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1、戦国時代へ
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しおりを挟む「ねえ、おうまさんやって! おうまさん!」
俺はさっきからこの女の子に言われて馬になりきっている。キャッキャッと楽しそうにはしゃぐ子供は、敏之の妹だそうだ。
村の子供に好評だったからやってみたけど、女の子でも気に入ったらしい。
将来はおてんばな女の子になりそうだ。
「ひっっんて……」
声がしてふと横を見ると、敏之は隣で腹を抱えて笑っている。そんなに可笑しかったか?
「ひひっんって……ひひーんだってっ!!」
……さっきの俺のことだ。通された部屋に小さな女の子が来たんだけど、モジモジしてて近寄ってこなかったんだよね。
だから女の子を抱き上げ背中に乗せてあげた。そして「ひひーん」と馬の鳴き声を真似て声を出し部屋の中を移動した。
女の子は最初は驚いてたみたいけど、楽しかったらしく今も声を出して笑っている。
(それにしてもこの子の着物綺麗だな。敏之の親ってえらい人?)
「まえー! 次はみぎー!」
考え込んでしまっていたのか、かわいらしい髪飾りを揺らしながら進行方向を伝えてくる。小さな手でパシパシと背中を叩かれても、可愛いだけだ。
「瀬奈、はなしておやり。そろそろ疲れてきただろう。梅はどうしたの?」
「わかんない!おにいちゃまの声がしたから来たの」
笑いも収まったのか、敏之が話しかけてくる。
(梅って誰だろう。ていうか瀬奈って名前なのか)
ろくに名前も知らず遊んでいたと今更気づいた。
ちょうどその時、
「失礼いたします。敏政様が敏之様とお連れの方をお呼びです」
障子の向こうから声が聞こえた。背中から瀬奈を下ろし、敏之に続いて部屋を出る。
すると、小姓らしき人と少しふっくらした女の人がいた。
「瀬奈様!」
「楽しかった!」
そう言って女の人に駆け寄っていく瀬奈。
「だれ?」
「瀬奈の乳母である梅だ」
「これは敏之様。瀬奈様と遊んでいただき、ありがとうございます」
頭を下げながら敏之に礼を言うが、
「いやいや、瀬奈の相手は私ではなくこちらの真人がしていた」
「そうなのですね。真人様、ありがとうございます」
「いやいや、とんでもないです!」
急に話しかけられ、さらに丁寧に頭を下げられて恐縮しながら答えた。
「私達は呼ばれているから、瀬奈をよろしく頼む。では行こう」
「はい。失礼いたします」
「またあそんでね!」
「また今度な」
最後にそう言って瀬奈の頭をなで、敏之の後を付いていく。俺まで呼ばれたって一体何なんだ。
小姓も俺たちを先導しながら、チラチラと見てくる。服装だって制服は着てないからおかしくないはずだし、変なところはないはずだ。
「こちらでございます」
たどり着いたらしく、障子の横で2人の人が控えている。
「敏之様たちがお見えです!」
その声と同時に障子が開かれたが、目の前の光景に思わず絶句してしまった。
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