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冒険の旅

風使い

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「何だって!? サーペントを狩った事があるのか?
 生半可な剣なんかじゃ一切通らないのにか?」
「え?剣?そんなもん使わないよ?
 そんなので勝てる訳無いじゃんヤだなぁ~、もう。」
「じゃあ何を・・・」
「アタックヘリのミサイルにロケットランチャー、ガトリング全弾使って倒し切れなかったんだから剣なんかじゃ無理だよ~。」
「今のは何言ってんのか判らないけど、何かとんでもない物なのは何となく解った、それでも倒し切れなかったと言う事は最後はどうやって?」
「ん?魔法だけど?」
「な!?魔法??」
「そ、光属性魔法、ホーリーレイ。」
「魔法なんて、有るのか?」
「ああ、ごめんごめん、普通になって来ちゃってたから失念してたわ、私が作って使い始めた第一人者だから知らない人の方がまだ多いんだよね、ついこっちの尺で喋ってたわ。」
「魔法・・・か・・・。」
「ん?使いたい? 使えるよ、オットーさんなら。」
「どう言う事だ? 私なら、使えるのかね?」
「うん、多分風属性だけだけどね、慣れれば風の上位、雷属性まで使えるようになるんじゃ無いかなぁ?」
「それはどうやって使うのでしょう、師匠。」
 いきなり師匠にされてしまった・・・
 しゃぁねぇな、魔法回路開通用ナノマシンを封入した、オットーさんと相性のむっちゃいい魔導書風の章≪ウィンドグリモワール≫でもプレゼントするかな。
「師匠はやめてね~、この本を上げるから自分で勉強してね。」
「これは魔導書≪グリモワール≫と言う奴ですかな?」
「一応そう言う事です、私が書いてるので判んない部分も有るかもしれないけど、試行錯誤して理解するように頑張ってね・・・」
 流石に自分でも、自分以外には判らない単語とか引用して使ってる気がして仕方が無い、つまり理解して貰えるかはあまり自信が無いので自力で頑張って貰うしか無いと思ってこの発言になってしまった、しかもそこまで自覚してしまった為に目が泳いだのは言うまでも無いだろう・・・
「本当に、この本で勉強すると魔法が使えるようになるのか?」
「それはオットーさんの努力次第だと思うけどね、試しに今晩しっかり読んでおいて明日の朝にでも試したら良いんじゃない?
 一晩でもしっかり熟読して魔法のシステムが理解できれば、初級の魔法位なら使えるかもね。
 頑張って~。」
 風魔法ではサーペント倒すのは難しいかも知れないけど、上位の雷魔法に魔法のランクをクラスチェンジ出来れば恐らくはサーペント位は行けるはず。
 特に水の属性を強く持っている亜竜だからね、サーペントって、雷は効果絶大だと思う。
 しかも風使いは、帆船で海を渡っているこの世界では便利だし、船長なら都合良いよね。
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 翌朝・・・
「おはよう、早かったね、オットーさん。」
「ああ、エリー師匠、本当に風が使えるようになったんだ、ほんの少しだが、窓も開いて居ないのに風が周囲を包むように回ってくれたんだ、見てくれ。」
「おめでとう、じゃあ甲板に上がろう。」
 甲板に上がった私は、早速ストレージから、的にする為の鉄のインゴットを取り出して、一寸した台を作ってインゴットを上に置いた。
「これをエアーカッターで攻撃して見よう。」
「ああ、判った、えと・・・まずはイメージイメージ・・・」
 集中して風の刃が飛んで行って切りつけるイメージを強く念じているようだ、一回成功するとイメージしやすく成るんだけどね、初めが難しいんだよね~。
「っし! エアーカッター!」
 ひゅっと風切り音は少しだけあったものの、案の定エアーカッターにはなって居ない様だ。
「詠唱、やってみる?」
 要するに、自力でマナだけでやるのではなく、周囲の風精霊ナノマシンにイメージを伝える方法になる訳だが、まぁこれだと、確実に出る、但し、精霊魔導士では無い以上、手助けしてくれるってだけなので威力は物足りないだろう、でも、初めて使えれば後がイメージしやすく成るからマナの扱いも旨くなると思うんだ。
「詠唱か、やってみようかな・・・。」
「なら、エアーカッターの詠唱のページを開いて、本を読みながらで良いから一語一句間違えないように唱えてね。」
「判りました・・・っと・・・風よ来たれ・・・我が力となりて・・・我に仇成す者を切り裂け・・・エアーカッター!」
 詠唱が今一つ、読みながらなので非常に残念な感じだったが、それでもナノマシンが忖度してくれて、極小ながら風の収束と刃の形へと変化する所までは確認出来た。
 ただ、やはり少し弱過ぎて的までは届かなかった。
「な、成程・・・こんな風な姿をイメージすれば良いと言う事か。」
「そうそう、そのイメージを崩さずに、詠唱ももう少し流暢にやって見て?
 も少し良くなると思う。」
「り、了解・・・えっとぉ(ブツブツブツブツ)・・・おし、行って見るか。
 風よ来たれ、我が力となりて、我に仇成す者を切り裂け、エアーカッター。」
 未だ棒読み出汁今度は魔法名を言う所で尻すぼみだったが、それでもかなり良いのが飛び出して、今度は的に当たるまでは行った、未だ切れないけどな。
「おお、結構いい感じだったよな、今の!」
「ああ、順調順調、今度は詠唱破棄でイメージだけでやって見ろ、これが出来るようになれば詠唱付きだと倍以上の威力が出る筈だ。」
「ん、むぅ・・・難しそうだが・・・やってみよう。」
 目を瞑ってイメージを膨らませていくオットーさん。
 しかし今度は初めよりもかなりイメージしやすかったようで、半分くらいの時間でイメージングが完了したみたいだ。
「エアーカッター!」
 今度は魔法名をしっかりと強い口調で唱えられたようだ。
 すると、これまでで最もはっきりと刃を模った風の塊が、今までで最も高速で飛び出す。
 へぇ、これだけの威力が出るなら本当に風との親和性が高いみたいね、本気で風と雷に特化した魔導士になりそうじゃ無いの、良い人材に行き当ったわ。
 そしてエアーカッターが当たった鉄塊は、見事に奇麗な切り口で真っ二つになったのだった。
「おめでとう、見事な魔法だった。
 これで君は立派な魔導士だ、まだ駆け出しだけどな。」
 風に特化した魔導士となると、気象現象をも操るようになる可能性は有る。
 どんな成長をするか、楽しみだ、でも年齢がなァ・・・
 あ、でもこいつの子供にも同じ親和性が有るんじゃ無いかと思うし、魔導書はやはりこいつにあげてしまって良かった気はする。
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