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一人でできるもん
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呪いを解こうとしたら吸血蛾の手下に何かされるかもしれない。
解こうとしなくても、父上が妾を危険人物だと判断したら処刑されるかもしれない。
どちらにせよ、この呪いは良い事などないのだ。
それに、妾は母上の病気を治したい。
だから呪いは絶対に解かなければならないのじゃ。
「禁書にある通り、妾が吸血蛾の呪いにかかっていることは判明した。だったら手下を見つけて排除するしかあるまい」
妾は立ち上がってポンポンと服の埃を払った。
「ミリィ、でも本当に危険だぞ?」
「それはそうじゃろ。だからシェン君も他のみなも、もうこの件に関わるではないわ」
「なっ、何言ってんだ!」
シェン君も他の三人も、妾の問題には何の関係もない。
ここから先は自分だけで何とかしたい。
「手下が妾の周りに潜んでいるのなら、見つけられるのは妾だけじゃ」
ポーキュリが顎に指を当てて考えるように妾を見た。
「ひめ様は手下を見つけてどうする気なんだ? 人間に擬態しているなら手を出しにくいだろう」
それは妾も考えた。
「うむ。手立てはある・・・・・・と思う」
「へぇ。何か策があるのか」
感心しているポーキュリにシェン君が「違うだろ!」と怒鳴った。
「こいつに一人で危ないことをさせる気か? 策があろうがなかろうが、おれは一緒に手下を見つけて何とかするからな」
今度は妾が怒鳴られる。
「おい、ミリィ! 絶対に! 一人でやろうとするなよ!」
さっきからシェン君はずっと怒っておるが、それが妾を心配しているからだとわかると、なんだか少し不安が和らいだ気がした。
じゃが、それとこれとは別じゃ。
妾は一人でやらねばならぬ。
妾にかけられた呪いで、大切な人が傷つくのはもうごめんじゃ。
「ねえ」
唐突にジョーが不満そうに割って入った。
「手下は五匹もいるんでしょ。全部一人でなんとかするなんて無理よ」
「そ、そうだぞ!」
シェン君も勢いづいたように頷く。
「わたしは協力するって言ったのを撤回しないからね」
「おれもだ!」
ジョーとシェン君が真剣な顔で見てくる。
「うっ・・・・・・。で、でもすごく危険なんじゃ。命を狙われるかもしれぬ」
妾の決意だって固い。
せっかくできた友だちを失いたくないのじゃ。
わかってもらいたい。
シェン君と妾が睨み合う。
そこに会長がさらに入ってきた。
「とりあえず、わたしはホロウバステオンに行くわ。父親のことがあるから、バーミリオンが反対しても絶対に行って、そいつがいたら捕まえて、何か知っているなら聞き出したい」
会長の決意も固そうじゃ。
ポーキュリは相変わらず何を考えているのかわからぬ無表情だったが、一言。
「ぼくも会長と行くよ」
妾はわなわなと肩を震わせた。
「それじゃあ結局、みな関わっておるではないか!」
「仕方ないじゃない。それに最初からわかっていたでしょう。わたしは父親のことを、バーミリオンは呪いを、互いに調べていることは違っても、終着点が同じことはあり得る。だからこそ、この呪術同好会に参加したんでしょう」
「それは・・・・・・そうじゃが」
「危険なことはみんなわかってるわ。まあ、ポーキュリは単に好奇心だから別だけど、そっちの二人はあなたのために手伝いたいのよ。さっきの黒い影を見ても逃げないんだから、それなりに覚悟はあるんじゃない?」
あまり邪険にすべきでないと会長に言われて、妾はうな垂れた。
一人でやるんだもん! という決意が揺らいでくる。
「なぁ、ミリィ。おれはアラガンで剣術も魔術も習っていたし、おまえが思ってるより強いんだぜ。そりゃ名だたる帝国の騎士とは違うけど、少しぐらい役に立ってみせるからさ」
「シェン君・・・・・・」
妾は心配しすぎなんじゃろうか。
すると、ジョーが雰囲気をぶち壊すようなことを言った。
「言っとくけどわたしは弱いからね。すぐ逃げるから」
「・・・・・・お、おう」
シェン君が驚いた顔でジョーを見返す。
ジョーがなぜか自信満々なので、妾は思わず「ふはは」と笑ってしまったのじゃ。
「本当に危なくなったら逃げるのじゃぞ」
妾が笑いながら言うと、ジョーは「当たり前でしょ。一目散よ」と真面目に返すので、今度は全員が笑った。
今日のところはここまでにして、詳しい話は明日にしようと解散すると、妾はメディア寮に戻ってきた。
寮の玄関先で立ち止まる。
「うーむ、まだ舌が痺れておるわ」
会長に呪いを発動するために食べさせられた肉片のせいで口の中がイガイガしている。
「あれは何の肉だったんじゃ?」
すっかり聞くのを忘れていた。
「知らぬがなんとやら、かもしれぬな」
