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番外編
アイスキャンディー(アイザック視点)※
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※挿入なし
リビングに入ると鍛練後の火照った身体に涼しげな風が当たり、その心地よさに力が抜けた。冷えすぎず、温くもない絶妙な温度調整に毎回驚かされる。
とんでもなく繊細な魔力操作だ。当の本人は何気なくやっているのだろうが、こんな芸当ができる魔法使いは、世界でも数えるほどしかいないだろう。
「お疲れ様。暑いのによくやるね。これ使って」
「ありがとう」
渡された手拭いは程よく冷えていて、恋人のさりげない気遣いに心が温まる。
「まただらしない格好をして」
「外が暑いせいだよ」
「その格好で人前に出るなよ」
「兄さんは心配性だなぁ……ごめんなさい。気をつけます。顔怖いよ」
厳しすぎただろうか。でもこれくらい注意しておかないと、本気にしてくれないしな。
ルカは人の容姿に全く興味がない。他人どころか、自分の容姿ですらどうでもいいと思っている。そのせいで自分が人からどういう目で見られているか、まるで気にしていない。一度きつく注意したほうがいいのかもしれない。
謝罪した後黙ったままのルカの様子が気になって顔を向けると、ニヤついた顔でこちらを見ていた。
「どうした?」
「鍛練後の兄さんの顔、キリッとしててかっこいいなって」
幸せそうに笑うルカに何も言えなくなる。人の容姿に興味がないのに、俺の顔だけは真っ直ぐに褒めてくれる。それだけで優越感に浸ってしまうのだから、俺は単純な男だ。
注意するのはまた今度にしよう。ルカに近づく男がいたら俺が守ってやればいい。
「着替えてくる」
「あ、待って。上の服脱いで」
ルカの言葉に従い、上の服だけ脱ぐ。するとルカが立ち上がって抱きついてきた。汗で濡れた肌がしっとりと密着して気持ちいい。
「兄さんの胸筋好き」
「汚れるぞ」
目線を下ろすとルカの頭頂部しか見えないのが悔しい。しかし、俺の胸筋に顔をすりすりと擦り付けてくる様は大変可愛らしい。
密着したことでルカの香りが立ち上がってくる。同じ石鹸を使っているはずなのに、ルカからは花の香りがする。不思議だ。何か特別な魔法を使っているのかもしれない。
「これでいいでしょ?幸せ~」
全身に走る爽快感はルカが清浄の魔法を使ったからだろう。硬いだけで何の面白味もない男の身体なのに、俺の恋人の趣味は変わっていると思う。
胸に当たる柔らかい頬の感触に鼓動が速まるのを感じる。嬉しそうに顔を押し付けるルカには悪いが、これ以上は俺の理性が耐えられない。
「暑いから離れてくれ」
「……わかった」
ルカが渋々といった様子で離れた。言い出したのは俺なのに、少し寂しいと思ってしまう。
着替えが終わりリビングに行くと、俺に気づいたルカが手招きをした。
促されてテーブルにつくと果汁が入った容器が複数並んでいる。それぞれ果物の種類を変えているのか、見た目が賑やかだ。
「兄さんが暑いって言うから対策を思いついたんだ。身体が冷えたらくっついても大丈夫かなって」
「抱きつくことは確定なんだな」
「そんなの当たり前じゃん」
口角が上がりっぱなしでしばらく戻せそうにない。こうやって素直に気持ちを伝えてくれる恋人が可愛くて仕方ない。
思わず頭を撫でると満面の笑みで擦り寄ってきた。ルカが軽々と可愛さの上限を突破してくるから、恐ろしくなって手を離してしまった。
「今からアイスキャンディーを作ろうと思って」
「初めて聞く単語だ」
「見たらわかるよ」
ルカはそう言うと魔法で果汁を空中に浮かせて木の棒に絡ませた。
「ゆっくり冷やしちゃうと味が薄いところができちゃうから、一気に冷やし固めるのがコツなんだ……ほら、できた」
涼しい顔で高度な魔法を使うのが恐ろしい。この技術を料理と最低限の魔物討伐にしか使わないのは世界の損失だが、ルカはこのままでいいと思う。ずっと俺のそばで笑顔でいてほしい。
手渡されたアイスキャンディーを一口かじってみると、柑橘類の爽やかな果汁の風味が口に広がった。
