18 / 70
友だちできた、のか?
しおりを挟む
シェン君に案内され校内を歩いて行くと、妾はすぐに気づいた。
この学校、めちゃくちゃ広いんじゃ~~~!
ちょっと困ってしまうのぉ。
妾、道を覚えるのが苦手なのじゃ。
右を見ても左を見ても同じような建物ばかり。
というか、まったく同じ茶色の煉瓦造りの建物が校内に乱立しておる。
「まあ、最初はみんな迷うよな。おれも去年はよく迷ってた」
シェン君が苦笑いで教えてくれた。
「おれは中央にある十字の校舎を目印にしてる。中央棟って呼ばれてるんだ。そこから渡り廊下で繋がる北側に建つのが専門棟、西側が中等科、南側が高等科、東側が初等科だよ。大学はもうちょっと離れた建物だ」
「う、うむ。自分のところだけ覚えたいのぉ」
「それなら中央棟と、ほら向こうに競技場があるだろ」
シェン君が指差している方を見ると、確かに手入れされた芝生と赤茶の土のコントラストがきれいな広々とした競技場があった。
「競技場と中央棟の間にあるのが中等科だ」
「なるほど」
とりあえずそれだけ頭に刻んでおこう。
「あとは北側の専門棟はよく行くと思う。音楽とか美術の授業はそこでやるんだ」
簡単にいろいろ教えてくれて本当に助かるのじゃ。
持つべきものは友だちじゃな。
ん? 友だち?
妾は隣のツノ男子を見た。
「もしかして、妾はシェン君と友だちになったのかの?」
「えっ? ええっ!?」
「いや、そんな驚かなくてもよかろう。違うのならすまぬ」
「いや、ち、違わない、かな?」
「どっちなのじゃ?」
「・・・・・・と、友だち、でいいけど別に」
急にもじもじしているシェン君が奇妙じゃが、どうやら友だち! ができたようじゃ。
「妾、初めての友だちじゃ。嬉しいの~」
「お、おれは初めてじゃないけどな」
シェン君、それは余計な一言じゃぞ。
「妾のような立場だと普通の友だちなんて作れないからの。最初の友だちは女の子がよかったが。あ、もしかしてシェン君は実は女の子ということはーーー」
「いや、どう見てもおれは男だろ」
「そうじゃな~」
「ガッカリするなよ、失礼だぞ」
妾とシェン君は中央棟の西側の渡り廊下にいたが、そこから歩き出し、競技場の方へ向かった。
部活動はそちらでしているらしい。
「おれも部活には縁がないから、あまりよくは知らないんだ」
「ふむ。なら、妾と見学させてもらえばいいのではないか?」
連れ立って歩いて行くと、競技場の左手に大きな二階建ての白い建物が見えてきた。
「あれが部活用の棟で、一階が運動部、二階は文化部が使っているらしい。バーミリオンは・・・・・・」
そこでシェン君の言葉が途切れた。
「ん? どうしたのじゃ?」
「い、いや、おれはおまえのことを何て呼ぶべきなんだ?」
「なんじゃ、そんなことか。好きに呼べばよかろう」
「一応、校内では身分制度は考慮しないことになっているけど、貴族はうるさいからな。バーミリオン様って呼ぶやつが多いと思う。おれも本来はそうすべきだろ」
クラスメイトで友だちなのに、様付けはないじゃろ。
そんなの楽しい学校生活が興醒めになるわ。
「いやじゃ!」
断固とした態度で拒否する。
「えっと、じゃあバーミリオン姫? 殿下? バーミリオンさん? それもおかしいな」
「どれもダメじゃ!」
「だからって呼び捨てにするのもなぁ」
悩み始めたシェン君に、妾は呆れ顔を向けた。
「呼び捨てで構わぬ。妾もシェンと呼べば、互いに仲良しの友だちに見えるじゃろ」
「そ、それは、ちょっと・・・・・・」
「なんじゃ、友だちに見られたくないのか?」
だとしたら、ちょっとショックじゃ。
「違うよ。でもほら、バーミリオンだと長いし」
「ん~~、それならバーニーとか、ミリィとか、リオンとか、あだ名で呼ぶのはどうじゃ?」
「まあ、それなら」
あだ名はいいのか?
基準がおかしくないかの?
妾をあだ名で呼ぶのは兄姉でもいないのじゃが。
「ふむ、ならおぬしのことはツノツノと呼ぶぞ」
「はぁ? 絶対やめろ!」
「なんでじゃ? あだ名で呼び合いたいのではないのか?」
「いや、でも、それはない」
ワガママなヤツじゃな。
「だったらなんと呼べばいいのじゃ?」
「おれはシェンでいいけど」
「なんじゃ、つまらぬ」
結局、妾は『シェン君』と呼び、シェン君は『ミリィ』と呼ぶことになったのじゃ。
しかし、これでさらに友だちっぽくなってきたのではないか?
