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6.いよいよデビュタントの日になりました② 準備はOK?性格はNG?
しおりを挟むゲームのプロローグは字幕形式になっていたから、全部覚えているわ。
マリーはお馬鹿さん?!だったかもしれないけど、真理は両親の遺伝子をしっかり受け継ぎましたからね。ぱちっぱちっと写真を撮るように記憶することも、聞いた内容を記憶することもすごく得意だったのよ。身体は不自由だったけど、意外とすごい子だったのね。自分のことなのに変な感じだわ。マリーは(今の私だけど)身体機能はずば抜けているけど、勉強は苦手だったわね。でも、もう大丈夫よ。
真理の記憶を思い出したおかげで、色々な能力も上がった気がする。色々試してみたいけど、今は時間がないから、まずはプロローグの内容を整理して。
さっきから、サリーが必死で他の侍女とアクセサリーの話をしてるから、私はじっとしている以外、特にやることがないのよね。急にドレスを変えた私が悪いんだけど、真っ赤なドレスをやめたらみんな大喜びだったわ。
プロローグの内容を整理すると、
デビュタントで攻略対象者の三人に会う。そこで、王太子殿下(ルド)にマリーは一目惚れする。一目惚れして心が乱れたことで魔力暴走を起こし、令嬢たちが一瞬ふわっと浮いて、パニックになりかける。
そのせいで、マリーはラブリー魔法学園に入ってから要注意人物として避けられる。友達もできずに寂しかったマリーに、うわべだけでもお兄様のように優しく微笑んでくれる王太子殿下にますます惹かれていく。
そんなマリーだけど、ルル嬢とララ嬢と共に婚約者候補に選ばれる。貴族の派閥や力関係を考慮してのことだろうけど、マリーは自分が王太子殿下に愛されていると勘違いする。その態度がますます他の令嬢との関係を悪化させ、どんどん学園では孤独になっていく。(デビュタントは3月下旬・入学は4月初旬…)
マリーが学園生活一年目を送っている頃、平民たちの間では原因不明の、はやり病で亡くなる者が増えていく。それを一人の平民の少女が、とても珍しい光魔法を使い、必死で治療しているという話がチェリー男爵の耳に入り、その少女はチェリー男爵家の養女となる。その少女がヒロインのブロッサ。
病気が、はやり出して半年くらい経った頃、偶然カサブランカ公爵領でしか咲かない花から薬ができることが分かり、翌年の春には終息した。このはやり病で多くの平民がなくなることになる。貴族の中にも亡くなった人がいたらしい。そして、ヒロインのブロッサは一年遅れで、二年生からラブリー魔法学園に入ってくる。
非常に優秀で、光魔法の使い手にもかかわらず、誰にでも優しく接するブロッサはみんなの人気者になって、王太子殿下からも慕われるようになる。そんなブロッサにマリーは嫉妬して、意地悪をするようになる…と、まぁゲームのプロローグ(説明)はこんな感じ。
色々と気になることはあるけれど、まずは今日のデビュタントよね。魔力暴走はお兄様から貰った魔道具をポケットに入れたし、真っ赤なドレスは私の瞳と髪色の水色になったし、髪には黒バラと青バラを入れてアーサーと私をイメージしてみたから、うまくいくんじゃないかしら?あとは王宮の料理を堪能して帰ってきましょう。
うふふ………。何だか楽しみになってきたわ。
今は鏡の前で人生初の化粧をしてもらっているの。最後の仕上げね。さらさらの腰まである水色の髪はハーフアップにしてもらい、ドレスはちょっと大人っぽくマーメイドになったの。ぷるぷるの唇に薄いピンクの口紅を付けて、まつ毛は何にもしてなくても、ばさばさいうくらいあるから、ちょっとカールするだけで…、誰これ?!めちゃくちゃ美人さんじゃない?!ちょっとお利口さんにも見えるわよ。
今日のエスコートはお兄様とアーサーがしてくれる。なんて贅沢なの!
