愛されたくて悪役令嬢になりました ~前世も今もあなただけです~

miyoko

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61.魔女ルーサside ~初代予言の女神(ブローサ様)~

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【魔女ルーサside】 

魔族は霧の谷に住んでいる。そしてフラワー王国は魔の森を挟んで丁度反対側にある国。今から千年ほど前、その国に魔女よりも魔法が使える女の子が生まれた。それがブローサ様だ。ブローサ様は毎日のように転移魔法を使って霧の谷に遊びに来る変わり者だった。その頃からブローサ様の右肩にはペットの小りすのピゴくんがいた。ブローサ様が言うには、物心ついた時からずっと一緒らしいのだが、霧の谷は険しい岩ばかりで美味しい食べ物なんてない。そこへ、金色の小りすを肩に乗せたピンクの髪をした少女は、毎日のようにステーキだの、ピザだの持ってくるのだ。

魔族の寿命は五千年とか一万年なんて言われているが、長老でもこんな人間は初めてだと言っていた。(実際には人の姿で生まれた女神様だったわけだが)私はその頃、まだ、三百年も生きていないくらいで、人間でいうなら十歳くらいの容姿だろうか。十二、三歳のブローサ様とはよく遊んだ。最初は一方的に私が意地悪ばかりしていたのだけど。丁度その頃、父様と母様が人間の戦争に巻き込まれて死んでしまったから、どうしても人間が許せなかったのだ。ブローサ様は、罪滅ぼしのつもりだったのか、自分の家は洋食屋さんだからと言って、毎日、料理を持ってきてくれていたわけだが。

ある日、私の大切な友達のネクスが高熱を出して死にかけた。ネクスは男の子で、人間は霧の谷の男性のことを魔人なんて呼ぶ。魔人は小さい頃、体が弱いことが多い。その時にネクスを光魔法で助けてくれたのがブローサ様だった。

霧の谷には古くから言い伝えられていることがあり、
『光魔法を使う少女は女神の欠片であり、少女の瞳が金色に変わりし時、少女は女神に生まれ変わる。そして世界を救う』と。

それまでは、人間は父様と母様を殺した敵だと思っていたけど、人間にも良い人間と悪い人間がいるんだと分かった。同時に魔女にも悪い魔女がいることも知った。実際に戦争を裏で動かしていたのは、悲しいけど、魔女だった。悪い魔女が瘴気を集めるために戦争をやらせていたらしい。それを止めに入って、私の父様と、母様は死んだのだと、あとから長老に聞かされた。それから、ブローサ様のお力もあり、なんとか戦争も落ち着き、平和な時代が訪れた。魔族の世界には魔族の掟があって、深く人間の世界に関わってはいけない。それは寿命が違いすぎるから。

それでも時々人間に恋をする魔族もいて、辛くて死んでしまう者もいた。ところが、色々と規格外のブローサ様のお力で、魔女から人間になれるようになり、幸せになれるものが増えた。本人は逆はできないからまだまだね、なんて言っていたけど。人間から魔族になれる者が増えたら問題が多そうだから出来なくていいと長老が言っていた。私もそう思う。

その頃、ネクスが人間になりたいと言い出した。好きな人間でも出来たのかとショックだったが、ルーサの大好きな洋食屋か、肉屋を一緒にやって暮らしたいと言ってくれた。たしかに霧の谷で魔族として生きていたらできないことで私の為に言ってくれているのが嬉しかった。私もその気になり、ブローサ様に相談しようとしていた時、あの事件が起こった。ラムルである。その頃のブローサ様はフラワー王国の国王陛下(ルアード様)と一緒に、なんとか戦争を落ち着かせ、ルアード様と結婚し、待望の子供が生まれたばかりだったと思う。

本当に突然のことだった。大量の瘴気の気配を魔の森に感じた次の瞬間、眩しいくらいの光が見えたかと思うと、何かとてつもなく大きなものがフラワー王国の方に向かっているのを感じた。ネクスのいる方向だと私は焦った。その時、ブローサ様が念話と水晶で話しかけてきた。ブローサ様はすべてを司る神様の声が聞こえたと言って、『千年に一度の魔獣(ラムル)現る時予言の女神現る』の話や、千年後に備えるための話をしてくれた。そしてブローサ様の生命力で、ラムルを千年魔の森に閉じ込めると言い、最後にブローサ様の瞳が綺麗なピンク色から金色に変わった時、ラムルの気配もブローサ様の気配も消え、本当に女神様になってしまわれたのだと思った。

ブローサ様は千年後に虹色のたまごが目で見えるようになってきたら、魔力が切れて、ラムルが再び復活してしまうけど、その時には新しい予言の女神ちゃんがいるらしいから安心してね。また会いましょうなんて言っていたけど、本当は、ルアと名付けられた男の赤ん坊をそれはそれは可愛がっていたから、離れるのは辛かっただろう。でも、寂しくないようにと、ルアード様とルア様に百年分の誕生日のお祝いの言葉を水晶で用意していたと聞いた時は何となくこんな日が来ることが分かっていたのかもしれないと思った。ルアード様は三十歳。人間は百三十年もたぶん生きないのだが、ブローサ様らしい…。

あれから約千年が経ったのか。なぜか、丁度その時からネクスの姿も見なくなってしまったから、たぶんあの時ラムルに踏みつぶされたんだろう。ブローサ様はネクスは大丈夫だからといっていたが一度も気配すら感じないのだから。私も年を取ったな。人間の年だと三十歳くらいの容姿だろうか?正直魔族にとって容姿などあまり関係ない。これでも千年以上生きているのだから、人間からしてみれば、中身は十分ばあさんだよ。さて、この子のオーラはブローサ様にそっくりだが、マリーといったか…。それよりも、千年ぶりだというのに、ブローサ様ときたら、いったい何をしているのか。はぁ~。

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