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36.お父様の手にかかればすべてが一瞬です
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朝食を終えた頃、ルドと、シルバーが帰ってきた。それで、話を聞くために会議室に来た。
「二人とも、お疲れ様でした。どうでしたか?」
「マリー嬢ありがとう。急ぐ必要があるから、結果から言うと、父上から許可はもらえたよ。必ず、チェリー男爵に会う前にまぼろしの薬を作れるかどうか試すようにって。今回は時間がないからまぼろしの薬を見せて、涙の情報や、彼女の欲しい情報はある程度まで、話してもいいって許可も頂いたよ。ただ、具体的にどの程度の情報にするかはクライム殿に任せるとのことなのでクライム殿よろしくお願いします。」
「僕の方は沢山材料となる花びらも瓶も持ってきましたので、何回でもやってもらって大丈夫です。あとは、ブロッサが協力してくれると良いのですが。」
「そうだな。先程の王太子殿下がおっしゃっていた、情報の件だが、別にまぼろしの薬自体を舐めさせても分からない者には分からない。もっと言うと、私以外はそうだな、アーサーくらいじゃないかな?それ以外の者には成分は分からないだろうね。予言の女神でもなければ。成分が分かったところで、光魔法の使えない私たちでは作れないしね。」
「よく分かりました。それではブロッサにはまぼろしの薬を少し渡し、好きなように作ってもらうように伝えましょう。」
たぶん、ヒロインだからすぐ作っちゃうんだろうな。きっと素敵よね。すごく見てみたいわ。だけど、私は私のできることを今はしないとね。
「ええっと、私は昨日の続きで患者さんに薬を飲ませればいいですか?今日はお父様も手伝ってくれるそうですし。」
「それはありがたい。クライム殿も行ってくださるなら、一つお願いしたいことがあります。昨日マリー嬢が薬を飲ませてくれた五百人の魔力の流れをもう一度診てもらえますか?完治したかどうか教えていただきたい。マリー嬢も知りたいでしょう?」
シルバーはやっぱり気が利くタイプだわ。その通りよ。ずっと気になって仕方なかったわ。だって無理やりしょっぱいものを飲まされて完治してなかったら、申し訳ないじゃない。
「はい、正直心配で。もしも、元気になられた姿をこの目で見られるなら、見たいと思っていました。」
「よし分かった。まずはそちらの確認をしてから、薬を飲ませに行こう。私が行けばすぐに終わるからね。マリーは安心していなさい。」
「流石お父様です。頼りにしています。」
あら?お父様の顔がゆでだこみたいになってしまったわ。
私は自分の発言を後悔しながら、幸せそうに、ぶつぶつ言っているお父様の腕を引っ張って救護院に向かった。
昨日私が無理やり口を開けて薬を飲んでもらった五百人の人たちは、私の目から見ても信じられないほど元気になっていた。そして何度も何度もおばあちゃん薬師の姿の私にお礼を言ってくれた。
私は嬉しくて思わず涙をこぼしてしまったの。前世も含めて私が人の役に立てたと初めて思えた瞬間で、体中が熱くなるのが分かったから。
でもそんな涙も引っ込んでしまうくらいお父様がカッコ良すぎて、凄かったわ。お父様の声は、普通の声量で話しているのにちゃんと五百人全員に聞こえるように流れていくの。その声がまたうっとりするような低音ボイスで、最高だったわ。(たぶん風魔法を使ってるのよね?)話し方も命令口調だけど嫌味がなくて、安心する感じで、
「いまから魔力の流れを一斉に調べるから私がいいというまでベッドの上で動かないように。」
そう言ったかと思うと、少し部屋の温度が下がった感じがして一分くらいで、
「すべて終了した。協力ありがとう。全員完治している。家に帰ってもいいぞ。」
ですって、お父様完璧です。皆さんが喜びの歓声を上げた後、お父様のことを拝んでいたわ。気持ちは分かるわね。
いまは、もう一つの救護院の方に来ていて、昨日のように一人ずつ口を開けて薬を飲ませようと思って、お父様に一回に飲ませる量(ティースプーン一杯分)を説明していたんだけど…。お父様に七つの瓶の蓋をすべて開けるように言われて開けたとたん、信じられない光景を見ちゃったわ。
次の瞬間ティースプーン、一杯分の薬がたぶん七百個分の綺麗な薄ピンク色の球体になって宙に浮き、綺麗……なんて思っていたら、いつの間にか口を開けている皆さんの口の中に吸い込まれるように入っていき、ごくりと飲み込まれたの。一瞬にして七百個分のお薬の内服が完了しちゃった…。早すぎでしょ。
お父様はそのまま全員の魔力の流れを今は診ているけど。私、必要だったのかしら?
「よし、全員魔力の流れは正常に戻っている。明日まで様子をみて、熱が下がっていれば帰ってもいいぞ。」
こちらでも、先程と同じ光景が…。全員涙を流してお父様に手を合わせて拝んでいるわ。まずいわね、完全にお父様のことが神様か何かに見えているような。クライム教とか変なのできないわよね。
そのくらいの勢いで拝まれているのに、お父様ったら、全然我関せずって感じで、この辺でお茶ができるような洒落た店はあるかって、何質問しているんですか?!そこのあなたも病み上がりですから、真剣に答えなくていいんです!