妾はウキウキしながら部室棟に近づいて行った。
この学校、めちゃくちゃ広いんじゃ~~~!
ちょっと困ってしまうのぉ。
妾、道を覚えるのが苦手なのじゃ。
右を見ても左を見ても同じような建物ばかり。
というか、まったく同じ茶色の煉瓦造りの建物が校内に乱立しておる。
「まあ、最初はみんな迷うよな。おれも去年はよく迷ってた」
シェン君が苦笑いで教えてくれた。
「おれは中央にある十字の校舎を目印にしてる。中央棟って呼ばれてるんだ。そこから渡り廊下で繋がる北側に建つのが専門棟、西側が中等科、南側が高等科、東側が初等科だよ。大学はもうちょっと離れた建物だ」
「う、うむ。自分のところだけ覚えたいのぉ」
「それなら中央棟と、ほら向こうに競技場があるだろ」
シェン君が指差している方を見ると、確かに手入れされた芝生と赤茶の土のコントラストがきれいな広々とした競技場があった。
「競技場と中央棟の間にあるのが中等科だ」
「なるほど」
とりあえずそれだけ頭に刻んでおこう。
「あとは北側の専門棟はよく行くと思う。音楽とか美術の授業はそこでやるんだ」
簡単にいろいろ教えてくれて本当に助かるのじゃ。
持つべきものは友だちじゃな。
ん? 友だち?
妾は隣のツノ男子を見た。
「もしかして、妾はシェン君と友だちになったのかの?」
「えっ? ええっ!?」
「いや、そんな驚かなくてもよかろう。違うのならすまぬ」
「いや、ち、違わない、かな?」
「どっちなのじゃ?」
「・・・・・・と、友だち、でいいけど別に」
急にもじもじしているシェン君が奇妙じゃが、どうやら友だち! ができたようじゃ。
「妾、初めての友だちじゃ。嬉しいの~」
「お、おれは初めてじゃないけどな」
シェン君、それは余計な一言じゃぞ。
「妾のような立場だと普通の友だちなんて作れないからの。最初の友だちは女の子がよかったが。あ、もしかしてシェン君は実は女の子ということはーーー」
「いや、どう見てもおれは男だろ」
「そうじゃな~」
「ガッカリするなよ、失礼だぞ」
妾とシェン君は中央棟の西側の渡り廊下にいたが、そこから歩き出し、競技場の方へ向かった。
部活動はそちらでしているらしい。
「おれも部活には縁がないから、あまりよくは知らないんだ」
「ふむ。なら、妾と見学させてもらえばいいのではないか?」
連れ立って歩いて行くと、競技場の左手に大きな二階建ての白い建物が見えてきた。
「あれが部活用の棟で、一階が運動部、二階は文化部が使っているらしい。バーミリオンは・・・・・・」
そこでシェン君の言葉が途切れた。
「ん? どうしたのじゃ?」
「い、いや、おれはおまえのことを何て呼ぶべきなんだ?」
「なんじゃ、そんなことか。好きに呼べばよかろう」
「一応、校内では身分制度は考慮しないことになっているけど、貴族はうるさいからな。バーミリオン様って呼ぶやつが多いと思う。おれも本来はそうすべきだろ」
クラスメイトで友だちなのに、様付けはないじゃろ。
そんなの楽しい学校生活が興醒めになるわ。
「いやじゃ!」
断固とした態度で拒否する。
「えっと、じゃあバーミリオン姫? 殿下? バーミリオンさん? それもおかしいな」
「どれもダメじゃ!」
「だからって呼び捨てにするのもなぁ」
悩み始めたシェン君に、妾は呆れ顔を向けた。
「呼び捨てで構わぬ。妾もシェンと呼べば、互いに仲良しの友だちに見えるじゃろ」
「そ、それは、ちょっと・・・・・・」
「なんじゃ、友だちに見られたくないのか?」
だとしたら、ちょっとショックじゃ。
「違うよ。でもほら、バーミリオンだと長いし」
「ん~~、それならバーニーとか、ミリィとか、リオンとか、あだ名で呼ぶのはどうじゃ?」
「まあ、それなら」
あだ名はいいのか?
基準がおかしくないかの?
妾をあだ名で呼ぶのは兄姉でもいないのじゃが。
「ふむ、ならおぬしのことはツノツノと呼ぶぞ」
「はぁ? 絶対やめろ!」
「なんでじゃ? あだ名で呼び合いたいのではないのか?」
「いや、でも、それはない」
ワガママなヤツじゃな。
「だったらなんと呼べばいいのじゃ?」
「おれはシェンでいいけど」
「なんじゃ、つまらぬ」
結局、妾は『シェン君』と呼び、シェン君は『ミリィ』と呼ぶことになったのじゃ。
しかし、これでさらに友だちっぽくなってきたのではないか?
妾はウキウキしながら部室棟に近づいて行った。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる