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68.シルバーside ~マリーが目覚める前に会議です~②
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【シルバーside】
国王陛下の言葉に、ルーサ殿が頷いて、
「この水晶を見て欲しい。中央にあるのがラムルのたまごだが、光を放っているのが分かると思う。しかし、まだ殻には魔力の模様である黒点は出ていない。それが出てくると丁度一週間で生まれる。この光具合からして、あと十日前後だと考えるのが妥当だろう。黒点が出てから、皆で礼拝堂に転移すれば十分だろう。」
「ルーサ殿ありがとう。他に誰か話すことがあれば聞くがあるか?」
「父上、ラムルの縮小化計画を、より確実にしたいのでブロッサ嬢と先にあちらに行って、実際に行う場所で練習をやってみたいのですがよろしいでしょうか。」
「そうだな、失敗は許されない。何回でも納得できるまで頑張ってみろ。」
「はい、ありがとうございます。シルバーとレッドはどうする?」
「そうですね。マリー嬢が起きてからだと、たぶん自分も行くというでしょうから、早めに出た方が良いでしょうね。」
すると、ルーサ殿が、なにやら、にやっとして、
「マリーのことは私に任せなさい。安心して先に言っておくれ。」
と言われた。僕はルーサ殿がマリーをなにかに巻き込もうとしているような嫌な予感がして思わず、
「ルーサ殿、やはり私は残ります。実は先程も少しお伝えしましたが、私の風魔法は逆に足を引っ張ってブロッサ嬢に叱られる始末でして王太子殿下お一人で十分。なのでよろしければ、肉の美味しいお店や、二日後に学園で行われる美味しいデザートのイベントに案内させてもらえないでしょうか。」
「それはなんと魅力的な提案。是非お願いしたい。陛下頼む、シルバーを私に貸しておくれ。」
「承知した。たしかに、ブロッサ嬢はシルバーのことを、ふふふ…。シルバー、ルーサ殿のことを頼んだぞ。」
「はい、喜んでもらえるように頑張ります。ルーサ殿、変装魔法はしていただけますか?」
「それくらいのことはいくらでもするよ。」
「ありがとうございます。」
「あの、俺もデザートの日に友人に頼まれていることがあるし、自分で言うといやらしいけど、凍らせるのも完璧なんで、どうせなら、マリー嬢にもう少しコツを聞いた方が俺としてはいい気がするんで、俺も残ります。」
「たしかに、レッドは完璧だと聞いているから、こちらにいて、マリー嬢にアドバイスをもらうのもいいだろう。よし、分かった。では、ルドはブロッサ嬢と二人ですぐに礼拝堂に飛び、本番に備えてくれ。しっかり、ブロッサ嬢をフォローするのだぞ。仲がいいのは良いことだがあまり喧嘩はしないように。令嬢には優しくな。」
「父上、ブロッサ嬢の口が少々悪いためです。なぁ、シルバー、レッド、そう思うだろう。」
ルドの気持ちは分かる。ルドは王太子殿下だ、あんなに馬鹿にされたことなんてないだろうな。途中から本気で怒っていたものな。だけど、僕だって散々な言われようだったよ。下手くそとかね…。
「そうですね。私もご令嬢に、風魔法を使って、下手くそと言われたのは初めてでしたからね。でもあの方は天才ですから文句を言う気にはなれませんね。」
「俺もだよ。あんなに口の悪いご令嬢は初めてだけど、でも言っていることは合っているから、俺は気にならないかな」
クライム殿が一番びっくりしているな。
「へ・た・く・そ。そんなことをマリーに言われたら立ち直れないな…。」
いや本当は、もっと酷いことも言われているんだけどね。変態とか…。クライム殿には内緒にしておこう。
「クライム、なかなか面白いご令嬢なのだ。私は嫌いではないぞ。はっきりものを言うが、言うだけのことはある。能力も度胸もな。私を前にしても全く物怖じしない。私をおじさんと呼んだの者は初めてだ。」
「陛下をおじさん!」
