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1、戦国時代へ
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しおりを挟む3人で斎賀領への道を進む。
「本当に出てこれちゃったよ……」
「明日の朝には若様がいねえって大騒ぎだろうな」
「別にいい。ずっと斎賀にいるわけではないし、正式に訪問すれば俺を雑に扱わないはずだ」
どこか気楽な感じで会話をしている。当主の息子が居なくなったってかなりの大事ではないのだろうか? そして、鉄はどこまでついて来てくれるのだろう?
「ねえ鉄、どこまで一緒に来れるの?」
「そうだな、まだはっきりとは決めてないがお前らを城に届けるまではついていこうかな」
「ほんと?なら安心した。見かけに寄らず強いからな」
「おい、見かけに寄らずってなんだよ」
こうして軽口をたたいているが、鉄は強い。城を抜け出すときに塀の外にいた人を一瞬で地面に倒した。このままじゃ見つかる! と息を潜めていたら、ラチが開かないとでもいうように1人で出ていきすぐに戻ってきた。
おかげで塀をよじ登って脱出できたが。忍者というだけはある。
鉄がいてくれるなら夜の八津左も安心だ。
「もう少し進んだら仮眠とってそのまま斎賀まで歩くぞ」
「「わかった」」
鉄の言葉に返事をして、早足で暗い道を歩き続けた。
ーー2日目。やっと斎賀領に入ることができた。出陣してから約1ヵ月ほどだがすごく久しぶりに感じる。
「やっと着いた! もう足が動かない」
「真人は体力がないな。それにしてもずいぶん賑わっている」
「八津左とはえらい違いだ。真人、城はどこだ?」
「えーと、この道をまっすぐ行って左に曲がった所」
重孝も鉄も周りをキョロキョロと見渡しながら歩いている。なんだか、俺が初めて城下町に来た時の反応を見ているみたいだ。
こうしてみると、八津左の町がいかに寂れていたかがわかる。同じ政策をしたのにこうも両極端になるなんて、領地を治めるって難しいんだな。人ごとのように思いながら、懐かしい道を通るとだんだん屋敷が見えてきた。
「あ、あれ! あそこ!」
「でっかいなー」
「よし行くぞ、鉄、真人」
「あ、まて重孝!」
1人でどんどん先に進む重孝を追っていく。変に行動力があるんだよな。
「たのもー!」
「なんだお前は」
「俺は羽川左衛門重孝だ! ここの当主に取り次ぎを!」
「何言ってんだおめえ。嘘でも本当でも、んな怪しい奴を入れられるか」
「俺は羽川の次期当主だぞ!」
あー、やりやがったよ。鉄のなんて指をさして笑っている。敵の息子なんて言って入れる所があるか。しょうがない。
「すみません、誰かに田辺真人が来たと伝えてもらえませんか?」
「? おう、わかった」
「お願いします」
門番の1人に頼む。これで誰か小姓さんか敏之に伝わるだろう。
「それで、そこの男は誰だ?」
「俺? 俺は南部鉄。田辺真人の家来だ!」
「そうか」
「は? 何言ってるの!? なんで!?」
急に鉄がとち狂ったことを言ってきた。いつ俺の家来になったんだよ。給料なんて払えないって。両肩を掴んで揺さぶっていると、なんとも気の抜ける答えが返ってきた。
「だって面白いし。一緒にいたら退屈しないかなって」
「あー、もう! そんなんで!」
「真人! こやつらが中に入れてくれぬ!」
「当たり前だ! 本当のことを言え!」
「これだけ怪しいとなぁー」
自由すぎる2人を宥めながら、門番の人に苦笑いをする。
ぎゃあぎゃあと騒いでいると、中から誰かが出てきた。
「真人! 無事だったか!?」
「敏之!」
出てきたのは敏之だった。
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