宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】

赤い獅子舞のチャァ

文字の大きさ
上 下
144 / 278
冒険の旅

ところが・・・

しおりを挟む
 幽霊の 正体見たり 枯れ尾花
 ってな俳句もあるけど、事実は意外なもので、魔獣っちゃ魔獣だったけど、サーペントや海龍では無かった。
 まぁ、あんな速度で泳いで来るあの巨大なセイウチにタックルされりゃ姿も見ないうちに沈没してても何にも可笑しくないよね。
 状況終了、と、警戒態勢を解除しようとした瞬間だった。
 又しても警報が鳴り響く。
 何だってこんな連戦してんの?
 何この海域、可笑しいんじゃねぇの?
 そして私は、目を疑う光景を目にした。
 既に、目前にそれは居たのだ。
 シーサーペント、しかも、かなりの大物だ。
 恐らく全長は30mにもなろうかと言うサイズ、ドラゴンかと見間違う程だった。
 主か? ヌシなのか???
 恐らくこの辺の海域を根城にして居るヌシと言う所だろうな、多分。
 そのヌシたるシーサーペントが今、このカーマインクリムゾンの目の前に現れ、容赦なくブレスを浴びせようとして居るのだ。
「くっ! ザイン! 出来るだけ多く召喚して直ぐにウォール系!
 マカンヌ! 水柱に火柱土壁風塵!
 他は下がって!! 急いでっ!」
 そして私も、フレイムウォールとアースウォール、サンダーウォール、トルネードガードを同時無詠唱発動で、《シーサーペント》に掛ける。
 いつの間にかマナ量が10000台後半に突入して居るザインが、シヴァ、ラム、イファーリア、シェリルを召喚、私の魔法を外側から囲むように魔力の壁を展開する。
 ここまで頑張ればブレスも防げるのでは無いだろうか。
 発動がどうしても数秒遅れるトルネードガードが発動したのとほぼ同時にブレスが放たれた。
 ブレスは、私のウォール群を押すようにして破壊した、が、同時にブレスも一発分が尽きたようだ。
 すると、ウォール系の魔法がその外側をカバーしていたトルネードガードに吸収され、意外な効果をもたらした。
 複合魔法と言う奴に成ったのである。
 サンダーウォールは更なる電撃へと発展し、アースウォールはトルネードの風圧で細かく砕け、海上であった為に水分も吸い上げていたトルネードの中に吹雪が発生、にも拘らずフレイムウォールがトルネードに取り込まれてフレイムトルネードと成ってトルネードの威力すらパワーアップさせた。
 その威力は、雲の上にまで竜巻を起こした。同時にシーサーペントは吹雪と炎に包まれ、プラズマによって電撃を食らう事と成った。
 その硬い鱗は剥がれ落ち、焼けただれ、凍って砕けた。文字通り、跡も残さず。
 その、自然界ではあり得ない相反する属性を持ち合わせた異常な竜巻が治まったそこには、黒炭と化した巨大な亜竜であった何かが、かろうじて立って居た。
「さ、流石・・・ハイエルフ様・・・す、凄い。」
 しばしの沈黙を破ったのはザインだった。
 そのザインの言葉を聞いて我に返った私は、思わずこう口走ってしまった。
「チ、やりすぎだったか・・・」
 ここまで消し炭に成ってしまっては何も回収する物は無いな、と思い、そのままブリッジに帰ろうと歩き出した時。
「え、エリー・・・う、うし、うし・・「うん?牛?モーモーがどう「違うのエリー!後ろ~~!」」」
 私が振り返ると、消し炭にしたはずのシーサーペントが凄まじい勢いで蘇生しながら、ブレスを吐く体制になって居た。
「なっ!?」
 そして、目を疑った私の一瞬の隙に、そのブレスは吐き出された。
「ハイエルフ様!」
 私とシーサーペントとの間に、ザインが滑り込んで来て、出ていた精霊と共に魔力障壁を展開した。
「ば! ザイン!今のマナ残量では無理だ!」
 急いで私自身も魔力障壁を展開するも、間に合わず、マナ切れを起こしたザイン、精霊は霧散し、残されたザインがブレスに掻き消える。
「ザイン~~~!!!!!!」
 急いでザインを引きずって、クリスの前に担いで行くと、皆に託した。
「クリス、すまん、私のミスだ、まさか超回復なんてトンデモスキル持ってるとは思わなかった。
 まだ息は有るから回復魔法を頼む。」
「エリー、なにする気?! 今だって障壁貼り続けてマナ消費してるんでしょ?!
 無茶しないで!!」
「いや、無茶でも何でも無い、何故なら私は久しぶりに本気で怒ってるんだ。」
 私はそう一言だけ綴ると、シーサーペントに向き直った。
「大丈夫だ、クリス、こんなに大きく見えるエリーは初めてだ、絶対に負けない。」
 泣きじゃくってザインに回復魔法を使えないで居るクリスに、カイエンが優しく声を掛けた、流石年の功だ。
 シーサーペントが私を睨み付ける、しかしその表情は、あざ笑って居る様にも見える。
 蜥蜴如きに表情が有るとは思えないので、多分私の精神的な物だろう、けど、ムカつく。
「おぉぉおおおおおおおおおっ!!!」
 私は、吠えた、悔しさに、不甲斐無さに、自分自身の驕りに対しての怒りに。
 そして、自身に無意識に課していたリミッターを、意識的に外した。
 全身に雷を纏い、イオンクラフトで宙に舞い上がり、炎と風の属性を合わせたマナで剣を作り、両手に。
 周囲に、私の心の中を表現するように吹雪を起こし、この海域に存在する全ての藻類を操りシーサーペントを拘束する。
 その時、自分では気づいて居なかったのだが、私の耳の先は、尖って居たらしい。
 -----
 その姿を見た瀕死のザインは、こう一言呟き意識を手放したそうだ。
「やっぱり・・・・・・・・・ハイ、エルフ、様・・・」
 -----
「シーサーペントだかシードラゴンだか知らねぇけど、私の友達に手ぇ出したら、生きてられると思うなよぉっ!」
 シーサーペントは、私に向けて今一度ブレスを放って来たが、私は先程マナで生み出した剣でそれをバッサリと切り払うと、まず目を刳り抜き、二本の角を根元から切り落とし、二度とブレスが吐けない様に、サーペントの下あごから上あごに向けて剣を突き刺したその後は、極限まで強化された身体強化で非常識な威力を手に入れた両腕でサーペントの全身をくまなく殴りつけて回る。
「オラオラオラオラ! マダマダぁ~!
 超回復スキルを持ってる事を後悔させてやんよぉっっ!」
 一発撃たれる毎に、シーサーペントの体がへこむ、そして超回復で元に戻る、だがまた次の瞬間又体のどこかがへこむ。
 あまりの苦痛に、シーサーペントが悲鳴を上げるが、私は辞めない。
 こうしてずっと殴り続けて行けば、超回復スキルで少しづつ減っていくSPがいつか尽きる、その時にはこいつは力付きて倒れるだろう、が、この苦痛は長く続くのだ。
「楽に死ねると思うなよ!蜥蜴ぇぇ~!!!」
 カイエン、キース、マカンヌ、カレイラが、恐怖を隠そうともせずに私を見て居るのが、判る。
 クリスが、目にいっぱい涙を溜めながら、それでも必死に治療魔法をザインに施す姿が、判る、見て居る訳では無い。
 そしてその瞬間、私は、魔王と呼ばれる覚悟を決めた。
 殴り続けて30分、ついに、シーサーペントが力尽きた。
 項垂れて、カーマインファンレイの甲板に崩れ落ちたシーサーペントの胸に、私はこの間封印したはずだった包丁を突き立てた。
 こんな所で役に立つとは思っても居なかった。
 シーサーペントの胸を切り裂き、その巨大な心臓、いや、魔石を引き釣り出して、ストレージへ仕舞い、戦闘が終了した。
 私のあまりの慟哭を、誰も咎めようとも、攻めようともしなかった。
 その日、ザインは、辛うじて一命を取り留めた。
 全身麻痺と言う重傷を負っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

