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湖でワカサギ釣り part2

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 仲直りした妾とシェン君は並んで座り、釣りを始めた。
 湖の表面の氷を丸く割って、その中に釣り糸を垂らして魚を釣るのじゃ。
 驚いたことに糸を垂らすとすぐに魚が釣れた。

「これがワカサギじゃろうか?」
「そうだろ。でも小さいのしか釣れないなぁ」

 シェン君も妾もワカサギを知らないので、しばらく子どもしか釣れないと思っておったが、ジョーが様子を見に来て教えてくれた。

「子どもじゃないわよ。これが大人のサイズなの。たくさん釣ってね。みんなの分も必要だから」

 言われなくても糸を垂らすとすぐに釣れるので、妾とシェン君は入れ食い状態で釣りを楽しんだ。
 しかし小一時間もすると、さすがに飽きてくる。

「ちょっと休憩じゃ」

 妾が釣竿を横にポイッとすると、テーブルの方からミンミンが声をかけてくれた。

「お二人ともお茶でもどうですか?」
「うむ。温かい飲み物が欲しいのじゃ」

 テーブルと椅子が置かれた場所には簡易のストーブも置かれていて、そこに人が集まっていた。
 ジョーの姿が見えないので辺りを見回すと、一人だけ湖の中央から離れた場所で釣りをしている。
 ひょいひょいと釣り糸を操り、バケツに魚を山盛りにしていた。
 ちょっと恐ろしい。
 妾はシェン君と向かい合って座ると、ミンミンの淹れた熱い紅茶で休憩する。
 が、この場には不穏な空気が漂っていた。
 誰であろうヤンヤンじゃ。
 ヤンヤンはミンミンがお茶の準備をするのを手伝っておるが、動きがぎこちなくロボットのようにギコギコしている。
 フィナンシェやマドレーヌを皿に載せて運んでくるが、手がブルブル震えているので危なっかしい。
 どうやら近くにサイファがいるので動揺しているらしい。

 大丈夫かのぅ?

 ハラハラしながら見守っておると、テーブルに置いた途端、皿からマドレーヌが一つ飛び出した。
 コロコロ転がってシェン君の足元に落ちる。

「す、すみませんっ!」

 慌てたヤンヤンが拾いに行くが、シェン君の席の後ろには当のサイファが立っていた。
 サイファが先にしゃがんでマドレーヌを拾い上げる。
 しかし、あまりに動揺していたヤンヤンは、自分がやらねばと急いだせいで、サイファとぶつかってしまった。

「ひゃっ!?」

 当たり負けしたヤンヤンが後ろに倒れそうになる。
 それをサイファがサッと手を伸ばして腰を抱くようにして助けた。
 二人の顔が近づき、目と目が合う。
 ヤンヤンの顔が真っ赤になり、それを見たサイファも同じく顔を赤らめた。
 妾は自分の席からすべてを余すことなく見ていた。

 いやもう、なんか家族のラブシーン観てるみたいで小っ恥ずかしいんですが・・・・・・。

「す、すみません」
「いえ、お怪我はありませんか?」
「は、はい!」

 なぜか二人はまだ至近距離で抱き合っている。
 ミンミンが呆れた顔で声をかけた。

「ちょっとヤンヤン、いつまでやってるのよ」

 ようやく離れたものの、二人は妾たちがお茶をしている間、互いにチラチラ見合っていた。
 なんなんじゃ~~もう!
 やけにむしゃくしゃしたので、妾は焼き菓子を五つも食べてしまった。
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