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30.平民街にある礼拝堂に行きます
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私とお父様とサリーの三人は平民街にある礼拝堂に行くために、王宮のとある一室に案内され、危険なものがないか手荷物のセキュリティチェック中。ここでOKが出ればあとは、転移陣の上に立てば一瞬で平民街にある礼拝堂に行けるらしい。礼拝堂は様々な所にあるけど、すべて王家が管理している。礼拝堂の中には王族専用の転移陣や住居スペースなどもあるらしい。
しかし、かれこれ一時間はこの部屋にいる。では何でそんなに時間がかかっているかというと、原因はお父様。
お父様が優秀すぎて。画期的な魔道具を沢山持ってきており、先程からことごとくセキュリティに引っかかっている。そして、その魔道具の説明を律義にお父様が行い、転移陣の係の方やシルバーやルドが嬉しそうに聞いている。はぁー。今度は何の魔道具なのよ。
「これは、足の骨を折った時にきっかり一時間、巻いておくだけで痛みを全く感じずに普通に歩くこともできるのだ。しかし、一時間を過ぎると痛みが倍増するから、必ず、その間に病院で治療を受けないといけない。」
今この魔道具の説明いりますか…。シルバーも質問しない!
「ねぇサリー、私たち今日中に出発できるのかしら?」
「大丈夫ですよ、お嬢様。先程奥様を呼びましたので。」
「お母様を?」
たしかに聞き覚えのある足音が長い廊下を歩いてくる音が段々と大きくなってきているわね。この独特の足音、お母様のピンヒールの音だわ。今日もカッコいいわ、お母様。
でも今日の靴音はまずいわね。怒っている時のものだもの。
「サリー、扉から少し離れるわよ。」
「はい、お嬢様。」
ブラックリリー公爵家の人なら知っている。お母様が怒っている時はそばに近づくと凍ってしまうと。
「あ・な・た・」
扉が開くなり、お母様は三文字だけを口にした。
「冷たい!」
お母様寒すぎです。抑えてください。ここ、王宮ですよ。王太子殿下もいるんですよ。可哀想に扉の前にいた護衛騎士さんの髪の毛が綺麗に凍ってしまいましたね。
しかし、お父様の行動は早かった。これからセキュリティチェックされるはずだった魔道具を空中ですべてぱっと消し、お母様に微笑んでいる。
流石お母様一瞬でセキュリティチェックが終わりそうよ。でもお父様はそれで誤魔化せたと思っているのかしら?
「メリー愛しているよ。」
こんなところで愛の告白。娘の前でやめてください。友だちだっているのに。お母様注意してください。
そう思ってお母様の顔を見ると、あんなに怒っていたはずのお母様の顔が一瞬にして乙女の顔に変わっていた。お母様ちょろすぎます。
「私もよクライム。」
はぁー、こんなところで甘い空気を作り出してどうするんですか?まぁ一応無事にセキュリティチェックは終わったからいいのかしら。それでは、いざ出発と思いきや。
今度は私だけ王太子殿下にちょっと不気味なネックレスの魔道具をつけるように言われた。悪趣味ね。大きな宝石やら羽やら、いっぱいついているわ。
「マリー嬢、平民街は王都より治安が明らかに悪いんだ。薬を作ったのが君だと分かれば必ず攫われると思っていた方がいい。だから、変身用の魔道具を持ってきたんだが、これは、王族が変装する時に使う魔道具でね。どんなに優秀な魔術師でも変装を見抜くことはできないんだ。ただ、つけたり、外したりすると気づかれてしまうから、ここに戻ってくるまでは湯あみの時も絶対に外してはいけないよ。それだけは守ってくれないと命の保証はできないからね。」
命の保証はできない…。さらっと恐ろしいことを言われたわね。悪趣味なんて思ってごめんなさい。喜んでつけます。
今回私は新薬を開発した薬師のおばあさんとしてまぼろしの薬を作るらしい。だからここでみんなに変装した姿を覚えてもらい、変装した姿のまま転移するということらしい。
「では、つけますね。どうですか。」
「うん、大丈夫だ。」
「普通に動いてもおばあさんらしく見えるんですか?」
「ああ、見えるよ。」
たしかに、お父様もさっきから、気配はマリーの気配なのにおばあさんだと混乱していたから大成功みたい。サリーが鏡を出してくれた。
「わぁ、とっても上品なおばあさんですね。」
すごいわ。声まで違う…。
だけどお兄様の作った魔道具(通信機)だけは、マリーのままで変わらない気がする。だって、お兄様は本当に天才なんですもの。お父様でも敵わないって言うんだから。たぶん王家の魔道具でも敵わない気がする。王家と喧嘩なんてしたくないから絶対に言わないけどね。
「では皆様行きましょうか。」
普段は礼拝堂にいるという、案内役のチャングさんの呼びかけで、私たちは大きな転移陣の上に乗った。
ルド、シルバー、お父様、私にサリーそして案内役のチャングさんの6人。
「今度こそ、転移できるのね。」
きらきらと転移陣が輝き始め周りの景色が消えていく。
しかし、かれこれ一時間はこの部屋にいる。では何でそんなに時間がかかっているかというと、原因はお父様。
お父様が優秀すぎて。画期的な魔道具を沢山持ってきており、先程からことごとくセキュリティに引っかかっている。そして、その魔道具の説明を律義にお父様が行い、転移陣の係の方やシルバーやルドが嬉しそうに聞いている。はぁー。今度は何の魔道具なのよ。
「これは、足の骨を折った時にきっかり一時間、巻いておくだけで痛みを全く感じずに普通に歩くこともできるのだ。しかし、一時間を過ぎると痛みが倍増するから、必ず、その間に病院で治療を受けないといけない。」
今この魔道具の説明いりますか…。シルバーも質問しない!
