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消えない灰色の雪のように
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ショックで固まってしまった妾の代わりにシェン君が言い返した。
「おい、おまえ何言ってんだよ」
「関係ない人は黙ってて」
女生徒が妾をまっすぐに指差す。
「あなたのせいでマシロ様は一生治らないって聞いたわ。快活な方だったのに。わたしの母さんが言ってたんだから。皇帝の四番目の妻にされたとき、すでに八人の子がいて、側妃として子を産むなら絶対に産まれるのは九番目だったって。それって、呪われた子をわざとマシロ様に産ませたってことじゃない」
「わ、妾は・・・・・・」
呪いたくて母上を呪ったわけではない、と言おうとしたが声が詰まってしまった。
「しかも、あなたがお腹の中にいた時から呪いが始まっていたんでしょ。何度も呪われたせいでマシロ様は起き上がることも難しいそうじゃない。ヘデスの家の者はみんなあなたのこと認めてないから」
頭が真っ白じゃ。
恐ろしくて手が震えてきた。
「あなたなんかヘデスを名乗る資格ないわ」
一方的な女生徒の怒りに返す言葉もない。
「もうやめろって! 出てけ!」
シェン君が妾の前に立ち塞がり、女生徒を廊下の方へ強引に押し出した。
「ちょ、痛いじゃない!」
「さっさと出てけ!」
二人が怒鳴り合っているのを妾は止めた。
「ま、待つのじゃ」
ようやく声が出たけれど震えていた。
「その通りなのじゃ。妾のせいで、母上は病気になってしもうた」
「ミリィ・・・・・・」
シェン君が振り返った。
女生徒もきつい眼差しで見ている。
「母上は体調が良くないから、妾は滅多に会うことができないけれど、会うといつも優しくしてくれるのじゃ。妾のせいなのに・・・・・・。申し訳ない思いでいっぱいじゃ。でも、わ、妾は母上が・・・・・・大好きなのじゃ」
なんとか言えたものの、ぽろぽろ涙が溢れてきた。
「ちょ、ちょっと、泣かないでよ」
「母上が治るのなら何でもするが、どうしたら良いのか妾にはわからぬ。呪いを解けば母上が治るかもしれぬ。だから、妾はここでがんばってみようと思おておる」
ここは呪術同好会じゃ。
妾にかかっている皇帝の九番目の子の呪いがなぜかけられたのか、どうすれば解けるのか、探す手掛かりが得られるかもしれない。
女生徒も気づいたように部屋を見回した。
「それでここに・・・・・・」
妾が泣いてしまったからか、部屋が不気味だったからかわからぬが、女生徒は気が削がれた様子で帰って行った。
「大丈夫か、ミリィ?」
「わ、妾は平気じゃ。こんなのへっちゃらじゃ」
シェン君が心配そうにしておるが、妾は涙を拭いて笑い返した。
「ミリィ・・・・・・」
「宮でも同じようなことを言う者はいたからの。慣れておる」
それでもシェン君は眉毛がへんにょりしてしまっている。
妾は明るい調子でシェン君を促した。
「さてと、今日はもう帰ろうかの。妾、ちょっと客が多くて疲れてしもうた」
「・・・・・・ああ」
メディア寮に戻ると、ヤンヤンが落ち込んでいる妾に気づいてしまった。
「まあ、どうしたのです? ひめ様」
「何でもないのじゃ」
ヤンヤンに話すと事が大きくなってしまうかもしれぬ。
それはダメじゃ。
あの子が言ったことは何も間違ってないからの。
妾は母上のために一刻も早く呪いを解きたいという気持ちをさらに大きくしたのじゃ。
翌日の放課後、呪術同好会につくと、ドアの前に従姉妹が待っていた。
「おまえ、懲りもせずまた・・・・・・」
シェン君が妾を庇うように前に出る。
「バーミリオン!」
女生徒がシェン君の後ろの妾に声をかけてくる。
「わたし決めたわ!」
「な、何をじゃ?」
「わたしもマシロ様のために、あなたに協力してあげるわ」
「・・・・・・えっ?」
「わたし、ジュリア・ウエストウッドは呪術同好会に入ってあなたの呪いを解くことにしたわ」
「えええええッッ!?」
な、なんでそうなるんじゃ?
この子、昨日まで妾を憎んでたはずじゃないのか?
さっぱりわからぬが、「ふふん」と鼻息荒く不敵な笑みを浮かべておる。
「ええっと・・・・・・? ど、どうするんだ、ミリィ?」
さしものシェン君も困惑げじゃ。
妾はグレーの髪のウエストウッドをまじまじと見た。
誰かに似ていると思ったのは母上だったのじゃ。
灰色の目も白い肌も、薄いグレーの髪も、北方の領地の竜族の特徴を表している。
何よりウエストウッドの少し上がり気味の目元は母上にそっくりだった。
「本当に協力してくれるのか?」
「ええ。わたしとあなたの望みは同じみたいだもの」
「・・・・・・わかったのじゃ」
妾は大きく頷いた。
だが、シェン君は納得できないらしい。
「いいのか、ミリィ? こいつ、信用できないぞ」
「失礼ねぇ。昨日も言ったけど、関係ないあなたこそ黙っててよ」
「はぁ? おれは関係なくない。ミリィの・・・・・・」
「ミリィの何よ?」
「・・・・・・だ、だからおれは、ミリィの、その・・・・・・友だちだから」
なぜか最後の方は小声になっていったが、どうしてなのじゃ?