なんだか頭が痛くなってきたわ。シルバーたちについて行った方が良かったのかしら……。
「二人とも、お疲れ様でした。どうでしたか?」
「マリー嬢ありがとう。急ぐ必要があるから、結果から言うと、父上から許可はもらえたよ。必ず、チェリー男爵に会う前にまぼろしの薬を作れるかどうか試すようにって。今回は時間がないからまぼろしの薬を見せて、涙の情報や、彼女の欲しい情報はある程度まで、話してもいいって許可も頂いたよ。ただ、具体的にどの程度の情報にするかはクライム殿に任せるとのことなのでクライム殿よろしくお願いします。」
「僕の方は沢山材料となる花びらも瓶も持ってきましたので、何回でもやってもらって大丈夫です。あとは、ブロッサが協力してくれると良いのですが。」
「そうだな。先程の王太子殿下がおっしゃっていた、情報の件だが、別にまぼろしの薬自体を舐めさせても分からない者には分からない。もっと言うと、私以外はそうだな、アーサーくらいじゃないかな?それ以外の者には成分は分からないだろうね。予言の女神でもなければ。成分が分かったところで、光魔法の使えない私たちでは作れないしね。」
「よく分かりました。それではブロッサにはまぼろしの薬を少し渡し、好きなように作ってもらうように伝えましょう。」
たぶん、ヒロインだからすぐ作っちゃうんだろうな。きっと素敵よね。すごく見てみたいわ。だけど、私は私のできることを今はしないとね。
「ええっと、私は昨日の続きで患者さんに薬を飲ませればいいですか?今日はお父様も手伝ってくれるそうですし。」
「それはありがたい。クライム殿も行ってくださるなら、一つお願いしたいことがあります。昨日マリー嬢が薬を飲ませてくれた五百人の魔力の流れをもう一度診てもらえますか?完治したかどうか教えていただきたい。マリー嬢も知りたいでしょう?」
シルバーはやっぱり気が利くタイプだわ。その通りよ。ずっと気になって仕方なかったわ。だって無理やりしょっぱいものを飲まされて完治してなかったら、申し訳ないじゃない。
「はい、正直心配で。もしも、元気になられた姿をこの目で見られるなら、見たいと思っていました。」
「よし分かった。まずはそちらの確認をしてから、薬を飲ませに行こう。私が行けばすぐに終わるからね。マリーは安心していなさい。」
「流石お父様です。頼りにしています。」
あら?お父様の顔がゆでだこみたいになってしまったわ。
私は自分の発言を後悔しながら、幸せそうに、ぶつぶつ言っているお父様の腕を引っ張って救護院に向かった。
昨日私が無理やり口を開けて薬を飲んでもらった五百人の人たちは、私の目から見ても信じられないほど元気になっていた。そして何度も何度もおばあちゃん薬師の姿の私にお礼を言ってくれた。
私は嬉しくて思わず涙をこぼしてしまったの。前世も含めて私が人の役に立てたと初めて思えた瞬間で、体中が熱くなるのが分かったから。
でもそんな涙も引っ込んでしまうくらいお父様がカッコ良すぎて、凄かったわ。お父様の声は、普通の声量で話しているのにちゃんと五百人全員に聞こえるように流れていくの。その声がまたうっとりするような低音ボイスで、最高だったわ。(たぶん風魔法を使ってるのよね?)話し方も命令口調だけど嫌味がなくて、安心する感じで、
「いまから魔力の流れを一斉に調べるから私がいいというまでベッドの上で動かないように。」
そう言ったかと思うと、少し部屋の温度が下がった感じがして一分くらいで、
「すべて終了した。協力ありがとう。全員完治している。家に帰ってもいいぞ。」
ですって、お父様完璧です。皆さんが喜びの歓声を上げた後、お父様のことを拝んでいたわ。気持ちは分かるわね。
いまは、もう一つの救護院の方に来ていて、昨日のように一人ずつ口を開けて薬を飲ませようと思って、お父様に一回に飲ませる量(ティースプーン一杯分)を説明していたんだけど…。お父様に七つの瓶の蓋をすべて開けるように言われて開けたとたん、信じられない光景を見ちゃったわ。
次の瞬間ティースプーン、一杯分の薬がたぶん七百個分の綺麗な薄ピンク色の球体になって宙に浮き、綺麗……なんて思っていたら、いつの間にか口を開けている皆さんの口の中に吸い込まれるように入っていき、ごくりと飲み込まれたの。一瞬にして七百個分のお薬の内服が完了しちゃった…。早すぎでしょ。
お父様はそのまま全員の魔力の流れを今は診ているけど。私、必要だったのかしら?
「よし、全員魔力の流れは正常に戻っている。明日まで様子をみて、熱が下がっていれば帰ってもいいぞ。」
こちらでも、先程と同じ光景が…。全員涙を流してお父様に手を合わせて拝んでいるわ。まずいわね、完全にお父様のことが神様か何かに見えているような。クライム教とか変なのできないわよね。
そのくらいの勢いで拝まれているのに、お父様ったら、全然我関せずって感じで、この辺でお茶ができるような洒落た店はあるかって、何質問しているんですか?!そこのあなたも病み上がりですから、真剣に答えなくていいんです!
なんだか頭が痛くなってきたわ。シルバーたちについて行った方が良かったのかしら……。
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