「美味しい?」
「ああ。冷たくていいな」
「よかった。成功だ」
声を弾ませたルカが俺の肩にもたれかかる。心地よい重みを感じながら食べ進めていると、先に食べ終わったルカが身体を捻って腕に抱きついてきた。
「兄さんの上腕二頭筋かっこいいね」
「筋肉だけか?」
「ううん。兄さんは肋骨の形も綺麗だよ」
「それは、ちょっと微妙だな」
「そう?」
不思議そうな顔をしているルカはとても愛らしいが、魔法で体の中身を見るのはやめてほしい。肋骨を褒められて喜ぶ人間は少ないと思う。
「舌まで冷えちゃった」
「そうだな」
「あっ、兄さんも食べ終わったんだ」
嬉しそうな顔で俺の手を取ってソファに誘導するルカが微笑ましい。どうやら、今日は甘えたい気分らしい。
俺はルカの腰を抱いて、自分の膝の上に招き上げた。いつもの定位置に腰掛けたルカが俺の肩に手を置く。
「なんか恥ずかしいね」
ほんのりと頬を染めるルカを抱きしめようと手を動かす。その時、目線がルカの胸元にいってしまった。
襟ぐりの広い肌着のせいで胸の先端が丸見えだ。もしこれを他のやつに見られてたらと思うと、無性に腹が立ってきた。
ルカをそっと抱き寄せ押し倒す。ベッドよりも狭くて動きづらいが仕方ない。いきなり体勢が変わったことで目を丸くしているルカに覆い被さり唇を重ねた。
舌を絡めるとルカもおずおずと応える。ひんやりした舌が気持ちよく、夢中で貪った。薄い果汁味の口内は、唾液を交換し合ううちに無味になっていく。
「んっ……は……ぁ」
リビングには唾液が混じり合う水音とルカの吐息が響いている。
唇を離すとルカは目を潤ませて俺を見つめていた。その表情に魅入られて、もう一度口付けを落とす。舌先でルカの上顎を撫でながら肌着の中に手を入れ、尖りきった乳首を摘んだ。
「んんっ!」
衝撃と快感から出た声が俺の口へ吸い込まれていく。もったいないことをしてしまった。ルカの嬌声を聞くため顔を離すと、半開きの口から赤い舌が覗いていた。
「にいさ、ん。どう…っ、したの」
「ここが丸見えだったから」
「あっ!ん、やっ」
再び乳首を摘むとルカが可愛い声で鳴いた。そのことに気を良くした俺は、肌着の上からでもわかるくらい勃起した乳首に舌を伸ばす。
「ふ、あっ、ああっ」
乳首に布を擦り付けるように舌の根元でねちこく舐める。もう片方の乳首は直接、指先でグリグリと捏ね回した。
肌着のせいで見えないが、きっと赤く色づいているだろう。想像するだけで可愛くて何度も乳首を責めた。
「んっ、ぅあっ、あぁー」
上下の歯を使い乳首を甘噛みしながら軽く吸い上げる。さらに乳頭を舌先で押すように刺激すると、ルカはとろけた声を出して喘いだ。
下着に手を入れると、ガチガチに勃っていて窮屈そうだ。取り出してやると先走りで濡れそぼっている。
「そこ、だめっ!」
「ぐしょぐしょだな」
先端を優しく撫でると粘着質な水音が聞こえた。
「あっ!ん……ふ、ぁ」
そろそろイカせてあげないと辛そうだ。屹立した自身のものを取り出して、ルカの肉茎に擦り付けると、一際高い嬌声があがった。
「あぁっ!ん、ぁ……あっ!」
先走りで濡れた先端を擦り合わせる。腰を動かすと、裏筋同士が吸い付くように重なり脳が痺れる感覚に襲われた。それが気持ちいいようで、ルカの腰もずっと揺れている。
「ずっと腰が動いてるぞ」
「あっ、だって…きもちいいっ…から、んんっ」
「香油を出してくれ」
「だめ、あした」
明日は朝早くから討伐の予定があるから心配なのだろう。自分としては非常に悔しいが最後までする気はない。
「大丈夫だから」
安心させるために頭に軽くキスすると、ルカは素直に香油の瓶を差し出した。
受け取った香油を指に絡めると、俺とルカの竿をまとめて握る。
「んああっ……!」
頬を上気させて髪を振り乱すルカは息を呑むくらい綺麗だ。
こうやって比べると、ルカの陰茎は俺のものより一回り小さい。でも決して可愛いサイズではない。程よく血管が浮き出ていて、男らしい、立派なものだ。
まあ、俺と恋人である時点でどれだけ立派でも、使う機会は永久に訪れないが。
そう思うと興奮が高まってくる。俺の熱が伝わったのか、ルカも陰茎に手を伸ばしてきた。その手をさりげなく取って顔の横に置く。
