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79.アーサーとお兄様が帰ってきます
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私は今、一つの転移陣の前でお父様と一緒に、アーサーとお兄様の帰りを待っている。早朝とは言われたけどまさか朝の四時だとは思わなかったわ。
「お父様、この部屋には三つの転移陣がありますのに、どうして、この転移陣で帰って来ると分かるのですか?」
「それは、順番が決まっているからね。今日一番早く使われるのはこの転移陣なんだよ。魔力の供給には時間がかかるから順番に使われるんだよ。隣の転移陣の魔力も供給は終わっているようだから別にどちらでもいいんだけどね。一応順番が決まっているんだよ。」
「なるほど、よく分かりました。こんなに朝早く帰って来る人はいないですものね。」
「ほら来たよ。」
たしかにお父様の声とともに転移陣が光り出した。あれ?隣の転移陣も光り出しているけど、私はあまりの眩しさに目をつぶった。
「マリーただいま。帰ってきたよ。」
お兄様の声だわ。あれ、ちょっと、遠いような?目を開けた私はびっくりした。
「あれ?」
思わず令嬢らしくない声が出てしまったわ。もう、お父様の馬鹿。隣の転移陣じゃないの。
「失礼しました。お父様行きましょう。」
私がお父様を引っ張ると、お父様が、
「なんだお前たちも帰って来ていたのか?」
「ああ、すごい偶然だな。」
よくよく見るとアーサーのお父様と、誰だったかしら?もう一人若い男の人がいるわ。私は挨拶もそこそこに、アーサーの所に行こうとしたら、お兄様が走って来て思いっきり抱きつかれた。恥ずかしい…。
「えーと、お兄様お帰りなさい。」
「僕の天使、ただいま。」
するとアーサーが後ろからむぎゅって抱きついてきて、
「えーと、アーサーもお帰りなさい。」
「うん、僕の女神ただいま。」
もう、この二人は恥ずかしすぎるわ。一度きちんと人前でやっていいことと、悪いことのリストを作って、だめなことはだめと伝えなきゃね。そんなことを思っていると、ブルサンダー公爵様に、
「アーサーが幸せそうで嬉しいよ。クライム本当にありがとう。マルク殿もマリー嬢もありがとう。」
「お礼を言われるようなことではありません。僕とアーサーは家族ですから。そうだろうアーサー。」
どうして、お兄様は喧嘩を売るような言い方をするの。仕方ないわね。ここは、私が丸く収めようかしら…。
「では、お兄様と私もブルサンダー公爵様の子供であるってことですか?」
どうします、お兄様。降参しなさい。そう思っていると、
ブルサンダー公爵様の隣にいる若い男の人が、
「ふふふ、嬉しいよ。こんなに可愛い妹ができて。マリー嬢ありがとう。僕のことはアークお兄様と呼んでね。呼び捨てでもいいよ。」
なんてとんでもないことを言ってきた。一瞬ブラックリリー公爵家の男性陣からそれは恐ろしい冷気がアーク様の方へいったけど、平気そうね。流石アーサーのお兄様だわ。アーク様だっけ覚えておかなきゃ。
「冗談が過ぎましたわ。ごめんなさい、アーク様、私の兄はこのマルクお兄様だけですわ。ねぇお兄様。」
「ああ、僕も酷いことを言ってごめんなさい。ブルサンダー公爵様が悪い人ではないことは分かっているんです。でもどうしてもアーサーを連れ戻しに来たのかなって心配になるんです。」
「分かっているよ。それに、私にそんな権利はないよ。アーサーを守り切れなかっただめな父親だからね。」
なんか悲しくなってきたわね。悪いのはお母様なんじゃないのかしら?
「それにしてもおかしいですね。リックはどうしたのでしょう。」
「そう言えばそうだな。いつもは迎えに来てくれているのだが、アーサー、一つだけ聞いてくれ、リックだけはお前が生まれた時から体を張ってお前のことを守ってくれた勇敢で心の優しい子なんだ。いつか、リックとだけは話をしてやってくれ。あの子はお前以上に傷ついているかもしれない。」
そうなのね、リック様は優しい人なのね。じゃあ、やっぱり、今回の件もお母様に何かされたのかしら?言うべきよね。この人たちは悪い人ではないもの。
「マリーどうしたの?」
アーサーにはなんでも分かってしまうのね。
「そのリック様のことですけど、黒魔法を出してしまっているようで、私にもよく分かりませんが、今日の午後から魔女のルーサ様が治療をして下さる予定でした。リック様はそのことを知りません。」
「なんだって、マリー嬢教えてくれてありがとう。アーク急いで帰るぞ。」
その時、転移陣室を管理している守衛の方が走ってきて、
「ブルサンダー公爵様、ご子息様が隣の部屋でお待ちですが、非常に体調が悪いように思われます。お急ぎください。」
「そうか、ありがとう。」
私たちは急いでリックさんのいる部屋に向かった。守衛の方には申し訳ないが王宮の客室にいるルーサ様を呼んできてもらうようにお願いした。
私たちは入り口の所で待つことにした。アーサーは入ってもいいと思ったのだけど、右にアーサー、左にお兄様がすごく警戒して私にくっついている。お父様は嫌な予感がすると言って私たちに結界まで張っている、とは言っても声ははっきり聞こえる。すごく苦しそう。話の内容を聞いて私は怒りでどうにかなりそうだった。