「王妃のことはお姉さんだったぞ。綺麗で若ければ幾つになってもお姉さんらしいぞ。」
「王妃はなんと…。」
「それはもう、嬉しそうだったぞ。」
「そうですか…。」
クライム殿は疲れた表情をしていたけど、ルーサ殿のことを呼び捨てしていたブロッサなら、国王陛下のことも平気で言いそうだなと想像できた。だけど、ブロッサはクライム殿にはなんていうんだろう?なんて少しだけ思ってしまった。
そのあとは、
「話はこれくらいにして、ルド早く行け、実際にやろうとしている計画に問題はないか、何か必要なものがあれば言え、お前の判断でやって良い。絶対に成功させろ。死ぬなよ。」
「分かりました。行って参ります。」
とルドが返事をしてみんな解散した。
僕はクライム殿とレッドと一緒に、転移陣の前までルドとブロッサ嬢の見送りに行った。そこで、びっくりする光景を目にした。実はブロッサ嬢の好みがクライム殿だったようで、
「めちゃくちゃカッコいい。もう少し若かったら絶対に結婚を申し込むのに。どうしようマジで緊張する。あの顔、本当に好みだわ。黒髪がちょっとだけ、残念な気もするけど、興奮しすぎて鼻血が出そうよ。せっかくだから握手だけでもしてもらおうかしら。」
ブロッサ嬢、すべて声に出ているよ…。ほら、クライム殿の顔があんなに引きつっているじゃないか、どうするんだよ。
クライム殿が小さな声で僕に、
「ブロッサ嬢はいつもこんな感じなのか、それともどこか悪いのか?」
と聞いてきた。その声がルドにも聞こえたようで、ルドが小さな声で
「クライム殿、ブロッサ嬢は性格と頭が少々悪いんですよ。」
と、酷いことを言っていた。ブロッサ嬢は舞い上がりすぎていてなにを言ってもいまは聞こえないだろうが、レッドが、
「この二人で行かせて本当に大丈夫なの?」
と、いつになくまともなことを言ったので、クライム殿と笑ってしまった。
その間に二人の姿は輝いて消えていった。まぁ、大丈夫だろう。
あと、数時間でマリーが目覚める。明日は、ルーサ殿と、マリーも誘って、マリーが前に自慢していたダリの肉を食べに行こうと思っている。きっと喜んでくれるだろう。
国王陛下の言葉に、ルーサ殿が頷いて、
「この水晶を見て欲しい。中央にあるのがラムルのたまごだが、光を放っているのが分かると思う。しかし、まだ殻には魔力の模様である黒点は出ていない。それが出てくると丁度一週間で生まれる。この光具合からして、あと十日前後だと考えるのが妥当だろう。黒点が出てから、皆で礼拝堂に転移すれば十分だろう。」
「ルーサ殿ありがとう。他に誰か話すことがあれば聞くがあるか?」
「父上、ラムルの縮小化計画を、より確実にしたいのでブロッサ嬢と先にあちらに行って、実際に行う場所で練習をやってみたいのですがよろしいでしょうか。」
「そうだな、失敗は許されない。何回でも納得できるまで頑張ってみろ。」
「はい、ありがとうございます。シルバーとレッドはどうする?」
「そうですね。マリー嬢が起きてからだと、たぶん自分も行くというでしょうから、早めに出た方が良いでしょうね。」
すると、ルーサ殿が、なにやら、にやっとして、
「マリーのことは私に任せなさい。安心して先に言っておくれ。」
と言われた。僕はルーサ殿がマリーをなにかに巻き込もうとしているような嫌な予感がして思わず、
「ルーサ殿、やはり私は残ります。実は先程も少しお伝えしましたが、私の風魔法は逆に足を引っ張ってブロッサ嬢に叱られる始末でして王太子殿下お一人で十分。なのでよろしければ、肉の美味しいお店や、二日後に学園で行われる美味しいデザートのイベントに案内させてもらえないでしょうか。」
「それはなんと魅力的な提案。是非お願いしたい。陛下頼む、シルバーを私に貸しておくれ。」
「承知した。たしかに、ブロッサ嬢はシルバーのことを、ふふふ…。シルバー、ルーサ殿のことを頼んだぞ。」
「はい、喜んでもらえるように頑張ります。ルーサ殿、変装魔法はしていただけますか?」
「それくらいのことはいくらでもするよ。」