「あっ、ああっ」
ルカには悪いが、俺の手でイかせてやりたい。先走りと香油でぬるぬるになった二人のものをゆっくりと上下させた。
亀頭同士が触れ合うたびにルカの肉茎が跳ねる。腰を浮かし二人の敏感な部分を密着させて快楽を貪る。カリ首が引っかかり裏筋が擦れ合うとたまらなく気持ちいい。
「んんーっ!」
上も下も粘膜で繋がりたくて唇を奪う。ルカのよがり声が聞けないのは少し残念だ。俺の手の中では、互いの肉棒が興奮を形にして伝えてくる。
ルカの絶頂が近い。そう感じた俺は、陰茎を扱く手を緩めた。できれば一緒に達したいが難しいかもしれない。
すると、腰が砕けそうな快感が全身に走り、声が出そうになった。思わず顔を離すと、ルカが艶やかな笑みで俺を見つめていた。
「魔力供給か」
「あっ、いっしょ、いっしょに」
「ああ。一緒にイこうな」
嬉しそうに笑うルカにいつもとは違う色気を感じた。この状況で粘膜接触による魔力供給を試すとは。以前やられた時も、ものすごい快楽だったが、今回はそれ以上だ。
互いの荒い呼吸が重なり一つになる。もう限界が近い。
「ああぁっ……もういく、イクっ!」
「く……っ」
手の動きを加速させると腰の奥から熱が込み上げ、二人同時に達する。勢いよく溢れ出した精液が互いの陰茎や服を汚した。
香油の甘い香りと体液が混ざり合い官能的な匂いを立ち上がらせる。
ルカは蕩けた顔で呼吸を整えている。その姿に煽られて、思わず鎖骨に吸い付き痕を残した。なんとなく、自分の卑劣な欲望を見せつけられた気分になる。
ルカは人の顔も自分の顔にも興味がない。でも、人目を引く美しさがある。身長だって平均より高めで、すらりとした体型だ。困っているやつを率先して助けるから男女問わず人気がある。
以前ルカは「村にいた時から家庭を持つことを諦めていた」と言っていた。しかし、一人で冒険者になっていたら、誰かの恋人になる未来もあったのではないだろうか。そう思ってしまうくらい、ルカは魅力的な人間だ。
だから俺はルカと交わるたびに、顔も知らない誰かへの優越感で満たされる。ルカに惚れている連中に「ご苦労様」と言ってやりたくなる。
あの男も、あの女も、ルカがどんな顔で俺に抱かれているのか知らない。
あいつらがルカに下心を抱こうが、無駄でしかない。ルカヘ熱い視線を送るやつらの顔が浮かんで口角が歪む。
ルカを閉じ込めて誰の目にも触れさせたくないという衝動に駆られる時がある。俺だけで埋め尽くして、俺だけのものにしたい。
それでも実行に移さないのは、ルカが俺の醜い感情も全て受け入れてくれるからだ。
香油や体液で濡れた下腹部を中心に爽快感が広がる。ルカが清浄の魔法を使ったのか。礼を言おうとルカの目を見ると、からかうような視線を俺に向けていた。
「また変なこと考えてたでしょ」
「まあ、多少は」
「僕はどんな兄さんも好きだよ」
ルカが柔らかい表情を浮かべて俺の頬にキスをする。今後も恋人には敵わないだろうという幸せな予感に心が震えた。
夏とはいえ、裸のままでは身体が冷えるので服を着る。ルカを見ると無限収納からシャツを取り出していた。
「シャツのボタンを上まで留める必要はないと思うが」
「とりあえず、うん。今日はこれで」
どうやら警戒されたようだ。自分の行動を振り返ると何も言えなくなる。
「あー、正直すまなかった」
「いいよ。僕も反省したから。ゆるゆるの格好は兄さんとふたりっきりの時だけにする」
「そうしてくれると助かる」
「着込んだら暑くなったからさ、アイスキャンディー食べよ」
ルカが慣れた様子で魔法を使い、アイスキャンディーを作る。
「はい。兄さんが好きな果物で作ったよ」
一口食べると、濃厚な甘さと爽やかな後味に顔がほころぶ。たしかルカは初めてこの果実を食べたとき「桃に似てる」と言ってたな。
「美味しそうに食べるね」
「実際美味いからな」
「そっか」
ルカがいきなり俺の手を取った。食べかけのアイスキャンディーを咥えて、一口分かじりとる。
「もーらいっ!たしかに美味しいね」
あまりにも純真な笑顔だったから、頬に熱が集まるのを止められなかった。片手で顔を覆い隠すと、明るい声が耳に入った。
