お伽の夢想曲

月島鏡

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第四章 祈りを繋ぐ道

第五十二話 氷結の終焉

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 倒壊したレアルの家もとい『白雪の森』本拠地付近にて。
 真の力を取り戻した『白雪姫』と『魔王』の決戦が始まった。
 『白雪姫』ーーレアルが自身に放ってきた無数の氷柱を見て『魔王』ーーヘルハウンドは

「うらっっ‼」

 怒号と共に紫黒色の獄炎の息吹を吐き出し、全ての氷柱とレアルを焼き尽くした。
 地面に着地し、燃え盛る炎を見て、ヘルハウンドは嬉々として笑う。一瞬で勝利する事ができたからーーではなく

「本気の炎、防ぎやがったか」

 本来の力を取り戻したレアルが、自分が楽しめるだけの実力を持っている事を確信したからだ。
 ヘルハウンドの呟きの直後、紫黒色の火柱は凍りついて砕け、その中から無傷のレアルとアクルが現れる。
 炎の息吹に呑み込まれたにも関わらず、涼しい顔でいるレアルを見て、ヘルハウンドはその笑みをより凶悪なものにする。

「自分だけじゃなく仲間まで守るとは、流石だな『白雪姫』。今のお前となら楽しめそうだ・・・が、ここは狭すぎる。それに」

 ーーさっきから雑魚二匹がこっちを見てやがる。

 戦いが始まった時からヘルハウンドは何者かの視線を感じていた。
 大した実力を持たない二人組が自分達の戦いを観察している。吹けば飛ぶであろう有象無象。その者達が何をした所で自分への影響は皆無だろうが、これから始まる戦いに水を差されるかもしれないと思うとヘルハウンドは気が気でない。
 ようやく出会う事ができた好敵手との戦いを邪魔されたくはない。故にヘルハウンドは戦いの場を移す事を望み

「いいよ」

 レアルもそれを受け入れる。
 この場で本気を出せば仲間を巻き込む可能性があり、『繋界鏡』を破壊してしまう恐れもある。
 レアルが倒壊した家を見ると、残骸の中にヒビが入った『繋界鏡』が紛れ込んでいた。

 鏡面に傷が付いているものの、魔力自体は感じるため、まだ『レーヴ』と『プリエール』を繋ぐ機能は残っているのだろう。しかし、もしも完全に割れてしまったら、今『プリエール』にいるマリ、アルジェント、リリィ、ライゼが一生『プリエール』から戻ってこれなくなるかもしれない。それだけは絶対に避けなければならない。

 互いの利害が一致し、レアルは背中から蝶のような翅を生やして浮かび上がり、ヘルハウンドは足に溜めた力を解放して跳躍する。
 その場から離れる前にレアルはアクルに顔を向けて

「アクル、皆の応急処置をお願い。まだ、皆・・・生きてる仲間もいるから・・・お願い」

 皆の応急処置を頼んで、どこかへと飛び去っていき、ヘルハウンドも虚空を蹴ってその後を追っていった。
 残されたアクルは誰もいなくなった空を見上げて

「分かりました。皆の事は任せてください」

 ただ一言そう呟いて、重傷を負った仲間達の応急処置を開始した。







「この辺りでいいかな」

 人気がない場所にレアルは降り立ち、ヘルハウンドも大きな音を立てて地面に降りて、辺りを見回す。

「ここは?」

「魔獣が頻繁に現れる立ち入り禁止区域だよ。今はそんなにいないけど、繁殖期になると恐ろしい数の魔獣が現れるの」

「そうか。理想的な狩場だな。いや、そんな事はどうでもいい」

 ヘルハウンドは臨戦態勢に入り、禍々しい赤光を宿す目を見開く。
 それに応えるようにレアルも両手の中に作り出した結晶剣を握りしめて

「始めようか」

「ーーうん」

 両者同時に前に飛び出し、互いの距離を一瞬で埋めた。
 黒い拳と透き通る二振りの氷剣がぶつかり合って、耳を劈くような金属音が周囲に響き渡り、地面を覆う雪が舞い上がる。
 舞った雪が風に吹かれて消える前に、ヘルハウンドはもう一本の豪腕を振るい、レアルの頭を壊そうとするーーより早く、レアルが透明な翅をはためかせて天高く舞い上がる。