でも気になる。
明日、聞いてみよう。
妾は気を取り直して寮の扉を開いた。
解こうとしなくても、父上が妾を危険人物だと判断したら処刑されるかもしれない。
どちらにせよ、この呪いは良い事などないのだ。
それに、妾は母上の病気を治したい。
だから呪いは絶対に解かなければならないのじゃ。
「禁書にある通り、妾が吸血蛾の呪いにかかっていることは判明した。だったら手下を見つけて排除するしかあるまい」
妾は立ち上がってポンポンと服の埃を払った。
「ミリィ、でも本当に危険だぞ?」
「それはそうじゃろ。だからシェン君も他のみなも、もうこの件に関わるではないわ」
「なっ、何言ってんだ!」
シェン君も他の三人も、妾の問題には何の関係もない。
ここから先は自分だけで何とかしたい。
「手下が妾の周りに潜んでいるのなら、見つけられるのは妾だけじゃ」
ポーキュリが顎に指を当てて考えるように妾を見た。
「ひめ様は手下を見つけてどうする気なんだ? 人間に擬態しているなら手を出しにくいだろう」
それは妾も考えた。
「うむ。手立てはある・・・・・・と思う」
「へぇ。何か策があるのか」
感心しているポーキュリにシェン君が「違うだろ!」と怒鳴った。
「こいつに一人で危ないことをさせる気か? 策があろうがなかろうが、おれは一緒に手下を見つけて何とかするからな」
今度は妾が怒鳴られる。
「おい、ミリィ! 絶対に! 一人でやろうとするなよ!」
さっきからシェン君はずっと怒っておるが、それが妾を心配しているからだとわかると、なんだか少し不安が和らいだ気がした。
じゃが、それとこれとは別じゃ。
妾は一人でやらねばならぬ。
妾にかけられた呪いで、大切な人が傷つくのはもうごめんじゃ。
「ねえ」
唐突にジョーが不満そうに割って入った。
「手下は五匹もいるんでしょ。全部一人でなんとかするなんて無理よ」
「そ、そうだぞ!」
シェン君も勢いづいたように頷く。
「わたしは協力するって言ったのを撤回しないからね」
「おれもだ!」
ジョーとシェン君が真剣な顔で見てくる。
「うっ・・・・・・。で、でもすごく危険なんじゃ。命を狙われるかもしれぬ」
妾の決意だって固い。
せっかくできた友だちを失いたくないのじゃ。
わかってもらいたい。
シェン君と妾が睨み合う。
そこに会長がさらに入ってきた。
「とりあえず、わたしはホロウバステオンに行くわ。父親のことがあるから、バーミリオンが反対しても絶対に行って、そいつがいたら捕まえて、何か知っているなら聞き出したい」
会長の決意も固そうじゃ。
ポーキュリは相変わらず何を考えているのかわからぬ無表情だったが、一言。
「ぼくも会長と行くよ」
妾はわなわなと肩を震わせた。
「それじゃあ結局、みな関わっておるではないか!」
「仕方ないじゃない。それに最初からわかっていたでしょう。わたしは父親のことを、バーミリオンは呪いを、互いに調べていることは違っても、終着点が同じことはあり得る。だからこそ、この呪術同好会に参加したんでしょう」
「それは・・・・・・そうじゃが」
「危険なことはみんなわかってるわ。まあ、ポーキュリは単に好奇心だから別だけど、そっちの二人はあなたのために手伝いたいのよ。さっきの黒い影を見ても逃げないんだから、それなりに覚悟はあるんじゃない?」
あまり邪険にすべきでないと会長に言われて、妾はうな垂れた。
一人でやるんだもん! という決意が揺らいでくる。
「なぁ、ミリィ。おれはアラガンで剣術も魔術も習っていたし、おまえが思ってるより強いんだぜ。そりゃ名だたる帝国の騎士とは違うけど、少しぐらい役に立ってみせるからさ」
「シェン君・・・・・・」
妾は心配しすぎなんじゃろうか。
すると、ジョーが雰囲気をぶち壊すようなことを言った。
「言っとくけどわたしは弱いからね。すぐ逃げるから」
「・・・・・・お、おう」
シェン君が驚いた顔でジョーを見返す。
ジョーがなぜか自信満々なので、妾は思わず「ふはは」と笑ってしまったのじゃ。
「本当に危なくなったら逃げるのじゃぞ」
妾が笑いながら言うと、ジョーは「当たり前でしょ。一目散よ」と真面目に返すので、今度は全員が笑った。
今日のところはここまでにして、詳しい話は明日にしようと解散すると、妾はメディア寮に戻ってきた。
寮の玄関先で立ち止まる。
「うーむ、まだ舌が痺れておるわ」
会長に呪いを発動するために食べさせられた肉片のせいで口の中がイガイガしている。
「あれは何の肉だったんじゃ?」
すっかり聞くのを忘れていた。
「知らぬがなんとやら、かもしれぬな」
でも気になる。
明日、聞いてみよう。
妾は気を取り直して寮の扉を開いた。
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