愛されたくて悪役令嬢になりました ~前世も今もあなただけです~

miyoko

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51.久しぶりの学園です②

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四限目、待ちに待った植物学の授業。グループごとに分かれて解熱剤を作るんだけど…。私達の前には、とても可愛らしい黄色の花が咲いた植木鉢が二鉢あって、どちらかが解熱剤になるシーパー草で、どちらかが噛みつき草らしい。うーん、そっくりね。どこからどう見ても一緒に見えるわ。アン先生が言うには花の前に木の枝を出してみて、噛みついてこなければシーパー草らしい。なぜなら噛みつき草は百パーセント噛みついてくるらしい。怖すぎるでしょ。ちゃんと植物学の教科書は最後まで読むべきだったわね。

「俺が、やりてぇー。」
「レッド、率先してやるなんてえらいわ。」
アンナがレッドを褒め称えているけど、レッドはたぶん本当にやりたいだけよ。アンナが思っているようなみんなの為に俺がやる…みたいな気持ちは残念ながらレッドにはないと思うのだけど。これが恋は盲目なのかしら?お姉さんタイプのしっかり者のアンナでも変わっちゃうのね。恐るべし恋心。ルナの方を見ると呆れた顔でアンナを見ていた。なるほど、いつもこんな感じなのね。

「やるぞ。」
レッドが木の枝を花の前に出すと、
「げっ、何だこいつ、花びらの中からぎざぎざの歯が出てきたぞ。すごい力で枝に噛みついてやがる。」
ホラー映画のワンシーンみたい。さっきまでの可愛らしい花からこんなに恐ろしいぎざぎざの歯が出てくるなんて。知らない花は触るべからずね。アン先生が、

「噛みつき草は大変危険なので火魔法で花だけ焼いてください。歯と根は違う薬に使えます。それから……」
と説明している。
「それじゃあ、ついでに俺がやるよ。」
「レッド!やめろ!」
シルバーがそう言うのと、レッドが木の枝から手を離して花に手をかざすのが同時だった。

その瞬間、噛みつき草がレッドの手に噛みつこうとして、アンナがレッドの手をかばって、噛みつかれてしまった。本当に一瞬のことだった。
「アンナ大丈夫か。」
アン先生は慌ててブロッサ嬢を呼んで来ると言って出て行ってしまった。レッドが火魔法ですぐに花だけやいてくれたのに、ぎざぎざの歯だけまだ噛みついたまま残っている。

「何で歯だけ取れないんだよ。」
「レッド!アン先生の話をちゃんと最後まで聞かないからだよ。噛みつき草は枝に噛ませたままの状態で花を燃やさないといけないんだ。噛みついたまま歯だけ残るから…。」
と、シルバーが説明してくれた。
「そうなのか。アンナごめんな、俺のせいで。」
「本当よ。レッドの右手は剣を握る大切な手でしょ。もっと気をつけなさいよ。」

「本当にごめん。」
アンナの手がどんどん紫色になっていく。ブロッサ嬢が来てくれるまでは、私が頑張らないと。光魔法の魔力は少しでいいんだから、その少しにも足りないだろうけど、やらないよりは絶対にいいはず。

私はアンナの手が治るように、みんなが笑顔になってくれるように、必死で祈りながらアンナの手を覆ってみた。淡く淡く光り出して、段々と光が強くなり、今まで私がアーサーと練習でやってきた光魔法の治療の中で一番強く光ってくれている。ぎざぎざの歯が落ちたわ!出血も止まり、指先の色も紫からピンクに変わりつつある。あと少しかな、だけどやっぱり無理みたい、悔しいな、目がかすんできちゃった。魔力を一気に出しすぎたかな。

でも光魔法はコントロールが難しくて何度やっても魔道具を介しては無理だったのよね。本当に悔しい…。アンナを助けたいのに。もう限界かな。
「マリーこれを飲んで。」
「シルバー。」
シルバーが私の口に回復薬を入れてくれた。何とかなるかも…。

「シルバーありがとう。」
「もう少しだけど、マリー頑張れるかい?」
「ええ、あと少しで紫色が消えるものね。あと少し…。」
「マリー頑張ったね。紫色が消えたよ。」

「マリー私の為にありがとう。」
「ええ、良かったわ。」
「マリー俺のせいでごめん。でもありがとうな。」
みんな喜んでくれてるわ。嬉しいな。でも限界みたい、いつもの三倍以上の量を放出しちゃったものね。さっきまで壊れそうなくらいバクバクうるさかった心臓が、今は止まりそうだわ。私死んじゃうのかな。アーサー怖いよ。助けて…。心臓の音がどんどんゆっくりになっていくわ。みんなの声も遠くなってきちゃった。

「マリー、マリー、頼むからこれを飲んでくれ。」
最後はシルバーの悲鳴に近い声が遠くに聞こえた気がするけど、それ以外は覚えていないわ。


    
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