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44.ついにアーサーとデートに行きます

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私は余程疲れていたのか、カサブランカ公爵邸からの帰り道の馬車の中で、また熟睡してしまった。着いてもまったく起きず、仕方なくサリーに湯浴みされるも起きず、結局そのままベッドで寝かされるパターンだったらしい。とにかく気付いたら次の日の朝だった。
「マリー起きてる?」
「ええ、アーサーおはよう。」
「体調はどう?」
「昨日沢山寝たからばっちりよ。」

「良かった。それじゃあ、その、お願いがあって…。あの…。」
なんだかじれったいわね。最近のアーサーは、すごいなーって感じることが多くて尊敬してたけど、どちらかというと、こちらの方がいつものアーサーらしいわね。本当にもう。
「アーサー、アーサーのお願いなら私なんでも聞くけど。」
「なんでも!なんでもって。」

あれ?アーサーが真っ赤になっちゃったわ。
「じゃあ、えーと、だから…その、えーと…。」
アーサーがプチパニックになってきたわ。もう私がそばにいないとだめなんだから。
「アーサー男でしょ!はっきり言ってちょうだい。ヘタレは嫌いよ。」
思わず、前世を思い出す前のマリーの口調できつく言い過ぎちゃったわ。アーサー泣いちゃうかな。

「嫌い。だめ。ぼ、僕とデートして!」
「ひっ、デ、デ、デ、デート。」
あまりの衝撃に倒れかけた私をアーサーが支えてくれたけど、めちゃくちゃ近くに破壊力が半端ない前世から大好きな顔があって、本当にもう一度死ぬかと思ったわ。

「マリー大丈夫?」
大丈夫なわけないでしょう…でも嬉しい。
「びっくりして死ぬかと思ったわ。」
「驚かせてごめんね。でも、やっとマルクが死ぬ心配もなくなったし、どうしても僕の気持ちを、もっとちゃんと伝えたくて、お願いだからマリー僕とデートして。」
気持ちは十分伝わってるけどね。

「私もアーサーと、もちろんデートしたいわ。本当にびっくりして倒れそうになっただけなの。」
「うん、僕もさっきは緊張で、今はマリーが喜んでくれたのが嬉しくて、すごくどきどきしているよ。」
アーサーの胸の上に私の手を持っていかれてびっくり、えっ、めちゃくちゃ早いじゃない。
「アーサー早すぎよ。大丈夫なの?」

「うん、普段からマリーのそばで鍛えてるから大丈夫だよ。」
「えっ!」
心臓の鍛え方、今度私にも教えて欲しいわ。
「でもアーサー私よく考えたら一応王太子妃候補だったわ。」

「それは大丈夫だよ。マルクにね、変装用の魔道具を作ってもらったから安心して。僕たちは裕福な商人の令息と令嬢に見えるらしいよ。楽しみだね。」
「服装まで。流石お兄様。レベルが王室なみね。」
「うん、僕たち二人にはいつも通りに見えるらしいから本当にすごいよね。」
王室超えてるかも…。
「それに今日は花まつりの日でしょ。」
「花まつり。」
そっか、今日は花まつりなのね。花まつりは名前の通り、王都中を花で飾るお祭り。パレードや花火など派手な催しはないのだけど、好きな人とお花を一つずつ選んで川沿いにある巨大な笹で笹舟を作って川に流すと結ばれるって言われてるのよね。アーサーって意外と乙女心があるのね。この世界の笹は本当に大きくて丈夫だから、卵六個とかモモ二個とか普通に入って売ってるものね。前世の記憶が戻った時にはすごくびっくりしたのよね。

「マリーそれにね。僕はもう魔法のお師匠様じゃないよ。マリーに教えることはもうないし、マルクを助けるための間の話だったでしょ。僕はただのアーサーだよ。だからさっきみたいに怒ったり威張ったりしてよ。前世の記憶のせいもあるのかなーって思っていたんだけど、やっぱり淋しいよ。マリーが遠くに行っちゃったみたいなんだ。マリーだけなんだよ、僕を怖がらないで笑って、怒って、どこに行くにも連れて行ってくれて、アーサーは私がいないとダメねっていつも言ってくれたでしょ。その通りなんだよ。僕はマリーがいなきゃダメなんだ。マリーさえいてくれればいいんだよ。」

「うっ!」
急にぺらぺらと恥ずかしことを沢山話し出したわね。たしかに前世を思い出してから、好きだった気持ちとか、今も好きって自覚しちゃって、少しぎこちなくなっていたかも。それに沢山心配事がありすぎてアーサーに私の方が甘えたくなってたから、この関係が居心地良かったのもあるのかも。前世の記憶を思い出す前も威張っていたでけで、基本的に私は抜けているからアーサーを本当は頼りにしていたし、助けてくれていたことも知っていたわ。ただ恥ずかしくて素直になれなかったから、お礼とか言えなかっただけ…。

結局私は前世も今もずーとアーサーが好きなんだわ。こんなに好きな人を不安にさせちゃだめよね。それに私は真理じゃなくてマリーなんだから、私らしくなかったわ。なんか色々と吹っ切れたわ。
「よーし、アーサー、私をデートに連れて行きなさい。私のことが好きなんでしょ。」
うわぁ、言っちゃった。言い過ぎちゃった。これは今までのマリーでも流石に言わないわね?恥ずかしい。あれ、アーサー涙目じゃない?
「マリーだ。僕のマリーが帰ってきた。お帰りマリー。」
あれ?これで良かったのね。
「ええ、ただいま。」
アーサー、待っててくれてありがとう。それと、今まで威張りまくっていてごめんなさい。

それからお兄様にもらった魔道具を使ってみたけどなんにも変わらない…。私たち二人にはいつも通りに見えて不安だったので、一応サリーに確認してもらった。サリーに言わせると、二人とも茶色の髪に茶色の瞳で顔や声、服装まで変わっているとか、お兄様すごすぎます。



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