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32.やっぱりヒロインは可愛い子でした

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「わぁ~すごく可愛い。ピンクの髪がふわふわしてて、目も大きくて、くりくりじゃない!光魔法で彼女自身が輝いているみたい!小動物みたいですごく可愛いわ。お友達になりたい。だめなら、お手伝いさんになりたいわ。」
興奮して私が話しているとルドにものすごい目で睨まれた。こわっ。

「頼むからそれ以上しゃべらないでくれ。」
「ごめんなさい。」
仕方ないじゃない。私にとってはついに会えたヒロインなのよ。それに、結界張っているのに気づかれるといけないからって、ものすごーく遠くから見ているんだからそんなに怒らなくたっていいじゃない。私の目と耳はものすごーくいいから、会話まで聞こえてますけどね。ルドの意地悪。

「おまえ、反省していないだろう。」
「してますよ。」
していないって言ったら怒るくせに。
「うそつけ、口が尖っているぞ。」

「そういう口です。」
「そんなわけあるか!」
「おばあさんの姿でも口が尖って見えます?」
「ああ…。」

「ふ、ふふふ。」
「何だよシルバー、急に笑い出して。」
「だって、ルドにそんな口きく子初めてだろう。」
「こんなのが沢山いてたまるか。」
「それも、おばあさんの姿でだよ。ふふふ」

「ふっ、たしかにそれは面白いな。ははははは。」
「だろう。ふふふ」
「別に面白くなんかありません。」
なんだかヒロインを見て浮ついていた気持ちもすっかり落ち着いてきたわ。苦しんでいる人の為に頑張らないと。
シルバーの方を見ると、私の気持ちを察してくれたようで、

「さぁ始めようか。ルド、もう防音と目隠しの結界を外していいよ。」
結界を外すのね。私も気合を入れないと。
「とりあえず、薬師様は手前のベッドの人から順にティースプーンで薬をあげてください。僕はその方たちに発症時期と症状を聞いていきます。王太子殿下は魔力の流れの変化を診て、症状の改善状況を教えてください。

「分かりました。」
「ああ、分かった。」
「それと、この救護院には五百人、隣の施設にはもう少し症状の軽い人が七百人いるそうです。とりあえず今日は薬師様が作ってくださった五百人分を頑張って飲ませましょう。では、始めてください。」

私は最初の患者さんに話しかけた。
「お薬を持ってきました。ちょっとしょっぱいですが口を開けてもらえますか?」
ベッドの上の男の人は肩で息をしている感じで、すごく苦しそう。私の言葉なんて多分聞こえていないんだわ。
「ごめんなさい。口を開けますよ。しょっぱいですけど、我慢してくださいね。」

私は自分で口も開けることもできなくなった人たちに謝りながら、半ば強引に薬をのませ、半日かけて五百人に飲ませ終わった。それからは、シルバーとルドにその場は任せて、私は隣の部屋で時々回復薬(まぼろしの薬の濃いバージョン)を飲みながら、ひたすら、まぼろしの薬を作り続けた。疲れたわ。回復薬を飲んでいるおかげで肉体的にはそんなに疲れていないんだけど、集中力がもたないわね。精神的に疲れる方には効かないのかな。

そう言えば、薄いピンクの液もあったわよね。あれも何かに効かないかしらね。そう思って持ってきた鞄の中を探すと、三瓶も薄いピンクの液体が入った瓶があった。もったいないわね。
「ちょっとだけ、飲んでみましょう。」
私はティースプーンで一杯だけ飲んでみた。
「これすごいわ。頭がすっきりする。それに思ったほどまずくないのね。」

ルドたちも疲れているはずよね。だって、五百人だもの。私は急いで二人のところに行って説明した。すると二人ともすぐに飲んでくれた。
「「これはいい。」」
「これで聞き取りの効率が上がりそうです。」
「ああ、集中力もあがる。」

二人とも喜んでくれた。嬉しい。あとで、回復薬とこの頭がすっきりする薬も沢山作っておこう。

シルバーの話ではまぼろしの薬を飲んだ人はみんな話せるまでにはすぐに回復しているらしい。ヒロインは大丈夫かな。
「ところで、救世主様は疲れていないでしょうか?」
「彼女は光魔法もコントロールも魔力量もずば抜けて優秀だそうです。そもそも光魔法は魔力をそれほど使わないそうだから全く問題いらないそうですよ。僕たちも心配して聞いたんだけどそう言われました。」

「それは素晴らしいですね。光魔法が使えるだけでも素晴らしいのに魔力量も多いなんてパーフェクトですね。流石救世主様。」

シルバーと、ルドが、妙な顔をしているわね。
「王太子殿下結界をお願いします。」
「ああ、今しようと思っていた。」
「おまえ、何言ってるんだよ。おまえも光魔法使っているじゃないか!」
「え~!いつ?何で教えてくれなかったの!」

「「はぁ~~~?」」
そんな顔しなくたっていいじゃない。シルバーまで、傷ついたわ。使った覚えがないから言ってるのに。光魔法の練習中は使うぞって思ってうさぎの足が治るのをイメージしたりしてたけど。
「涙、作っただろう。」
「へっ?あれ水魔法じゃないの?」
「薬になっただろう。」
「あ”っ?!」
変な声出ちゃったじゃない。

「「はぁー。」」
「だって、水魔法だと思うじゃない?」
「もちろん、水魔法も使っているな。それに光魔法を乗せたんだろう?!」
「そんなー、どうして教えてくれなかったの!」
「そんなこと知るか!無意識に魔法使える奴がいるなんて思うわけないだろうが!」

「だからって…。」
光魔法が使えるって、みんなにばれちゃったってことよね。
「あのねマリー、光魔法以外の魔法は、魔方陣を描かないと光らないんだよ。あとね、魔法で薬を作る時は、普通魔方陣を描いた紙の上にカサブランカの花を置くんだよ。先に言ってなくてごめんね。マリーは光魔法が使えることを隠していたの?」

「うん、ちょろちょろで、時間がかかって、役にたたないから…。でも、シルバー教えてくれてありがとう。」
「ちょろちょろでも、まぼろしの薬を完成させているんだ。自信持てよ。一応光魔法が使えることは知っていたんだな。一度結界を外すぞ。」
「うん、ありがとう。」

「それではあと数人で僕と王太子殿下も全員終わりますので、その後は急いで礼拝堂に戻って、とりあえず昼ご飯にしましょう。その後は今日の結果を踏まえて明日からの計画を考えましょう。」
「はい、では、私は隣の部屋の片付けをしてきます。」
私は片付けをしながら少しでも薬が効いているように祈っていた。できることは全力でするわよ。アーサーと約束したんだもの。

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