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1、戦国時代へ
12、敏之side
しおりを挟むいつも通り屋敷を抜け出し、あの小屋へと向かう。腕に菓子を抱えながら。
真人は不思議なやつだ。あの日、初めて会った時も驚いた。私のことを知らないとはいえ、肩に手をかけられたりしたのは初めてだ。
同い年くらいの人が周りにいないため、いつも大人達に囲まれて育ってきた。だからあの態度が嬉しく、なかなか身分を言えなかった。菓子も子供に餌付けをしているみたいで、ついつい持っていって甘やかしてしまう。
弟の二郎丸にそっくりだ。思い出して軽く笑ってしまう。
真人ともっと一緒にいたいがどうすればいいのか。もちろん、楽しいからというだけではない。本人はまるでどうでもいいことのように話しているが、その口から出てくる言葉は知識の塊だ。
「算数とか数学とか大っ嫌いで~。いつ使うんだよって話! その時間歴史に当てた方がよっぽど為になってたわぁ。今更だけど」
「算学ができるのか。歴史は今からでも歴史書を読んでみれば良い」
やはり男というのは戦いの話が好きなもので、実際の戦場は悲惨だが、武勇伝という言葉もあるように戦場での活躍に憧れを持つ。
私達も例に漏れず、いつの間にか名前を伏せて家臣の活躍を真人に話していた。名乗りを挙げながら敵陣に駆けていき、見事敵将を打った話だ。真人もすごいなぁと感心しながらも、
「なんで名乗りを挙げながら1人で突っ込んでいくんだろうね。少人数でもまとまって戦えば勝ちやすいはずなのに。そういえばさ、元寇の時も明日が集団戦法に対して個人だったから苦戦したんじゃなかったっけ? 絶対ある程度まとまって戦った方が勝ちやすいのに。個人で手柄を立てても戦に負けてたら意味ないじゃん」
「でも手柄のために1人で戦う人は多いよ」
「うぅーん、そういうものか。まあ、戦は戦わずに勝つのが1番って言うしね。自軍の損失がないのが1番いいから」
手を顎に当てフッとなにやら変な格好をしているが、話したことは目からうろこだった。戦わずにして勝つ? そんなこと出来るはずがない。たが実際に言葉は説得力があった。
それに元寇は農民が知っていることなのか?武士や、学を学ぶ余裕のある裕福な商人しか知らないものだと思っていたが。
「やっぱり真人は面白いね」
「え? そう?」
話すこと全てが興味深い。私の知らないことを知りたい。このことは少し父上に相談してみよう。今打開策が見つからず、両軍とも膠着状態と聞く。自軍の損失なしに勝つには……。
「あ、この間さ、ご飯の味が薄くて限界になっちゃって、お婆ちゃんとお爺ちゃんに即席なんちゃってチャーハンを作ったんだけど。いやぁ俺も唯一って言っていいぐらいこれだけは作れるんだけど、フライパンがないのが大変で……」
「なにそれ! ちょっと詳しく」
やはり面白い。チャーハンとは? フライパンとは。
真人と話すのが楽しい。これからももっと教えてくれ。よろしく、友よ。
後日、料理番に作り方を説明して首を傾げながらも作ってもらうと、一時期ちゃあはん飯が斎賀家で流行ったような。
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