転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

文字の大きさ
2 / 77
幼少期編

モブ王子ショック

しおりを挟む
異世界転生して3年経った。

少しずつ言葉がわかるようになり、もう歩く事もできる。まだオムツは卒業していないが、3年も世話されていたら嫌でも慣れる。
今じゃオムツ交換の時、下半身スッポンポンでも平気なもの。

食事はもう普通に食べられるので子どもにも食べられるパンとオムレツとソーセージみたいなシンプルな料理を毎日食べている。

今のところ平和な日を送っており、この国が争いもなく平和である事もわかった。

父は王様で母は王妃様、
夫婦仲は大変良くて、子供の目の前だというのにイチャイチャしているので正直ウザい。

だからか、

僕が3歳になる頃に弟が生まれた。
名前はイスタルだそうだ。

弟の顔立ちを見ると赤ちゃんだからか、生まれた時の顔はお猿さんみたいだ。でもそれだけではわからないが僕とは違って両親に似ていそうな顔立ちに見える。

なんで僕は、違うんだろう。
この気持ちは、

憂いなのか、
悲しみなのか、

薄暗く先行きも見えない、
希望も無い、
そうした憂鬱な気持ちが心を支配する。

そう、つい最近、僕は将来の夢(異世界ハーレム)が潰される大きな出来事があったのだ。

それは僕が2歳になった頃のこと、

僕は乳母と共に母の部屋に入ると、ベッドの近くに姿見の大きな鏡があった。

母のお気に入りの鏡なのだそうで、嫁入りの際に持ち込んだ私物らしい。かなり年季の入った鏡で木枠が丁寧に彫刻されており、植物の蔦のような木枠と小さな薔薇の花びらが所々に彫り込まれており、花びら一枚一枚丁寧に彫られている。

そんな綺麗な姿見の鏡を見て僕は今の自分の姿を見てみたくなったので鏡に近づいてみた。

(自分の顔ってどんなんだろ。ちょっと見てみよ)

父はイケメン国王、母は超絶美女。
きっと自分の顔は幼いながらも美しく整っているに違いない。

(どれどれ)

僕は鏡の前に立ち鏡を覗き込んだ。

すると鏡に映った自分の姿は綺麗に整った顔どころか、前世の子供の頃の自分の姿そのものだったのだ。

「ふ、ふぇぇぇぇぇぇ!?」
(な、なんでだーーーー!?)

違うのは髪の色と目の色だけだ。
顔や髪型もほとんど前世の顔立ちと同じだったのだ。

「う、嘘だ・・・・・・」

これは、

わ、悪い夢だ。

現実逃避してみたものの、試しにほっぺたをつねってみると確かに痛かった。

ぼ、僕の、
異世界ハーレムが・・・・・・。

大きくなったらイケメンになって、
数多くの美女たちと戯れる・・・・・・、
僕の、野望が・・・・・・、

打ちひしがれる自分の眼前には煌めくドレスを纏う幻の美女たちが優雅に舞い踊っている。

いつしか僕の姿は長身イケメンの大人の姿になっており、アレクの両腕には美女が絡み付き、目の前にはアラビアンな映画に出てくる褐色の美女が妖艶に微笑みながらアレクの持つグラスにワインを注いでくれる。

アッハッハ!!

キャッキャうふふ・・・・・・。

美女と戯れるナイスガイな僕。

そんな儚い妄想はヒビ割れた鏡の前に立つ己の姿と共に打ち砕かれた。

その鏡に映る己の姿と共に現実へと引き戻され、目を覆う涙と共に美女たちは蜃気楼のように消えていく・・・・・・。

くっ!

「う、うう、ううう・・・・・・」

その日、僕はガチで泣いた。

それから数日間、僕はショックのあまり、自室に籠もり、毎晩おねしょではなく涙で枕を濡らした。

それ以来、僕は鏡を見ていない。
自室にも鏡は置かないように頼んだほどだ。

自分の姿を知ってしまったこと。

それは今まで異世界転生で浮かれていた僕にはとてもショックだった。
それと同時に新たな不安がよぎった。

あまりにも両親に似ていないのだ。

おそらく母の不貞を疑われ、僕は成人前に廃嫡されてしまうのでないかと思っている。

最悪処刑、もしくは出家して教会に、運良く廃嫡とならなくても、この屋敷の片隅に幽閉されて一生を過ごすことになるのではないか。

「お先真っ暗じゃん」

いや、ここは異世界。
バッドエンドを選ばなければいいんだ!

王様じゃなくても自ら望んで冒険者になればモンスターを倒しながら生活していくことも出来るかもしれない。

強くなれば……。

なんとかして生きる道と術を身に付けなくては。

異世界ならではの唯一の希望が一気に絶望へと変わる。

しかし、僕は諦めない。

今のうちに強くなって生きる術を身に付けなくては。

弟が出来たのなら僕は国王にはなれないかもしれないし、たしかに今の僕なんかに王様なんて出来る気がしない。

だから強くなって独立しよう。
そうだ!異世界といえば魔法だろう。

剣と魔法をたくさん鍛えれば大丈夫なんじゃないかな。

この世界には魔法があるんだ!

一流の魔法使いになればこの世界でもきっと生きていける!

そういえば・・・・・・、

異世界にあるべき肝心の事を忘れていた。

異世界転生の定番中の定番。

そう、アレだ。

僕は手のひらを前に出して小さな声で言ってみた。

「すていたす・おーぷん」


・・
・・・。

シーン……。

「あ、あら?」

おかしいな。呼びかけ方が違うのかな?

「すてーたす!」

もう一度、僕は手のひらを前に出して大きな声で言ってみた。


・・
・・・。

「いでよ!すていたす!」

「のうりょくみたい!」

「のうりょくのまどおーぷん!」


・・
・・・。

「すてーたすでろ!」
「すてーたすみたい!」
「すてーたすみさせて!」

「おねがい!」
「おねがいしますぅ!」



シーン……。

う、うそだ。

ここ、異世界だろ?
なんで出ないんだ?

あの窓というか、あれ、ゲームっぽいやつ、
ウィンドウだっけ、カーソル?
条件が必要とか?
ひょっとして、ステータスを見られるようになるにはレベルとか必要とか?

それともそもそも存在しないのか?
そんなの異世界転生じゃないじゃん!!

いや待て、
結論を急ぐな、

とりあえず、まだ結果はわからないだけかもしれない。

どうしよう……、

は!そうだ!
き、気合い、気合いだ!

「気合いを入れたらなんとかなるかもしれない!」

僕は気合いを込め、拳を握りしめて、できる限り大きな声を出した。

「すてぇぇぇたぁぁぁあす、うぉぉぉぉぷぅぅぅんんん!!!」

ガチャ、

タイミング良くドアが開き、専属メイドのサーシャが部屋へと入ってきた。

「アレク様、お食事の時間になりましたのでお迎えに上がりました。」

僕は手を前に出したままの怪しい姿勢で固まってしまうと、そのまま彼女と目が合った。

見つめ合う二人。

シーン・・・・・・、

僕はその後すぐ羞恥で真っ赤になって涙目になってしまう。

メイドのサーシャは空気を読んだのか、すぐに後ろへと振り返る。

「ア、アレク様、外でお待ちしておりますね」

サーシャはそう言ってスーッと部屋から出ていってくれた。

バタン、

扉が閉まると僕は一人でまた絶望に打ちひしがれた。

「ウッ・・・・涙が」

その後僕とサーシャはお互い、気を使いながら両親の待つ食事の間へと移動した。

しばらくアレ(ステータス)は封印しよう。

僕は心からそう誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...