 眼下のヘルハウンドを見下ろしながら、レアルが左手に持つ氷剣ーー結晶剣クリスタルソードを掲げると、レアルの周囲に千は下らない数の氷柱が浮かび上がる。
 夥しい数の氷の凶器の切先が自身に向けられているのを見て、ヘルハウンドが目を見開いた直後、レアルが結晶剣クリスタルソードを振り下ろすと共に氷柱の雨が降り注いだ。

「はぁっーー‼︎」

 降り注ぐ氷柱を消す為に、ヘルハウンドは顔を振りながら紫黒色の炎を吐き出す。
 炎に呑まれた氷柱は瞬く間に溶けてなくなったが、数が多すぎる。消せた氷柱の数は百数十本。残る氷柱は一つ残らずヘルハウンドに襲いかかる。
 氷柱から逃れる事は無理だと踏んだヘルハウンドは、地面に手をつき、自身の前方に巨大な氷の盾を作り出して氷柱を防ぐ、が

「もう壊れてきやがったか」

 氷の盾にはたった数秒で亀裂が生じる。
 崩壊まで秒読みに入った盾の代わりに、二枚目の盾を錬成しようとした時、ヘルハウンドは背後に大きな気配を感じた。咄嗟に後ろを振り返った瞬間、強い衝撃が叩きつけられ、ヘルハウンドは自らが作り出した氷の盾をぶち抜き、氷柱の雨を浴びながら吹き飛んだ。

「・・・ってぇな」

 倒れた先で、ヘルハウンドは低い声でそう呟いてから、ゆっくりと立ち上がる。
 氷柱の嵐の中を転がった所為で全身に氷柱が突き刺さり、ヘルハウンドはまるで針鼠のようになっていた。
 ヘルハウンドは上を向いて炎の球を吐き出すと、跳躍して炎球にぶつかり、その中を突き抜けて身体に刺さった氷柱を溶かす。
 それから前を向いたヘルハウンドの目に映ったのは、上半身しかない巨大な女の氷像だった。

「随分とでけぇ人形だな」

 不遜にも自分を殴り飛ばした下手人の正体を把握したヘルハウンドは、虚空を蹴って氷像に接近する。
 氷柱の雨は止んだ。移動を遮るものがない今が氷像に近付くチャンスだ。

「らぁっっ‼︎」

「ーーーー」

 氷像との距離をゼロにしたヘルハウンドは、氷像に向けて拳を放つ。それに応えるように氷像も拳を突き出し、二つの拳が激突して大気が揺れる。
 正面から氷像と拳をぶつけ合わせたヘルハウンドの拳に衝撃が伝わり、痺れが生じる。

 力だけでいえば、氷像はヘルハウンドと同等のものを持っている。それを理解したヘルハウンドは、大きく息を吸って、肺の中に溜めた炎を、全力で氷像に吐きつける。
 氷像は炎に包まれ、音を立ててその場に倒れた。
 人形の次は『白雪姫』だと、レアルの姿を探そうと氷像から目を離した、その時

「ぬっ⁉︎」

 氷拳の鉄槌がヘルハウンドに振り下ろされた。
 予期せぬ大質量の一撃をなんとか片手で防ぎ、ヘルハウンドがもう一度背後を見ると、氷像の冷たく無機質な瞳と目が合った。
 氷像は溶けてはいなかった。
 炎に包まれても尚、欠片もその形を損なっていない氷像の強度にヘルハウンドは感心して目を細める。それから氷像の拳を押し返そうとした時、ヘルハウンドの首筋に悪寒と鋭い痛みが走った。

「ほぉ・・・」

 ヘルハウンドは更なる感心を得る。
 悪寒と痛みの正体は凍てつく剣閃だった。眼前に現れたレアルが結晶剣クリスタルソードでヘルハウンドの首に切れ込みを入れている。
 意識の全てを結晶剣クリスタルソードに集中させて、レアルは剣そのものになる。
 首を刎ねれば、さしものヘルハウンドも動けなくなる筈だ。この一閃で悪夢を断ち切る。強い決意を以て振るわれた剣、その一閃は、しかし

「ふん‼︎」

 首を完全に刎ねる前に掴まれて止められ、結晶剣クリスタルソードは握り壊される。
 折った結晶剣クリスタルソードを捨てて、ヘルハウンドはレアルに手を伸ばし、レアルは伸ばされた手から逃げるように後退し、氷像ーー純白の雪天使ブランネージュアンジュに命じる。押し潰せと。
 レアルが心中で下した命令に応え、純白の雪天使ブランネージュアンジュは拳を振るい、本気でヘルハウンドを押し潰そうとする。

