58 / 123
58.魔獣について①~ラムルはテムルのことでした~
しおりを挟む
私はいま、国王陛下にお願いされてなぜかお父様の膝の上にいる。そしてお父様に髪を撫でられながら国王陛下のお話を聞いている。とても恥ずかしいんだけど、いまから話す話で絶対にお父様が暴走するから、頼むからマリー嬢はクライムの膝の上で聞いてくれと言われたら断れないでしょ。国王陛下に頼まれたらどんなことでも断れないでしょうけどね。
どんな話なのかどきどきするわ。だって、絶対に悪い話ってことだもの。
「マリー嬢、すまない。マリー嬢にもすぐに分かることだから話すが、魔女殿からの情報によると、ラムルの子供が生まれるまでにあと一か月しかないらしい。」
「えっ。」
「先程、何処まで聞いていたか分からないが、愚か者が魔装具で魔の森に瘴気を投げ込んだんだよ。このままでは結界は絶対に間に合わない。いまからでは転移陣を置くこともできない。みな、何か良い案はないか。いま、宰相のジルドが隣国と相談してはいるが、残念ながら解決策は出ていない。もしもラムルが生まれた場合、ラムルのたまごの位置からして、我が国に入ってくる可能性が一番高い。」
お父様から静かに怒りが伝わってくる。たしかにこれは暴走寸前だわ。私だって怒りを抑えるのに必死よ。誰がそんな愚かなことをしたのよ。許せない。そんなことをしたら多くの人が死ぬことくらい分かるでしょう。私は怒りでぷるぷると震えてしまったわ。それをお父様が優しく撫でてくれている。だけど、ラムルなんてゲームでも出てこなかったわ。ゲームの内容と違うことが多い気がするわね。私が転生したことでお兄様も生きているし、もう完全にゲームと違う世界だと考えた方がいいのかしら?とりあえず、ラムルについて学ばないと、良い案なんて浮かばないわね。
「ところで国王陛下、ラムルって、どんな魔獣なんですか?」
「マリー嬢は魔獣の話は平気なのか?」
「はい、全く問題ありません。ダリのお肉は好きです。」
「「ぷっ。」」
何よ。ルドと、シルバーは知らないのね。とっても美味しいんだから。
「そ、そうか、それは頼もしいな。実はそれほど詳しいことは分かっていないんだ。ただ子供の落書きのような絵があるだけで、どのような能力を持っているのかも不明だ。」
「ではなぜ、そのように恐れているのですか?大したことないという可能性はないのですか?」
「マリー嬢が魔獣についてどのくらいの知識があるか分からないが、大抵の魔獣は二点を除けば普通の動物と変わらない。なぜなら元々は同じ動物であり、瘴気を取り込み過ぎた動物が魔の森で暮らすうちに魔獣に変異しているからだ。ゆえに、魔獣は皮膚の色が真っ黒であることと、角が額の所に一本から三本あること以外は、普通の動物と姿形は変わらない。そして角の数で強さが決まる。うさぎ型でも、うし型でも角が三本あればかなり厄介な魔法を使ってくる。ちなみにマリー嬢の好きなダリとは、うし型だ。」
「そうなのですね。」
「話を戻すと、ラムルは見たこともない容姿をしており、まずは大きさが問題だ。ラムルは人間に対して二倍の大きさはある。そして角が三本と尻尾も三本ある。色は動物でも見たこともない金色をしている。」
「それは怖いですね。」
「実際には魔女殿ですら千年前に初代予言の女神が見ている光景を水晶越しに見ただけで、はっきりとした大きさは分からないのだ。ただ、容姿はその落書きのような絵にそっくりだったそうだ。」
「そうですか、国王陛下その絵を見ることはできますか?」
「ああ、そこにあるから、見てごらん。」
そう言って国王陛下は侍従から一枚の紙きれを受け取った。そんな紙切れなの?その情報大丈夫なのかしら?私はそんなことを思いながらその紙切れの絵を見て腰を抜かしそうになった。
これ知ってる。めちゃくちゃ知ってるわ。弱点も知ってるし、何でも知ってるわ。もっと言うなら、ラムルじゃなくて、テムルよ。今はそんなことどっちでもいいけど…。私が前世で書いて、おじいちゃんとぬいぐるみまで作って遊んでいた怪獣じゃない。テムルは二倍どころではないわ。たぶん、三倍はあるわよ。うーん、どうやって伝えればいいのよ。よく見ると、たしかに字が下手でこれはラムルに見えるわね。そうじゃなくて、あー、ややこしい…。ややこしくなるから、名前はラムルのままでいくとして。とにかく私が知っていることを伝えなきゃ。
「えーと、皆さん、落ち着いて聞いてくださいね。私も少々混乱しているのですが、信じてもらえないかもしれませんが、夢の中でこの魔獣にそっくりな魔獣にあったことがありまして、えーと色々と知っています。」
これくらいしか無理よ。どうやって切り出せば良かったの?誰も絶対に質問しないでくださいね。大体、娘が作ったキャラとか使っちゃだめでしょ。その時の私って小学一年生くらいよね?もしかしてゲームの裏設定とかあったのかしら?前世のパパとママに言いたいわ。自分の作ったキャラクターが現実に人殺しとかしちゃったら、私絶対に耐えられないからね。
