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ホラ研は不滅じゃ
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サクラとアカネ、レッカの嘆願でホラ研が廃部になってしもうた。
ガッカリしておると思うじゃろ?
そんなことはないのじゃ。
あの後、妾は部室の片付けという名目で会長とポーキュリと話すことができた。
会長は「あら、ちょうどよかったわ」と言い、ポーキュリは「ふぅん」と他人事のようじゃったが、こうなる以前に、二人はしばらく学園を離れるつもりでいたらしい。
「わたしは一度、領内に戻って母の手伝いをするわ。その間にホロウバステオンの事も調べるつもり」
会長の母君は亡くなった父君の代行で領主をしており、慣れない仕事に疲れ切っているため、一人娘の会長に戻って手伝うよう言っていたらしい。
「ぼくはホロウバステオンも気になるけど、それ以外の異界の入り口を探してみようと思ってるんだ」
ポーキュリは廃墟巡りのために休学するとのこと。
二人とも学園からいなくなれば、実質ホラ研は活動休止みたいなものじゃ。
妾とシェン君、ジョーの三人では呪術の研究など何していいやらわからぬからな。
「まあ、ちょうどいいんじゃないか?」
シェン君は妾とジョーの目が覚めるようなことを言い出した。
「だって、すぐに学期末試験だろ。勉強しないと」
「ん?」
「試験?」
妾とジョーが、キョトンとする。
「おい、おまえら忘れたフリするな。来月初めから一週間試験だぞ。大丈夫か?」
妾、すっかり忘れておったのじゃ。
というか、最近は呪いのことで頭がいっぱいで授業も上の空だった。
ジョーと顔を見合わせ、への字口になる。
妾たちを見ていた会長が笑い出した。
「あなたたちこそ、ちょうどよかったじゃない。試験に落ちて来年も一年生だとポーキュリみたいに、クラスメイトに腫れ物扱いされることになるわよ」
「ぼくは腫れ物扱いされてるわけじゃない。友だちがいないだけだ」
それはそれで悲しい気持ちじゃ。
というわけで、妾たち三人はしばし勉強することになった。
妾とシェン君は通常授業は心配ないが、実技のある授業の練習をして、それ以外はジョーの苦手科目を手伝って過ごした。
そして、あっという間に試験が終わり、妾たちは冬休みへと突入したのじゃ。
もちろん全員、無事に単位を取れたぞ。
冬季休暇は二週間。
妾は王宮の燃えさかる炎ノ宮に戻ることになっておる。
が、その前にーーー。
妾とシェン君は、ジョーの家に遊びに行くことになった。
ジョー、ことジュリア・ウエストウッドは、北方のヘデス王国の第二王女の娘じゃ。
妾の母上が第三王女だったから、従姉妹ということになる。
今は国内のウエストウッド伯爵に母君が嫁いだので、ヘデスの名ではないが、第二王女の娘であるジョーはもちろん王族の一員なのじゃ。
ヘデス王国はドラゴニア帝国の属国なので、互いに関係は良好・・・・・・と妾は思うておったが、ヘデス一族は皇帝を、大切な第三王女を誑かした極悪非道の人物と認識しているらしい。
それで、呪われた子を産むことになった可哀想な第三王女を心配しつつも、帝国とは一定の距離を取っている。
ちなみに、妾のことも第三王女を呪う子どもとして、毛嫌いしているということじゃ。
すんごい凹むわ~~。
ジョーも最初は妾を憎んでおったようじゃが、今ではすっかりマブダチになっておる。
毎日、昼休みに隣のクラスからやって来て、食堂でランチをする仲じゃ。
シェン君は、他の男子と昼は過ごしておるから、妾はボッチを回避できて助かっておる。
なんか、いまだにクラスの女子からは遠巻きにされておるのでな・・・・・・。
そんなジョーに誘われて、妾とシェン君は冬季休暇の始めにヘデス王国に行くことになったのじゃ。
妾はヘデス家の面々に顔を合わせるのが少し怖いのじゃが、ジョー曰く。
「大丈夫よ! みんな話せばわかる人たちだから! 特にうちのママンは、わたしと同じタイプだから仲良くなれるわよ」
らしい。
楽観的すぎる気もするが、本人がそう言っておるのでな。
なんとかしてくれるはずじゃ。
兎にも角にも、妾はヘデス王国に行く必要があるので、この誘いを断ることは出来なかった。
なぜなら、ヘデス王国とドラゴニア帝国の境に、例のホロウバステオンがあるからじゃ。
こんな誘いでもない限り、妾がおいそれとホロウバステオンに旅行に行くことなどできぬし、ジョーもそのために誘ってくれたのだから感謝しかない。
父上や他の兄姉たちには、友だちの家に遊びに行くとだけ言えばいいのじゃからな。
シェン君の方は、ちょっとお付きの侍従に反対されたらしい。
冬季休暇は毎年、帝国の南にある温暖な保養地で過ごしていたらしいので、なぜ北に!? と嫌がられたと言っておった。
シェン君の実家は、東方のアラガンなので、二週間しかない冬休みには帰らず、毎年、夏休みに帰るらしい。
そのうち妾もアラガンに行けたらいいなぁと思うておる。
遠いから父上にダメだと言われるかもしれぬが。
まずは初めての冬休み。
ジョーとシェン君と、ヘデス王国へ赴き、帰りの道中にホロウバステオンに立ち寄るのじゃ。
楽しみなような、ちょっぴり怖いようなーーー。
それにしても、この日記も長くなってきたのぅ。
学園に通うようになって書くことがいっぱいなのじゃ。
帝国の臣民であるみなのためにも、妾は明日もがんばるのでな。
ではまたな~~!