「おっ⁉︎ 急に、強くーー‼︎」

 身体中の骨が軋み、足が地面にめり込む程の重圧をかけられながらも、ヘルハウンドは耐え、純白の雪天使ブランネージュアンジュの拳を押し返す。
 もう一度拳が振り下ろされる前に、ヘルハウンドが純白の雪天使ブランネージュアンジュから離れると、すかさず舞い戻ってきたレアルがヘルハウンドに袈裟斬りの斬撃を振るう。

「ちぃっ‼︎」

 胴体目掛けて振われた斬撃をヘルハウンドは身体を逸らして避ける。
 避けた反動を利用してヘルハウンドはレアルの顎を蹴り上げようとするが、蹴りに合わせてレアルが振り下ろした結晶剣クリスタルソードの斬撃に蹴りを止められる。

「くっ、うぅ・・・‼︎」

 ヘルハウンドの蹴りを防いだレアルは、心身を削られるような気分を覚える。

「ぐ、ぐぐぐ・・・‼︎」

 ヘルハウンドと戦い、攻撃を防ぐ事は綱渡りの所業だ。一歩間違えれば真っ逆さまに落ち、呆気なくその命は潰えてしまう。
 そんな危険極まりない綱渡りを一人で渡り切る事は不可能に近い。だからレアルは自分以外にも戦ってくれる存在を作り出したのだ。

 剣と蹴りの鍔迫り合いを繰り広げるレアルとヘルハウンド。純白の雪天使ブランネージュアンジュは両者の頭上に移動すると、本気の殺意を込めてヘルハウンドの脳天に拳骨を打ちつけた。

「がっ、ごーー‼︎」

 頭蓋に衝撃が伝わり、脳が震え、ヘルハウンドの平衡感覚は狂う。
 足がふらつき、倒れそうになるヘルハウンド。その胴をレアルは結晶剣で一文字に切り裂いた。

「がっ、はーー‼︎」

 まっすぐな切創から血が飛び出し、ヘルハウンドは痛みに眉をひそめる。
 衝撃の影響と刻まれた傷の痛み、それらが消えぬ内に、レアルはヘルハウンドに追い打ちをかけようと結晶剣クリスタルソードを振りあげるが

「ぐぉらぁっ‼︎」

 衝撃で受けた影響も、感じる痛みも精神力で無視して、ヘルハウンドはレアルの鳩尾に拳を撃ち込んだ。
 まともに食らえば死ぬ。迫る死の危険に頭より先に身体が反応し、レアルは鳩尾の前に反射的に氷の盾を作り出して、ヘルハウンドの拳の防御を行うも

「あがっーー‼︎」

 氷の盾は砕かれてしまい、レアルは殴り飛ばされてしまった。
 レアルを自分から離れさせたヘルハウンドは、レアルの生死を確認する前に、いつの間にか自分と距離を取っていた へと顔を向ける。
 レアルが離れた今が、純白の雪天使ブランネージュアンジュを壊す最大の好機だ。

「人形の割には悪くねぇ力と頑丈さを持ってやがるが、これは耐えられるか?」

 ヘルハウンドはまたしても大きく息を吸い、肺の中に炎を溜め、今度は溜めた炎に魔力を練り込むと、一度目よりも勢いよく炎の息吹を吐き出す。

漆黒炎のセイブルフラム・崩滅咆哮フォールロア‼︎」

 大きく開かれた口腔から放たれた極大の熱線のような暗黒色の炎の咆哮が、まっすぐに純白の雪天使ブランネージュアンジュへと向かっていく。
 先程よりも遥かに威力が強化された咆哮に対して、純白の雪天使ブランネージュアンジュも口から冷気を宿した光の息吹を放って対抗する。
 全てを焼き尽くす咆哮と、触れたものを凍りつかせる息吹の威力は拮抗し、せめ合っている・・・ように最初は見えた。

「ーーーーッ‼︎」

 劣勢に陥ったのは、純白の雪天使ブランネージュアンジュの方だった。
 ヘルハウンドの咆哮の勢いが徐々に増し、純白の雪天使ブランネージュアンジュは押され始める。純白の雪天使ブランネージュアンジュは負けじと咆哮の威力を高めて抗おうとするが