「お父様、この部屋には三つの転移陣がありますのに、どうして、この転移陣で帰って来ると分かるのですか?」
「それは、順番が決まっているからね。今日一番早く使われるのはこの転移陣なんだよ。魔力の供給には時間がかかるから順番に使われるんだよ。隣の転移陣の魔力も供給は終わっているようだから別にどちらでもいいんだけどね。一応順番が決まっているんだよ。」
「なるほど、よく分かりました。こんなに朝早く帰って来る人はいないですものね。」
「ほら来たよ。」
たしかにお父様の声とともに転移陣が光り出した。あれ?隣の転移陣も光り出しているけど、私はあまりの眩しさに目をつぶった。
「マリーただいま。帰ってきたよ。」
お兄様の声だわ。あれ、ちょっと、遠いような?目を開けた私はびっくりした。
「あれ?」
思わず令嬢らしくない声が出てしまったわ。もう、お父様の馬鹿。隣の転移陣じゃないの。
「失礼しました。お父様行きましょう。」
私がお父様を引っ張ると、お父様が、
「なんだお前たちも帰って来ていたのか?」
「ああ、すごい偶然だな。」
よくよく見るとアーサーのお父様と、誰だったかしら?もう一人若い男の人がいるわ。私は挨拶もそこそこに、アーサーの所に行こうとしたら、お兄様が走って来て思いっきり抱きつかれた。恥ずかしい…。
「えーと、お兄様お帰りなさい。」
「僕の天使、ただいま。」
するとアーサーが後ろからむぎゅって抱きついてきて、
「えーと、アーサーもお帰りなさい。」
「うん、僕の女神ただいま。」
もう、この二人は恥ずかしすぎるわ。一度きちんと人前でやっていいことと、悪いことのリストを作って、だめなことはだめと伝えなきゃね。そんなことを思っていると、ブルサンダー公爵様に、
「アーサーが幸せそうで嬉しいよ。クライム本当にありがとう。マルク殿もマリー嬢もありがとう。」
「お礼を言われるようなことではありません。僕とアーサーは家族ですから。そうだろうアーサー。」
どうして、お兄様は喧嘩を売るような言い方をするの。仕方ないわね。ここは、私が丸く収めようかしら…。
「では、お兄様と私もブルサンダー公爵様の子供であるってことですか?」
どうします、お兄様。降参しなさい。そう思っていると、
ブルサンダー公爵様の隣にいる若い男の人が、
「ふふふ、嬉しいよ。こんなに可愛い妹ができて。マリー嬢ありがとう。僕のことはアークお兄様と呼んでね。呼び捨てでもいいよ。」
なんてとんでもないことを言ってきた。一瞬ブラックリリー公爵家の男性陣からそれは恐ろしい冷気がアーク様の方へいったけど、平気そうね。流石アーサーのお兄様だわ。アーク様だっけ覚えておかなきゃ。
「冗談が過ぎましたわ。ごめんなさい、アーク様、私の兄はこのマルクお兄様だけですわ。ねぇお兄様。」
「ああ、僕も酷いことを言ってごめんなさい。ブルサンダー公爵様が悪い人ではないことは分かっているんです。でもどうしてもアーサーを連れ戻しに来たのかなって心配になるんです。」
「分かっているよ。それに、私にそんな権利はないよ。アーサーを守り切れなかっただめな父親だからね。」
なんか悲しくなってきたわね。悪いのはお母様なんじゃないのかしら?
「それにしてもおかしいですね。リックはどうしたのでしょう。」
「そう言えばそうだな。いつもは迎えに来てくれているのだが、アーサー、一つだけ聞いてくれ、リックだけはお前が生まれた時から体を張ってお前のことを守ってくれた勇敢で心の優しい子なんだ。いつか、リックとだけは話をしてやってくれ。あの子はお前以上に傷ついているかもしれない。」
そうなのね、リック様は優しい人なのね。じゃあ、やっぱり、今回の件もお母様に何かされたのかしら?言うべきよね。この人たちは悪い人ではないもの。
「マリーどうしたの?」
アーサーにはなんでも分かってしまうのね。
「そのリック様のことですけど、黒魔法を出してしまっているようで、私にもよく分かりませんが、今日の午後から魔女のルーサ様が治療をして下さる予定でした。リック様はそのことを知りません。」
「なんだって、マリー嬢教えてくれてありがとう。アーク急いで帰るぞ。」
その時、転移陣室を管理している守衛の方が走ってきて、
「ブルサンダー公爵様、ご子息様が隣の部屋でお待ちですが、非常に体調が悪いように思われます。お急ぎください。」
「そうか、ありがとう。」
私たちは急いでリックさんのいる部屋に向かった。守衛の方には申し訳ないが王宮の客室にいるルーサ様を呼んできてもらうようにお願いした。
私たちは入り口の所で待つことにした。アーサーは入ってもいいと思ったのだけど、右にアーサー、左にお兄様がすごく警戒して私にくっついている。お父様は嫌な予感がすると言って私たちに結界まで張っている、とは言っても声ははっきり聞こえる。すごく苦しそう。話の内容を聞いて私は怒りでどうにかなりそうだった。
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