悪女と名高い聖女には従者の生首が良く似合う

千秋颯
ファンタジー
これは歴史上で一番血の似合う聖女が不死身の従者と共にいくつもの国を巡る話。 社交界の悪女と呼ばれる公爵家次女、クリスティーナ・レディング。 悪い噂が付き纏うということ以外は至って普通の令嬢であった彼女の日常は、ある日を境に一変。 『普通』であった彼女は『規格外』となる。 負傷した騎士へ近づいたクリスティーナは相手の傷を瞬時に癒してしまったのだ。 この世界で回復魔法を使えるのは『聖女』と呼ばれるただ一人の存在のみ。 聖女の力に目覚めたクリスティーナの日常はこの日を境に失われた。 ――ところで、どうして私は従者の生首を抱えて走っているのかしら。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん
ファンタジー
魔法の国ペンタグラムの貴族として生まれた少年 ラグウェル・アルタイル この国では10歳になると魔力の源である魔素を測定する。 天才魔道士と天才錬金術の間に生まれた彼は、大いに期待されていた。 しかし、彼の魔素は0。 つまり魔法は一切使えない。 しかも、ペンタグラムには魔法がつかえないものは国に仇なすものとされ、処刑される運命である。彼の父は彼に一振りの剣を与え、生き延びろといい彼を救うため、世界の果てに転移魔法を使用し転移させるのであった。 彼が転移した先は広大な白い砂のみが延々と広がる砂漠。 そこで彼は一人の老騎士と出会う。 老騎士の名はアルファルド。彼は19代目の剣聖にまで上り詰めた男であったが、とある目的のために世界の果てといわれるこの場所を旅していた。 ラグウェルはアルファルドに助けられ彼から剣を学び5年の月日が流れる。 そしてラグウェルはアルファルドの故郷である十王国へ渡り、騎士学校へ編入をする、そこで無敵の強さを誇り、十王国最強の騎士と言われるようになり20代目剣聖との死闘の果てに彼が21代目剣聖となる。そして待ち受けるペンタグラムとの戦争、彼はその運命に翻弄されていく。 ※小説家になろうでも投稿しています。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...