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第壱章
第十話 ど変態紳士
しおりを挟む「こっちから呼んどいてなんだけど今日は何する?」
「ああーそうだなあ。そうだ肝試ししようぜ!」
「遠慮するよ」
「なぁんでだよおおおお!あんまりだぁぁぁぁ!」
いつもの調子で隣が嘆く。隣が突飛な提案をし、僕がそれを断り隣が落胆する。これはもはやテンプレートと化してきている。
「しかーし!今回は掛橋隣、推して参る!一歩たりとも引き下がりはせんぞ!」
「そもそも肝試しって夜にやるもんだろ。今からは何やるつもりなんだ?」
「そりゃー予習っしょ」
「予習?」
「そう!まずは貞子を観て気持ち高めようぞ!」
「いや、貞子は直接的過ぎる。ここは都市伝説で程よくボルテージを上げるのが無難だろう」
肝試しで幽霊と出くわすかもしれないというのに意気揚々と昼間にご対面など愚の骨頂。ここは都市伝説というビターなチョイスが正解であろう。
「いや待てよ。僕は肝試しするなど一言も言ってないぞ!」
「惜しぃー!あとちょっとで釣れたのになあ。でも何で行きたくないんだよ」
「だいたい、お…」
「男2人で行ってもしょうがないってか?」
「そ、そんなこと言ってないだろ!」
「全く、君は変態さんですね」
「そんな不名誉な称号付けられてたまるか!紳士と呼べ!紳士と!」
一部からは聖人君子、男の中の男、憧れの紳士と呼び声高い僕だ。ここで汚名を馳せるわけにはいかん。ちなみに一部とは勿論僕のことである。
「じゃあ変態紳士さんですね」
「合体させるな!何故かもっと猥褻になってしまったじゃないか!」
「分かりましたよ、ど変態紳士さん。女の子を連れて来れば良いんでしょう?」
「グレードアップ!?キャタピーだってそんな速度で進化しないぞ!」
このまま進めば数分後には僕の肩書は十八禁になってしまうやもしれない。自主規制音で会話が出来なくなる可能性がある。ここは一度隣の誘いに乗るべきか。
「だけど当てはあるのか?」
「お、やる気になったな。じゃ、ゆかりんを呼ぼうか」
隣の口から語られたのは知らない名前だった。
「ゆかりんって誰?アニメのキャラ?流石は隠れオタクの隣くん。ゆかりんはお前の嫁、乙」
「おいおい、違えよ!それに俺の嫁は牧瀬紅莉栖ただ一人。異論は認めない。」
「おいおい、クリスティーナは皆の嫁だとこの前の議論で決まった筈だ」
「ぐぬぬ…それに関してはまた今度話し合おう。それはさておき、ゆかりんは俺達と同じクラスの由香里ちゃん。花宮由香里ちゃんのことだ」
「ああ、花宮さんか。でも僕彼女とはそんなに話したことないけど」
というか挨拶程度しかしたことない。
「大丈夫大丈夫、俺が答真のこと話しといてやるよ」
「分かった。そこは隣に任せるよ。ただ夜に女の子一人を呼び出して連れ回すのもどうかと思うからもう一人呼んでくれないか」
この細やかな心遣い僕がか弱い女子であれば惚れてしまうだろう。
「流石はど変態紳士、女子の不安を取り除きつつ一人でも多くの女の子と触れ合いたい己の欲を満たす。離れ業だね」
「うるさい」
「まぁ安心してよ。俺らが花宮さんだけと遊びたくても彼女にくっついて離れない付き人がいるからね」
「そんな人が居たのか」
誰かは知らないがそんなコバンザメのような紹介をされたら可哀想ではないか。
「んじゃ時間まで録画しといたやりすぎの特番でも観ようぜ」
「オーキードーキー!」
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