「アホがぁっ‼︎」

 ヘルハウンドが叫んだ途端に息吹の威力が倍増し、押し負けて胴体を貫かれ、そのまま木っ端微塵に爆散する。
 今度こそ純白の雪天使ブランネージュアンジュの完全破壊に成功したヘルハウンドは、レアルの生死を確認すべく、レアルが飛んでいった方向に目をやる。
 レアルは生きて、遠くに立っていた。
 ヘルハウンドの拳を食らいはしたものの、氷の盾によって威力を殺した事により重傷を免れたのだ。

「器用な真似をしやがる」

 どこか嬉しそうにそう言うと、ヘルハウンドはレアルへと飛び、瞬く間に距離を詰めていく。
 一気に距離を詰めてきたヘルハウンドに対し、レアルが取った行動は、立ち向かう事でも、逃げる事でもなく、右手に持つ結晶剣クリスタルソードを地面に突き立てる事だった。
 ヘルハウンドの魔の手がレアルに触れようとした時、レアルが地面に突き刺した結晶剣クリスタルソードが、眩い青色の光を放ち

円環氷結リングフリーズ絶凍の結晶楽園アブソリュートアルカディア

 次の瞬間、結晶剣を中心に辺り一帯に円形状に氷結が広がり、地面から幾本もの巨大な氷柱が隆起する。
 その内の何本かはヘルハウンドの身体を貫き、ヘルハウンドは動きを止められる。

「つっ‼︎ うぅ・・・‼︎」

 太く鋭く冷たい氷柱が何本も身体の内に入り込み、複数の臓器を蹂躙される痛みにヘルハウンドは思わず呻く。
 痛みに顔を強張らせ、ほんの一瞬だけヘルハウンドの動きが止まった刹那

弔いの雪装束バルフ・レバース‼︎ 氷葬・孤独の墓標シムティエール・ソリチュード‼︎」

 レアルは二つの氷雪系の封印魔法を同時に発動した。
 念には念を。より確実に動きを止める為に、氷柱で固定して、鋼鉄以上の硬度の雪で覆った上で、氷の箱の中に閉じ込めようと試みる。
 動きを止めたら、あの技を発動して終わらせる、と勝利への筋道をレアルが頭に描いた一秒後に

「うぬぁあぁあぁあぁあぁあっっっ‼︎」

 鼓膜を激しく揺らし、大地さえ震える雄叫びが轟いた。
 雄叫びの主はヘルハウンドであり、彼の魔王は、二重の氷雪封印に閉じ込められる前に、力づくで氷柱をへし折り、レアルの左顔面を渾身の力で殴打した。
 風を殺す速度で放たれ、分厚い鋼板も硝子のように容易く砕く魔王の拳。それをまともに受けたレアルは、声を上げる事すらできずに遥か彼方に吹き飛び、何度も跳ねて転がった後にようやく止まる。
 レアルが強烈な一撃を受けた事で二つの封印魔法は発動される前に止まり、ヘルハウンドは難を逃れるが

「立て。まさか、これで終わりって事はねぇだろう?」

 ヘルハウンドは喜ばしくない様子だ。
 これまで相手にした者達は皆ほとんど一撃で倒れてしまった。
 レアルはヘルハウンドが再び命を得てから戦ってきた者達の中でも、屈指の実力を持っている。それがたった一撃で沈んでしまったとあってはつまらない。
 ヘルハウンドはこれで戦いが終わりになるのではないかと珍しく心配を抱くが、その心配は杞憂に終わる。ヘルハウンドが問いを投げてからすぐにレアルが立ち上がったからだ。

「安心したぞ。一度目に戦った時とは違って、すぐに終わる事はなさそうだ」

 立ち上がったレアルの姿を見て、ヘルハウンドは悪辣さが滲み出る凶悪な笑みを浮かべる。対するレアルは凛とした表情を浮かべてはいるが、それは痛みを隠す為の作り物の表情だ。
 躊躇なく左顔面を殴られた事で、頬骨は砕け、歯も何本か折れてしまっている。口の端から流れ出た血を親指で拭うと、レアルはヘルハウンドと目を合わせて

