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105.ルーサ様のお父様(バルク様)とお母様(ニーナ様)

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転移したお部屋はベットが五つくらいあって、全体的に白を基調とした落ちついた作りで王宮じゃないみたいだわ。
「こんなお部屋もあるんですね。」
「ああ、すべてのものから遮断された部屋だよ。サーシャでもここは分からないさ。ブローサ様が作ったんだよ。」
「そうだったんですね。そんなに前から…。」
「あの時はあちこちで戦争があったからね。」

「早速で悪いがお願いできるかい。」
「もちろんです。ルーサ様のお父様、始めましてマリーと申します。手を握りますね。」
私はちょろちょろと光魔法を流し始めた。三十分くらいすると顔色が良くなってきた。良かったわ。次はお母様ね。
「ルーサ様のお母様、マリーと申します。手を握りますね。」
私はまたちょろちょろと光魔法を流し始めた。すると先に治療したルーサ様のお父様が

「ありがとうございます。神様。」
と言われて私は焦ってしまったわ。
だって私は神様ではないもの。
「神様ではありませんよ。私はこのようにちょろちょろとしか出せませんの。」
「それでも貴方様の魔力はブローサ様にそっくりです。心地よさ、そして傷ついているところを優しく覆ってくださる温もりもすべてが同じです。私は先の戦争で何度もブローサ様の治療を受けました。だから分かります。ブローサ様と同じだとはっきりと言えます。」

「そ、そうですか。ではこれからは自信を持って治療をして参ります。ルーサ様のお父様ありがとうございます。」

それから私はしばらく、ルーサ様のお母様の治療に集中していたけど、そろそろお母様の方も三十分くらいかしら?そう思ってお顔を見ると涙を流してみえた。えっ?どこか痛いのかしら?大変治療に集中して目を閉じていたわ!
「ルーサ様大変です。ルーサ様のお母様が泣かれています。どこか痛いのではないでしょうか!」
「母様どうされました?」
「違うの。ほっとしたら涙が、バルク、これは本当にブローサ様の魔力のようね。」
「ニーナもそう思うだろう。」
「ええ、本当に。ありがとうマリーさん。」

「とんでもありません。普段私は、ルーサ様にすごく助けられているんです。」
「そうですか、ルーサに…。ルーサ立派になったね。」
「あれから千年経つのですよ。」
「そうだね。千年か、魔女としては若いが苦労したんだね。」
若いの?一体魔女様は何年くらい生きるのかしら?そんなことを考えていると、ルーサ様のお父様が真剣な顔で魔力爆発した時の話をしたいと言われた。それで国王陛下とルドだけを呼ぶことになり、いま国王陛下とルドがルーサ様の魔法でこちらに転移してきた。私はちょっと聞くのが怖くてアーサーに無意識にしがみついていたみたい。

アーサーにちょこんと膝の上に座らされて大丈夫だよって言われたから。これはこれでどきどきするのだけど。いまからとても重要な話が始まるのだからおとなしくしていたわ。すると国王陛下が、
「魔族の王、目覚められましたか。」
「大変、ご迷惑をお掛けして申し訳ない。話を聞いてもらえるであろうか。」
「もちろんです。」
えっ?ルーサ様のお父様は王様?へっ?なんですって、びっくりしすぎて若干プチパニックになりかけたわ。

「私たちがサーシャの両親の野望に気付き、止めに入った時、たしかに激しい衝突はおきていた。しかし魔力爆発するようなことはおきていなかったんだ。あれは第三者がわざとおこしたんだ。私たちの魔力がぶつかるタイミングで魔力を遠くから落としてきた者が、サーシャだ。」
「なんて酷いことを!」
「サーシャは自分の両親のこともいつからか自分のための駒だったんだろう。あの子はたしかに魔力だけなら私達より多かったし、魔法の腕も素晴らしかったから勘違いしてしまったんだろう。だから自分に匹敵する可能性のある者を全員消したかったんだ。例えそれが自分の親でもね。あの子の目的は自分を崇める世界を創ること。魔法の強さがあの子のすべての基準なのさ。」

「なんて自分勝手な人なのかしら…。」
「もちろん人間なんて虫けら以下だと思っているだろうし、魔力の少ない魔族もあの子にしてみたら虫けら同然だったんだろう。私たちが魔力爆発に巻き込まれ死にかけた時、転移魔法で瘴気の池に入れられ、魔道具を付けられた。その時にはすでに沢山の魔族が浸かっていたんだよ。それを見てサーシャの両親はびっくりしていたから知らなかったんだろう。両親の目的は魔族をこの世界で一番偉いと知らしめることで、そのためにサーシャに強くなって欲しかっただけだからね。少しずつ考え方が違っていたんだろうよ。」
「彼らは自業自得ですね。自分の娘を自分たちの目的を果たすための道具として扱い逆に使われたんだ。」
ルドが向こうのベッドで寝ている二人の方を見て吐き捨てるように言った。

「まぁそうだね。でもサーシャのことだけは本当に可愛がっていたから、瘴気の池に入れられてからのあの二人は見ていられなかったよ。サーシャは、弱い者は虫けら以下と教えてくださったのはお父様とお母様でしょ。だから私からしたらお父様もお母様も虫けらでしょって本当に可笑しそうに笑ったんだ。」

「悪魔だ。」
ルドがまたぼそっと暴言を吐いたわ。でもその通りだわ。
「ルド君のいう通りなんだよ。それからすぐにあの二人も非常に後悔していたよ。悪魔を作ったのは自分たちだとね。でもショックで耐えられなかったんだろう。一か月もせずに意識を手離してしまったからね。流石に自分の娘からの仕打ちには耐えられなかったんだろう。」
しばらく誰も喋らなかったわ。私は無意識にアーサーの膝の上から立ち上がりルナの(サーシャの)ご両親に近づいて行き、話しかけていた。
「ルナのお父様お母様、手を握りますね。」

「マリー何をする気!止めなさい!」
「ルーサ様、あれ私何をしていたのかしら?」
「無意識だったのかい?」
「そうだったみたいです。さっきまでちゃんと分かっていたのに、急に誰かに乗っ取られたような感じで…。でも嫌じゃなくてなんでしょう?」
「なるほど、ここはさっきも言ったようにブローサ様の魔力がまだ残っているからね。ブローサ様の魔力に引っ張られたんだね。マリーのオーラはブローサ様にそっくりだからね。」
「そうなんでしょうか?私はブローサ様みたいに優しくはなれません。流石に助けてあげたいとは思えません。アーサーだめかな?ブローサ様なら助けるってことだよね?」
「マリーはマリーでいいんだよ。許さなくていいんだよ。マリーは神様じゃないんだから…。」
不思議よね。アーサーがいいって言ってくれたから他の人からどう思われようが平気なんだから…。あれ?ルナのご両親が泣いている?感情がないんじゃないの?もうわけが分からないわ。


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