愛されたくて悪役令嬢になりました ~前世も今もあなただけです~

miyoko

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106.許すか、許さないか…。信じるか、信じられないか…が問題です

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「ルーサ様、私の目はおかしくなったのでしょうか?感情がない方が泣いているように見えます。」
「なんてこったい、意識が戻ったのかい?」
「あれだけでですか?」
「マリーさん、お願いです。あの二人にも光魔法で治療をしてあげてください。」
「ルーサ様のお母様、恨んでいないんですか?」
「恨んでいますよ。でも、あの子が涙を流すなんて、あんなに強情な子が…。やっぱり、後悔していたんだわ。マリーさんお願いします。」

「ルーサ様のお気持ちを考えたら私にはできません。」
「そうね、ルーサ、ごめんなさいね。つらい思いをさせて、でもこれはサーシャを止めるためにも必要なことなのよ。もうあの子の暴走を止めましょう。それからきちんと、裁判で裁くの。もうこれ以上、多くの人を悲しませるわけにはいかないでしょう?」
「母様、分かりました。マリー私からもお願いするよ。」
「ルーサ様…。アーサーどうしよう。涙が出そうよ。手を握っていて。」
「そうだね。つらいね。色々な気持ちがごちゃごちゃだよね。僕はいつでもマリーの味方だよ。だからマリーが嫌ならやらなくていいんだよ。」

「アーサーありがとう。でも、私はどんなにつらくても逃げたくないの。だから、アーサーは私が落ち着くように手を握っていて、この人たちが後悔していたって気持ちを私が信じられるように。そして、この人たちがやった罪をきちんと償うことでこの人たちをいつか私が許せるように。」
「分かったよマリー。僕はいつでもそばにいるよ。安心して。僕だけの女神。」
そう言ってアーサーは私を後ろからそっと抱きしめてくれている。本当に不思議だわ…心が自然と落ち着いていく。
「サー…ルナのお父様とお母様マリーと申します。ルナにはとてもお世話になっております。色々と文句を言いたいことはございますが、私はあなた様たちが罪を償ってくださると、サーシャを止めて下さると信じます。それでは魔力を流しますね。」
私は二人の手を片手ずつ握った。その途端、お二人からは強い後悔と、やらなければいけないという責任感のようなものが伝わってきたわ。それはアーサーにも伝わったようで、
「マリーは間違っていなかったね。」
って言ってくれたわ。その言葉を聞いた途端、信じられないくらい私の胸の奥が熱くなって、輝きが増したの。私の魔力はちょろちょろのままなのに。やっぱりアーサーが私の魔法にいつもマジックをかけてくれるのね。ありがとうアーサー…。

輝きが治まり、目を開けると、ぽろぽろとないているルナのお母様と目が合った。
「私が愚かでした。私は本気で魔力の強い者がすべてだと思っておりました。なぜ、魔力の強い魔族があのような環境の厳しい霧の谷で生き、人間が楽しそうに楽なところで生きるのかとも…。間違っていたのですね。人間も自らの力で住みよくしただけだというブローサ様の言葉は本当だったのに、信じることができませんでした。霧の谷を変えようともせずに、努力もせずに、魔族がすべての頂点なのだから、人間から住みやすい世界を奪えばよいと本気で思っておりました。そして魔力の多いサーシャが生まれてきた時、私は神からの贈り物だと勝手に思い込みました。サーシャをこの世界の女神にしようと真剣に思っておりました。そのような考えの母に育てられたサーシャが私たちを道具としてみるようになった事は当然のことなのにショックを受けていた自分に呆れます。魔力爆発で瘴気の池に入れられた時に初めて大きな間違えを起こしたことに気づいたのです。サーシャはすでに同じ魔族の仲間の魔力を奪う化け物になっておりました。そして魔族が霧の谷から出れない本当の理由も知りました。サーシャとともに罪を償います。」

ルナのお母様が話し終わると、今度は、ルナのお父様が、
「私も全く同じでございます。妻と一緒になって本気で魔族の為だと思っておりました。早くサーシャを止めてやりたい。サーシャは怒るでしょうが、あの子を止めるのは私たち夫婦の務めです。もう一度私たちを瘴気の池に放り込んでください。私たちがいなければあの子は怪しみます。私たちの魔力を取りにあの子が来た時にどうか捕まえに来てください。」
「その必要はないよ。次にサーシャが来るのは半年後だ。魔道具をあなたたちに付け替えていった時にそう言っていたからね。マリーの兄さんが作った発信機は声まで聞こえて本当に天才だよ。あんまりうろうろするのは得策ではないことはサーシャが一番よく分かっているからね。それに、分身を四体あなたたちがつけられていた魔道具もしっかりつけて、魔力も誰のか分からないように魔道具の中に汚く細工してたっぷり入れておいたからね。瘴気を吸い過ぎたいまの状態のサーシャには分からないさ。あれを吸収すると、どこにサーシャがいても分かるようになる。臭い魔力なのさ。本人には分からないけどね。魔獣ですら逃げていくよ。」
「流石、ルーサ様ですわ。完璧ですわ。」

「私は本気だと言っただろう。今回は許さないと…。」
「それでは、私どもはどうすればいいのでしょうか?」
「祈っていておくれよ。それだけでいいよ。あとでしっかり罪は償ってもらうからね。まずは体を治しな。」
「ルーサ様カッコ良すぎます…。」
「気持ち悪いこと言うんじゃないよ。でも感謝しているよ。マリーありがとう。」
ルーサ様ったら照れているわ。

この後は皆様からお礼を言われ、すっかり存在を忘れかけていた国王陛下からも最後にお礼を言われて、私とアーサーは転移魔法で私の部屋に戻してもらったの。帰ってきたらやっぱりサリーの愚痴が待っていたわ。今日は見逃して欲しかったわね。
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