「兄さんもしかして照れてる?」
「うるさい」
「顔見たい!兄さんの照れ顔貴重すぎる!」
「暑いから離れてくれ」
「アイスキャンディー食べたから涼しいはずだけど?」
ルカの言う通りだが、一方的に照れた顔を見られるのは嫌だ。
「んぐっ」
アイスキャンディーを皿に置いて、かみつくようにルカの唇を奪う。舌を絡ませて熱を重ねたら、暑いという言い訳も真実になるはずだ。
唇が離れたら二人とも顔を赤く染めていた。お互い「暑い」といいながら、抱きしめ合って笑った。
リビングに入ると鍛練後の火照った身体に涼しげな風が当たり、その心地よさに力が抜けた。冷えすぎず、温くもない絶妙な温度調整に毎回驚かされる。
とんでもなく繊細な魔力操作だ。当の本人は何気なくやっているのだろうが、こんな芸当ができる魔法使いは、世界でも数えるほどしかいないだろう。
「お疲れ様。暑いのによくやるね。これ使って」
「ありがとう」
渡された手拭いは程よく冷えていて、恋人のさりげない気遣いに心が温まる。
「まただらしない格好をして」
「外が暑いせいだよ」
「その格好で人前に出るなよ」
「兄さんは心配性だなぁ……ごめんなさい。気をつけます。顔怖いよ」
厳しすぎただろうか。でもこれくらい注意しておかないと、本気にしてくれないしな。
ルカは人の容姿に全く興味がない。他人どころか、自分の容姿ですらどうでもいいと思っている。そのせいで自分が人からどういう目で見られているか、まるで気にしていない。一度きつく注意したほうがいいのかもしれない。
謝罪した後黙ったままのルカの様子が気になって顔を向けると、ニヤついた顔でこちらを見ていた。
「どうした?」
「鍛練後の兄さんの顔、キリッとしててかっこいいなって」
幸せそうに笑うルカに何も言えなくなる。人の容姿に興味がないのに、俺の顔だけは真っ直ぐに褒めてくれる。それだけで優越感に浸ってしまうのだから、俺は単純な男だ。
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「着替えてくる」
「あ、待って。上の服脱いで」
ルカの言葉に従い、上の服だけ脱ぐ。するとルカが立ち上がって抱きついてきた。汗で濡れた肌がしっとりと密着して気持ちいい。
「兄さんの胸筋好き」
「汚れるぞ」
目線を下ろすとルカの頭頂部しか見えないのが悔しい。しかし、俺の胸筋に顔をすりすりと擦り付けてくる様は大変可愛らしい。
密着したことでルカの香りが立ち上がってくる。同じ石鹸を使っているはずなのに、ルカからは花の香りがする。不思議だ。何か特別な魔法を使っているのかもしれない。
「これでいいでしょ?幸せ~」
全身に走る爽快感はルカが清浄の魔法を使ったからだろう。硬いだけで何の面白味もない男の身体なのに、俺の恋人の趣味は変わっていると思う。
胸に当たる柔らかい頬の感触に鼓動が速まるのを感じる。嬉しそうに顔を押し付けるルカには悪いが、これ以上は俺の理性が耐えられない。
「暑いから離れてくれ」
「……わかった」
ルカが渋々といった様子で離れた。言い出したのは俺なのに、少し寂しいと思ってしまう。
着替えが終わりリビングに行くと、俺に気づいたルカが手招きをした。
促されてテーブルにつくと果汁が入った容器が複数並んでいる。それぞれ果物の種類を変えているのか、見た目が賑やかだ。
「兄さんが暑いって言うから対策を思いついたんだ。身体が冷えたらくっついても大丈夫かなって」
「抱きつくことは確定なんだな」
「そんなの当たり前じゃん」
口角が上がりっぱなしでしばらく戻せそうにない。こうやって素直に気持ちを伝えてくれる恋人が可愛くて仕方ない。
思わず頭を撫でると満面の笑みで擦り寄ってきた。ルカが軽々と可愛さの上限を突破してくるから、恐ろしくなって手を離してしまった。
「今からアイスキャンディーを作ろうと思って」
「初めて聞く単語だ」
「見たらわかるよ」
ルカはそう言うと魔法で果汁を空中に浮かせて木の棒に絡ませた。
「ゆっくり冷やしちゃうと味が薄いところができちゃうから、一気に冷やし固めるのがコツなんだ……ほら、できた」
