の才能がこのまま終わってしまうのが耐えられなかったようだ。
「高校で絶対に結果残さなきゃいけない訳じゃないからさ。別に時間かかっても少しずつ走れるようになっていけばいいじゃん。大学でも社会人でも陸上はずっと続けていけるんだから」
咲は言葉を選びながら結城に語りかける。
「それにキタ高卒業した人に吉田先生の話聞いたけど、めっちゃ良い人らしいよ。スランプの時もメッチャ気にかけてくれたって。しかも若い時は200mの日本代表にも選ばれた事あるらしいし、結構凄い人みたいだよ。でね、奥さんは~……」
「いや姉貴、いきなり情報量多いわ」
このように女性の情報網というものはクモの巣のように広がっている……。
それはそれとして、結城はこの時点で既に逃げ続けていた1年間に終止符を打ちたくなっていた。
スローに進んでいた人生が、再びハイスピードで走り出した感覚に興奮を覚えていたからだ。
”陸上をまだ好きとは言えないけど、走る事も諦められない”
今の理由はそれで十分だった。
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そして結城が入部届を吉田先生に届けに行った際、こんな事も言われていた。
「気楽にやりなさい。ウチの部はレベルこそ高いけども、厳しい雰囲気とかは無いからね。キャプテン見れば分かるでしょう」
(キャプテン怒ったら怖いけどなぁ……)
だが吉田先生はブラックコーヒーを口に運び、そして続ける。
「それに君の才能は素晴らしいものがあるからね。もちろんそれを活かして欲しいけど、まずは走ることは楽しいと思い出してからで良いよ。競うだけじゃあ面白く無い無い。とにかく楽しくやりなさい。勝つのはそれからだね」
そして吉田先生は白毛の混ざったヒゲを触っていた。
結城も話を聞いて、吉田先生に対して”優しさ”だけではなく”勝負には勝つ”という強い意志も感じていた。
だがプレッシャーとは違う、程よい緊張感だ。
気付けば結城の肩は、少し軽くなっていたのだった。
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