「終わるのはあなたの方。ここで、私が、私達が終わらせる」

 確固たる意志を宿した言葉を、ヘルハウンドにぶつける。
 その言葉を受け、ヘルハウンドは怪訝そうに首を傾げる。

「私達? お前、まだあの俺が叩きのめした連中と、『赤ずきん』の小娘を信じてるのか?」

「うん。信じてる。皆も、ステラちゃんの事も」

「アホが。あいつらも、あの『赤ずきん』も、信じるに値しねぇよ。この森で一番強ぇのは間違いなくお前だ。つまり、お前さえ殺せば、この森の滅びは確定する」

「信じるかどうか決めるのは、あなたじゃない。全部、私が決める。『サルジュの森』は、絶対に滅んだりしない‼︎」

 声を張り上げて、レアルはヘルハウンドの言葉を否定する。
 その途端に激しい吹雪が巻き起こり、世界が白雪色に染め上げられた。

「ついに本気を出しやがったな」

 白雪色に染まった世界の中で、ヘルハウンドは歪んだ笑みをその顔にたたえる。
 これからレアルが何を起こすのか、何を見せているのかを楽しみにしていると、ヘルハウンドは鼻先に冷たいものが触れたのを感じた。
 ヘルハウンドの鼻先に触れたものは氷の槍の矛先だった。それを持つのはレアル、ではなく氷で作られた鎧騎士だった。
 氷の鎧騎士が放った刺突を、ヘルハウンドは顔を逸らして紙一重で躱した。ぎりぎりの所で危険を回避できた、かのように思われたが

「ごぶっ‼︎」

 何者かの手により、ヘルハウンドは背後から腹を氷の剣で貫かれて吐血する。
 ヘルハウンドの背後に立っていたのは、刺突を放った氷の鎧騎士と全く同じ外見の鎧騎士だった。

「あの人形といい、こいつといい、俺に気配を感じさせねぇとは、やるじゃねぇか‼︎」

 心の底から楽しそうにそう言いながら、ヘルハウンドは肘打ちで鎧騎士の頭を砕き、後ろ回し蹴りで胴体を吹き飛ばした。
 味方が壊され、もう一方の鎧騎士が常人の目には見えない速度の突きでヘルハウンドの喉を穿とうとするが、槍の穂先を指で掴まれて突きを止められてしまう。

「来る事が分かってりゃ、何とか止められるもんだな」

 淡々とした口調でそう呟くと、ヘルハウンドは雷槍の如き前蹴りで鎧騎士の胴に風穴を開け、間髪開けずに鎧騎士の頭を掴んで握り潰す。
 瞬く間に二体の鎧騎士を破壊したヘルハウンドは、周囲を見回してレアルを探そうとするが、吹雪によって視界不良である事と、吹雪自体が強い魔力を浴びている所為で、視覚による探知も、魔力による探知もできない。

 嗅覚による探知も、レアル自身が素早く飛び回っているからか匂いの場所も常に移動していて追うのが難しい。
 吹雪が起こっている内はレアルを見つける事はできない。それなら

「吹雪を止めちまえばいい」

 ヘルハウンドは上を向き、漆黒炎の崩滅咆哮セイブルフラム・フォールロアを空に向かって放ってレアルの探知を阻害する吹雪を止めようと考えたが、その瞬間に吹雪の向こうから四方八方から五十体近い数の鎧騎士が現れる。

「おぉ⁉︎」

 襲いかかってきた、先程壊したものよりも一回り大きな体躯を持つ鎧騎士達の姿を見て、ヘルハウンドは驚愕し、思わず叫ぶ。
 精密動作が可能な自律した魔導生命体を五十体同時に操るレアルの力量に感服すると同時に、向かってくる鎧騎士達の実力が先に破壊した二体の鎧騎士と、純白の雪天使ブランネージュアンジュを軽く凌駕する事を察知して、ヘルハウンドは胸を躍らせる。
 メインディッシュがレアルである事に依然変わりはない。しかし

「強者を喰らわぬは獣の恥。たとえ作り物だろうと、強い奴は悉く喰らってやる‼︎」

 メインディッシュの前に美味な前菜が用意されているのならば、それを喰らわぬ理由は無い。全て喰らうのみだ。
 ヘルハウンドは自身の命を刈り取らんとする鎧騎士達の群れに砲弾のような勢いで自ら向かっていった。

「うらぁあぁっ‼︎ はっはっはぁーー‼︎」

 鎧騎士の群れとぶつかったヘルハウンドは、手始めに近くにいた鎧騎士二体を両足で踏み倒した。
 全力で踏んだにも関わらず、鎧騎士の身体は砕けておらず、亀裂が生じるだけに留まっていた。
 新たに現れた鎧騎士達が今までレアルが生み出した魔導生命体とは別格である事を改めて実感しつつ、ヘルハウンドは鎧騎士達を踏み台に跳躍し