涼しい顔で高度な魔法を使うのが恐ろしい。この技術を料理と最低限の魔物討伐にしか使わないのは世界の損失だが、ルカはこのままでいいと思う。ずっと俺のそばで笑顔でいてほしい。
手渡されたアイスキャンディーを一口かじってみると、柑橘類の爽やかな果汁の風味が口に広がった。
「美味しい?」
「ああ。冷たくていいな」
「よかった。成功だ」
声を弾ませたルカが俺の肩にもたれかかる。心地よい重みを感じながら食べ進めていると、先に食べ終わったルカが身体を捻って腕に抱きついてきた。
「兄さんの上腕二頭筋かっこいいね」
「筋肉だけか?」
「ううん。兄さんは肋骨の形も綺麗だよ」
「それは、ちょっと微妙だな」
「そう?」
不思議そうな顔をしているルカはとても愛らしいが、魔法で体の中身を見るのはやめてほしい。肋骨を褒められて喜ぶ人間は少ないと思う。
「舌まで冷えちゃった」
「そうだな」
「あっ、兄さんも食べ終わったんだ」
嬉しそうな顔で俺の手を取ってソファに誘導するルカが微笑ましい。どうやら、今日は甘えたい気分らしい。
俺はルカの腰を抱いて、自分の膝の上に招き上げた。いつもの定位置に腰掛けたルカが俺の肩に手を置く。
「なんか恥ずかしいね」
ほんのりと頬を染めるルカを抱きしめようと手を動かす。その時、目線がルカの胸元にいってしまった。
襟ぐりの広い肌着のせいで胸の先端が丸見えだ。もしこれを他のやつに見られてたらと思うと、無性に腹が立ってきた。
ルカをそっと抱き寄せ押し倒す。ベッドよりも狭くて動きづらいが仕方ない。いきなり体勢が変わったことで目を丸くしているルカに覆い被さり唇を重ねた。
舌を絡めるとルカもおずおずと応える。ひんやりした舌が気持ちよく、夢中で貪った。薄い果汁味の口内は、唾液を交換し合ううちに無味になっていく。
「んっ……は……ぁ」
リビングには唾液が混じり合う水音とルカの吐息が響いている。
唇を離すとルカは目を潤ませて俺を見つめていた。その表情に魅入られて、もう一度口付けを落とす。舌先でルカの上顎を撫でながら肌着の中に手を入れ、尖りきった乳首を摘んだ。
「んんっ!」
衝撃と快感から出た声が俺の口へ吸い込まれていく。もったいないことをしてしまった。ルカの嬌声を聞くため顔を離すと、半開きの口から赤い舌が覗いていた。
「にいさ、ん。どう…っ、したの」
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「んっ、ぅあっ、あぁー」
上下の歯を使い乳首を甘噛みしながら軽く吸い上げる。さらに乳頭を舌先で押すように刺激すると、ルカはとろけた声を出して喘いだ。
下着に手を入れると、ガチガチに勃っていて窮屈そうだ。取り出してやると先走りで濡れそぼっている。
「そこ、だめっ!」
「ぐしょぐしょだな」
先端を優しく撫でると粘着質な水音が聞こえた。
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そろそろイカせてあげないと辛そうだ。屹立した自身のものを取り出して、ルカの肉茎に擦り付けると、一際高い嬌声があがった。
「あぁっ!ん、ぁ……あっ!」
先走りで濡れた先端を擦り合わせる。腰を動かすと、裏筋同士が吸い付くように重なり脳が痺れる感覚に襲われた。それが気持ちいいようで、ルカの腰もずっと揺れている。
「ずっと腰が動いてるぞ」
「あっ、だって…きもちいいっ…から、んんっ」
「香油を出してくれ」
「だめ、あした」
明日は朝早くから討伐の予定があるから心配なのだろう。自分としては非常に悔しいが最後までする気はない。
「大丈夫だから」
安心させるために頭に軽くキスすると、ルカは素直に香油の瓶を差し出した。
受け取った香油を指に絡めると、俺とルカの竿をまとめて握る。
「んああっ……!」
頬を上気させて髪を振り乱すルカは息を呑むくらい綺麗だ。
こうやって比べると、ルカの陰茎は俺のものより一回り小さい。でも決して可愛いサイズではない。程よく血管が浮き出ていて、男らしい、立派なものだ。
まあ、俺と恋人である時点でどれだけ立派でも、使う機会は永久に訪れないが。
そう思うと興奮が高まってくる。俺の熱が伝わったのか、ルカも陰茎に手を伸ばしてきた。その手をさりげなく取って顔の横に置く。
