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カルマル防衛戦
55.黒幕!?
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「ス、スコッチエッグの婆ちゃん……!!?」
そう、彼女は今日の朝にスコッチエッグの作り方を教えてくれた、街の商店の老婆だったのだ。
◇
「ハ、ハルネさん!こんな所まで出てくるなんて珍しいね」
「あんたらがギャーギャー騒いでいるからだよ……。安心しな、あの若造はウソをついちゃいない。アレは紛れもない赤竜を仕留めた証拠だよ。まったく、商人をやるなら普段から目を鍛えろと言っとるじゃろ」
「す、すいません……。でもハルネさんが言うなら間違いないな。ごめんよベネットさん、疑うような事をしてしまって!」
このように”ハルネ”と呼ばれた老婆は、マグナクスタさんと親しげに会話をしていた。
その会話内容からしても、どうやらハルネさんはこの街でかなり信頼されているみたいだな。
………なにはともあれ、助かった!
「ほれ、何しとる若いの。早く街に入ってこんか。街全体で赤竜を倒してくれたお礼をせんとな。マグナクスタはとっととカルマル最高級の店を開けてもらってきなっ!!」
「は、はい!ハルネさん!!」
そう言われたマグナクスタさんは、まるで部下のような従順さで街へと走り出していた。彼自身にも部下は多数いるようだったが、ハルネはそのさらに上をいく存在のようだ。
さてさて、じゃあ俺達も改めて歩みを進める事にするか……。
◇
「さぁみなさん、赤竜を倒した英雄”ナツキさん”の凱旋ですよぉ!!盛大な拍手と共にお出迎えあれー!!」
「や、やめないかベネット!?は、恥ずかしいだけじゃないか!!」
気付くと俺は、両手を挙げながら街に向かって歩き始めていた!
そんな俺に対してナツキさんは、顔を赤くしながら挙げた手を必死に下ろそうとしている。
だが簡単には屈しないぞ。
ナツキさんの腕力が……凄い……けど、なんとか両手は下ろさずに街へと入っていく。
まだ少しだけ疑いの目を向けている人達もいるようだったが、ハルネさんの一声のおかげで文句を言う人はいなくなっていた。
「婆ちゃん、ありがとね。おかげで助かったよ」
俺は街の入り口に立つハルネの横に到着すると、周りに聞こえないように小声でお礼を言っていた。
彼女の意図は分からないが、”アテラの素材”を”普通の赤竜”と勘違いしてくれたおかげで、俺たちは堂々と街に戻る事ができたのだ。
正直、救ってくれた老婆にすら真実を話せない事に良心は痛んだが、さすがに”神の剣竜”がいた事を易々と話す訳にもいかない。
ごめんな婆ちゃん、この恩はどこかで絶対に返すから……。
なんて考えながら自分自身を納得させた、だがその直後だった。
「アテラ様を倒すとは、お主ら強いのぉ」
突如俺の耳に入ってきたのは、ハルネから発せられた衝撃の言葉だった。
「………!?!?」
驚いた俺は、即座にハルネから距離を取る!
まさかこの老婆、本物のアテラだという事を知っていたのか!?
だけどさっきは俺たちの誤解を解くような発言をしていたし……
一体何が目的なんだ!?
「ど、どうしたんだベネット?突然殺気なんか出して……?」
すると俺の様子を見たナツキさんは、かなり驚いている様子だった。
そりゃそうだよな、だってどう見ても普通の老婆に対して俺が突然警戒をし始めたのだから。
……だがここで話すのは得策じゃない。
少し場所を変えるしかないか。
「ば、婆ちゃん。少し場所を変えても良いか?聞きたい事が山ほどある」
「あぁ、もちろんじゃよ。ほれ、赤髪のアンタもついてきなさい」
そう言ってハルネはナツキさんに手招きをしていた。
なんだこの余裕は?何か俺達をダマそうとしているのか……!?
