ガチ・女神転生――顔だけ強面な男が女神に転生。堕女神に異世界の管理を押し付けられました!

昼行灯

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無人島漂流編

危険な食事

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 結局、天馬は乾かした服で髪と体を拭き、再度乾かすという二度手間を負う羽目になった。

 水で汗を流し、髪に付いた砂や埃などを洗い流す。

 しかし、天馬は自分の体が予想以上に柔らかいことに驚愕し、緊張で動きがぎこちなくなってしまう。こんな時ばかりは、女性慣れしていない自分を、恨めしく思わずにはいられない。

 結局、最後まで天馬は、自分の体の感触に慣れることはなく、終始顔を赤くしたまま、体を洗ったのだった。

 その後も、長い髪は乾くのに時間が掛かり、水に濡れるとけっこうな重さを感じるんだな、と天馬は世の長髪女性に同情したりもした……

 ちなみに、体や髪を拭いた服は、再度洗い直した。

 服の脱水が終わって、再び着衣したのは、夜空に星が瞬き始めた頃だった。

「お腹、すいたなぁ……」

 きゅ~、とかわいい音がお腹から響いてくる。

 天馬は夕方に興した焚き火の前に、これまた夕方に回収した葉っぱを敷き、体育座りで暖をとっていた。

 陽射しで乾かせなかった分、生乾きの服が気持ち悪い。

 しかも、

「はぁ……薪を集めるのに夢中になって、食べ物を探すの忘れてた……」

 きゅ~……

 またしても、天馬のお腹の中で、一匹の虫が食べ物を要求する。

「そんなにせっつかれても、今日はもう無理だって……」

 目の前には夜の帳が下りて、真っ暗になった森。
 昼間とは違い、まるで獣が口を開けて獲物を待っているようにも見える。
 風で草木が僅かに揺れるだけで、得体の知れないものが後ろに潜んでいるような錯覚を起こす。

「夜の森って、かなり不気味だな……」

 暗い獣のように、寂寥という名の感情が侵入してくるのを、天馬はかぶりを振って追い出す。

「腹が減ってるから、弱気になるんだな……」

 明日こそは、何か食べるものを……と意気込み、天馬は焚き火に薪をくべる。
 しばらくそうして、ぼうっと揺れる火を眺めていたが、

「はぁ、もう寝よ……」

 小さくため息を吐きながら、そう呟いた。

 4枚回収した大きな葉っぱの内、2枚は服を乾かしたり、体を拭くための敷物にした。もう1枚は、現在天馬のお尻の下。そして、最後の1枚はというと……

「おやすみ……」

 天馬は体の上に残った葉っぱを掛け、布団の代わりにした。
 お世辞にも寝心地がいいとは言えなかったが、一日中動きっぱなしだった天馬は、蓄積した疲労のために、深い眠りへと落ちていく。

「すぅ……すぅ……」

 この時、実は野生の獣が天馬の周囲を囲んでいたのだが、焚き火のために近付くことができず、遠巻きに見ているだけだった。

 そうとは知らずに、安らかな寝息を立てる天馬。

 魔法によって発生させた焚き火は、薪が尽きても燃え続け、天馬が起床すると同時に消えた。

「すぅ……すぅ……みにゅ~」

 天馬は、自分でも気付かない内に、己に身をしっかりと守っていたのだった。




「……それでは、レッツ採取タイム!」

 日が昇るのと同時に起床した天馬。それと入れ違いに、焚き火は役目を終えたと言わんばかりに鎮火した。

 泉の水で顔を洗い、サッパリしたところで行動を開始。

「とは言っても、何が食べられる物なのか、判断つかないんだよなぁ……」

 というわけで、

「片っ端から目ぼしいものを見付けて、食べてみよう!」

 などと口にし、天馬は軽く暴走していた。

 先日からの空腹はかなりピークな状態になっており、天馬は正常な思考回路が働いていない状態である。

 よく見れば、天馬の目がぐるぐる回っている。夜中も空腹のためか、何度か目を覚ましてしまっていた。

 その度に泉の水を飲んで誤魔化してはいたが、そろそろそれも限界が近い。

「待ってろよぉ! 異世界の食材共!」

 天馬は子供のように木の枝を振り回し、気分上場(?)で森の中を物色し始めた。

「お? おお! キノコ発見!」

 そして天馬は、よりにもよって最もリスクが高い食材を見付けてしまう。
 色は落ち着いた茶褐色。オラオラ系のどぎついカラフルキノコではないが、地味=安全ではない。

 見た目は大人しそうに見えて、中身は過激な腹黒系かもしれないのだ。

「火を通せば大丈夫、火を通せば大丈夫……」

 天馬は根拠のない呟きを漏らし、ぶちりと迷わずにキノコをもぎ取ると、じぃ~とそれを見つめる。

「いける……これならいける……たぶんいける……きっといける……きっと、逝ける!」

 天馬の頭の中では、もうそれが食べられるものであるかそうでないかなど、既にどうでもよく、とにかく空腹が紛れれば何でもいいという状態だった。

 驚異的な集中力で、火の魔法を即座に発動。

 ブスブスとキノコを炙るだけの男らしい料理……いや、これを果たして料理と言えるのか……? を実行。

「では、いざゆかん! ……はむっ……」

 もきゅもきゅ、とリスのように頬を膨らませ、キノコの傘部分を頬張る天馬。

「もきゅもきゅ……もきゅもきゅ……お、これはなかなか……うん?」

 途端、舌に広がるビリっとした刺激。
 そして、飲み込んだ瞬間、それはきた。

「んんんんんん~~~~~~っ?!!!」

 胃袋を焼くような熱。おまけに発汗が止まらず、全身が汗だくになる。
 徐々に、痺れた感覚が手足の末端から全身に広がり、天馬の体がかなり危ない痙攣の仕方を始めてしまう。