「ありがとうございます。」
「あの、俺もデザートの日に友人に頼まれていることがあるし、自分で言うといやらしいけど、凍らせるのも完璧なんで、どうせなら、マリー嬢にもう少しコツを聞いた方が俺としてはいい気がするんで、俺も残ります。」
「たしかに、レッドは完璧だと聞いているから、こちらにいて、マリー嬢にアドバイスをもらうのもいいだろう。よし、分かった。では、ルドはブロッサ嬢と二人ですぐに礼拝堂に飛び、本番に備えてくれ。しっかり、ブロッサ嬢をフォローするのだぞ。仲がいいのは良いことだがあまり喧嘩はしないように。令嬢には優しくな。」
「父上、ブロッサ嬢の口が少々悪いためです。なぁ、シルバー、レッド、そう思うだろう。」
ルドの気持ちは分かる。ルドは王太子殿下だ、あんなに馬鹿にされたことなんてないだろうな。途中から本気で怒っていたものな。だけど、僕だって散々な言われようだったよ。下手くそとかね…。
「そうですね。私もご令嬢に、風魔法を使って、下手くそと言われたのは初めてでしたからね。でもあの方は天才ですから文句を言う気にはなれませんね。」
「俺もだよ。あんなに口の悪いご令嬢は初めてだけど、でも言っていることは合っているから、俺は気にならないかな」
クライム殿が一番びっくりしているな。
「へ・た・く・そ。そんなことをマリーに言われたら立ち直れないな…。」
いや本当は、もっと酷いことも言われているんだけどね。変態とか…。クライム殿には内緒にしておこう。
「クライム、なかなか面白いご令嬢なのだ。私は嫌いではないぞ。はっきりものを言うが、言うだけのことはある。能力も度胸もな。私を前にしても全く物怖じしない。私をおじさんと呼んだの者は初めてだ。」
「陛下をおじさん!」
「王妃のことはお姉さんだったぞ。綺麗で若ければ幾つになってもお姉さんらしいぞ。」
「王妃はなんと…。」
「それはもう、嬉しそうだったぞ。」
「そうですか…。」
クライム殿は疲れた表情をしていたけど、ルーサ殿のことを呼び捨てしていたブロッサなら、国王陛下のことも平気で言いそうだなと想像できた。だけど、ブロッサはクライム殿にはなんていうんだろう?なんて少しだけ思ってしまった。
そのあとは、
「話はこれくらいにして、ルド早く行け、実際にやろうとしている計画に問題はないか、何か必要なものがあれば言え、お前の判断でやって良い。絶対に成功させろ。死ぬなよ。」
「分かりました。行って参ります。」
とルドが返事をしてみんな解散した。
僕はクライム殿とレッドと一緒に、転移陣の前までルドとブロッサ嬢の見送りに行った。そこで、びっくりする光景を目にした。実はブロッサ嬢の好みがクライム殿だったようで、
「めちゃくちゃカッコいい。もう少し若かったら絶対に結婚を申し込むのに。どうしようマジで緊張する。あの顔、本当に好みだわ。黒髪がちょっとだけ、残念な気もするけど、興奮しすぎて鼻血が出そうよ。せっかくだから握手だけでもしてもらおうかしら。」
ブロッサ嬢、すべて声に出ているよ…。ほら、クライム殿の顔があんなに引きつっているじゃないか、どうするんだよ。
クライム殿が小さな声で僕に、
「ブロッサ嬢はいつもこんな感じなのか、それともどこか悪いのか?」
と聞いてきた。その声がルドにも聞こえたようで、ルドが小さな声で
「クライム殿、ブロッサ嬢は性格と頭が少々悪いんですよ。」
と、酷いことを言っていた。ブロッサ嬢は舞い上がりすぎていてなにを言ってもいまは聞こえないだろうが、レッドが、
「この二人で行かせて本当に大丈夫なの?」
と、いつになくまともなことを言ったので、クライム殿と笑ってしまった。
その間に二人の姿は輝いて消えていった。まぁ、大丈夫だろう。
あと、数時間でマリーが目覚める。明日は、ルーサ殿と、マリーも誘って、マリーが前に自慢していたダリの肉を食べに行こうと思っている。きっと喜んでくれるだろう。
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