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友だちできた、のか?

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 シェン君に案内され校内を歩いて行くと、妾はすぐに気づいた。
 この学校、めちゃくちゃ広いんじゃ~~~!
 ちょっと困ってしまうのぉ。
 妾、道を覚えるのが苦手なのじゃ。
 右を見ても左を見ても同じような建物ばかり。
 というか、まったく同じ茶色の煉瓦造りの建物が校内に乱立しておる。

「まあ、最初はみんな迷うよな。おれも去年はよく迷ってた」

 シェン君が苦笑いで教えてくれた。

「おれは中央にある十字の校舎を目印にしてる。中央棟って呼ばれてるんだ。そこから渡り廊下で繋がる北側に建つのが専門棟、西側が中等科、南側が高等科、東側が初等科だよ。大学はもうちょっと離れた建物だ」
「う、うむ。自分のところだけ覚えたいのぉ」
「それなら中央棟と、ほら向こうに競技場があるだろ」

 シェン君が指差している方を見ると、確かに手入れされた芝生と赤茶の土のコントラストがきれいな広々とした競技場があった。

「競技場と中央棟の間にあるのが中等科だ」
「なるほど」

 とりあえずそれだけ頭に刻んでおこう。

「あとは北側の専門棟はよく行くと思う。音楽とか美術の授業はそこでやるんだ」

 簡単にいろいろ教えてくれて本当に助かるのじゃ。
 持つべきものは友だちじゃな。
 ん? 友だち?
 妾は隣のツノ男子を見た。

「もしかして、妾はシェン君と友だちになったのかの?」
「えっ? ええっ!?」
「いや、そんな驚かなくてもよかろう。違うのならすまぬ」
「いや、ち、違わない、かな?」
「どっちなのじゃ?」
「・・・・・・と、友だち、でいいけど別に」

 急にもじもじしているシェン君が奇妙じゃが、どうやら友だち! ができたようじゃ。

「妾、初めての友だちじゃ。嬉しいの~」
「お、おれは初めてじゃないけどな」

 シェン君、それは余計な一言じゃぞ。

「妾のような立場だと普通の友だちなんて作れないからの。最初の友だちは女の子がよかったが。あ、もしかしてシェン君は実は女の子ということはーーー」
「いや、どう見てもおれは男だろ」
「そうじゃな~」
「ガッカリするなよ、失礼だぞ」

 妾とシェン君は中央棟の西側の渡り廊下にいたが、そこから歩き出し、競技場の方へ向かった。
 部活動はそちらでしているらしい。

「おれも部活には縁がないから、あまりよくは知らないんだ」
「ふむ。なら、妾と見学させてもらえばいいのではないか?」

 連れ立って歩いて行くと、競技場の左手に大きな二階建ての白い建物が見えてきた。

「あれが部活用の棟で、一階が運動部、二階は文化部が使っているらしい。バーミリオンは・・・・・・」

 そこでシェン君の言葉が途切れた。

「ん? どうしたのじゃ?」
「い、いや、おれはおまえのことを何て呼ぶべきなんだ?」
「なんじゃ、そんなことか。好きに呼べばよかろう」
「一応、校内では身分制度は考慮しないことになっているけど、貴族はうるさいからな。バーミリオン様って呼ぶやつが多いと思う。おれも本来はそうすべきだろ」

 クラスメイトで友だちなのに、様付けはないじゃろ。
 そんなの楽しい学校生活が興醒めになるわ。

「いやじゃ!」

 断固とした態度で拒否する。

「えっと、じゃあバーミリオン姫? 殿下? バーミリオンさん? それもおかしいな」
「どれもダメじゃ!」
「だからって呼び捨てにするのもなぁ」

 悩み始めたシェン君に、妾は呆れ顔を向けた。

「呼び捨てで構わぬ。妾もシェンと呼べば、互いに仲良しの友だちに見えるじゃろ」
「そ、それは、ちょっと・・・・・・」
「なんじゃ、友だちに見られたくないのか?」

 だとしたら、ちょっとショックじゃ。

「違うよ。でもほら、バーミリオンだと長いし」
「ん~~、それならバーニーとか、ミリィとか、リオンとか、あだ名で呼ぶのはどうじゃ?」
「まあ、それなら」

 あだ名はいいのか?
 基準がおかしくないかの?
 妾をあだ名で呼ぶのは兄姉でもいないのじゃが。

「ふむ、ならおぬしのことはツノツノと呼ぶぞ」
「はぁ? 絶対やめろ!」
「なんでじゃ? あだ名で呼び合いたいのではないのか?」
「いや、でも、それはない」

 ワガママなヤツじゃな。

「だったらなんと呼べばいいのじゃ?」
「おれはシェンでいいけど」
「なんじゃ、つまらぬ」

 結局、妾は『シェン君』と呼び、シェン君は『ミリィ』と呼ぶことになったのじゃ。
 しかし、これでさらに友だちっぽくなってきたのではないか?
 妾はウキウキしながら部室棟に近づいて行った。

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