「私、幸せだわ。」
「お嬢様、お綺麗ですよ。絶対にお嬢様が一番です。」
「サリー、ありがとう。」
なんだか照れるわね。そんなことを考えていると、扉の向こうからお兄様の声が聞こえてきた。
「準備はできたかい?」
「はい、お兄様。」
「わぁ!綺麗だね。想像以上だ。」
そう言ってお兄様は褒めてくれたけど、お兄様とアーサーの方がうんとカッコいいじゃない!攻略対象者でもないのに、カッコ良すぎでしょ。二人の正装はたぶん私のドレスを引き立たせる為にほとんど白に近い水色をベースにしている。お兄様は襟に金糸の刺繍が入っていて、アーサーは黒で刺繍されていた。はぁ~ずっと眺めていたい…。
アーサーが私の髪を見て、嬉しそうな表情を一瞬したので、私は勇気を出して黒バラをアピールしてみることにしたの。
「アーサー、この黒バラはね。アーサーをイメージしてつけたのよ。嬉しかったら嬉しいって言ってもいいのよ。」
・・・えっ?!これが私?!…全然可愛くないじゃない!ひねくれすぎよ!ああ、どうしましょう。十五年間で染みついたこの性格、どうしても態度に出てしまうわ。急には変えられないのかしら…。アーサーは私のこと、どう思ってるのかしら?絶対に性格悪いって思っているわよね。ショックが大きすぎて、布団の中に引きこもりたい。でも現実は厳しくて、デビュタントに行かなくっちゃ。
仕方なく椅子から立ち上がり、二人の方に近づいていくと、アーサーが、
「嬉しい、すごく嬉しいよ。マリー、ありがとう。」
と言って微笑んでくれた。嫌われてなかった…。ほっとしたけど、アーサーの笑顔が近すぎて、心臓に悪すぎる。ドキドキしすぎて、心臓へのダメージが半端ない。これからはメンタルも鍛えないとショック死するかも。
我が邸から王城の入り口までは馬車で十分くらいで着く。そこまでは意外と早いのよね。問題はそこから先…。門をくぐって王宮(建物)までが、地味~に長い。馬車の列ができているわ。これは相当時間がかかりそうね。なんとなくドレスの中の魔道具に手が触れた。
そういえばお兄様はどうしていつも気持ちの悪い魔道具を作るのかしら?魔力と関係があることなのかしら?それともお兄様のセンスの問題なのかしら?どうにも気になるわね。そんなことを考えながらお兄様をじろじろと見ていると、
「マリーどうしたんだい?」
と、お兄様に声を掛けられた。
「お兄様の魔道具はどうしていつも気味の悪い形をしているのかと考えておりましたの。魔道具の性能はピカイチなのに、もったいないなと思いまして。」
「ああ、それはね、以前は普通のデザインだったんだけど、ものすごくみんなに頼まれてね、僕、困ちゃったんだよ。それでアーサーに頼んだら、こんな気味の悪いデザインにしてくれて、アーサーは天才だよ。」
「えっ?!これ、アーサーのデザインなの?!」
「マルク!あれをマリーにあげちゃったの?」
アーサーが焦っているわね。
「うん、いけなかった?」
「…だめだよマルク…。」
アーサーが残念な子を見るような目でお兄様を見ているわ。アーサーの気持ちはよく分かるわ。お兄様、これは令嬢に渡していいものではありません。嫌がらせですからね。普通の令嬢なら泣いてますよ。私だから良かったけど。
「マリー、ごめんね。僕が今度、マリーのために可愛いデザインの魔道具を作るから、今日だけは我慢してね。」
良かった、アーサーの美的感覚が普通で。アーサーが作ってくれるなんて、なんでも言ってみるものね。
馬車が止まったわ。王宮に着いたみたいね。さぁ、頑張るわよ!
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