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57.攻略対象者side【シルバーside】~マリーを守る~
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【シルバーside】~マリーを守る~
正直最初は世話の焼ける女の子くらいに思っていた。それがまぼろしの薬を作るために必死になって頑張る彼女を見ているうちに、段々気になるようになってきた。それからどんな時でも明るく前向きな彼女を見て、何度も心が救われた。だってそうだろう、三千人以上の患者が苦しんでいたら、一度や二度は誰だって心が折れるはずだ。それなのにマリー嬢はいつも一生懸命で弱音を吐かない。
そんな彼女だからか、魔力をちょろちょろとしか出せないことを全く気にした様子も見せずに次々と奇跡をおこした。最初に驚いたのはアーサー殿にマリーが見た夢の話を聞いた時だ。僕のカサブランカ公爵領の花園の研究室に間違いないと思った。誰にも話していないのに本当に驚いた。次に驚いたのは、やはりまぼろしの薬を作ってしまったこと。カサブランカの花びらがまぼろしの薬に変わる瞬間の美しさは表現できないものがあった。正直、普段は明るくて綺麗な令嬢くらいに思っていたマリーが一瞬女神に見えた。
平民街に行って、実際に患者を目の前にしても、常に優しく声をかけていた。救護院の中の衛生面は、あまり保たれていなかった。実際かなりの悪臭がしていたし、人手が少ないから、体も拭けなければ、トイレも怪しいものだった。それでも、マリーは笑顔で話しかけていた。もうこの頃には、好きになりかけていたと思う。もちろん、ルドの婚約者候補だし、今回のことで、婚約者に変わる可能性が高いから、自分の心にブレーキはかけていたけど。好きにならない訳がない。流石、マルク様の妹君。我がままだと言う噂はわざと流していたんだなと、自分で確認せずに噂を信じていた自分を恥じた。
こんなに心の綺麗な令嬢がいるなんて、明るくて、優しくて人の痛みが分かる人。だからと言ってすべてが完璧なわけではなくて、魔力はちょろちょろ、特技はカエルを捕まえること、なんともとんでもない令嬢。でもそんな欠点ですら可愛く思えてしまう。
無事に、はやり病を終息させるという偉業をやってのけても、マリーの態度は全く変わらなかった。威張ることもなければ、褒美を乞う訳でもない。正直、褒美として、ルドの婚約者にして欲しいと言わなかった事には心から安心してしまった。しかし、マリーの作ったまぼろしの薬のことは極秘情報になっているため、僕とルドの王宮内での評価だけが上がり、心が痛かった。本当はマリーが頑張ったおかげなのに。次の日学園に行くと、寂しそうに馬車から降りてくるマリーの姿があった。マルク殿やアーサー殿がいなくて寂しいのだろう。マルク殿に頼まれていたこともあるけど、そんなこと関係なく僕が守ろうと思った。思っていたのに、マリーを危険な目に合わせてしまった。
アンナを助けるために、マリーは死にかけたのだから。マリーは友達の命を救うために自分の命を捧げられる人。そんなマリーだからこそ、金色の瞳と、不思議なブレスレットを手に入れたのだろう。僕はマリーが死にかけて、マリーが僕の前からいなくなると思った瞬間、僕はマリーがどうしようもなく好きだと気づいた。そばにいられるだけでもいいから死なないで欲しいと。王家、魔獣、そんなもの知るか。マリーが傷つくことは、絶対に許せない。クライム殿の気持ちが痛いほど分かった。だけど、僕だって男だ、少しくらいマリーに男として意識して欲しいと思うのはいけないだろうか…。
僕は国王陛下に、ルドの次に、マリーとベッドへ転移することを希望した。王家の人間以外でもできるかを確認したいと適当な理由をつけて、マリーと二人でベッドに飛んだ。そしてわざとよろけた振りをして、マリーの手を引っ張った。自分にこんなずるい面があるなんてびっくりした。マリーはよろけてマリーの唇が僕の頬にあたった。卑怯と言われても構わない。マリーが少しでも僕のことを男として意識してくれるなら何だってやる。案の定マリーは真っ赤になって、謝ってきた。ごめんね。シルバー嫌だったよねって。こんな卑怯な男に謝らなくていいのに。僕は満面の笑みで、マリーみたいに素敵な令嬢にキスされて僕は幸せだよって伝えた。マリーはキスだなんて…と言って、真っ赤になっていた。マリーが可愛すぎて胸が張り裂けそうだった。僕は何があっても今度こそは、マリーを守ると誓った。
