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58.魔獣について①~ラムルはテムルのことでした~
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私はいま、国王陛下にお願いされてなぜかお父様の膝の上にいる。そしてお父様に髪を撫でられながら国王陛下のお話を聞いている。とても恥ずかしいんだけど、いまから話す話で絶対にお父様が暴走するから、頼むからマリー嬢はクライムの膝の上で聞いてくれと言われたら断れないでしょ。国王陛下に頼まれたらどんなことでも断れないでしょうけどね。
どんな話なのかどきどきするわ。だって、絶対に悪い話ってことだもの。
「マリー嬢、すまない。マリー嬢にもすぐに分かることだから話すが、魔女殿からの情報によると、ラムルの子供が生まれるまでにあと一か月しかないらしい。」
「えっ。」
「先程、何処まで聞いていたか分からないが、愚か者が魔装具で魔の森に瘴気を投げ込んだんだよ。このままでは結界は絶対に間に合わない。いまからでは転移陣を置くこともできない。みな、何か良い案はないか。いま、宰相のジルドが隣国と相談してはいるが、残念ながら解決策は出ていない。もしもラムルが生まれた場合、ラムルのたまごの位置からして、我が国に入ってくる可能性が一番高い。」
お父様から静かに怒りが伝わってくる。たしかにこれは暴走寸前だわ。私だって怒りを抑えるのに必死よ。誰がそんな愚かなことをしたのよ。許せない。そんなことをしたら多くの人が死ぬことくらい分かるでしょう。私は怒りでぷるぷると震えてしまったわ。それをお父様が優しく撫でてくれている。だけど、ラムルなんてゲームでも出てこなかったわ。ゲームの内容と違うことが多い気がするわね。私が転生したことでお兄様も生きているし、もう完全にゲームと違う世界だと考えた方がいいのかしら?とりあえず、ラムルについて学ばないと、良い案なんて浮かばないわね。
「ところで国王陛下、ラムルって、どんな魔獣なんですか?」
「マリー嬢は魔獣の話は平気なのか?」
「はい、全く問題ありません。ダリのお肉は好きです。」
「「ぷっ。」」
何よ。ルドと、シルバーは知らないのね。とっても美味しいんだから。
「そ、そうか、それは頼もしいな。実はそれほど詳しいことは分かっていないんだ。ただ子供の落書きのような絵があるだけで、どのような能力を持っているのかも不明だ。」
「ではなぜ、そのように恐れているのですか?大したことないという可能性はないのですか?」
「マリー嬢が魔獣についてどのくらいの知識があるか分からないが、大抵の魔獣は二点を除けば普通の動物と変わらない。なぜなら元々は同じ動物であり、瘴気を取り込み過ぎた動物が魔の森で暮らすうちに魔獣に変異しているからだ。ゆえに、魔獣は皮膚の色が真っ黒であることと、角が額の所に一本から三本あること以外は、普通の動物と姿形は変わらない。そして角の数で強さが決まる。うさぎ型でも、うし型でも角が三本あればかなり厄介な魔法を使ってくる。ちなみにマリー嬢の好きなダリとは、うし型だ。」
「そうなのですね。」
「話を戻すと、ラムルは見たこともない容姿をしており、まずは大きさが問題だ。ラムルは人間に対して二倍の大きさはある。そして角が三本と尻尾も三本ある。色は動物でも見たこともない金色をしている。」
「それは怖いですね。」
「実際には魔女殿ですら千年前に初代予言の女神が見ている光景を水晶越しに見ただけで、はっきりとした大きさは分からないのだ。ただ、容姿はその落書きのような絵にそっくりだったそうだ。」
「そうですか、国王陛下その絵を見ることはできますか?」
「ああ、そこにあるから、見てごらん。」
そう言って国王陛下は侍従から一枚の紙きれを受け取った。そんな紙切れなの?その情報大丈夫なのかしら?私はそんなことを思いながらその紙切れの絵を見て腰を抜かしそうになった。
これ知ってる。めちゃくちゃ知ってるわ。弱点も知ってるし、何でも知ってるわ。もっと言うなら、ラムルじゃなくて、テムルよ。今はそんなことどっちでもいいけど…。私が前世で書いて、おじいちゃんとぬいぐるみまで作って遊んでいた怪獣じゃない。テムルは二倍どころではないわ。たぶん、三倍はあるわよ。うーん、どうやって伝えればいいのよ。よく見ると、たしかに字が下手でこれはラムルに見えるわね。そうじゃなくて、あー、ややこしい…。ややこしくなるから、名前はラムルのままでいくとして。とにかく私が知っていることを伝えなきゃ。
「えーと、皆さん、落ち着いて聞いてくださいね。私も少々混乱しているのですが、信じてもらえないかもしれませんが、夢の中でこの魔獣にそっくりな魔獣にあったことがありまして、えーと色々と知っています。」
これくらいしか無理よ。どうやって切り出せば良かったの?誰も絶対に質問しないでくださいね。大体、娘が作ったキャラとか使っちゃだめでしょ。その時の私って小学一年生くらいよね?もしかしてゲームの裏設定とかあったのかしら?前世のパパとママに言いたいわ。自分の作ったキャラクターが現実に人殺しとかしちゃったら、私絶対に耐えられないからね。