「あっ、ああっ」
ルカには悪いが、俺の手でイかせてやりたい。先走りと香油でぬるぬるになった二人のものをゆっくりと上下させた。
亀頭同士が触れ合うたびにルカの肉茎が跳ねる。腰を浮かし二人の敏感な部分を密着させて快楽を貪る。カリ首が引っかかり裏筋が擦れ合うとたまらなく気持ちいい。
「んんーっ!」
上も下も粘膜で繋がりたくて唇を奪う。ルカのよがり声が聞けないのは少し残念だ。俺の手の中では、互いの肉棒が興奮を形にして伝えてくる。
ルカの絶頂が近い。そう感じた俺は、陰茎を扱く手を緩めた。できれば一緒に達したいが難しいかもしれない。
すると、腰が砕けそうな快感が全身に走り、声が出そうになった。思わず顔を離すと、ルカが艶やかな笑みで俺を見つめていた。
「魔力供給か」
「あっ、いっしょ、いっしょに」
「ああ。一緒にイこうな」
嬉しそうに笑うルカにいつもとは違う色気を感じた。この状況で粘膜接触による魔力供給を試すとは。以前やられた時も、ものすごい快楽だったが、今回はそれ以上だ。
互いの荒い呼吸が重なり一つになる。もう限界が近い。
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ルカは人の顔も自分の顔にも興味がない。でも、人目を引く美しさがある。身長だって平均より高めで、すらりとした体型だ。困っているやつを率先して助けるから男女問わず人気がある。
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それでも実行に移さないのは、ルカが俺の醜い感情も全て受け入れてくれるからだ。
香油や体液で濡れた下腹部を中心に爽快感が広がる。ルカが清浄の魔法を使ったのか。礼を言おうとルカの目を見ると、からかうような視線を俺に向けていた。
「また変なこと考えてたでしょ」
「まあ、多少は」
「僕はどんな兄さんも好きだよ」
ルカが柔らかい表情を浮かべて俺の頬にキスをする。今後も恋人には敵わないだろうという幸せな予感に心が震えた。
夏とはいえ、裸のままでは身体が冷えるので服を着る。ルカを見ると無限収納からシャツを取り出していた。
「シャツのボタンを上まで留める必要はないと思うが」
「とりあえず、うん。今日はこれで」
どうやら警戒されたようだ。自分の行動を振り返ると何も言えなくなる。
「あー、正直すまなかった」
「いいよ。僕も反省したから。ゆるゆるの格好は兄さんとふたりっきりの時だけにする」
「そうしてくれると助かる」
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「はい。兄さんが好きな果物で作ったよ」
一口食べると、濃厚な甘さと爽やかな後味に顔がほころぶ。たしかルカは初めてこの果実を食べたとき「桃に似てる」と言ってたな。
「美味しそうに食べるね」
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「そっか」
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「もーらいっ!たしかに美味しいね」
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「アイスキャンディー食べたから涼しいはずだけど?」
ルカの言う通りだが、一方的に照れた顔を見られるのは嫌だ。
「んぐっ」
アイスキャンディーを皿に置いて、かみつくようにルカの唇を奪う。舌を絡ませて熱を重ねたら、暑いという言い訳も真実になるはずだ。
唇が離れたら二人とも顔を赤く染めていた。お互い「暑い」といいながら、抱きしめ合って笑った。
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上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
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