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幼少期編
父は子を想う
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私の名はアレクサンドル・サトゥーラ。
サトゥーラ国の国王であり、アレクの父である。
息子アレクが生まれた時は本当に妻と共に感動で涙したものだ。
しかし、アレクが成長するにつれ問題が生じた。アレクの容姿が私たちに全く似ていないことだ。
これにはしばらくは悩み続けた。ついには妻の不貞を疑ってしまい、素直に話してしまうと彼女は涙を流しながら不貞はなかったと訴えてきた。
同時に彼女もなぜアレクの容姿が自分たちに似ていないのかはわからないとも言った。
巷では妖精の悪戯で子供を取り替えるといった伝承もあるが、さすがに素直には信じられなかった。
仕方がないので、私は王族に伝わる「血族顕彰の秘儀」と呼ばれる儀式があることを妻に伝えた。
彼女の同意を得た後、私たちは寝ているアレクを連れて王宮の奥にある王族しか入れない秘密の間に入った。
蝋燭の火が小さく照らす石の畳みには薄緑色に薄く光る魔法陣が描かれていた。
この魔法陣には2つの魔法石があり、私は小さなナイフを取り出し、刃の先端を自分の指先に近づけて軽く突き刺すと指先からぷくっと小さな球体状の血が出てくる。
そして床に描かれている魔法陣にある魔法石の一つにぽとりと一滴の血を垂らした。
すると魔法陣は赤く光り出した。
続けて妻の指先から血を出し、同じく魔法陣のもう一つの魔法石へと血を垂らした。
魔法陣の色は変化し、青白い光となって輝き出した。
この魔法陣にある魔法石は今、各々青白い光と赤色の光となって別々に光っている。
次は、いよいよアレクの番だ。
薬によって眠らされているアレクの小さな指先にナイフを当てる。少し触れただけで指先からぷくっと血が出てきた。
少ない血だが同じく魔法陣へと血を垂らした。
すると魔法陣全体が黄金色に輝き出した。
二つの魔法石も青白い光と赤色の光を保ったまま魔法陣のみ黄金色に輝いている。
二つの魔法石、これは私たちの魔力属性を示す光であり、この2つの光が失われることなく魔法陣が反応したということはアレクは間違いなく私たち2人の子であることを確かに証明していた。
もし不義の子であればどちらかの魔法石は光を失ってしまうからだ。
私は考えた。
魔法陣が光る色はそれぞれ魔法の属性によって変わるものだ。
王族といえど、国王と王妃の魔力属性のどちらかを引き継ぐため、その都度属性は異なっていく。
私は先代国王の魔力を引き継いでおり、火の魔力属性が強いため魔法石は赤く光る。
妻は水の魔力属性を有しており、回復魔法が得意なので青白く光る。
しかしアレクの魔力は全く異なっている。
わが子の魔力属性は黄金色。
黄金色とはすなわち全属性であり、どのような属性の魔法も容易く使えるということだ。
現在、黄金色の魔力を有する者はこの王国において存在しない。唯一、黄金の魔力を持っていたと記録されているのは王国が誕生した時の初代国王のみである。
そうであるならば、わが子アレクは偉大なる使命を与えられているのではないだろうか。
もしかしたらアレクの容姿は創世にまつわるハルモニア神の僕、精霊神の一柱の姿に模して生まれてきたのではないだろうか。
私は妻にそう伝えると彼女もそうかもしれないと納得してくれた。
私はなんという大きな罪を犯そうとしたのだろうか。よりにもよって精霊神の化身として生まれた我が子を不貞の子扱いしようとしたのだ。
私は素直に妻に詫びて許しを乞うた。
妻は私に優しく口づけをして涙を流して私の罪を許してくれた。
それからというもの、私は妻をさらに愛した。
おかげでまた愛の結晶を授かることができた。
アレクには弟ができた。名をイスタルと名付けた。
イスタルはアレクとは違い私たちによく似た容姿で育ってくれた。大人しくて聡明な子だ。第二王子として立派に育ってほしい。
数年後、次は娘ができた。
名をマリアと名付けた。
妻によく似て天使のように可愛らしい女の子だ。
少し甘えん坊だが素直で感情が表情に出やすく見ていて飽きない面白い子だ。
少しずつ大人しくなって、ゆくゆくは立派な淑女となってほしいと思う。
大きくなったら美人過ぎてどこにも嫁がせたくなくなるかもしれないがな。
マリアが生まれた時はアレクがものすごく喜んでいた。
なにやら兄としての意気込みが強くなったらしく、常にマリアの周りに纏わり付くようになっていたのでガルシアに頼み、魔法の授業の回数を増やさせて少し遠ざけておいた。
ガルシアも研究が捗ると言って喜んでいた。
アレクの方は絶望に打ちひしがれた顔をしていたがな。あいつはもう少し王族としての自覚を持ってもらいたいものだ。
しかし、神の恩寵を受けているからか、5歳にして大人が読むような書を読みあさり、魔法まで使えるようになってしまった。いずれは王としてこの国民を支える者として更に成長してほしいと思う。
外見からいらぬ誤解を受けるかもしれない。そのためには心を鬼にして、アレクには試練を与えようと思う。
強き王であれば国民も納得し安心できよう。