「予言の女神…。」
国王陛下までその言葉なんですね。もう聞くしかないわ。
「国王陛下、予言の女神とは何ですか?」
どんな話なのかどきどきするわ。だって、絶対に悪い話ってことだもの。
「マリー嬢、すまない。マリー嬢にもすぐに分かることだから話すが、魔女殿からの情報によると、ラムルの子供が生まれるまでにあと一か月しかないらしい。」
「えっ。」
「先程、何処まで聞いていたか分からないが、愚か者が魔装具で魔の森に瘴気を投げ込んだんだよ。このままでは結界は絶対に間に合わない。いまからでは転移陣を置くこともできない。みな、何か良い案はないか。いま、宰相のジルドが隣国と相談してはいるが、残念ながら解決策は出ていない。もしもラムルが生まれた場合、ラムルのたまごの位置からして、我が国に入ってくる可能性が一番高い。」
お父様から静かに怒りが伝わってくる。たしかにこれは暴走寸前だわ。私だって怒りを抑えるのに必死よ。誰がそんな愚かなことをしたのよ。許せない。そんなことをしたら多くの人が死ぬことくらい分かるでしょう。私は怒りでぷるぷると震えてしまったわ。それをお父様が優しく撫でてくれている。だけど、ラムルなんてゲームでも出てこなかったわ。ゲームの内容と違うことが多い気がするわね。私が転生したことでお兄様も生きているし、もう完全にゲームと違う世界だと考えた方がいいのかしら?とりあえず、ラムルについて学ばないと、良い案なんて浮かばないわね。
「ところで国王陛下、ラムルって、どんな魔獣なんですか?」
「マリー嬢は魔獣の話は平気なのか?」
「はい、全く問題ありません。ダリのお肉は好きです。」
「「ぷっ。」」
何よ。ルドと、シルバーは知らないのね。とっても美味しいんだから。
「そ、そうか、それは頼もしいな。実はそれほど詳しいことは分かっていないんだ。ただ子供の落書きのような絵があるだけで、どのような能力を持っているのかも不明だ。」
「ではなぜ、そのように恐れているのですか?大したことないという可能性はないのですか?」
「マリー嬢が魔獣についてどのくらいの知識があるか分からないが、大抵の魔獣は二点を除けば普通の動物と変わらない。なぜなら元々は同じ動物であり、瘴気を取り込み過ぎた動物が魔の森で暮らすうちに魔獣に変異しているからだ。ゆえに、魔獣は皮膚の色が真っ黒であることと、角が額の所に一本から三本あること以外は、普通の動物と姿形は変わらない。そして角の数で強さが決まる。うさぎ型でも、うし型でも角が三本あればかなり厄介な魔法を使ってくる。ちなみにマリー嬢の好きなダリとは、うし型だ。」
「そうなのですね。」
「話を戻すと、ラムルは見たこともない容姿をしており、まずは大きさが問題だ。ラムルは人間に対して二倍の大きさはある。そして角が三本と尻尾も三本ある。色は動物でも見たこともない金色をしている。」
「それは怖いですね。」
「実際には魔女殿ですら千年前に初代予言の女神が見ている光景を水晶越しに見ただけで、はっきりとした大きさは分からないのだ。ただ、容姿はその落書きのような絵にそっくりだったそうだ。」
「そうですか、国王陛下その絵を見ることはできますか?」
「ああ、そこにあるから、見てごらん。」
そう言って国王陛下は侍従から一枚の紙きれを受け取った。そんな紙切れなの?その情報大丈夫なのかしら?私はそんなことを思いながらその紙切れの絵を見て腰を抜かしそうになった。
これ知ってる。めちゃくちゃ知ってるわ。弱点も知ってるし、何でも知ってるわ。もっと言うなら、ラムルじゃなくて、テムルよ。今はそんなことどっちでもいいけど…。私が前世で書いて、おじいちゃんとぬいぐるみまで作って遊んでいた怪獣じゃない。テムルは二倍どころではないわ。たぶん、三倍はあるわよ。うーん、どうやって伝えればいいのよ。よく見ると、たしかに字が下手でこれはラムルに見えるわね。そうじゃなくて、あー、ややこしい…。ややこしくなるから、名前はラムルのままでいくとして。とにかく私が知っていることを伝えなきゃ。
「えーと、皆さん、落ち着いて聞いてくださいね。私も少々混乱しているのですが、信じてもらえないかもしれませんが、夢の中でこの魔獣にそっくりな魔獣にあったことがありまして、えーと色々と知っています。」
これくらいしか無理よ。どうやって切り出せば良かったの?誰も絶対に質問しないでくださいね。大体、娘が作ったキャラとか使っちゃだめでしょ。その時の私って小学一年生くらいよね?もしかしてゲームの裏設定とかあったのかしら?前世のパパとママに言いたいわ。自分の作ったキャラクターが現実に人殺しとかしちゃったら、私絶対に耐えられないからね。
「予言の女神…。」
国王陛下までその言葉なんですね。もう聞くしかないわ。
「国王陛下、予言の女神とは何ですか?」
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