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34.私のカール様なのに!

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カール様はいとも簡単に私を受けとめてくださったわ。二階のご令嬢からもうっとりとした溜息が漏れたくらい。そうでしょ、私のカール様は素敵なのよ。でもここからが誤算だったわ…。ロン様も出来ると思ったのに、とてもじゃないが二階から落ちてくるご令嬢なんて絶対に受け止めれないっていうんですもの。このヘッポコ様…。一刻の猶予も無いので仕方なく、カール様が受け止めることになって、
「私を信じて飛び降りるんだ、必ず受けとめると約束する。」
律儀にカール様は一人一人に声を掛け、
「よく頑張ったな。」
とお褒めの言葉まで掛けて、そのたびに私の胸はチクリとして親友たちが助かって嬉しいはずなのに、私どうしちゃったのかしら?ヘッポコ…ロン様はその間に二階に上がり、目を覚まして怒り狂うビンツを縛り上げてあとは魔法使いのお二人が魔法でまとめて縛りあげたらしいわ。魔法って便利ね。

それから事情聴取をするために王城にクレアのタウンハウスの馬車二台で向かったのだけど、クレアはご令嬢一人とビル様とデル様と乗ってそちらの御者はアル様がやってくださったわ。私の方はカール様とあと二人ご令嬢が乗られて、御者はいつの間にか来ていたガゼルがしてくれたわ。ロン様はビンツを馬に乗せて先に帰って行ったわ。他の破落戸も魔法で縛ってあるとはいえ、連れて行かないといけないから大勢仲間がいるものね。それにしてもなんでビンツに魔法が効かなかったのかしら?気になることは沢山あるけど、今はそれどころではないわ。私のカール様なのに目の前のご令嬢たちがうっとりした目で見ているんですもの。

「カルロス様助けていただき、ありがとうございました。私、カルロス様に運命を感じましたわ。」
「ええ、私も運命を感じましたわ。一度デートをしてくださいませんか?」
この国では婚約期間中なら他のご令嬢から誘われた場合、一度はデートを受けないと失礼に当たるとされているの。変なルールよね…。私のカール様なのに。
「私の愛しているのはロザリーだけだ。もちろん、この国のルールは知っている。それでもデートをすると言うのかい?」
「ええ、ロザリー嬢にかなうとは思っておりません。一生の思い出によろしくお願いいたします。もしよろしければ私たち二人とカルロス様でも私は構いません。」

たしかあの方は伯爵家のアン様だったかしら?凄く積極的だわ。隣りのあの方は伯爵家のマイヤー様よね。
「私も、アン様と一緒で構いませんのでよろしくお願いしますわ。」
これでは絶対に断れないわね。カール様を奪うつもりはないって言ってくれてるし、憧れの人とデートしたい気持ちは分かるんだけどカール様は私だけのものでいて欲しいのに。
「どうやら私に断る権利はなさそうですね。こんな猛獣とよろしいのですか?」
「猛獣だなんて、頼もしくて素敵です。」
「ロザリー嬢、絶対にロザリー嬢にお返ししますから少しだけ私共にカルロス様をお貸しください。」
「カルロス様は物ではありませんわ。貸すなんて失礼ですわ。それにカルロス様に断る権利がありませんように私にもお止めする権利はございませんから心がチクチクと痛みますが仕方がありませんわ。」
「ありがとうございます。ロザリー嬢はやはりお優しいのですね。公爵家の権限を使えばどうとでもなりますでしょうに…。」
「ロザリーはそのような卑怯な真似はしない。」
「そのようですね。」

「それからデートの場所はそちらで決めてくれ。気の利いた場所も知らないからな。それと明日は丁度休みだ。明日で良ければ明日でお願いしたい。これが条件だ。」
「分かりましたわ。」

二人は頷いて、では明日公爵家に九時に伺いますと言ってきたわ。もう少しで涙が出そうだったけど丁度王宮に到着して、お父様が駆けつけて来てくださったから涙を堪えることが出来たわ。
「ロザリー大丈夫だったかい?」
私はお父様に皆さんの前だったけど抱きついてしまったの。だって私のカール様が他のご令嬢とデートなんて。お父様は勘違いしたみたいで、私の頭を撫でながら、
「怖かったね、ロンくんから聞いたよ。二階から飛び降りたんだってね。自分の命を守って偉かったね。カルロスくんもロザリーを受けとめてくれてありがとう。流石婚約者だ。」
そう言って褒めてくださったわ。それから私たちは謁見の間で今回の件を国王陛下の前でお話してそれぞれの親が迎えに来たのでみんなは帰って行ったわ。私はそのまま、エマとガゼルとお父様の執務室の隣の小部屋で過ごすことにしたの。

「お嬢様、元気が無いようですがどうかされたのですか?」
「実はカール様のことを伯爵家のアン様とマイヤー様が運命の人と言い出して辛くなってしまったの。」
「お嬢様、それはどういうことですか?」
カール様がご令嬢を助けたことでご令嬢にカール様が運命の人と言われて二人とデートすることになったことを話したわ。
「カルロス様ははっきりと愛してるのはお嬢様だけだと言われたのなら信じてあげればいいのですよ。お嬢様、カルロス様はこれからも隣国の王女様たちの護衛もされます。その時にいちいちヤキモチを妬いていたら嫌われますよ。」
「そ、そうね。嫌われたくないわ。ドーンと構えていないといけないわね。」
そうですよ、お嬢様は近衛騎士団長様の妻になるのですからドーンと構えていなければなりません。」
エマにそう言われたらなんだかこれは私が乗り越えないといけない試練のような気がしてきたわ。これもカール様のお仕事の一環みたいなものだったのね。
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