宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】

赤い獅子舞のチャァ

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戦争

進軍(ランクル帝国SIDE)

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 ---一月ほど前、ランクル帝国---
 ここ、ランクル帝国は、人口の爆発的な急増に伴う食糧難の為に、隣国であるユーノス公国からの食糧の輸入量の増加に嘆いていた。
 この国、ランクル帝国は鉱物資源は非常に豊富なのだが、土地はあまり肥沃とは言い難く、手軽に野菜等を作って食卓にと言う具合には行かないのだ。
 近年では、周囲の魔物も狩りつくしてしまう勢いで頭を悩ませていた。
「皇帝陛下、報告はお読みに成られましたでしょうか?
 グローリー王国ではスタンピードが起こりかけて居るようで、食料の確保の為には是非押さえたい所です、ここは進軍の下知を。」
 口を開いたのは将の一人、騎士爵のチック・バッカーだ。
「うむ、しかしのぉ、グローリーはユーノス公国との関係もかなり良いと聞く、ユーノス公国の出方次第では間に有る我が国はいくら人的資源だけは豊富とは言えきついのでは無いか?」
 バッカー騎士の上役を務める、ショーン・ネーザン子爵が割って発言をする。
「その辺りはこの私目にお任せ下さいませ、ユーノス公国へと既に使者を走らせております、もしも我が国がグローリーと事を構える事に成った場合、不介入でお願いしたいとしてあります。」
「それだけか?そう易々と飲める話でもあるまい?
 ユーノスとしては取引相手が一つ減る事となるのだぞ?」
「その辺は、今まで以上に取引量を増やす用意が有るとしてありますので抜かりは有りません。」
 ランクル帝国は、もう一度言うが鉱物資源が豊富な土地である。
 しかもこの地で採掘できる主な金属とは、ミスリル銀だったのだ。
 ミスリル銀は、鋼より硬く、鉄よりも軽い金属で、加工は難しいが剣を鍛えれば鉄製のプレートメイルを両断できる切れ味と謳われる逸品となる。
 山岳部に住んで居た、どの国にも所属して居なかった、鍛冶仕事等物作りの得意なドワーフ族を、ユーノス公国を介して手に入れた小人族の作る芋酒で懐柔し、国家に取り込むことに成功して居た、彼らの腕前であればミスリル銀の武器や防具を作る事も難しくは無いだろう。
 従って、もしグローリー王国への進軍が決まれば、負ける事は無いと思われる。
 ちなみに欲しいのはグローリーの中でもランクルとの国境を有するセドリック伯領だけなのだ。
 その領内の豊かな森と、山々が狙いだったのだ。
 もしもグローリー本国から援軍を派兵しようとすれば、山を越えて来なければ成らない為、援軍は無いと踏んで居る事も進軍を考えた理由であった。
 援軍が見込めない以上、いくら戦場を掛ける白狼と名高いセドリック辺境伯とは言え、二世が現在の領主である以上、戦力差を見せつけるだけで降伏もあり得ると迄踏んで居るのだ。
 その上、此方のモイヤー伯領と、小さな砂漠地帯を挟むだけで進軍は山越えよりは幾分も楽なのである。
 元々砂漠の民であるランクル帝国としてはこれ程手軽な進軍は無いだろう。
「そうか、そこまで言うのならばわしも重い腰を上げようでは無いか、ドーデイ・モイヤー伯爵、騎馬隊を出撃させよ、この者達だけでは少々頼りない、帝国からもバリスタを400基借与致そう。
 我が帝国の国力を見せつけようぞ。」
 この皇帝の一言で、手柄を立てて爵位を上げたい下級貴族達が賛同、あっという間に大軍勢へと膨れ上がる。
 周りから囃し立てられ総大将の座に付く事に成ったモイヤー伯爵のやる気だけを除いてだが・・・
 何せ、隣の他国貴族と言う事で、面識が全く無い訳では無かったからである。
 こうして、モイヤー伯爵軍と言う、総勢12万名に及ぶ程の大軍勢による進軍が決定したのである。
 実の所、あくまでも帝国としては兵を貸しただけと言う名目である、要するに皇帝は万一の時は知らぬ存ぜぬを貫く気満々であった。
 ---そして現在、野営地---
 周囲より持ち上げられて否応無しに総大将となったモイヤー伯爵は、帰りたい気持ちに必死で抗いつつ、報告を受けている。
「申し上げます、目標のセドリック辺境伯領は現在、街壁より外側にて我が軍を迎え撃つつもりのようで展開しております。
 現在地よりの距離ですと、休憩を挟みつつ移動すると凡そ半日の距離であります。」
 モイヤー伯爵は言い出しっぺの子爵に采配を丸投げする気でいたので黙って居ると、軍師気取りのネーザン子爵が伯爵の思惑通りに発言を始めた。
「伯爵、今宵は新月、まさに先制攻撃の好機となりましょう、進軍の下知を下しても宜しいでしょうか?」
 俺に聞くんじゃネェよ、とか思いつつ、伯爵は無言で首を縦に振って置く事にした。
「それではこれより進軍を開始する!3回の休息を挟みつつグローリー王国セドリック辺境伯領へ向かう!
 バッカー騎士の第一軍より進軍開始だ!」
 こうして、もはや停められないデスロードへと進軍を始めるのだった。
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