ガッカリしておると思うじゃろ?
そんなことはないのじゃ。
あの後、妾は部室の片付けという名目で会長とポーキュリと話すことができた。
会長は「あら、ちょうどよかったわ」と言い、ポーキュリは「ふぅん」と他人事のようじゃったが、こうなる以前に、二人はしばらく学園を離れるつもりでいたらしい。
「わたしは一度、領内に戻って母の手伝いをするわ。その間にホロウバステオンの事も調べるつもり」
会長の母君は亡くなった父君の代行で領主をしており、慣れない仕事に疲れ切っているため、一人娘の会長に戻って手伝うよう言っていたらしい。
「ぼくはホロウバステオンも気になるけど、それ以外の異界の入り口を探してみようと思ってるんだ」
ポーキュリは廃墟巡りのために休学するとのこと。
二人とも学園からいなくなれば、実質ホラ研は活動休止みたいなものじゃ。
妾とシェン君、ジョーの三人では呪術の研究など何していいやらわからぬからな。
「まあ、ちょうどいいんじゃないか?」
シェン君は妾とジョーの目が覚めるようなことを言い出した。
「だって、すぐに学期末試験だろ。勉強しないと」
「ん?」
「試験?」
妾とジョーが、キョトンとする。
「おい、おまえら忘れたフリするな。来月初めから一週間試験だぞ。大丈夫か?」
妾、すっかり忘れておったのじゃ。
というか、最近は呪いのことで頭がいっぱいで授業も上の空だった。
ジョーと顔を見合わせ、への字口になる。
妾たちを見ていた会長が笑い出した。
「あなたたちこそ、ちょうどよかったじゃない。試験に落ちて来年も一年生だとポーキュリみたいに、クラスメイトに腫れ物扱いされることになるわよ」
「ぼくは腫れ物扱いされてるわけじゃない。友だちがいないだけだ」
それはそれで悲しい気持ちじゃ。
というわけで、妾たち三人はしばし勉強することになった。
妾とシェン君は通常授業は心配ないが、実技のある授業の練習をして、それ以外はジョーの苦手科目を手伝って過ごした。
そして、あっという間に試験が終わり、妾たちは冬休みへと突入したのじゃ。
もちろん全員、無事に単位を取れたぞ。
冬季休暇は二週間。
妾は王宮の燃えさかる炎ノ宮に戻ることになっておる。
が、その前にーーー。
妾とシェン君は、ジョーの家に遊びに行くことになった。
ジョー、ことジュリア・ウエストウッドは、北方のヘデス王国の第二王女の娘じゃ。
妾の母上が第三王女だったから、従姉妹ということになる。
今は国内のウエストウッド伯爵に母君が嫁いだので、ヘデスの名ではないが、第二王女の娘であるジョーはもちろん王族の一員なのじゃ。
ヘデス王国はドラゴニア帝国の属国なので、互いに関係は良好・・・・・・と妾は思うておったが、ヘデス一族は皇帝を、大切な第三王女を誑かした極悪非道の人物と認識しているらしい。
それで、呪われた子を産むことになった可哀想な第三王女を心配しつつも、帝国とは一定の距離を取っている。
ちなみに、妾のことも第三王女を呪う子どもとして、毛嫌いしているということじゃ。
すんごい凹むわ~~。
ジョーも最初は妾を憎んでおったようじゃが、今ではすっかりマブダチになっておる。
毎日、昼休みに隣のクラスからやって来て、食堂でランチをする仲じゃ。
シェン君は、他の男子と昼は過ごしておるから、妾はボッチを回避できて助かっておる。
なんか、いまだにクラスの女子からは遠巻きにされておるのでな・・・・・・。
そんなジョーに誘われて、妾とシェン君は冬季休暇の始めにヘデス王国に行くことになったのじゃ。
妾はヘデス家の面々に顔を合わせるのが少し怖いのじゃが、ジョー曰く。
「大丈夫よ! みんな話せばわかる人たちだから! 特にうちのママンは、わたしと同じタイプだから仲良くなれるわよ」
らしい。
楽観的すぎる気もするが、本人がそう言っておるのでな。
なんとかしてくれるはずじゃ。
兎にも角にも、妾はヘデス王国に行く必要があるので、この誘いを断ることは出来なかった。
なぜなら、ヘデス王国とドラゴニア帝国の境に、例のホロウバステオンがあるからじゃ。
こんな誘いでもない限り、妾がおいそれとホロウバステオンに旅行に行くことなどできぬし、ジョーもそのために誘ってくれたのだから感謝しかない。
父上や他の兄姉たちには、友だちの家に遊びに行くとだけ言えばいいのじゃからな。
シェン君の方は、ちょっとお付きの侍従に反対されたらしい。
冬季休暇は毎年、帝国の南にある温暖な保養地で過ごしていたらしいので、なぜ北に!? と嫌がられたと言っておった。
シェン君の実家は、東方のアラガンなので、二週間しかない冬休みには帰らず、毎年、夏休みに帰るらしい。
そのうち妾もアラガンに行けたらいいなぁと思うておる。
遠いから父上にダメだと言われるかもしれぬが。
まずは初めての冬休み。
ジョーとシェン君と、ヘデス王国へ赴き、帰りの道中にホロウバステオンに立ち寄るのじゃ。
楽しみなような、ちょっぴり怖いようなーーー。
それにしても、この日記も長くなってきたのぅ。
学園に通うようになって書くことがいっぱいなのじゃ。
帝国の臣民であるみなのためにも、妾は明日もがんばるのでな。
ではまたな~~!
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