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100.ブルサンダー公爵家に行く前に
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ブルサンダー公爵家にお邪魔するのは、今回が初めてって言っていいのかしら?この間のもカウントされるなら二回目よね…。婚約者としては初めてなわけで、うーん、よく分からなくなってきちゃったわ。
「アーサー私はなんて挨拶すればいいのかしら?」
「アーサーの婚約者のマリーですって言って欲しい…。」
「わ、分かったわ。そうね。それだけで言いわよね。」
アーサーが照れるからつい私まで照れちゃったじゃない。
「アーサー、一つ聞いてもいい?」
「何?」
「サリーにも聞いたんだけど、アーサー様に聞いてくださいって教えてくれなかったんだけど、こんな早い時間に、どこに向かっているの?」
「内緒。」
「ええ、内緒ってもうすぐ着くんでしょ?」
「そうだけど、内緒。もうちょっとだけ、我慢して。」
「分かったわ。聞かずに我慢するわ。でも、アーサーに抱っこしてもらう時の禁止事項だけはいまから守ってもらうわ。恥ずかしくて私の命にかかわるのよ。」
「えっ?命にかかわるの。」
「ええ、そうよ。抱っこしながら私の顔を覗き込むのは禁止。首元で話しかけるのも禁止。くんくん首元の匂いを嗅ぐのも禁止。分かった?」
「そんなに沢山…。一日一回だけ許して…。」
「うっ…。」
その顔に弱いのよね。
「分かったわ。一日一回だけよ。」
「うん、マリーありがとう。着いたみたいだ。降りようか。」
今日はお兄様とアーサーとお父様の三人で作ってくださった、電動車椅子の高級版のような乗り物があるからどこにでも行ける気がするわ。実際には少しの風魔法で浮いて動くから振動はゼロ。素晴らしい乗り物よ。前世でも欲しかったわ。形が可愛らしくてたまご型になっているの、本当に可愛いのよ。指先でそっと押すだけで操作は簡単。昨日のリハビリが役に立っているわ。
ここはアーサーと子供の頃によく遊んだ教会が見える丘の上だわ。
「マリー覚えてる?」
「ええ、もちろん。アーサーが私より強くなったら、私と結婚して欲しいって言った場所でしょ?あの時の私は世界で一番強いとなぜか勘違いしていたから…。でも、実際にはすでに、アーサーの方が強かったのね。」
「そうかもしれないけど、あの時はマリーの魔力量の方が僕より多いからマリーの方が本気を出したら強いと本気で思っていたんだよ。」
「それは、そうよね。」
アーサーが急に跪いて、
「マリー、僕の泣き虫は治らないかもしれないけど、マリーを泣かせるような酷いことはしません。だから、だから僕と結婚して下さい。」
私は涙が止まらなかったわ。婚約者になったって聞いただけで満足していたのに、ちゃんとプロポーズしてくれるなんて、なんて幸せなのかしら。
「ありがとうアーサー。こちらこそ、よろしくお願いします。私にはアーサー以外結婚したい人なんていないもの。」
「ち、力が抜けちゃった。どうしようマリー、涙が止まらないよ。いまだけ沢山泣いてもいい?」
「ええ、いいわよ。嬉し涙ですもの。私もいまだけは止められそうもないわ。」
色々ありすぎて、恋人になってからも、ちっとも恋人らしく過ごせなかったのに、目を覚ましたら婚約者になっていて、いきなり沢山のご褒美をもらったみたいな気持ちだわ。アーサーに小さな声で本当はマリーにキスしたいんだけど馬車の中にサリーがいるから我慢するねって言われて、恥ずかしすぎて顔から火がでそうになってしまったわ。それからアーサーは優しく指輪をはめてくれたの。
「すごく素敵、ありがとう。」
プラチナリングの中心にハート形のダイヤモンドが付いていて、ダイヤモンドの中には、黒バラと青バラが寄り添うように入っていたの。本当に素敵。
