愛されたくて悪役令嬢になりました ~前世も今もあなただけです~

miyoko

文字の大きさ
上 下
51 / 123

51.久しぶりの学園です②

しおりを挟む
四限目、待ちに待った植物学の授業。グループごとに分かれて解熱剤を作るんだけど…。私達の前には、とても可愛らしい黄色の花が咲いた植木鉢が二鉢あって、どちらかが解熱剤になるシーパー草で、どちらかが噛みつき草らしい。うーん、そっくりね。どこからどう見ても一緒に見えるわ。アン先生が言うには花の前に木の枝を出してみて、噛みついてこなければシーパー草らしい。なぜなら噛みつき草は百パーセント噛みついてくるらしい。怖すぎるでしょ。ちゃんと植物学の教科書は最後まで読むべきだったわね。

「俺が、やりてぇー。」
「レッド、率先してやるなんてえらいわ。」
アンナがレッドを褒め称えているけど、レッドはたぶん本当にやりたいだけよ。アンナが思っているようなみんなの為に俺がやる…みたいな気持ちは残念ながらレッドにはないと思うのだけど。これが恋は盲目なのかしら?お姉さんタイプのしっかり者のアンナでも変わっちゃうのね。恐るべし恋心。ルナの方を見ると呆れた顔でアンナを見ていた。なるほど、いつもこんな感じなのね。

「やるぞ。」
レッドが木の枝を花の前に出すと、
「げっ、何だこいつ、花びらの中からぎざぎざの歯が出てきたぞ。すごい力で枝に噛みついてやがる。」
ホラー映画のワンシーンみたい。さっきまでの可愛らしい花からこんなに恐ろしいぎざぎざの歯が出てくるなんて。知らない花は触るべからずね。アン先生が、

「噛みつき草は大変危険なので火魔法で花だけ焼いてください。歯と根は違う薬に使えます。それから……」
と説明している。
「それじゃあ、ついでに俺がやるよ。」
「レッド!やめろ!」
シルバーがそう言うのと、レッドが木の枝から手を離して花に手をかざすのが同時だった。

その瞬間、噛みつき草がレッドの手に噛みつこうとして、アンナがレッドの手をかばって、噛みつかれてしまった。本当に一瞬のことだった。
「アンナ大丈夫か。」
アン先生は慌ててブロッサ嬢を呼んで来ると言って出て行ってしまった。レッドが火魔法ですぐに花だけやいてくれたのに、ぎざぎざの歯だけまだ噛みついたまま残っている。

「何で歯だけ取れないんだよ。」
「レッド!アン先生の話をちゃんと最後まで聞かないからだよ。噛みつき草は枝に噛ませたままの状態で花を燃やさないといけないんだ。噛みついたまま歯だけ残るから…。」
と、シルバーが説明してくれた。
「そうなのか。アンナごめんな、俺のせいで。」
「本当よ。レッドの右手は剣を握る大切な手でしょ。もっと気をつけなさいよ。」

「本当にごめん。」
アンナの手がどんどん紫色になっていく。ブロッサ嬢が来てくれるまでは、私が頑張らないと。光魔法の魔力は少しでいいんだから、その少しにも足りないだろうけど、やらないよりは絶対にいいはず。

私はアンナの手が治るように、みんなが笑顔になってくれるように、必死で祈りながらアンナの手を覆ってみた。淡く淡く光り出して、段々と光が強くなり、今まで私がアーサーと練習でやってきた光魔法の治療の中で一番強く光ってくれている。ぎざぎざの歯が落ちたわ!出血も止まり、指先の色も紫からピンクに変わりつつある。あと少しかな、だけどやっぱり無理みたい、悔しいな、目がかすんできちゃった。魔力を一気に出しすぎたかな。

でも光魔法はコントロールが難しくて何度やっても魔道具を介しては無理だったのよね。本当に悔しい…。アンナを助けたいのに。もう限界かな。
「マリーこれを飲んで。」
「シルバー。」
シルバーが私の口に回復薬を入れてくれた。何とかなるかも…。

「シルバーありがとう。」
「もう少しだけど、マリー頑張れるかい?」
「ええ、あと少しで紫色が消えるものね。あと少し…。」
「マリー頑張ったね。紫色が消えたよ。」

「マリー私の為にありがとう。」
「ええ、良かったわ。」
「マリー俺のせいでごめん。でもありがとうな。」
みんな喜んでくれてるわ。嬉しいな。でも限界みたい、いつもの三倍以上の量を放出しちゃったものね。さっきまで壊れそうなくらいバクバクうるさかった心臓が、今は止まりそうだわ。私死んじゃうのかな。アーサー怖いよ。助けて…。心臓の音がどんどんゆっくりになっていくわ。みんなの声も遠くなってきちゃった。

「マリー、マリー、頼むからこれを飲んでくれ。」
最後はシルバーの悲鳴に近い声が遠くに聞こえた気がするけど、それ以外は覚えていないわ。


    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

処理中です...