魔法もいくつかはちゃんと使えるようになったようだ。
そろそろ、
魔法の次は剣術だな。
フフフ……。
王は書斎にて独り何か悪巧みをする少年のような顔をしていた。
サトゥーラ国の国王であり、アレクの父である。
息子アレクが生まれた時は本当に妻と共に感動で涙したものだ。
しかし、アレクが成長するにつれ問題が生じた。アレクの容姿が私たちに全く似ていないことだ。
これにはしばらくは悩み続けた。ついには妻の不貞を疑ってしまい、素直に話してしまうと彼女は涙を流しながら不貞はなかったと訴えてきた。
同時に彼女もなぜアレクの容姿が自分たちに似ていないのかはわからないとも言った。
巷では妖精の悪戯で子供を取り替えるといった伝承もあるが、さすがに素直には信じられなかった。
仕方がないので、私は王族に伝わる「血族顕彰の秘儀」と呼ばれる儀式があることを妻に伝えた。
彼女の同意を得た後、私たちは寝ているアレクを連れて王宮の奥にある王族しか入れない秘密の間に入った。
蝋燭の火が小さく照らす石の畳みには薄緑色に薄く光る魔法陣が描かれていた。
この魔法陣には2つの魔法石があり、私は小さなナイフを取り出し、刃の先端を自分の指先に近づけて軽く突き刺すと指先からぷくっと小さな球体状の血が出てくる。
そして床に描かれている魔法陣にある魔法石の一つにぽとりと一滴の血を垂らした。
すると魔法陣は赤く光り出した。
続けて妻の指先から血を出し、同じく魔法陣のもう一つの魔法石へと血を垂らした。
魔法陣の色は変化し、青白い光となって輝き出した。
この魔法陣にある魔法石は今、各々青白い光と赤色の光となって別々に光っている。
次は、いよいよアレクの番だ。
薬によって眠らされているアレクの小さな指先にナイフを当てる。少し触れただけで指先からぷくっと血が出てきた。
少ない血だが同じく魔法陣へと血を垂らした。
すると魔法陣全体が黄金色に輝き出した。
二つの魔法石も青白い光と赤色の光を保ったまま魔法陣のみ黄金色に輝いている。
二つの魔法石、これは私たちの魔力属性を示す光であり、この2つの光が失われることなく魔法陣が反応したということはアレクは間違いなく私たち2人の子であることを確かに証明していた。
もし不義の子であればどちらかの魔法石は光を失ってしまうからだ。
私は考えた。
魔法陣が光る色はそれぞれ魔法の属性によって変わるものだ。
王族といえど、国王と王妃の魔力属性のどちらかを引き継ぐため、その都度属性は異なっていく。
私は先代国王の魔力を引き継いでおり、火の魔力属性が強いため魔法石は赤く光る。
妻は水の魔力属性を有しており、回復魔法が得意なので青白く光る。
しかしアレクの魔力は全く異なっている。
わが子の魔力属性は黄金色。
黄金色とはすなわち全属性であり、どのような属性の魔法も容易く使えるということだ。
現在、黄金色の魔力を有する者はこの王国において存在しない。唯一、黄金の魔力を持っていたと記録されているのは王国が誕生した時の初代国王のみである。
そうであるならば、わが子アレクは偉大なる使命を与えられているのではないだろうか。
もしかしたらアレクの容姿は創世にまつわるハルモニア神の僕、精霊神の一柱の姿に模して生まれてきたのではないだろうか。
私は妻にそう伝えると彼女もそうかもしれないと納得してくれた。
私はなんという大きな罪を犯そうとしたのだろうか。よりにもよって精霊神の化身として生まれた我が子を不貞の子扱いしようとしたのだ。
私は素直に妻に詫びて許しを乞うた。
妻は私に優しく口づけをして涙を流して私の罪を許してくれた。
それからというもの、私は妻をさらに愛した。
おかげでまた愛の結晶を授かることができた。
アレクには弟ができた。名をイスタルと名付けた。
イスタルはアレクとは違い私たちによく似た容姿で育ってくれた。大人しくて聡明な子だ。第二王子として立派に育ってほしい。
数年後、次は娘ができた。
名をマリアと名付けた。
妻によく似て天使のように可愛らしい女の子だ。
少し甘えん坊だが素直で感情が表情に出やすく見ていて飽きない面白い子だ。
少しずつ大人しくなって、ゆくゆくは立派な淑女となってほしいと思う。
大きくなったら美人過ぎてどこにも嫁がせたくなくなるかもしれないがな。
マリアが生まれた時はアレクがものすごく喜んでいた。
なにやら兄としての意気込みが強くなったらしく、常にマリアの周りに纏わり付くようになっていたのでガルシアに頼み、魔法の授業の回数を増やさせて少し遠ざけておいた。
ガルシアも研究が捗ると言って喜んでいた。
アレクの方は絶望に打ちひしがれた顔をしていたがな。あいつはもう少し王族としての自覚を持ってもらいたいものだ。
しかし、神の恩寵を受けているからか、5歳にして大人が読むような書を読みあさり、魔法まで使えるようになってしまった。いずれは王としてこの国民を支える者として更に成長してほしいと思う。
外見からいらぬ誤解を受けるかもしれない。そのためには心を鬼にして、アレクには試練を与えようと思う。
強き王であれば国民も納得し安心できよう。
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