「ねぇサリー、私たち今日中に出発できるのかしら?」
「大丈夫ですよ、お嬢様。先程奥様を呼びましたので。」
「お母様を?」
たしかに聞き覚えのある足音が長い廊下を歩いてくる音が段々と大きくなってきているわね。この独特の足音、お母様のピンヒールの音だわ。今日もカッコいいわ、お母様。
でも今日の靴音はまずいわね。怒っている時のものだもの。
「サリー、扉から少し離れるわよ。」
「はい、お嬢様。」
ブラックリリー公爵家の人なら知っている。お母様が怒っている時はそばに近づくと凍ってしまうと。
「あ・な・た・」
扉が開くなり、お母様は三文字だけを口にした。
「冷たい!」
お母様寒すぎです。抑えてください。ここ、王宮ですよ。王太子殿下もいるんですよ。可哀想に扉の前にいた護衛騎士さんの髪の毛が綺麗に凍ってしまいましたね。
しかし、お父様の行動は早かった。これからセキュリティチェックされるはずだった魔道具を空中ですべてぱっと消し、お母様に微笑んでいる。
流石お母様一瞬でセキュリティチェックが終わりそうよ。でもお父様はそれで誤魔化せたと思っているのかしら?
「メリー愛しているよ。」
こんなところで愛の告白。娘の前でやめてください。友だちだっているのに。お母様注意してください。
そう思ってお母様の顔を見ると、あんなに怒っていたはずのお母様の顔が一瞬にして乙女の顔に変わっていた。お母様ちょろすぎます。
「私もよクライム。」
はぁー、こんなところで甘い空気を作り出してどうするんですか?まぁ一応無事にセキュリティチェックは終わったからいいのかしら。それでは、いざ出発と思いきや。
今度は私だけ王太子殿下にちょっと不気味なネックレスの魔道具をつけるように言われた。悪趣味ね。大きな宝石やら羽やら、いっぱいついているわ。
「マリー嬢、平民街は王都より治安が明らかに悪いんだ。薬を作ったのが君だと分かれば必ず攫われると思っていた方がいい。だから、変身用の魔道具を持ってきたんだが、これは、王族が変装する時に使う魔道具でね。どんなに優秀な魔術師でも変装を見抜くことはできないんだ。ただ、つけたり、外したりすると気づかれてしまうから、ここに戻ってくるまでは湯あみの時も絶対に外してはいけないよ。それだけは守ってくれないと命の保証はできないからね。」
命の保証はできない…。さらっと恐ろしいことを言われたわね。悪趣味なんて思ってごめんなさい。喜んでつけます。
今回私は新薬を開発した薬師のおばあさんとしてまぼろしの薬を作るらしい。だからここでみんなに変装した姿を覚えてもらい、変装した姿のまま転移するということらしい。
「では、つけますね。どうですか。」
「うん、大丈夫だ。」
「普通に動いてもおばあさんらしく見えるんですか?」
「ああ、見えるよ。」
たしかに、お父様もさっきから、気配はマリーの気配なのにおばあさんだと混乱していたから大成功みたい。サリーが鏡を出してくれた。
「わぁ、とっても上品なおばあさんですね。」
すごいわ。声まで違う…。
だけどお兄様の作った魔道具(通信機)だけは、マリーのままで変わらない気がする。だって、お兄様は本当に天才なんですもの。お父様でも敵わないって言うんだから。たぶん王家の魔道具でも敵わない気がする。王家と喧嘩なんてしたくないから絶対に言わないけどね。
「では皆様行きましょうか。」
普段は礼拝堂にいるという、案内役のチャングさんの呼びかけで、私たちは大きな転移陣の上に乗った。
ルド、シルバー、お父様、私にサリーそして案内役のチャングさんの6人。
「今度こそ、転移できるのね。」
きらきらと転移陣が輝き始め周りの景色が消えていく。
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