「壊れろ‼︎」

 鎧騎士の軍団に対して、大きく開けた口の中から巨大な炎球を吐き出した。
 炎球は鎧騎士の軍団、それらが立つ地面にぶつかると同時に破裂し、凄まじい威力の爆発を生じさせた。
 荒れ狂う爆風と灼熱の暗炎をその身に受けても、鎧騎士達が完全に壊れる事はなかった。

「これでも壊れねぇか、それなら直接ぶっ壊して喰ってやる‼︎」

 予想以上の耐久性を持つ五十体の鎧騎士達にヘルハウンドは急接近し、鎧騎士達もそれぞれが持つ多様な武器を構え、ヘルハウンドを討ち取らんとする。
 直後、展開されたのは破壊の舞踏会だった。

「ははは‼︎ ははははは‼︎ はっははははっはぁ‼︎」

 ヘルハウンドの笑い声と、硝子が砕けるような音がその場に絶えず響き続ける。
 笑い声が聞こえるのは、ヘルハウンドが戦いを楽しんでいるからだ。
 硝子が砕けるような音が聞こえるのは、鎧騎士達の頭が、銅が、手足が、次々と砕かれているからだ。

 まるで舞うように、楽しげに戦場を飛び回るヘルハウンドの爪や牙によって、鎧騎士達の身体やそれぞれが持つ武具は、砕かれ、喰われてゆく。その度に氷の破片が散って、ヘルハウンドによる破壊の舞踏会に花を添える。

 鎧騎士一人とヘルハウンドが相対する時間はたったの
数秒だ。数秒が経てば、五体満足だった鎧騎士は身体の大部分を欠損し、無惨に壊される。その後はダンスのパートナーを変える時のような、軽やかな足取りでヘルハウンドは次の鎧騎士の前に立ち、鎧騎士を壊す。壊したらまた別の鎧騎士を壊す。その繰り返しだ。

「いいぞ‼︎ 悪くない‼︎ 本気で暴れ回れるなんてのは久しぶりだ‼︎」

 一体一体の鎧騎士と本気で命の取り合いを行いながら、ヘルハウンドは歓喜に笑う。
 ヘルハウンドが本気を出さなければ壊せない程に、鎧騎士達は硬く、何より強い。
 作り物ーー魔法によって作られた生命体や人形の類を相手にして、ヘルハウンドが満足に楽しめた事はほとんどない。だが、今は心の底から楽しめている。作り物でこれ程楽しめているなら、やはりレアルは

「やはり、お前は・・・」

 何事かをヘルハウンドが口にしようとした時、五十体目、最後の鎧騎士がヘルハウンドに立ち向かってきた。
 二振りの氷剣を持つ鎧騎士は、まっすぐにヘルハウンドに突進し、右手に持つ氷剣でヘルハウンドの首を斬ろうとする。
 鮮やかな剣閃を描きながら自身に迫ってきた氷剣を、ヘルハウンドは無造作に腕を振って払い飛ばし、鎧騎士の右手首を掴む。

 人間の剣士であれば、ヘルハウンドに触れられた時点で死を覚悟するか、恐怖を覚えるかのどちらかだろうが、鎧騎士は人間ではなく人形だ。死に対する覚悟を抱く事も、死に対して恐怖を覚える事はない。

「ーーーーッ‼︎」

 鎧騎士は主の命に従い、魔王の命を消し去るべく、合理的に次の一撃を放つ。左の氷剣による風を纏った刺突を、ヘルハウンドの顔目掛けて放つが

「次はもう五百体は相手にしてぇもんだな」

 手首を掴まれて刺突を止められ、そのまま頭を一口で喰われてしまう。
 鎧騎士の頭を硬い音を立てて食しながら、ヘルハウンドは首無しとなった鎧騎士の鳩尾に膝蹴りを放ち、鎧騎士の身体を砕いた。
 そうしてヘルハウンドが全ての鎧騎士を破壊したのとほぼ同時だった。銀色の光が差し込み、吹雪が消え去ったのは。

