高校生、戦国を生き抜く

神谷アキ

文字の大きさ
上 下
2 / 53
1、戦国時代へ

2

しおりを挟む
 


 なんだこれ。頭がガンガンする。
 だるい身体を無理矢理起き上がらせ、自転車を直そうとする。

(あーそういえば水溜りでビショビショ
だわ。さっさと帰ろ)

 そう思い、自転車をつかもうとするが見当たらない。しかもなんだか周りが明るい。
 目がおかしくなったかと頭を振ってしっかり辺りを見回すが、今度は自分の頭がおかしくなったのかと思った。

 アスファルトの道路にいたはずが、自然豊かな土の上に座っている。しかも遠くには林のようなものが見える。ここら辺は少し閑散としているが住宅街だったはずだ。


「は…………?」


 景色を見て呆然と地面に座っていると、向こうから誰かが歩いてきた。昔の人の旅装束のような格好をしてなにやら大きな荷物を担いでいる。


「なにあの格好……」


 訝しく思いながらも、混乱した頭を整理しようと話しかけることにした。


「あのーー‼︎すみませーーん‼︎」


 立ち上がりながら大声を上げると、あちらも気づいたようだ。ちょっと小走りしながら近づいていたが、はっきり見えてくるうちにだんだんと足が止まる。


「え、草履? 本物?」


 違和感がじわじわと出てくる。さっきは遠くからでわからなかったが、まるでその服で生活をしているみたいだ。

 去年、修学旅行で見た着物や、昔の町の風景はスタッフさんも清廉されていて衣装もピシッとしていた。

 この人も宣伝でもしているのかと思ったのだが、どう見てもおかしい。草履は少し擦り切れ、服は肩のところに何かの染みが付いている。

 マジマジと観察していると、声を掛けられた。


「おめぇ、こんなところで何してんだ。奇妙な格好をしているが、かぶき者かい?」

「え、いや制服ですけど……。おじさんは何してるんですか?なんかリアルですね」

「りある?せいふくってなんだい。これから城下町にいくんだよ。ちょいと用があって西の方に行ってたんだがやっと帰ってこれたのさ」

「城下町?」

「そうさ。斎賀のお殿様が治めておられる。工芸に力を入れてくれたおかげで、わしら職人の待遇が良くてな」


 そう言ってガッハッハッと笑っているが、俺はそれどころではなかった。
心臓がバクバクしている。城下町?お殿様?何言ってんだよ。そう言いたいが、おかしいのは自分だと薄々気づき始めてもいる。

 生活感のある服、制服を知らない、城下町。お殿様。何より周りの景色……。信じたくなくて俯いていると何か勘違いしたのか、


「さぼってねーで、日が暮れると危ないから早く家に帰れよ!気をつけろよ!」


 そういって背中をバシバシ叩いて歩いて行った。
残された俺は、しばらくそこから動けなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」にも掲載。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」  信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。  私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。 「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」 「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」 「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」  妹と両親が、好き勝手に私を責める。  昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。  まるで、妹の召使のような半生だった。  ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。  彼を愛して、支え続けてきたのに…… 「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」  夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。  もう、いいです。 「それなら、私が出て行きます」  …… 「「「……え?」」」  予想をしていなかったのか、皆が固まっている。  でも、もう私の考えは変わらない。  撤回はしない、決意は固めた。  私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。  だから皆さん、もう関わらないでくださいね。    ◇◇◇◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです。

処理中です...