正直最初は世話の焼ける女の子くらいに思っていた。それがまぼろしの薬を作るために必死になって頑張る彼女を見ているうちに、段々気になるようになってきた。それからどんな時でも明るく前向きな彼女を見て、何度も心が救われた。だってそうだろう、三千人以上の患者が苦しんでいたら、一度や二度は誰だって心が折れるはずだ。それなのにマリー嬢はいつも一生懸命で弱音を吐かない。
そんな彼女だからか、魔力をちょろちょろとしか出せないことを全く気にした様子も見せずに次々と奇跡をおこした。最初に驚いたのはアーサー殿にマリーが見た夢の話を聞いた時だ。僕のカサブランカ公爵領の花園の研究室に間違いないと思った。誰にも話していないのに本当に驚いた。次に驚いたのは、やはりまぼろしの薬を作ってしまったこと。カサブランカの花びらがまぼろしの薬に変わる瞬間の美しさは表現できないものがあった。正直、普段は明るくて綺麗な令嬢くらいに思っていたマリーが一瞬女神に見えた。
平民街に行って、実際に患者を目の前にしても、常に優しく声をかけていた。救護院の中の衛生面は、あまり保たれていなかった。実際かなりの悪臭がしていたし、人手が少ないから、体も拭けなければ、トイレも怪しいものだった。それでも、マリーは笑顔で話しかけていた。もうこの頃には、好きになりかけていたと思う。もちろん、ルドの婚約者候補だし、今回のことで、婚約者に変わる可能性が高いから、自分の心にブレーキはかけていたけど。好きにならない訳がない。流石、マルク様の妹君。我がままだと言う噂はわざと流していたんだなと、自分で確認せずに噂を信じていた自分を恥じた。
こんなに心の綺麗な令嬢がいるなんて、明るくて、優しくて人の痛みが分かる人。だからと言ってすべてが完璧なわけではなくて、魔力はちょろちょろ、特技はカエルを捕まえること、なんともとんでもない令嬢。でもそんな欠点ですら可愛く思えてしまう。
無事に、はやり病を終息させるという偉業をやってのけても、マリーの態度は全く変わらなかった。威張ることもなければ、褒美を乞う訳でもない。正直、褒美として、ルドの婚約者にして欲しいと言わなかった事には心から安心してしまった。しかし、マリーの作ったまぼろしの薬のことは極秘情報になっているため、僕とルドの王宮内での評価だけが上がり、心が痛かった。本当はマリーが頑張ったおかげなのに。次の日学園に行くと、寂しそうに馬車から降りてくるマリーの姿があった。マルク殿やアーサー殿がいなくて寂しいのだろう。マルク殿に頼まれていたこともあるけど、そんなこと関係なく僕が守ろうと思った。思っていたのに、マリーを危険な目に合わせてしまった。
アンナを助けるために、マリーは死にかけたのだから。マリーは友達の命を救うために自分の命を捧げられる人。そんなマリーだからこそ、金色の瞳と、不思議なブレスレットを手に入れたのだろう。僕はマリーが死にかけて、マリーが僕の前からいなくなると思った瞬間、僕はマリーがどうしようもなく好きだと気づいた。そばにいられるだけでもいいから死なないで欲しいと。王家、魔獣、そんなもの知るか。マリーが傷つくことは、絶対に許せない。クライム殿の気持ちが痛いほど分かった。だけど、僕だって男だ、少しくらいマリーに男として意識して欲しいと思うのはいけないだろうか…。
僕は国王陛下に、ルドの次に、マリーとベッドへ転移することを希望した。王家の人間以外でもできるかを確認したいと適当な理由をつけて、マリーと二人でベッドに飛んだ。そしてわざとよろけた振りをして、マリーの手を引っ張った。自分にこんなずるい面があるなんてびっくりした。マリーはよろけてマリーの唇が僕の頬にあたった。卑怯と言われても構わない。マリーが少しでも僕のことを男として意識してくれるなら何だってやる。案の定マリーは真っ赤になって、謝ってきた。ごめんね。シルバー嫌だったよねって。こんな卑怯な男に謝らなくていいのに。僕は満面の笑みで、マリーみたいに素敵な令嬢にキスされて僕は幸せだよって伝えた。マリーはキスだなんて…と言って、真っ赤になっていた。マリーが可愛すぎて胸が張り裂けそうだった。僕は何があっても今度こそは、マリーを守ると誓った。
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