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記憶を消去すべし
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妾たち女性陣は急いで内風呂へと戻った。
みんな知らなかったのじゃが、この別荘の温泉は混浴だったのじゃ。
内風呂は男女で分かれているが、露天風呂で合流する作りになっていたらしい。
とんでもないことじゃ。
妾はすべてを見られてしもうた。
しかし、あまりショックを受けていない。
と言うのも、妾より断然ショックを受けている人物がいたからじゃ。
「もうダメ・・・・・・」
そう呟いたきり顔を手で覆ってしまったヤンヤンは脱衣所で泣き出してしまった。
反対にミンミンは「サイファってよく見るといいかも~」となぜか喜んでいた。
妾はヤンヤンを慰めつつ、見てしまったサイファの裸体を記憶の彼方に追いやることにした。
それにしても結局、露天風呂に浸かり損ねたのは悲しい。
せっかく風呂に来たのに体は冷え冷えじゃ。
妾たちは三者三様で布団に潜り込んで、その日は終了した。
翌朝、朝食の席でシェン君は一度も妾と目を合わせなかった。
「避けられておる」
部屋に戻ってミンミンに言うと、フフフフと笑われた。
「恥ずかしいだけですよ。あの年頃なら、女性の裸を見たのも初めてかもしれません。ひめ様の玉の肌を拝んだんですから責任取ってもらわないと」
「責任?」
「お嫁にもらってもらうとか」
「ンなッ!?」
冗談でもやめて欲しい。
シェン君は友だちなのじゃ。
それに、妾には大切な彼Pがおるからの。
「ミンミンも知っておるじゃろう。妾には魔術講師の婚約者がいるんじゃぞ」
「ええ、知っていますよ。百人いる婚約者候補の一人ですよね。でも形だけのものじゃないですか」
「ち、違うぞ! 妾はあの者と結婚するのじゃ」
「え~~~」
ミンミンが不満そうに首を横に振る。
「ひめ様には似合いませんよ~。年も離れてるじゃないですか」
「恋愛に年齢は関係ないと、前におぬしも言っておったではないか!」
「まあ、そうですけど。ひめ様にはもっと若くて、身分も近い人がいいと思いますよ。あの優男風の魔術講師はやめましょうよ~」
なんてことじゃ。
ミンミンは妾の選んだ彼Pが気に食わないらしい。
ヤンヤンに擁護してもらおうと顔を向ける。
「のぅ、ヤンヤン。どう、おも・・・・・・う?」
しかし、ヤンヤンは腑抜けた顔で窓の外をぼうっと見ていた。
「ヤンヤン、どうしたのじゃ?」
「えっ? 何か仰いましたか?」
心ここに在らずの様子でヤンヤンは妾を見た。
あまりの呆けように、ミンミンも心配になったらしい。
「ちょっとヤンヤン、どうしちゃったのよ?」
「どうって?」
「まさか、まだ昨日のことを気にしてるの?」
途端にヤンヤンの顔色が変わった。
赤くなったと思ったら、すぐに青くなる。
リトマス試験紙みたいじゃ。
目も左右をさまよい、しきりにパチパチ瞬きしている。
凄まじい狼狽えようじゃ。
妾とミンミンは顔を見合わせた。
どうにかせねばならぬかも。
無言のアイコンタクトで頷き合う。
ミンミンが笑顔を作って話しかけた。
「ねえ、ヤンヤン。わたしたちがいた場所って湯気が多かったと思うのよ。ね、ひめ様!」
「うむうむ。そうじゃ! 湯気がこう、モワモワしておった」
「そう、湯気がモワモワ! だからね、ヤンヤン。サイファにはあまりわたしたちが見えなかったと思うのよ」
「・・・・・・」
ヤンヤンの視線がミンミンの方に落ち着く。
「それに、シェン王子はずっと湯の中に顔を浸けてたから、わたしたちのことは絶対見てないわよ」
「・・・・・・そ、そうかしら? 本当に?」
「そう! 絶対よ。ね、ひめ様」
「う、うむ。シェン君は妾を見てビックリして、顔を伏せておった」
「ほら、見られたのはひめ様だけよ、ヤンヤン」
それはそれでイヤなんじゃが。
でもヤンヤンのために我慢して黙っておく。
「でもわたし、あの人の裸を・・・・・・見てしまったの」
ヤンヤンの顔がまた青から赤に変わった。
「忘れようとしているんだけど、どうしてもここら辺をチラついて離れないの」
ヤンヤンが頭の上を指差す。
確かに裸のサイファが頭の側をチラつくのは問題あるのぅ。
不気味じゃ。
妾がなんと言っていいかわからずにいると、ミンミンが吹き出した。
「やぁだ~、ヤンヤンったら。えっち!」
えっ? その反応正しい?
