上 下
14 / 123

14.魔力を貯めながら魔法の練習もして、王宮にも呼ばれて大忙しです

しおりを挟む
「きゃ~~~!」
「きゃ~~~!」
 私を起こしに来たサリーと私が悲鳴をあげた。もちろん理由はどくろだけど。一回目の悲鳴はサリーで、その状況を聞いて、それは怖いと思ったわ。(※この魔道具はどくろと呼びます)

 私はいつの間にか、自分だけ布団の中に潜り込み、ご丁寧にちょうど頭があるであろう場所にどくろ二つを残して寝ていたようです…そんなことになっているとは夢にも思わないサリーが、どくろに話しかけ布団をゆすったら、運悪くどくろがごろっと転がって落ちたらしい……。
 そりゃー、頭だと思っていたのに転がっていくとかホラーですよね。サリーごめんね。

 二回目の悲鳴は、サリーの悲鳴を聞いて私が布団から顔を出したら、そこにもう一つのどくろがあって、私の顔とこんにちは!…してしまい、びっくりしたわけ。朝から大きな悲鳴をあげたせいで、お兄様とアーサーが飛んできてくれたわ。
 アーサーは怖かったねと優しく頭を撫でて、次のは花柄のブレスレットにするからと約束してくれたわ。本当にアーサーは優秀で優しいのね。恥ずかしくてまだ言えないけど、大好きよ、アーサー…。

 どくろのことも忘れて幸せに浸っていると、強い視線を感じたわ。サリー…。
 サリーが悪役令嬢も顔負けの表情でこちらを睨みつけていた。ど、どくろより怖いかも。
 でも、お兄様がサリーの頭を撫でてくれたので、サリーの怒りも解決!サリーはお兄様より二つ年上なんだけど、昔からお兄様に弱いのよね。サリー本当にごめんね。

 でもお兄様の作った魔道具は流石というべきか、ちゃんと三つともしっかりと魔力を吸収して、白から黒に変わっていたわ。一晩では三つが限界みたい。ベッドの周りに置いておいたのはそのまま白色だったから。

―・―・―・―・―・―・―

 どくろ事件?!の日からもう二週間が経つ。あれからすぐにお兄様とアーサーは約束通り、花柄の可愛らしいブレスレット型の魔道具を作ってくれたの。
 どくろ型の二倍の魔力を吸収できるらしく、魔力が満タンになると、花の色がピンクから黄色に変わるのがとても気に入っているの。どくろ型もちゃんと夜中に腹巻の中に一つずつ入れて、もらった分はすべて使ったわ。もともとこの魔道具が魔力暴走を防ぐためにデビュタント用にもらった魔道具だったことが、懐かしく感じるくらいデビュタントが遠い過去のような気がするわ。そんなに経ってないのにね。

 それくらいこの数週間が濃厚だったってことよね。自分で言っちゃうけど、本当に頑張ったわ。
 光魔法の練習を中心にやっていたのだけど、やっぱりいきなり人にやるのは怖いので、一番最初はちょっとだけ乾燥していたカエルの肌を潤いのある肌にしてあげたわ。すぐ横に池があるから大きなお世話なんだけど…。ただ八分くらいかかったから絶対水掛けた方が早かったわね。すごく疲れたわ。

 最近では子うさぎの後ろ足の捻挫の腫れや、ひな鳥が巣から落ちて足を骨折してたのとか、色々治したわ。
 だけど、長いのだと、一時間くらいかかってしまうのよ。
 でも感覚は完全につかめたと思うから、あとはブレスレット型の魔道具に沢山魔力を貯めるだけ。そう思って、頑張った自分へのご褒美に、久しぶりにアーサーとのんびりしようと思っていたのに、本当に残念。王宮から手紙が届いたんですって。嫌な予感しかしないわ。

 家族全員お父様の執務室に来るように言われたから、ゲームの内容からすると、王太子殿下の婚約者候補のことよね。
 私はなる気がないから、辞退すればいいだけだと思うけど。ちょっと、面倒くさいわね。

 お父様が王宮からの手紙を家族全員の前で読んでくれた。まぁ大体は予想通りだったわね。
 王太子殿下の婚約者候補に、私と、ルル嬢とララ嬢が選ばれたから、明日詳しい説明をするから必ず王宮に来るようにということだった。
「お父様、私は王太子殿下の婚約者候補なんて、なりたくありません。」
「そうなんだね。マリーの気持ちは分かったよ。でもね、明らかにこれは王命だから、明日は行かないとね。」
「そんなぁ。」

「お父様、私はこれっぽちも王太子殿下に興味がないんです。」
「頼むから王宮でそんなこと言わないでおくれ。マリーが不敬罪で捕まってしまうよ。それにただの婚約者候補だからね。別に婚約者になるわけじゃないんだよ。陛下も無理に結婚させたりしないよ。たぶん、マリー以外はみんな婚約者になりたいだろうし。」
「たしかにそうですね。でも、面倒くさくて。」

 私が、がっかりしていると、突然アーサーに抱きしめられてびっくりしたわ。家族の前で恥ずかしい。
「マリーが王太子殿下に興味がなくてよかった。」
 よく見たら泣いているじゃない!すぐ泣くんだから。これでは恥ずかしくても怒れないわ。
 お父様とお母様は目をそらしてくださって、お兄様はなぜか…アーサーと私ごと抱きしめてくれたわ。お兄様のおかげで恥ずかしさが半減したわ。お兄様ナイスです。



 私はお父様と王宮に来ている。そこで、ルル嬢とララ嬢のご家族様も一緒に謁見室に通された。中央に国王陛下が座り、その隣には宰相様がみえて、色々と説明してくれた。
 まず、学園に通う三年間は王太子殿下の婚約者候補になることは王命であるため従うこと。卒業時には本人の意思を尊重する。ゆえに、今現在、お慕いしている者が仮にいても、絶対に公にしてはいけない。三年間の間に、月一回のお茶会と個別で月一回の王太子妃教育を受けてもらう。以上のことを正当な理由なく守らない者は、王命に背いたものとする。

 私は、すごく不満な気持ちが顔に出ていたようで、
「マリー今は我慢だよ…。」
 すごく小さな声で、お父様にそっと言われた。私は静かに頷いた。
 たしかにこんなところで逆らっても何の得にもならないわ。

 ブラックリリー公爵邸に戻って来て、お父様がみんなに話してくれた。話を聞いたお兄様が、
「王命では仕方ないよ。王太子殿下が外でマリーの虫よけになってくれると思えば安心だしね。」
 また、お兄様が変なこと言いだしたわね。王太子殿下のことを虫よけってそれこそ不敬罪で捕まらないの?
 でも、お兄様の話にお父様も、アーサーも頷いている。お母様だけは三人に呆れた顔をしていたけど。

 なぜかアーサーが私の隣にぴったりと座ってきた。
「僕はマリーに言われた通り、マリーの隣にずっといるから安心してね。それにマリーにしか微笑まないともう一度約束するよ。」
 ってみんなの前で宣言してきた。恥ずかしいのと嬉しいので、心臓がどうにかなりそう。これは命の危険だわ。お母様が
「アーサー…。マリーを不敬罪にしたいの?」
「・・・外ではしません。」
 そう言いながら、さらにくっついてきた。だから心臓がもたないって…。
 どうやら恋愛初心者の私にとって、王太子殿下の婚約者候補になることは、私の命を守る大切なアイテムだったようです。



    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...