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一話

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「一緒に死ににいかない?」

声がして振り替えると、一人の女の子が立っていた。

腰まで延びた黒髪は手入れされておらず、羊の毛のようにウネウネと分岐している。
制服から垣間見える肌にはくっきりとアザが刻まれており、真っ白な肌にコントラストを作っていた。

幽霊のような雰囲気に、むしろ立っていることに違和感を覚える。

目の前の女子が同じクラスの真白美香と気づくまで時間はかからなかった。

「……どういうこと?」

僕は言葉を絞り出した。

真白は不思議そうに首をかしげる。
その顔は前髪に隠され表情は見えない。

「言葉通りの意味だよ、君も死にたいでしょ?相沢翔太くん」

真白は臆面もなく言ってのけた。

何故理解できないのかわからない。といった表情を浮かべている。

僕は恐怖に駆られ、逃げること無く立ち止まっていた。死神に遭遇したような気分だった。

「……死にたくなんて無いよ、決めつけないでくれよ」

「そんな状態なのに?」

食い気味に真白は否定した。

真白は僕を指差す。正確に言うと僕の顔の痣を指していた。

僕は慌てて手で隠す。そこから魂を取られるような不気味さを感じた。

「虐待にイジメ、男子のイジメなんて私が受けてるのより痛いんじゃない?ま、辛いのは私の方が上だけど」

腕を組んで偉そうに真白は言った。
辛さでマウントを取ろうとする姿が可笑しくて、少し口角が上がる。

「何笑ってるの」

目ざとく口角の上昇を見つけた真白が咎めた。艶のないマットな黒髪が揺れる。

「いや、ごめん、何でもない」

思わず謝ってしまう。

真白は一つため息をつくと、組んでいた腕をほどいた。

「分かってると思うけど、私は真白美香。返事はまた今度でもいいから、だけどできるだけ早くお願い」

そう言って真白は踵を返し、去っていった。

僕は蜃気楼の歪んだ景色に真白が入っていくのを、ただ呆然と眺めていた。

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