大丈夫そ?
妾が疑問に思ったのと、ほぼ同時にヤンヤンが真っ赤な顔を覆って、ワッと泣き出した。
「わたしだって記憶を消したいわよ! でも男の人の裸なんて初めて見たし、わたしの裸も見られちゃって、どう思われてるのか考えただけで頭がおかしくなりそうなのよ!」
重症かもしれぬ。
ヤンヤンは妾以上に箱入り娘だったのじゃ。
いや、ちょっと待って欲しい。
妾だっていろいろ見られてショックは受けておる。
平気の平左に見えるかもしれぬが、シェン君にもサイファにも素っ裸を見られてしもうたからの。
でも実際には、シェン君の方が乙女のように恥ずかしがって妾を避けておるし、サイファはあの時、ヤンヤンとミンミンに気を取られておったので、妾のことなど眼中になかったように思う。
つまり、妾の今の感情はーーー。
「なんか腹が立ってきたのじゃ」
「えっ? 突然、どうしたんです?」
ヤンヤンを慰めようとしていたミンミンが驚いてこっちを見た。
「だって、妾は裸を見られた方なのに、見たシェン君が避けるのは失礼じゃ!」
「はぁ・・・・・・」
「恥ずかしがったりするのはこちらの方じゃろ。シェン君がなぜ恥ずかしがる!? おかしいのじゃ!」
怒り出した妾と泣いているヤンヤンに挟まれて、ミンミンはあからさまに大きなため息をついた。
「お二人とも、ちょっと落ち着きましょう。あまりにも重く考えすぎてますよ。たかがチラッと見られただけです。何の支障もありません。事故! そうです。あれはただの事故なんだから忘れましょう!」
ヤンヤンと妾は同時に言い返した。
「そうしたいけどできないから困ってるの!」
そして、こちらーーー。
その頃のシェン君は。
「うあああぁぁぁァァーーーー!!」
部屋のテーブルに頭を打ちつけていた。
みんな知らなかったのじゃが、この別荘の温泉は混浴だったのじゃ。
内風呂は男女で分かれているが、露天風呂で合流する作りになっていたらしい。
とんでもないことじゃ。
妾はすべてを見られてしもうた。
しかし、あまりショックを受けていない。
と言うのも、妾より断然ショックを受けている人物がいたからじゃ。
「もうダメ・・・・・・」
そう呟いたきり顔を手で覆ってしまったヤンヤンは脱衣所で泣き出してしまった。
反対にミンミンは「サイファってよく見るといいかも~」となぜか喜んでいた。
妾はヤンヤンを慰めつつ、見てしまったサイファの裸体を記憶の彼方に追いやることにした。
それにしても結局、露天風呂に浸かり損ねたのは悲しい。
せっかく風呂に来たのに体は冷え冷えじゃ。
妾たちは三者三様で布団に潜り込んで、その日は終了した。
翌朝、朝食の席でシェン君は一度も妾と目を合わせなかった。
「避けられておる」
部屋に戻ってミンミンに言うと、フフフフと笑われた。
「恥ずかしいだけですよ。あの年頃なら、女性の裸を見たのも初めてかもしれません。ひめ様の玉の肌を拝んだんですから責任取ってもらわないと」
「責任?」
「お嫁にもらってもらうとか」
「ンなッ!?」
冗談でもやめて欲しい。
シェン君は友だちなのじゃ。
それに、妾には大切な彼Pがおるからの。
「ミンミンも知っておるじゃろう。妾には魔術講師の婚約者がいるんじゃぞ」
「ええ、知っていますよ。百人いる婚約者候補の一人ですよね。でも形だけのものじゃないですか」
「ち、違うぞ! 妾はあの者と結婚するのじゃ」
「え~~~」
ミンミンが不満そうに首を横に振る。
「ひめ様には似合いませんよ~。年も離れてるじゃないですか」
「恋愛に年齢は関係ないと、前におぬしも言っておったではないか!」
「まあ、そうですけど。ひめ様にはもっと若くて、身分も近い人がいいと思いますよ。あの優男風の魔術講師はやめましょうよ~」
なんてことじゃ。
ミンミンは妾の選んだ彼Pが気に食わないらしい。
ヤンヤンに擁護してもらおうと顔を向ける。
「のぅ、ヤンヤン。どう、おも・・・・・・う?」
しかし、ヤンヤンは腑抜けた顔で窓の外をぼうっと見ていた。