「アーサー、もう少しだけ時間はあるかしら?」
「もちろんだよ。あの教会に行きたいんだろう?」
「ええ、そうなの。」
なぜ、子供の時に行きたいと思ったのか分からなかったけど、あそこは前世でアーサーが人形のようになったマリーを抱えて式を挙げていた教会なんだわ。一瞬しかゲームでは出てこなかったけど繰り返し見ていたから間違いないわ。
「マリーがここの木の上からよく見ていたものね。」
「そんなことも覚えていてくれたのね。」
「さぁ行こう。本当の結婚式はあそこでは小さすぎると思うけど、今日は僕とマリーとサリーだけだ。十分だよね。」
「ありがとう、アーサー。」
馬車に乗って、サリーに指輪を見せるとサリーが自分のことのように喜んでくれたわ。教会について、サリーが扉を開けた瞬間とても不思議なことがおきたわ。次から次へと綺麗な花びらが降ってきて、あっという間に中央に綺麗な花びらの絨毯ができてしまったの。びっくりしてアーサーの方を見たけど、僕じゃないって言うし、誰かしら?ロマンチックな人ね。そんなことを思いながら女神像に近づいて行くと、女神像がはっきりとウインクして微笑んでいたわ。はっきり言って恐ろしい…。でもたぶん、おばあちゃんよね。この感じ、あのウインク、間違いないわね。
「アーサー、私たち祝福してもらえたみたいね。」
「ああ、マリーといると、本当にすごいことが次から次へとおきるね。」
「アーサー楽しそうね。」
「もちろんだよ。マリーと一緒ならなんだって楽しいよ。」
「そうね。私も楽しいわ。アーサー、一つお願いがあるんだけど一緒にさっちゃんありがとうって言ってくれる?」
「もちろんだよ。さっちゃんありがとうございます。」
アーサーには前におばあちゃんがおじいちゃんにさっちゃんと呼ばれていたことは伝えていたからすぐに分かってくれたみたいね。サリーはきょとんとしていたけど、女神像はもう一度ウインクしてくれたから合っていたみたい。いつも、見守っていてもらえるって本当に幸せなことだわ。さぁいよいよ、ブルサンダー公爵家に行くのね。
「アーサー私はなんて挨拶すればいいのかしら?」
「アーサーの婚約者のマリーですって言って欲しい…。」
「わ、分かったわ。そうね。それだけで言いわよね。」
アーサーが照れるからつい私まで照れちゃったじゃない。
「アーサー、一つ聞いてもいい?」
「何?」
「サリーにも聞いたんだけど、アーサー様に聞いてくださいって教えてくれなかったんだけど、こんな早い時間に、どこに向かっているの?」
「内緒。」
「ええ、内緒ってもうすぐ着くんでしょ?」
「そうだけど、内緒。もうちょっとだけ、我慢して。」
「分かったわ。聞かずに我慢するわ。でも、アーサーに抱っこしてもらう時の禁止事項だけはいまから守ってもらうわ。恥ずかしくて私の命にかかわるのよ。」
「えっ?命にかかわるの。」
「ええ、そうよ。抱っこしながら私の顔を覗き込むのは禁止。首元で話しかけるのも禁止。くんくん首元の匂いを嗅ぐのも禁止。分かった?」
「そんなに沢山…。一日一回だけ許して…。」
「うっ…。」
その顔に弱いのよね。
「分かったわ。一日一回だけよ。」
「うん、マリーありがとう。着いたみたいだ。降りようか。」
今日はお兄様とアーサーとお父様の三人で作ってくださった、電動車椅子の高級版のような乗り物があるからどこにでも行ける気がするわ。実際には少しの風魔法で浮いて動くから振動はゼロ。素晴らしい乗り物よ。前世でも欲しかったわ。形が可愛らしくてたまご型になっているの、本当に可愛いのよ。指先でそっと押すだけで操作は簡単。昨日のリハビリが役に立っているわ。
ここはアーサーと子供の頃によく遊んだ教会が見える丘の上だわ。
「マリー覚えてる?」