「成る程、吹雪を起こし、あの鎧共を作り出したのは、それを発動する為か」

 頭上にいるレアルの姿を見て、ヘルハウンドはそう呟く。
 レアルはその身に銀色の光を纏い、両手を天に掲げていた。発する魔力もこれまでとは桁違いな程に高まっている。何かしらの大技を発動しようとしている事は見て明らかだ。これまでの行動はその為の時間稼ぎだっという訳だ。

「見せてみろ‼︎ 『白雪姫』‼︎」」

 ヘルハウンドが叫びながらレアルへと飛びかかった時だった。
 鋭利な氷柱と硬い雪を乗せた冷たい風が、ヘルハウンドに纏わりつき、その身体を削った。
 ヘルハウンドが動きを封じられ、空中に縫い止められた次の瞬間、ヘルハウンドの身体を銀色の光が包み込み

刹那に咲く氷輪の華ミーク・フィオリトゥーラ・フリーズデリアフルール‼︎」

 ーー光が、美しい氷の薔薇の華に変わった。
 至高の造花あるいは氷の芸術の完成形。そういっても過言ではない美を抱く氷華の蔓が、ヘルハウンドを強く締め付け、身体の大部分を一瞬で凍りつかせた。

「これが、お前の切り札か」

 白い息を吐き、震えながらヘルハウンドが問いかける。
 問いかけにレアルが首肯すると、ヘルハウンドはかははと乾いた笑声を口から漏らした。

「初めてだ。氷の使い手と戦って、寒いと感じたのは」

「それはよかった。これからもっと寒くなるよ」

「どうゆう」

 事だとヘルハウンドが言い切る前に、薔薇の華の中から空に向けて銀色の光球が打ち上げられた。
 光球は空の彼方で止まると、拡大し、その輝きを増して、灰色の空と白い大地を照らし出す。
 空も大地も等しく照らし出す銀の光球。それはまるで

「月・・・」

 夜を優しく色づける光の宝石ーー月のようだった。
 薔薇の華から生まれ出た銀の月。レアルがそれに向けて掌を翳して

「ーー散り果てろ」

 そう口にすると、月から放たれた銀色の閃光が、何もかもを包み込んだ。







 月の光が収まり、月がなくなった後、雪の世界は氷の世界に変わっていた。
 白銀の氷が、光が照らした範囲を覆い、木の根、大地の下深くまでもが凍りついている。より近くで光を浴びたヘルハウンドは、身体の外側も内側も凍結し、薔薇の蔓に巻きつかれたまま地に落ちていた。
 自然も、『魔王』も何もかもが氷漬けになってしまった中で、唯一無事だったのは

「なんとかアクル達の元に光が届く前に止められた・・・よかった」

 『白雪姫』あるいは『雪月女帝』の名を懐く氷雪の女王、レアル=ウィンタースケールだけだった。
 レアルはゆっくりと氷の世界に舞い降りて、氷の彫像と化したヘルハウンドを少しの間じっと見つめてから

「帰ろう。皆を治さなきゃ・・・」

 ヘルハウンドに背を向けて、大事な仲間、勇気をくれた少女の仲間達の元に帰ろうとした。でも、帰れなかった。
 その背を爪に切り裂かれたからだ。
 飛び散る鮮血が、白銀一色の世界に色を足す。背に大きな傷を負ったレアルだったが、痛みは感じていなかった。痛みよりも、驚きの方が勝ったからだ。
 避ける事も、防ぐ事も叶わなかった筈だ。その証拠にさっきまで氷漬けになっていた。それなのに、何故、何故

「どうして、動いて、るのーー?」

 何故、動けるのか。
 レアルは己の背を切り裂いた者、ヘルハウンドに問うた。ヘルハウンドはその質問には答えず、レアルの背を容赦なく蹴り飛ばした。
 重すぎる蹴りを喰らったレアルは遠くに吹き飛ばされ、飛ばされた先で背中を丸めて、鋭く鈍い痛みに呻く。
 苦痛に顔を歪ませるレアルに向かって、ヘルハウンドはゆっくりと近付いていく。
 その身体のほとんどが凍っている。やはり刹那に咲く氷輪の華は直撃していた。それなのに何故動く事ができているのか、レアルの傍に立ったヘルハウンドは、教えてやるよとその答えを口にし始める。

「光に照らされる前に、魔力を消費して高密度の火炎球を飲み込んだ。ただそれだけだ」

「そ、っか。時間差で火炎球を爆発させて・・・」

 身体の内側の氷を溶かして、動けなくなる事を防いだのだ。荒っぽく、雑で危険性の高い氷結対策。それは強靭な肉体を持つヘルハウンドだからこそできた事だ。
 完全に倒し切る為に、レアルは持てる魔力の全てを消費して切り札を切った。イステキが与えてくれた希望は使い切ってしまった。だが、それでも