「ヤンヤン、どうしたのじゃ?」
「えっ? 何か仰いましたか?」
心ここに在らずの様子でヤンヤンは妾を見た。
あまりの呆けように、ミンミンも心配になったらしい。
「ちょっとヤンヤン、どうしちゃったのよ?」
「どうって?」
「まさか、まだ昨日のことを気にしてるの?」
途端にヤンヤンの顔色が変わった。
赤くなったと思ったら、すぐに青くなる。
リトマス試験紙みたいじゃ。
目も左右をさまよい、しきりにパチパチ瞬きしている。
凄まじい狼狽えようじゃ。
妾とミンミンは顔を見合わせた。
どうにかせねばならぬかも。
無言のアイコンタクトで頷き合う。
ミンミンが笑顔を作って話しかけた。
「ねえ、ヤンヤン。わたしたちがいた場所って湯気が多かったと思うのよ。ね、ひめ様!」
「うむうむ。そうじゃ! 湯気がこう、モワモワしておった」
「そう、湯気がモワモワ! だからね、ヤンヤン。サイファにはあまりわたしたちが見えなかったと思うのよ」
「・・・・・・」
ヤンヤンの視線がミンミンの方に落ち着く。
「それに、シェン王子はずっと湯の中に顔を浸けてたから、わたしたちのことは絶対見てないわよ」
「・・・・・・そ、そうかしら? 本当に?」
「そう! 絶対よ。ね、ひめ様」
「う、うむ。シェン君は妾を見てビックリして、顔を伏せておった」
「ほら、見られたのはひめ様だけよ、ヤンヤン」
それはそれでイヤなんじゃが。
でもヤンヤンのために我慢して黙っておく。
「でもわたし、あの人の裸を・・・・・・見てしまったの」
ヤンヤンの顔がまた青から赤に変わった。
「忘れようとしているんだけど、どうしてもここら辺をチラついて離れないの」
ヤンヤンが頭の上を指差す。
確かに裸のサイファが頭の側をチラつくのは問題あるのぅ。
不気味じゃ。
妾がなんと言っていいかわからずにいると、ミンミンが吹き出した。
「やぁだ~、ヤンヤンったら。えっち!」
えっ? その反応正しい?
大丈夫そ?
妾が疑問に思ったのと、ほぼ同時にヤンヤンが真っ赤な顔を覆って、ワッと泣き出した。
「わたしだって記憶を消したいわよ! でも男の人の裸なんて初めて見たし、わたしの裸も見られちゃって、どう思われてるのか考えただけで頭がおかしくなりそうなのよ!」
重症かもしれぬ。
ヤンヤンは妾以上に箱入り娘だったのじゃ。
いや、ちょっと待って欲しい。
妾だっていろいろ見られてショックは受けておる。
平気の平左に見えるかもしれぬが、シェン君にもサイファにも素っ裸を見られてしもうたからの。
でも実際には、シェン君の方が乙女のように恥ずかしがって妾を避けておるし、サイファはあの時、ヤンヤンとミンミンに気を取られておったので、妾のことなど眼中になかったように思う。
つまり、妾の今の感情はーーー。
「なんか腹が立ってきたのじゃ」
「えっ? 突然、どうしたんです?」
ヤンヤンを慰めようとしていたミンミンが驚いてこっちを見た。
「だって、妾は裸を見られた方なのに、見たシェン君が避けるのは失礼じゃ!」
「はぁ・・・・・・」
「恥ずかしがったりするのはこちらの方じゃろ。シェン君がなぜ恥ずかしがる!? おかしいのじゃ!」
怒り出した妾と泣いているヤンヤンに挟まれて、ミンミンはあからさまに大きなため息をついた。
「お二人とも、ちょっと落ち着きましょう。あまりにも重く考えすぎてますよ。たかがチラッと見られただけです。何の支障もありません。事故! そうです。あれはただの事故なんだから忘れましょう!」
ヤンヤンと妾は同時に言い返した。
「そうしたいけどできないから困ってるの!」
そして、こちらーーー。
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「うあああぁぁぁァァーーーー!!」
部屋のテーブルに頭を打ちつけていた。
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