薬師の俺は、呪われた弟子の執着愛を今日もやり過ごす

ひなた

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薬師編

第二十七話 湿布※

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 小麦の収穫も完了し、農作業に追われる日々は終わりを告げた。外はまだ暑いが、冷房の魔法具が部屋を快適にしてくれる。
 今日は午後から薬屋を臨時休業させて、ひたすらベッドに横になっている。理由は単純で、腰が痛いからだ。
 音がしたのでうつ伏せの姿勢のまま扉に目を向けると、調合部屋にこもっていたテオドールが寝室に入ってきた。
「湿布貼りましょうか?」
「頼む」
 すっかり湿布の存在を忘れていた。気が利く弟子がいて大助かりだ。
 回復薬は即効性があって便利だが、慢性的な痛みには効果が薄い。そのせいか湿布は密かな売れ筋商品だ。

 湿布を手に持ったテオドールがベッドに乗り上げてきた。引越しの際に買い替えた大きなベッドは、成人男性二人の体重を難なく受け止める。
「すみません。衣服をずらしますね」
「よろしく」
 本当は自分で出来るけど甘えることにした。腰が痛いのは本当だし、これくらい可愛いものだろう。

 テオドールが「ここですか?」と指で軽く押しながら痛いところを確認してくる。マッサージみたいで気持ちいいと思いつつ質問に答えていると、腰に湿布が貼られた。じわじわと温かくなるにつれて頬が緩む。
「暑い日に涼しい部屋で温湿布か。贅沢だな」
「痛がってるわりには上機嫌ですね。何かありました?」
「弟子の腕が上がったなと思って」
「ありがとうございます! これからも精一杯頑張ります!」

 うつ伏せなので残念ながら弟子の声しか聞こえないが、嬉しそうな表情を浮かべているに違いない。数日前に作ったテオドールの湿布は、俺が作ったものと遜色がない。冬に需要が増える温湿布の作成は、弟子に全部任せても問題なさそうだ。
「トウガラシの在庫は大丈夫か?」
「すみません。練習用に作りすぎちゃって。冬に向けて仕入れないと危ないです」
「今度薬師ギルド行って発注してきてくれ。量は任せる」
「わかりました。任せてください」
 温湿布の材料であるトウガラシは、テオドールが料理に使うこともあってなくなりがちだ。美味しいから咎めることはないが、調合に使うより胃袋に収める量が多いのは困ったものだ。

 冷房の冷気にさらされた肌にピリピリとした刺激が走る。痛みはなく、むしろ心地よい温かさが広がって思わず声が出る。
「あー。やっぱ気持ちいいな」
「それはよかったです。俺、調合に戻りますね」
 湿布を貼るため捲った衣服が整えられる。テオドールがベッドから降りようと動いた時、あることに気づいてしまった。知らないふりをしてもいいけど、暇だから指摘することにした。

「お前さ、今の流れのどこに興奮したの?」
「えっ!」
 扉を開けたテオドールが勢いよく振り返る。中心部に目をやると、服の上からでも言い逃れできないくらい主張していた。
「なんか、ごめん」
「俺の方こそすみませんでした」
 後ろ手に扉を閉めたテオドールは、ベッドに近づくと頭を下げて謝罪してきた。
「謝らないでいいのに」
「俺も上手く説明できなくて。時間が経てばおさまると思うので失礼します」
 落ち着かない様子で背中を向けたテオドールに声をかける。

「しないの?」
「ありがたい申し出ですが、師匠に負担をかけたくないので」
「なんだ。残念」
 俺の言葉に反応したテオドールが、再びベッドに乗り上げて優しく頭を撫でてきた。
「あとで文句言わないでくださいよ」
「それはお前次第だ」
 文句を言うつもりは毛頭ないが、これからの展開を期待して軽く煽っておいた。


 枕に埋めていた顔を上げて声を張る。うつ伏せの体勢から身体を捻ることができないのが歯痒い。
「いつまでほぐすつもりだ」
「師匠が顔から枕を外すまでですかね」
 声の調子から考えて冗談ではなく真顔で言っているのだろう。そこまでしていい歳した男の喘ぎ声を聞きたがる心理がよくわからない。
「んっ」
 節くれだった指が背筋をなぞる。指先の熱だけで限界が近いことが伝わるのに、強情なやつだ。いったい誰に似たのか。
 投げるのも大人げない気がしたので、無言で腹の下に枕を置く。それを合図にテオドールが動き出した。

 初めての体位に緊張で心拍が速くなる。うつ伏せで寝転がったまま軽く脚を開くと、テオドールが俺の両脚をまたいで身体の上に覆い被さった。いつもと違う密着感が気恥ずかしい。
 後孔に剛直があてがわれ、ゆっくりと挿入される。思わず脚を閉じようとすると、首筋を舐められた。
「ふ……ぁ」
「動きますよ」
 いつもより慎重な動きで抽送が始まる。奥へ押し付けるような穏やかな律動は、俺の身体を気遣ってくれているようで心地よかった。
「ん、ぅ」
 迫り来るというよりは、静かに湧き出るような快感に全身が包まれる。この分だと声も無理なく我慢できそうだ。