結局警戒心を最大限に高めたまま、俺達3人はカルマルの中にあるハルネの店へと歩いていくのだった。
◇
「どうだったい、道中のカルマルの街並みは」
店に着くやいなや、ハルネは俺たちに質問を投げかけていた。
明かりのついていない店内は、どこかハイネの未知さも相まって不気味に映る。
……とりあえず質問には答えてみようか。
「一部がアテラの攻撃によって崩れていましたね。俺がもっと早く対処できていれば、街に被害は出なかったかもしれないのに」
そう答えた俺に対して、ハルネはフッと口角を上げる。
そして彼女はここに至るまでの経緯を、とうとう俺達に話し始めるのだった。
「アテラ様が閃煌を放ってこれだけの被害で済んだのは奇跡じゃよ。改めて礼を言わせてもらうよ、ありがとうね」
「………閃煌の事まで知っているのか!?ハイネさん、アンタ一体何者なんだ」
「今日の朝、初めて話した時に言わんかったか?ワシが昔、王都の城で働いておったという事を」
「あっ……!」
その瞬間、俺の頭の中で全てがつながっていた。
確かに今日の朝ここに卵を買いに来た際に、ハルネは過去の事を少しだけ語ってくれていたのだ。
今では珍しくなった【ステータス開示】のスキルを使って、王都で働いていたという事を。
つまり彼女がアテラの事を知っていた理由は……。
「クローブの中枢で働いてたんだ、剣竜アテラの事を詳しく知ってて当然って訳だ」
「そういう事じゃ。とはいえ本物がこの街にやって来るなんて想像もしておらんかったからの。流石に信じるまでには時間がかかったよ。でもワシのスキルでドラゴンを”視た”時に確信した。これは本当に”神の剣竜アテラ様”じゃとな」
そしてハイネは続ける。
「じゃが街の住民達にあれが”本物の神の剣竜だ”なんて言っても、信じるどころか余計にパニックになってしまうかもしれなかったからね。じゃから先ほどは”紛れもない赤竜の素材だ”と言ってウソをつかせてもらったんじゃよ。
警戒させてしまってすまなかったね、若いの」
そしてハイネは、慣れた様子で店の中にある木製のイスに腰掛けていた。
俺も真実が分かった以上、もうハイネの事を疑う気持ちは無くなっている。
だが強いて不安な点を挙げるとすれば……。
「その”アテラ様”を殺した俺達に………怒っているのか?」
「まさか。言ったじゃろ、ワシのスキルは”ステータス開示”じゃと。アテラ様が洗脳状態になっておる事ぐらい、視えておったわ」
「フフ、これは失礼な事を言っちゃったね。さすがの対応力だよ婆ちゃん」
「ふんっ、伊達に80年も生きとらんわ」
「まったくだ!」
そして俺達2人は悪い笑い声を店内に響かせていた。
おそらく街の人達が聞いても全く理解できない、とても特殊な会話だったからね。
………だが街の人達と同様に理解できていないのは、同じく店内にいる”俺の妻”も例外ではない。
「ふ、2人とも何を話しているんだ!?まったく状況が飲み込めないぞ!?」
ナツキさんはその場で地団駄を鳴らしながら、手をグッと握って俺をニラんでいる。
可愛い。
………じゃなかった、殴られる前に説明しないとね。
「いや、実はねナツキさん……」
————————
次話【カルマル防衛戦】編、完結。
そう、彼女は今日の朝にスコッチエッグの作り方を教えてくれた、街の商店の老婆だったのだ。
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「ハ、ハルネさん!こんな所まで出てくるなんて珍しいね」
「あんたらがギャーギャー騒いでいるからだよ……。安心しな、あの若造はウソをついちゃいない。アレは紛れもない赤竜を仕留めた証拠だよ。まったく、商人をやるなら普段から目を鍛えろと言っとるじゃろ」
「す、すいません……。でもハルネさんが言うなら間違いないな。ごめんよベネットさん、疑うような事をしてしまって!」
このように”ハルネ”と呼ばれた老婆は、マグナクスタさんと親しげに会話をしていた。
その会話内容からしても、どうやらハルネさんはこの街でかなり信頼されているみたいだな。
………なにはともあれ、助かった!
「ほれ、何しとる若いの。早く街に入ってこんか。街全体で赤竜を倒してくれたお礼をせんとな。マグナクスタはとっととカルマル最高級の店を開けてもらってきなっ!!」
「は、はい!ハルネさん!!」
そう言われたマグナクスタさんは、まるで部下のような従順さで街へと走り出していた。彼自身にも部下は多数いるようだったが、ハルネはそのさらに上をいく存在のようだ。
さてさて、じゃあ俺達も改めて歩みを進める事にするか……。
◇
「さぁみなさん、赤竜を倒した英雄”ナツキさん”の凱旋ですよぉ!!盛大な拍手と共にお出迎えあれー!!」
「や、やめないかベネット!?は、恥ずかしいだけじゃないか!!」
気付くと俺は、両手を挙げながら街に向かって歩き始めていた!
そんな俺に対してナツキさんは、顔を赤くしながら挙げた手を必死に下ろそうとしている。
だが簡単には屈しないぞ。
ナツキさんの腕力が……凄い……けど、なんとか両手は下ろさずに街へと入っていく。
まだ少しだけ疑いの目を向けている人達もいるようだったが、ハルネさんの一声のおかげで文句を言う人はいなくなっていた。
「婆ちゃん、ありがとね。おかげで助かったよ」
俺は街の入り口に立つハルネの横に到着すると、周りに聞こえないように小声でお礼を言っていた。
彼女の意図は分からないが、”アテラの素材”を”普通の赤竜”と勘違いしてくれたおかげで、俺たちは堂々と街に戻る事ができたのだ。
正直、救ってくれた老婆にすら真実を話せない事に良心は痛んだが、さすがに”神の剣竜”がいた事を易々と話す訳にもいかない。
ごめんな婆ちゃん、この恩はどこかで絶対に返すから……。
なんて考えながら自分自身を納得させた、だがその直後だった。
「アテラ様を倒すとは、お主ら強いのぉ」
突如俺の耳に入ってきたのは、ハルネから発せられた衝撃の言葉だった。
「………!?!?」
驚いた俺は、即座にハルネから距離を取る!