急にもじもじしているシェン君をウエストウッドが怪訝そうに睨んでおった。
「おい、おまえ何言ってんだよ」
「関係ない人は黙ってて」
女生徒が妾をまっすぐに指差す。
「あなたのせいでマシロ様は一生治らないって聞いたわ。快活な方だったのに。わたしの母さんが言ってたんだから。皇帝の四番目の妻にされたとき、すでに八人の子がいて、側妃として子を産むなら絶対に産まれるのは九番目だったって。それって、呪われた子をわざとマシロ様に産ませたってことじゃない」
「わ、妾は・・・・・・」
呪いたくて母上を呪ったわけではない、と言おうとしたが声が詰まってしまった。
「しかも、あなたがお腹の中にいた時から呪いが始まっていたんでしょ。何度も呪われたせいでマシロ様は起き上がることも難しいそうじゃない。ヘデスの家の者はみんなあなたのこと認めてないから」
頭が真っ白じゃ。
恐ろしくて手が震えてきた。
「あなたなんかヘデスを名乗る資格ないわ」
一方的な女生徒の怒りに返す言葉もない。
「もうやめろって! 出てけ!」
シェン君が妾の前に立ち塞がり、女生徒を廊下の方へ強引に押し出した。
「ちょ、痛いじゃない!」
「さっさと出てけ!」
二人が怒鳴り合っているのを妾は止めた。
「ま、待つのじゃ」
ようやく声が出たけれど震えていた。
「その通りなのじゃ。妾のせいで、母上は病気になってしもうた」
「ミリィ・・・・・・」
シェン君が振り返った。
女生徒もきつい眼差しで見ている。
「母上は体調が良くないから、妾は滅多に会うことができないけれど、会うといつも優しくしてくれるのじゃ。妾のせいなのに・・・・・・。申し訳ない思いでいっぱいじゃ。でも、わ、妾は母上が・・・・・・大好きなのじゃ」
なんとか言えたものの、ぽろぽろ涙が溢れてきた。
「ちょ、ちょっと、泣かないでよ」
「母上が治るのなら何でもするが、どうしたら良いのか妾にはわからぬ。呪いを解けば母上が治るかもしれぬ。だから、妾はここでがんばってみようと思おておる」
ここは呪術同好会じゃ。
妾にかかっている皇帝の九番目の子の呪いがなぜかけられたのか、どうすれば解けるのか、探す手掛かりが得られるかもしれない。
女生徒も気づいたように部屋を見回した。
「それでここに・・・・・・」
妾が泣いてしまったからか、部屋が不気味だったからかわからぬが、女生徒は気が削がれた様子で帰って行った。
「大丈夫か、ミリィ?」
「わ、妾は平気じゃ。こんなのへっちゃらじゃ」
シェン君が心配そうにしておるが、妾は涙を拭いて笑い返した。
「ミリィ・・・・・・」
「宮でも同じようなことを言う者はいたからの。慣れておる」
それでもシェン君は眉毛がへんにょりしてしまっている。
妾は明るい調子でシェン君を促した。
「さてと、今日はもう帰ろうかの。妾、ちょっと客が多くて疲れてしもうた」
「・・・・・・ああ」
メディア寮に戻ると、ヤンヤンが落ち込んでいる妾に気づいてしまった。
「まあ、どうしたのです? ひめ様」
「何でもないのじゃ」
ヤンヤンに話すと事が大きくなってしまうかもしれぬ。
それはダメじゃ。
あの子が言ったことは何も間違ってないからの。
妾は母上のために一刻も早く呪いを解きたいという気持ちをさらに大きくしたのじゃ。
翌日の放課後、呪術同好会につくと、ドアの前に従姉妹が待っていた。
「おまえ、懲りもせずまた・・・・・・」
シェン君が妾を庇うように前に出る。
「バーミリオン!」
女生徒がシェン君の後ろの妾に声をかけてくる。
「わたし決めたわ!」
「な、何をじゃ?」
「わたしもマシロ様のために、あなたに協力してあげるわ」
「・・・・・・えっ?」
「わたし、ジュリア・ウエストウッドは呪術同好会に入ってあなたの呪いを解くことにしたわ」
「えええええッッ!?」
な、なんでそうなるんじゃ?
この子、昨日まで妾を憎んでたはずじゃないのか?
さっぱりわからぬが、「ふふん」と鼻息荒く不敵な笑みを浮かべておる。
「ええっと・・・・・・? ど、どうするんだ、ミリィ?」
さしものシェン君も困惑げじゃ。
妾はグレーの髪のウエストウッドをまじまじと見た。
誰かに似ていると思ったのは母上だったのじゃ。
灰色の目も白い肌も、薄いグレーの髪も、北方の領地の竜族の特徴を表している。
何よりウエストウッドの少し上がり気味の目元は母上にそっくりだった。
「本当に協力してくれるのか?」
「ええ。わたしとあなたの望みは同じみたいだもの」
「・・・・・・わかったのじゃ」
妾は大きく頷いた。
だが、シェン君は納得できないらしい。
「いいのか、ミリィ? こいつ、信用できないぞ」
「失礼ねぇ。昨日も言ったけど、関係ないあなたこそ黙っててよ」
「はぁ? おれは関係なくない。ミリィの・・・・・・」
「ミリィの何よ?」
「・・・・・・だ、だからおれは、ミリィの、その・・・・・・友だちだから」
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