転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

文字の大きさ
9 / 77
幼少期編

父は子を想う

しおりを挟む
私の名はアレクサンドル・サトゥーラ。

サトゥーラ国の国王であり、アレクの父である。

息子アレクが生まれた時は本当に妻と共に感動で涙したものだ。

しかし、アレクが成長するにつれ問題が生じた。アレクの容姿が私たちに全く似ていないことだ。

これにはしばらくは悩み続けた。ついには妻の不貞を疑ってしまい、素直に話してしまうと彼女は涙を流しながら不貞はなかったと訴えてきた。

同時に彼女もなぜアレクの容姿が自分たちに似ていないのかはわからないとも言った。

巷では妖精の悪戯で子供を取り替えるといった伝承もあるが、さすがに素直には信じられなかった。

仕方がないので、私は王族に伝わる「血族顕彰の秘儀」と呼ばれる儀式があることを妻に伝えた。

彼女の同意を得た後、私たちは寝ているアレクを連れて王宮の奥にある王族しか入れない秘密の間に入った。

蝋燭の火が小さく照らす石の畳みには薄緑色に薄く光る魔法陣が描かれていた。

この魔法陣には2つの魔法石があり、私は小さなナイフを取り出し、刃の先端を自分の指先に近づけて軽く突き刺すと指先からぷくっと小さな球体状の血が出てくる。

そして床に描かれている魔法陣にある魔法石の一つにぽとりと一滴の血を垂らした。

すると魔法陣は赤く光り出した。

続けて妻の指先から血を出し、同じく魔法陣のもう一つの魔法石へと血を垂らした。

魔法陣の色は変化し、青白い光となって輝き出した。

この魔法陣にある魔法石は今、各々青白い光と赤色の光となって別々に光っている。

次は、いよいよアレクの番だ。

薬によって眠らされているアレクの小さな指先にナイフを当てる。少し触れただけで指先からぷくっと血が出てきた。

少ない血だが同じく魔法陣へと血を垂らした。

すると魔法陣全体が黄金色に輝き出した。
二つの魔法石も青白い光と赤色の光を保ったまま魔法陣のみ黄金色に輝いている。

二つの魔法石、これは私たちの魔力属性を示す光であり、この2つの光が失われることなく魔法陣が反応したということはアレクは間違いなく私たち2人の子であることを確かに証明していた。

もし不義の子であればどちらかの魔法石は光を失ってしまうからだ。

私は考えた。

魔法陣が光る色はそれぞれ魔法の属性によって変わるものだ。

王族といえど、国王と王妃の魔力属性のどちらかを引き継ぐため、その都度属性は異なっていく。

私は先代国王の魔力を引き継いでおり、火の魔力属性が強いため魔法石は赤く光る。

妻は水の魔力属性を有しており、回復魔法が得意なので青白く光る。

しかしアレクの魔力は全く異なっている。

わが子の魔力属性は黄金色。

黄金色とはすなわち全属性であり、どのような属性の魔法も容易く使えるということだ。

現在、黄金色の魔力を有する者はこの王国において存在しない。唯一、黄金の魔力を持っていたと記録されているのは王国が誕生した時の初代国王のみである。

そうであるならば、わが子アレクは偉大なる使命を与えられているのではないだろうか。

もしかしたらアレクの容姿は創世にまつわるハルモニア神の僕、精霊神の一柱の姿に模して生まれてきたのではないだろうか。

私は妻にそう伝えると彼女もそうかもしれないと納得してくれた。

私はなんという大きな罪を犯そうとしたのだろうか。よりにもよって精霊神の化身として生まれた我が子を不貞の子扱いしようとしたのだ。

私は素直に妻に詫びて許しを乞うた。

妻は私に優しく口づけをして涙を流して私の罪を許してくれた。

それからというもの、私は妻をさらに愛した。

おかげでまた愛の結晶を授かることができた。

アレクには弟ができた。名をイスタルと名付けた。

イスタルはアレクとは違い私たちによく似た容姿で育ってくれた。大人しくて聡明な子だ。第二王子として立派に育ってほしい。

数年後、次は娘ができた。

名をマリアと名付けた。

妻によく似て天使のように可愛らしい女の子だ。
少し甘えん坊だが素直で感情が表情に出やすく見ていて飽きない面白い子だ。

少しずつ大人しくなって、ゆくゆくは立派な淑女となってほしいと思う。

大きくなったら美人過ぎてどこにも嫁がせたくなくなるかもしれないがな。

マリアが生まれた時はアレクがものすごく喜んでいた。

なにやら兄としての意気込みが強くなったらしく、常にマリアの周りに纏わり付くようになっていたのでガルシアに頼み、魔法の授業の回数を増やさせて少し遠ざけておいた。

ガルシアも研究が捗ると言って喜んでいた。

アレクの方は絶望に打ちひしがれた顔をしていたがな。あいつはもう少し王族としての自覚を持ってもらいたいものだ。

しかし、神の恩寵を受けているからか、5歳にして大人が読むような書を読みあさり、魔法まで使えるようになってしまった。いずれは王としてこの国民を支える者として更に成長してほしいと思う。

外見からいらぬ誤解を受けるかもしれない。そのためには心を鬼にして、アレクには試練を与えようと思う。

強き王であれば国民も納得し安心できよう。

魔法もいくつかはちゃんと使えるようになったようだ。

そろそろ、

魔法の次は剣術だな。

フフフ……。

王は書斎にて独り何か悪巧みをする少年のような顔をしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...