「あばばばばばばば――っ!!」

 口から泡を吹いて、白目を剥いた天馬は、その後、数十分の間も痙攣し続け、唐突に、パタリと動かなくなった……。

 最初の出だしで、天馬は致死性の猛毒を含んだキノコを食してしまったのだ。

「……………………」




 そして、時間が経つこと約3時間。

「……………………ぷはっ?!」

 天馬復活。せっかく昨日洗った服はたちどころに汗臭くなり、地面には天馬の吐瀉物が撒き散らされていた。

「うぅ……酷い目にあった……」

 まさか、出会い頭にここまで強烈な洗礼を受けるとは、天馬も予想外であった。
 半分以上かじられたキノコに恨めしい視線をぶつけながら、「ちくしょう」、と呟く。

「あ、でも空腹は収まってる……」

 毒キノコで死の間際まで追い詰められた天馬の体は、【不死身】の力が発動。

 それと同時に、魔力が全身に流れ、天馬の空腹感はなくなった。

 もうこうなってくると、食事を無理に取らず、普通に餓死寸前まで追い詰められてから、自分で命を絶ってリセットを掛けた方が、手っ取り早い気がしないでもない。

 しかし、天馬は首を左右に振って、その考えを否定する。

「命を粗末にする奴に、生きる資格なし……俺は諦めない。必ず食べられる食材を見付けて、普通に生き抜いてみせる!」

 生き抜くもなにも、死なないのだが。

 それはともかく、今回はたまたま猛毒を引き当てただけだと、天馬は気を取り直して、食糧調達を再開した。

「次こそは、食べられるものを!」




 そうして、天馬は木の実やら再び見つけた別のキノコやらを、宣言通り、見付けては手当たり次第に口へと運び、その都度、散々な目に遭っていた。

 食した瞬間に死ぬような目に遭遇するほど凶悪な代物は、最初のキノコだけだったが。

 むしろ、症状が延々と収まらない方が天馬を苦しめた。

 しかも、下痢や嘔吐の際に、天馬は衣服を脱ぎ捨てて、素っ裸になってぶっ倒れるということを繰り返す。

 考えてもみてほしい。天馬は、現在着ている服以外に代えを持っていないのだ。

 それを汚物まみれにしてしまうということ。
 それは一言に、最悪である。
 洗剤などというものはなく、水洗いでは限界がある。故に、臭いも残る。

 天馬は、できるだけ服を汚さないように注意を払う必要があった。

 もちろん、中には食べても体調を崩さないような物も、あるにはあったのだが。
 それらは、かなり苦いか、エグミが強いか、渋いか……
 とにかく、味がよくなかった。


 ――そして、食材を探し始めてから、実に1週間もの時間が過ぎてしまった頃……


「……み、見付けた!」

 1週間の間に、6回ほど死にかけた天馬は、それでも諦めずに食材を探し続け、ようやく1つの果物と出会う。

 それは、高木こうぼくに実った、地球で言えばマンゴーのような柔らかい果肉に、リンゴのような爽やかな甘味をもった、白い果物だった。

「うまい……ぐすっ」

 天馬は、慣れない木登りの末に、果物をゲット。それを口にいれた瞬間、思わず涙が溢れ出たほどだ。 

 何より、生のまま食べても体に何の悪影響も出ないのがいい。
 
 世の異世界転移ものの作品で、主人公はよく【鑑定】の力を最初から持っていたりするが、あれが如何にチートな能力であるかを、天馬は己の身でもって思い知った。

 そうでなくても、彼らは文明がすぐ近くにある場所に転生するパターンが殆どだ。

 それに比べて、天馬はまさしく天涯孤独。
 無人島に漂流したあげくに、こうして食べるもの1つとっても、かなりの苦労を強いられる。

 どれだけ体が不死であろうが、精神までは守ってくれない。
 天馬は奇跡のように出会ったこの果物に、運命すら感じていた。

「ぐすっ……ずず……もきゅもきゅ……、うえぇ……ずず~っ」

 涙やら鼻水やらを豪快に垂れ流し、嗚咽を漏らしながら、名も知らぬ果物を頬張り続ける天馬。

 それこそが、彼がどれだけ苦労してこの食材にありついたかを物語っている。

 幸いなことに、この果物は結構高い木の上に実っているためか、動物にそこまで食い荒らされてはいなかった。

 まだまだ多くの果実が木には実っており、天馬はお腹一杯になるまで、久方ぶりの食事を堪能したのだった。
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