高校生、戦国を生き抜く

神谷アキ

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1、戦国時代へ

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 部屋の中に入ると、敏之は座って読書をしていた。ぐるっと見渡すと、この部屋には沢山の本が置いてある。こちらを見た敏之に、二郎丸の肩を掴み前に押し出して言う。


「人を侵入者扱いだよ、こいつ」

「うろうろしていて怪しかったからだ!」

「まあまあ2人とも、落ちついて。もう知り合ってるなら話が早いや。突然で申し訳ないけれど、頼みたいことがあって。真人、二郎丸に算学を教えてくれない?」

「算学? 俺が?」

「うん、真人って確か算学ができたよね? できたらでいいんだけどそれを二郎丸に教えて欲しくて」

「別にいいけど。敏之は?」

「私はある程度出来るし、真人にいてもらうから大丈夫。二郎丸、いい?」


 二郎丸はえぇ……と言いながらも断らない。敏之の言うことは聞くらしい。


「あ、そういえばさ、さっきの広間で初めて敏之のああいう口調と態度聞いたけど、違和感がありすぎた」

「兄上はいつもしっかりしてるぞ!」

「でも、あの小屋で会ってた時はもっとくだけた口調だったよな。広間でも少しくだけてたけど、やっぱ次期当主だからか?」

「あ、それも聞いたんだ。うん、ああいうところはあまり迂闊なことは言えないしね。次期当主としてしっかりした態度を見せていないと、足元をすくわれるから」

「やっぱり大変なんだな武将って」

「今まではね。これからは真人がいるから」

「え、でも俺ずっと居るかはわからないよ? しかもプレッシャーがすごい」

「ぷれっしゃー? うんわかってるよ。でも居てくれるだけでも嬉しいから」

「二郎丸は兄上がいてくれて嬉しいです!」


 敏之は二郎丸の頭を撫でながら本を片付ける。片付けを終えたところで、


「よし、2人とも夕餉は? 今日はここで食べる?」

「はい! ここで食べます!!」

「あ、いいのか。じゃあ俺も」


 後は楽しく夕食の時間だった。やっぱりここはご飯もおいしいね! 三杯もおかわりしちゃったよ。二郎丸も張り合ってきたけど、途中でお腹を押さえウンウン唸りながら諦めていた。食べすぎ。


「ねえ明日は城下町に行かない? 真人って今日が見たの初めてだよね?」

「あぁ、いいなそれ」

「俺も行きたいです!」

「二郎丸は稽古があるでしょ?」

「はは、ドンマイ!」

「どんまい? 真人ってたまによくわからない言葉しゃべるよね」

「あ…あ、そうか?つい口に出ちゃって」


 横文字が伝わらないって結構不便じゃね? 二郎丸に算学教えるついでに一緒に教えてやろうかね。
 それにしても城下町かぁ。通り過ぎただけだったけど、賑やかだったなあ。

「あ、俺お金持ってない」

「それは平気。今回は俺が出すよ。なんなら雰囲気を楽しむだけでも楽しいし」

「いいのか?」

「うん、友達と城下町に行くのは初めてだから! 行くとしてもじいか、政成だったから。あ、でも誰にも言っちゃだめだよ」

「って抜け出すのかよ! 小屋にも抜け出してきているみたいだったし、ここ警備ゆるいのか!?」

「抜け穴知ってるから。それに私が抜け出すのはいつものことだし」

「次期当主がいいのかよそれで……」


 敏之の脱走癖に驚きながらも、明日を楽しみにわいわいとしながら夕食を終えたのだった。
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