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第壱章

第十一話 肝試し

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時は午後六時。
都市伝説の特番を観て肝試しへの興奮を高めた僕らは現在自転車で心霊スポットとやらに向かっている。その肝心な場所も知らぬまま。肝を試すと書いて肝試し。言わば試験のようなものだ。不合格は死となっては元も子もないので危険度を把握する意味で聞いておいて損はない。

「なぁ隣」

「うん?どした?」

「僕らは今何処に行こうとしているんだ?」

「言ってなかったっけ?ホテル藤川だよ」

「おいあそこは駄目だ。遊び半分で行くところじゃないと聞いたことがある。それにそんな本格的な怖さは欲しくない」

ホテル藤川はここら辺で有名な心霊スポットだ。普段肝試しとは無縁な僕でも知っている程その名は広まっているのだ。噂に聞くに経営難によりオーナーが自殺し、それ以来放置され廃虚となったらしい。訪れた者は呪われるとかなんとか。


「俺だって怖いやい。それに無断侵入は禁止されているからな。雰囲気を味わうだけだよ」

「お前が話の分かる奴で助かったよ」

自転車を漕ぎ出してから約四十分、僕らはホテル藤川付近に到着した。花宮さん達とは家が真逆なのでここで合流することになっている。本来は迎えに行くのだが。


「うぇっ!!」

携帯を見た隣が大声を出す。何ぞ何ぞと思うまま隣は話し始めた。


「ゆかりん達来れないってさ。自転車乗ってて気付かなかったなあ」

「なんかあったのか?」

「なんか来る途中で車とトラブったっぽい。大した怪我はしてないから安心して、また今度遊ぼうね、だって…」

なんて事だ。やはり倍の労力を費やしてでも迎えに行くべきだったのだ。本当に大丈夫なのだろうか。いや大丈夫ではない。大したものでなくとも女子が危険に晒された事事態が大問題なのだから。
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