「予言の女神…。」
国王陛下までその言葉なんですね。もう聞くしかないわ。
「国王陛下、予言の女神とは何ですか?」
どんな話なのかどきどきするわ。だって、絶対に悪い話ってことだもの。
「マリー嬢、すまない。マリー嬢にもすぐに分かることだから話すが、魔女殿からの情報によると、ラムルの子供が生まれるまでにあと一か月しかないらしい。」
「えっ。」
「先程、何処まで聞いていたか分からないが、愚か者が魔装具で魔の森に瘴気を投げ込んだんだよ。このままでは結界は絶対に間に合わない。いまからでは転移陣を置くこともできない。みな、何か良い案はないか。いま、宰相のジルドが隣国と相談してはいるが、残念ながら解決策は出ていない。もしもラムルが生まれた場合、ラムルのたまごの位置からして、我が国に入ってくる可能性が一番高い。」
お父様から静かに怒りが伝わってくる。たしかにこれは暴走寸前だわ。私だって怒りを抑えるのに必死よ。誰がそんな愚かなことをしたのよ。許せない。そんなことをしたら多くの人が死ぬことくらい分かるでしょう。私は怒りでぷるぷると震えてしまったわ。それをお父様が優しく撫でてくれている。だけど、ラムルなんてゲームでも出てこなかったわ。ゲームの内容と違うことが多い気がするわね。私が転生したことでお兄様も生きているし、もう完全にゲームと違う世界だと考えた方がいいのかしら?とりあえず、ラムルについて学ばないと、良い案なんて浮かばないわね。
「ところで国王陛下、ラムルって、どんな魔獣なんですか?」
「マリー嬢は魔獣の話は平気なのか?」
「はい、全く問題ありません。ダリのお肉は好きです。」
「「ぷっ。」」
何よ。ルドと、シルバーは知らないのね。とっても美味しいんだから。
「そ、そうか、それは頼もしいな。実はそれほど詳しいことは分かっていないんだ。ただ子供の落書きのような絵があるだけで、どのような能力を持っているのかも不明だ。」
「ではなぜ、そのように恐れているのですか?大したことないという可能性はないのですか?」
「マリー嬢が魔獣についてどのくらいの知識があるか分からないが、大抵の魔獣は二点を除けば普通の動物と変わらない。なぜなら元々は同じ動物であり、瘴気を取り込み過ぎた動物が魔の森で暮らすうちに魔獣に変異しているからだ。ゆえに、魔獣は皮膚の色が真っ黒であることと、角が額の所に一本から三本あること以外は、普通の動物と姿形は変わらない。そして角の数で強さが決まる。うさぎ型でも、うし型でも角が三本あればかなり厄介な魔法を使ってくる。ちなみにマリー嬢の好きなダリとは、うし型だ。」
「そうなのですね。」
「話を戻すと、ラムルは見たこともない容姿をしており、まずは大きさが問題だ。ラムルは人間に対して二倍の大きさはある。そして角が三本と尻尾も三本ある。色は動物でも見たこともない金色をしている。」
「それは怖いですね。」
「実際には魔女殿ですら千年前に初代予言の女神が見ている光景を水晶越しに見ただけで、はっきりとした大きさは分からないのだ。ただ、容姿はその落書きのような絵にそっくりだったそうだ。」
「そうですか、国王陛下その絵を見ることはできますか?」
「ああ、そこにあるから、見てごらん。」
そう言って国王陛下は侍従から一枚の紙きれを受け取った。そんな紙切れなの?その情報大丈夫なのかしら?私はそんなことを思いながらその紙切れの絵を見て腰を抜かしそうになった。
これ知ってる。めちゃくちゃ知ってるわ。弱点も知ってるし、何でも知ってるわ。もっと言うなら、ラムルじゃなくて、テムルよ。今はそんなことどっちでもいいけど…。私が前世で書いて、おじいちゃんとぬいぐるみまで作って遊んでいた怪獣じゃない。テムルは二倍どころではないわ。たぶん、三倍はあるわよ。うーん、どうやって伝えればいいのよ。よく見ると、たしかに字が下手でこれはラムルに見えるわね。そうじゃなくて、あー、ややこしい…。ややこしくなるから、名前はラムルのままでいくとして。とにかく私が知っていることを伝えなきゃ。
「えーと、皆さん、落ち着いて聞いてくださいね。私も少々混乱しているのですが、信じてもらえないかもしれませんが、夢の中でこの魔獣にそっくりな魔獣にあったことがありまして、えーと色々と知っています。」
これくらいしか無理よ。どうやって切り出せば良かったの?誰も絶対に質問しないでくださいね。大体、娘が作ったキャラとか使っちゃだめでしょ。その時の私って小学一年生くらいよね?もしかしてゲームの裏設定とかあったのかしら?前世のパパとママに言いたいわ。自分の作ったキャラクターが現実に人殺しとかしちゃったら、私絶対に耐えられないからね。
「予言の女神…。」
国王陛下までその言葉なんですね。もう聞くしかないわ。
「国王陛下、予言の女神とは何ですか?」
1
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる