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十八話
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僕らはドームに逃げ帰ることができた。
といってもお母さんはもう追ってきていなかったから、追い付かれる心配はなかった。
ドームにつき、真白を寝かせた。血は出ていないが、顔の至るところが赤く染まっている。
何か手当てをしようとしたが、こんな公園の石のドームの中じゃ、まともな道具なんて無い。
「本当にごめん、僕のせいで」
僕は泣きながら言った。こんなつもりじゃなかったのに、真白に怪我をさせてしまった。
真白は僕の顔を見ると、眉間に皺を寄せ痛みに耐えながら口角をあげた。
「こんなの何でもないよ、それより助けてくれたのが、嬉しかったよ」
「でも、死ぬ前くらい綺麗でいたいって言ってたのに、こんな……」
真白の顔は赤く腫れ始めている。真白はゆっくりと顔を横に振った。
「大丈夫だよ、こんな傷も私たちらしくて良いじゃん」
真白の慰めが、僕の胸を締め付けていた。僕の痛みなんてどうでもよかった。
僕のワガママで、真白を傷つけてしまったことが、罪悪感となって僕の胸を突き刺している。
僕が家に行きたいなんて言ったから。図鑑なんて取りに行かなくても、何も困ることなんて無いのに。僕の妄執に、真白を付き合わせてしまった。
「体当たりで助けてくれたとき、アメコミのヒーローみたいに見えたよ」
痛みを堪えた歪んだ笑顔で真白が冗談を飛ばす。僕は泣きながら首を横に振った。
「僕はヒーロー何かじゃないよ、もう無理しないで寝てて」
「そう?じゃあ遠慮無く……」
そう言って真白は寝息を立て始めた。僕はいたたまれなくて、ご飯も食べずに看病をした。
真白は夜になるまで目を覚まさなかった。
夜になり、空気も冷え始めた頃、真白は目を覚ました。
真白は起き上がって伸びをした。
「うわ、もう夜じゃん」
「うん、全然目を覚まさないから、もしかしたら死んじゃったんじゃないかって、不安だったんだよ」
真白は横で看病していた僕の顔を見て、急に噴き出した。
「落ち込みすぎでしょ、気にしないでって言ったじゃん」
「だって、傷付けちゃったから」
真白はひとしきり笑って、涙が滲んだ目を拭った。
「んー、じゃあさそんなに申し訳ないなら、明日は私のやりたいことに付き合ってもらおうかな、それでチャラね」
真白は照れ笑いを浮かべながら言った。真白の優しさに、僕はまた泣いてしまった。
「もちろん、もちろんだよ」
泣きながらも、絞り出すように僕は言った。真白はただ優しく微笑んでいる。
ドームの中で、僕の啜り泣く声だけが響いていた。
といってもお母さんはもう追ってきていなかったから、追い付かれる心配はなかった。
ドームにつき、真白を寝かせた。血は出ていないが、顔の至るところが赤く染まっている。
何か手当てをしようとしたが、こんな公園の石のドームの中じゃ、まともな道具なんて無い。
「本当にごめん、僕のせいで」
僕は泣きながら言った。こんなつもりじゃなかったのに、真白に怪我をさせてしまった。
真白は僕の顔を見ると、眉間に皺を寄せ痛みに耐えながら口角をあげた。
「こんなの何でもないよ、それより助けてくれたのが、嬉しかったよ」
「でも、死ぬ前くらい綺麗でいたいって言ってたのに、こんな……」
真白の顔は赤く腫れ始めている。真白はゆっくりと顔を横に振った。
「大丈夫だよ、こんな傷も私たちらしくて良いじゃん」
真白の慰めが、僕の胸を締め付けていた。僕の痛みなんてどうでもよかった。
僕のワガママで、真白を傷つけてしまったことが、罪悪感となって僕の胸を突き刺している。
僕が家に行きたいなんて言ったから。図鑑なんて取りに行かなくても、何も困ることなんて無いのに。僕の妄執に、真白を付き合わせてしまった。
「体当たりで助けてくれたとき、アメコミのヒーローみたいに見えたよ」
痛みを堪えた歪んだ笑顔で真白が冗談を飛ばす。僕は泣きながら首を横に振った。
「僕はヒーロー何かじゃないよ、もう無理しないで寝てて」
「そう?じゃあ遠慮無く……」
そう言って真白は寝息を立て始めた。僕はいたたまれなくて、ご飯も食べずに看病をした。
真白は夜になるまで目を覚まさなかった。
夜になり、空気も冷え始めた頃、真白は目を覚ました。
真白は起き上がって伸びをした。
「うわ、もう夜じゃん」
「うん、全然目を覚まさないから、もしかしたら死んじゃったんじゃないかって、不安だったんだよ」
真白は横で看病していた僕の顔を見て、急に噴き出した。
「落ち込みすぎでしょ、気にしないでって言ったじゃん」
「だって、傷付けちゃったから」
真白はひとしきり笑って、涙が滲んだ目を拭った。
「んー、じゃあさそんなに申し訳ないなら、明日は私のやりたいことに付き合ってもらおうかな、それでチャラね」
真白は照れ笑いを浮かべながら言った。真白の優しさに、僕はまた泣いてしまった。
「もちろん、もちろんだよ」
泣きながらも、絞り出すように僕は言った。真白はただ優しく微笑んでいる。
ドームの中で、僕の啜り泣く声だけが響いていた。
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