「ええ、もちろん。アーサーが私より強くなったら、私と結婚して欲しいって言った場所でしょ?あの時の私は世界で一番強いとなぜか勘違いしていたから…。でも、実際にはすでに、アーサーの方が強かったのね。」
「そうかもしれないけど、あの時はマリーの魔力量の方が僕より多いからマリーの方が本気を出したら強いと本気で思っていたんだよ。」
「それは、そうよね。」
アーサーが急に跪いて、
「マリー、僕の泣き虫は治らないかもしれないけど、マリーを泣かせるような酷いことはしません。だから、だから僕と結婚して下さい。」
私は涙が止まらなかったわ。婚約者になったって聞いただけで満足していたのに、ちゃんとプロポーズしてくれるなんて、なんて幸せなのかしら。
「ありがとうアーサー。こちらこそ、よろしくお願いします。私にはアーサー以外結婚したい人なんていないもの。」
「ち、力が抜けちゃった。どうしようマリー、涙が止まらないよ。いまだけ沢山泣いてもいい?」
「ええ、いいわよ。嬉し涙ですもの。私もいまだけは止められそうもないわ。」
色々ありすぎて、恋人になってからも、ちっとも恋人らしく過ごせなかったのに、目を覚ましたら婚約者になっていて、いきなり沢山のご褒美をもらったみたいな気持ちだわ。アーサーに小さな声で本当はマリーにキスしたいんだけど馬車の中にサリーがいるから我慢するねって言われて、恥ずかしすぎて顔から火がでそうになってしまったわ。それからアーサーは優しく指輪をはめてくれたの。
「すごく素敵、ありがとう。」
プラチナリングの中心にハート形のダイヤモンドが付いていて、ダイヤモンドの中には、黒バラと青バラが寄り添うように入っていたの。本当に素敵。
「アーサー、もう少しだけ時間はあるかしら?」
「もちろんだよ。あの教会に行きたいんだろう?」
「ええ、そうなの。」
なぜ、子供の時に行きたいと思ったのか分からなかったけど、あそこは前世でアーサーが人形のようになったマリーを抱えて式を挙げていた教会なんだわ。一瞬しかゲームでは出てこなかったけど繰り返し見ていたから間違いないわ。
「マリーがここの木の上からよく見ていたものね。」
「そんなことも覚えていてくれたのね。」
「さぁ行こう。本当の結婚式はあそこでは小さすぎると思うけど、今日は僕とマリーとサリーだけだ。十分だよね。」
「ありがとう、アーサー。」
馬車に乗って、サリーに指輪を見せるとサリーが自分のことのように喜んでくれたわ。教会について、サリーが扉を開けた瞬間とても不思議なことがおきたわ。次から次へと綺麗な花びらが降ってきて、あっという間に中央に綺麗な花びらの絨毯ができてしまったの。びっくりしてアーサーの方を見たけど、僕じゃないって言うし、誰かしら?ロマンチックな人ね。そんなことを思いながら女神像に近づいて行くと、女神像がはっきりとウインクして微笑んでいたわ。はっきり言って恐ろしい…。でもたぶん、おばあちゃんよね。この感じ、あのウインク、間違いないわね。
「アーサー、私たち祝福してもらえたみたいね。」
「ああ、マリーといると、本当にすごいことが次から次へとおきるね。」
「アーサー楽しそうね。」
「もちろんだよ。マリーと一緒ならなんだって楽しいよ。」
「そうね。私も楽しいわ。アーサー、一つお願いがあるんだけど一緒にさっちゃんありがとうって言ってくれる?」
「もちろんだよ。さっちゃんありがとうございます。」
アーサーには前におばあちゃんがおじいちゃんにさっちゃんと呼ばれていたことは伝えていたからすぐに分かってくれたみたいね。サリーはきょとんとしていたけど、女神像はもう一度ウインクしてくれたから合っていたみたい。いつも、見守っていてもらえるって本当に幸せなことだわ。さぁいよいよ、ブルサンダー公爵家に行くのね。
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