「うぅあぁあぁあぁあぁあっっ‼︎」

 レアルは戦う意志を失くさない。
 痛みを捻じ伏せて立ち上がり、ヘルハウンドの鼻面に拳を叩き込んだ。
 たとえ魔力がなくなっても、身体が動かなくなっても、魂がある限り、戦って、抗って、立ち向かって、必ず勝つと決めた。
 必ず勝って、レアル自身が、皆が抱いた祈りを繋ぎ、望む未来に辿り着く。その為に

「絶対、倒す‼︎」

 血と共に決意を吐き出し、レアルは拳をもう一発ヘルハウンドに叩き込もうとしたが

「無駄だ」

 拳が届く前にヘルハウンドに腹を殴られ、再度吹き飛ばされて倒れる。
 背中を蹴り飛ばされた時のように、レアルは力を振り絞って立ち上がり、もう一度ヘルハウンドに向かおうとしたが、その場に膝をついて盛大に吐血してしまった。

「な、んで・・・」

 口から血の糸を垂らしながら困惑していると、レアルは腹部に強い痛みを感じて、思わず顔をしかめた。
 そこで初めて自分が立てないのは、今の一撃で臓腑が壊されたからだとレアルは理解する。
 深すぎる傷を負って、レアルが立てずにいると、ヘルハウンドはレアルの目の前に立ち

「やはりお前は本物の強者だ。『白雪姫』、いや、レアル=ウィンタースケール」

 追い打ちをかけるのではなく、素直な賛辞を送った。
 予想外の言葉に目を丸くするレアルに、ヘルハウンドは続ける。

「こんなに楽しめたのは久しぶりだ。『雪月の輪舞曲ニクス・ルナ・ワルツ』を取り戻してからのお前の実力は素晴らしかった」

「そんな事言われても、嬉しく、ない・・・っ‼︎」

「そうか。俺が認めた強者はそうはいねぇ。あの世で誇れ。俺を楽しませた礼に、お前はできるだけ苦しませないように喰い殺してやる」

 そう言ってヘルハウンドがレアルに手を伸ばした瞬間、ヘルハウンドとレアルの間に、巨大な氷柱が隆起して、ヘルハウンドは咄嗟に手を引いた。

「えっーー?」

 氷柱を見て、レアルはひどく混乱する。
 レアルの魔力は既に底をついている。レアルに氷柱を作り出す事はできない。『サルジュの森』にはレアル以外に氷の使い手はいない。ならば、この氷柱は

「まさか・・・」

 最悪の想像が頭をよぎると同時に、大地から銀色の光が発せられ、氷の下から次々に氷柱が突き出してくる。
 レアルが凍らせた範囲以外の場所も凍りついていき、同じように何百本もの氷柱が生えてくる。
 間違いない。これは、この現象は

「『サルジュの森』の魔力の許容量が、限界を超えたんだ・・・」

 『サルジュの森』の土地に溜まり続けた歴代『白雪姫』の魔力の暴発。それによる森全体の凍結が、最悪の事態が起こってしまった。
 ヘルハウンドを倒す為とはいえ、大技を連発しすぎた。それがこの事態の引き金となったのだ。

「恐れていた事が、現実になった。氷結の終焉が、もうすぐ訪れる。全部、何もかもが無駄だった」

 絶望と悲壮に染まった瞳から涙を零し、掠れた声でレアルは不可避の終焉を、これまでの命懸けの戦い全てが無意味となってしまった事を、悲しみ、嘆く。
 いつの間にかレアルが起こしたものより激しい吹雪まで起き始め、それに伴い森全体が氷っていく速度も跳ね上がる。


 もう止まらない。誰にも止める事はできはしない。
 始まってしまった終わりを、未来が閉ざされていく事を、全てが失われてゆく事を止める事は、もう誰にもできはしない。
 希望も、絶望も、想いも、願いも、祈りさえも、何もかもが死の氷に包まれて、儚く緩やかに消えゆくだけだ。
 『サルジュの森』、そこに息づく全ての命の終着点は、たった今決した。

「何もかもがもう終わり。私達は、私は、結局」







 何も守る事が、できなかった。
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