「師匠、重くないですか?」
「平気」
 テオドールが肘をついてくれているおかげで、そこまで重みは感じない。むしろ、程よい圧迫感が癖になりそうだ。自分よりも大きな身体が覆い被さっているのに、なぜか安心できる。
 激しく性感を煽られない、ほどよい刺激に力が抜ける。シーツを握っていた手は自然と開いていた。
「あぁっ!」
 偶然、前立腺をゴリゴリと擦られ声を上げる。強烈な痺れに嫌な予感がして、腹の下に置いた枕を遠くに移動させた。そのおかげで角度が変わったのか、また刺激が緩やかなものになった。安堵の息を吐きつつテオドールの陰茎がもたらす快楽を受け入れる。

 しばらくそうしていたが、自分の認識が甘かったことに気がついた。先ほどからテオドールが全く同じ角度で責めてくる。滑らかな抽送のまま、一番気持ちいいと感じる強さで前立腺を抉られる。
 どうやらテオドールは俺の反応を観察するのに集中していたらしい。声が抑えられなくなって以降、律動を繰り返しながら脇腹や背中を撫でたり、耳元で囁いてみたりとやりたい放題だ。

「んぅっ……あっ、う」
「足に力が入ってますね」
「触んな、やめ」
「このままだと足つりますよ」
 なら動くのをやめてくれと言いたいが、テオドールが伝えたいことはそういうことではないのだろう。
 強い悦楽に自然と足が伸びてしまう。力を抜くため息を長く吐こうとすると、喘ぎ声に変わって中断される。
 どうにもならないから放っておいてくれと思っていると、テオドールが乳首を摘んできた。

「んんっ!あ……ぁ」
 すっかり性感帯にされたそこは、軽く触られるだけで痺れるような感覚を全身に送り込む。
「ちょっと大きくなりました?」
「知る、かよ」
 前に一時間ほどひたすら乳首を舐められたせいだけど口に出すのも恥ずかしい。最初はくすぐったいだけで笑っていたのに、番いの体液のせいですぐに感じるようになったのは誤算だった。

「師匠、そろそろ」
「あっ、ん……ぅん」
 乳首から指が離れ、抽送が速くなる。限界が近いのか、テオドールの吐息が耳元をくすぐる。
 テオドールが腰を引いて中から陰茎を抜こうとする。俺はそれを阻止するように膝を曲げて、テオドールの太ももを押さえつけた。
「あ、師匠、足を」
「出していいから、奥を」
 最後に奥を思いっきり突いてほしいと言う前に、テオドールが俺の腰を掴んで押し込んできた。望んでいた昂りに腸壁が蠕動し、テオドールの陰茎を締め上げる。同時に、中で熱いものが放たれた。
「あぁ……んっ、ぁ」
 中出しされた瞬間、強烈な快感が全身を支配して絶頂した。シーツが濡れた感覚はなく、終わらない絶頂感に身体が震える。
 余韻に浸っていると、テオドールの陰茎が引き抜かれた。かき出された精液が会陰を伝う感覚に顔をしかめる。

「すみません! すぐ拭きます」
 テオドールがどこからか布を取ってきて丁寧に精液をぬぐった。
「は……ぅ」
「お風呂場で洗い流しましょう」
「動ける気がしない」
「でも全部出さないとお腹壊しますよ」
「それなら大丈夫だ。ほら、お前も横になれ」
 シーツを叩いて促すと、テオドールも渋々ベッドに寝転がった。優秀な弟子は「シーツも交換しないと」とぶつぶつ文句を言っているが無視する。魔法を使ったら一発だけど、テオドールの前で魔力を使うのはなるべく避けたい。

 テオドールが俺の顔を覗き込みながら頬を撫でる。温かな手が与える心地よさに思わず目を細めた。
「大丈夫ってどういうことですか?」
「この前気づいた。番いの体液って一時間くらいで吸収されるみたいでさ。一心同体って感じがして好きだから最近はわざと放置してる」
 テオドールと顔を合わせてそんなことを話していると、いきなり唇を奪われた。慌てて顔を離そうとしても逃れられず、諦めて入ってきた舌を迎えた。

「急にどうした?」
 テオドールの頬は上気していて、漆黒の目に情欲が浮かんでいる。
「今のは絶対、師匠が悪いです」
「よくわからん」
「後でいくらでも説明します」
 全部終わったらこの会話を忘れている気がするけど、まあいいや。今はただ後孔の疼きをどうにかしてほしくて、誘うように視線を絡ませた。
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