まさかこの老婆、本物のアテラだという事を知っていたのか!?
だけどさっきは俺たちの誤解を解くような発言をしていたし……
一体何が目的なんだ!?
「ど、どうしたんだベネット?突然殺気なんか出して……?」
すると俺の様子を見たナツキさんは、かなり驚いている様子だった。
そりゃそうだよな、だってどう見ても普通の老婆に対して俺が突然警戒をし始めたのだから。
……だがここで話すのは得策じゃない。
少し場所を変えるしかないか。
「ば、婆ちゃん。少し場所を変えても良いか?聞きたい事が山ほどある」
「あぁ、もちろんじゃよ。ほれ、赤髪のアンタもついてきなさい」
そう言ってハルネはナツキさんに手招きをしていた。
なんだこの余裕は?何か俺達をダマそうとしているのか……!?
結局警戒心を最大限に高めたまま、俺達3人はカルマルの中にあるハルネの店へと歩いていくのだった。
◇
「どうだったい、道中のカルマルの街並みは」
店に着くやいなや、ハルネは俺たちに質問を投げかけていた。
明かりのついていない店内は、どこかハイネの未知さも相まって不気味に映る。
……とりあえず質問には答えてみようか。
「一部がアテラの攻撃によって崩れていましたね。俺がもっと早く対処できていれば、街に被害は出なかったかもしれないのに」
そう答えた俺に対して、ハルネはフッと口角を上げる。
そして彼女はここに至るまでの経緯を、とうとう俺達に話し始めるのだった。
「アテラ様が閃煌を放ってこれだけの被害で済んだのは奇跡じゃよ。改めて礼を言わせてもらうよ、ありがとうね」
「………閃煌の事まで知っているのか!?ハイネさん、アンタ一体何者なんだ」
「今日の朝、初めて話した時に言わんかったか?ワシが昔、王都の城で働いておったという事を」
「あっ……!」
その瞬間、俺の頭の中で全てがつながっていた。
確かに今日の朝ここに卵を買いに来た際に、ハルネは過去の事を少しだけ語ってくれていたのだ。
今では珍しくなった【ステータス開示】のスキルを使って、王都で働いていたという事を。
つまり彼女がアテラの事を知っていた理由は……。
「クローブの中枢で働いてたんだ、剣竜アテラの事を詳しく知ってて当然って訳だ」
「そういう事じゃ。とはいえ本物がこの街にやって来るなんて想像もしておらんかったからの。流石に信じるまでには時間がかかったよ。でもワシのスキルでドラゴンを”視た”時に確信した。これは本当に”神の剣竜アテラ様”じゃとな」
そしてハイネは続ける。
「じゃが街の住民達にあれが”本物の神の剣竜だ”なんて言っても、信じるどころか余計にパニックになってしまうかもしれなかったからね。じゃから先ほどは”紛れもない赤竜の素材だ”と言ってウソをつかせてもらったんじゃよ。
警戒させてしまってすまなかったね、若いの」
そしてハイネは、慣れた様子で店の中にある木製のイスに腰掛けていた。
俺も真実が分かった以上、もうハイネの事を疑う気持ちは無くなっている。
だが強いて不安な点を挙げるとすれば……。
「その”アテラ様”を殺した俺達に………怒っているのか?」
「まさか。言ったじゃろ、ワシのスキルは”ステータス開示”じゃと。アテラ様が洗脳状態になっておる事ぐらい、視えておったわ」
「フフ、これは失礼な事を言っちゃったね。さすがの対応力だよ婆ちゃん」
「ふんっ、伊達に80年も生きとらんわ」
「まったくだ!」
そして俺達2人は悪い笑い声を店内に響かせていた。
おそらく街の人達が聞いても全く理解できない、とても特殊な会話だったからね。
………だが街の人達と同様に理解できていないのは、同じく店内にいる”俺の妻”も例外ではない。
「ふ、2人とも何を話しているんだ!?まったく状況が飲み込めないぞ!?」
ナツキさんはその場で地団駄を鳴らしながら、手をグッと握って俺をニラんでいる。
可愛い。
………じゃなかった、殴られる前に説明しないとね。
「いや、実はねナツキさん……」
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