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2、居候が3人
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しおりを挟む「お前あっち行けよ」
「ここは俺の場所だ!」
「なあおかわりってあるのか?」
朝食が賑やかになった。今までは俺、敏之、二郎丸の3人だったが今日から2人増えた。いつも通り3人で食べようとしたら重孝と鉄が乱入してこの様だ。
二郎丸にあっち行けよという重孝。同じくらいの年齢で仲良くできるかと思ったら全然そうではない。なぜだろう、同族嫌悪かな。
2人とも少し根は真っ直ぐなんだけど、少しひねくれている。あ、重孝が二郎丸を無理やり退かした。
「おい、何するんだ!」
「ちょっとくらいそっち詰めろよ」
「お前が割り込んで来たんだろうが!」
「真人ー、そこのお茶取ってくれ」
さっきからずっとこの調子だ。しかも鉄は自由すぎるだろ。はいはいと言いながらお茶を渡す。
「なあ、鉄と重孝は今日どうするんだ? 俺はご飯食べたら二郎丸に算学を教えるんだけど」
「算学を教えるのか? じゃあ俺もそれ聞く」
「お前は来るな!」
「俺は城下町をぶらぶらしてくる」
二郎丸は重孝と一緒に算学を受けるのは嫌みたいだ。でも今の様子を見る限り当たり前か。それで鉄は城下町に行くのか。俺も行きたい。
「二郎丸、どうせなら重孝も参加させてやれよ。こいつもこいつで暇だし。一応客人扱いだけど、鉄みたいに自由に動けないから」
「そうだよ二郎丸。真人の言う通りだ。しばらくの間だと思うし、少しくらいならいいんじゃない?」
俺の言葉に敏之が賛成する。二郎丸は渋っていたが、最終的には許したようだ。はあ、俺の負担が増える。
「じゃあ食べて少し経ったら俺の部屋に来いよ。勉強中にケンカしたら宿題を増やすからな!」
「「えー!」」
「ごちそうさまでした」
声を上げている2人を無視して、膳を下げてもらう。頭をシャキッとさせようと、算数の前に井戸に顔を洗いに行った。
バシャバシャと桶に入れた水で顔を洗う。
「あー、すっきりした!」
「……で、あるから二郎丸様に……」
「今度の……に」
「?」
建物の影で誰かが話している。そんな隠れて話さなくてもいいのに。ま、関係ないやとそのまま部屋に戻った。
「あー、眠い」
「お疲れ真人。どうだった?」
つい先程、授業も終わり今は縁側でだらんとしている。そこで通りがかった敏之とおしゃべりをしていた。
「ああ、2人ともちゃんとできてたよ。なんかライバル……いや、競争心が芽生えたらしくてすごく集中して聞いてた」
「それはよかった。ところで真人、今の斎賀家がどうなっているか知っている?」
「ん? なんかあったの?」
「ちょうど真人が八津左にいたときの話なんだけどね。前から、ときどき話は出ていたんだけど、今回の件でまた再発しちゃって」
「再発? 何が?」
「家督争い。二郎丸とのね。普通は長男が継ぐけど、有力な家臣たちが自分の言うことをきく都合のいい当主を立てようとすることがあるんだ。今回がそれ。真人が敵に捕われてしまったのを私の力不足と言って、かなり責めてきてる。まあ、それも確かなんだけどね」
「なんだよそれ! 二郎丸は敏之のことを慕っているじゃないか。しかもあれは俺が逃げ遅れただけだし、敏之のせいなんかじゃない! 二郎丸は知っているのか?」
「いや、まだよくわかっていないと思う。自分に優しくしてくれる家臣が増えたと感じるくらいかな」
「大丈夫なのか、それ……」
「うーん、どうだろう。父上は私を指名してくれてるんだけど。それで本題なんだけど、過激な人たちが襲ってくるかもしれないんだ。だから、私とよく一緒にいる真人も気をつけて」
「襲われる!?」
「そう。鉄さんとかに守ってもらったほうがいいかも」
襲われるという言葉に驚いたが、井戸に行ったときのことを思い出した。
「そういえば、朝に井戸行った時に建物の影でこそこそ話している人たちがいたわ……」
「ほんとに? 何か企んでいるのかも」
「くそっ、あの時聞いていれば……。敏之、気を付けろよ」
「うん、真人も気をつけてね」
「おう」
そう言って敏之は歩いて行った。戦国時代は怖いな。対策立てたほうがいいのか……? どうすればいいか考えていると、鉄が帰ってきた。
「鉄、城下町はどうだった?」
「活気があっていいねぇ。おいしいものもいっぱいあったし。はあ、ここは眠たくなるな……」
話しながら俺の隣に寝そべる。全く、居候が増えただけだ。重孝は何かは知らないが二郎丸と対決してるみたいだし。
「もう、鉄も何かしなよ。あ、俺の家来なら護衛してくれない? 今危ないらしいんだよね」
「知ってる。安心しろ、ちゃんとご主人様は守ってやるから」
「ふざけないでちゃんと守ってよ? ……え、知ってるの?」
「家督争いのことだろう? 家臣たちが話してたぜ。さらに、俺は真人の知らない情報を知っている」
「え? なに?」
「近日中に、ここに宣教師が来るらしい。南蛮人の客人になめられないようにする必要がある。多分、家督争いで仕掛けてくるのはそこだ」
「どういうこと?」
「つまり、次期領主だからと言って敏之に接待を任せる。それで、何か仕掛けてそれを台無しにすればいい。大失敗をすれば、敏之よりも二郎丸に家督を、という声が多くなる」
「おお! あったまいい。そういうことか」
「だからその時は真人もついて行ったほうがいいぜ? 何かあったら手助け出来る」
「そうだな。あとで敏之に話しとくよ」
「ああ。じゃあ、家来に褒美をくれ」
「褒美?」
「そうだ。ご主人様の知らないことを伝えて、さらに当主様の助けになることを言った」
「でもあげれるものなんて何も……」
「そんな大したものじゃなくていい。今日の夕飯でおかずを一品くれ」
「それだけでいいのか? わかった」
安いやつだと思いながら、おしゃべりを続けた。
ちなみに、夕飯の時間どれがいいか聞いた途端にメインの焼き魚を取られ、俺はほぼご飯と味噌汁しか食べれなかった。
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