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エルフの国と闘技大会編

闘技大会前の日常

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※終盤軽いR描写あります


 冒険者ギルドの建物の大きさもすっかり見慣れたものとなった。入り口の扉を開けて依頼票が張り出されている壁に真っ直ぐ向かう。
 ここ最近は冒険者ギルドで依頼をこなしながら、闘技大会に向けて鍛練をして過ごしている。そんな日々を過ごしていたら冬の三の月に突入した。
 闘技大会が近づいてきたこの頃、冒険者ギルドは浮き足だっている。なんたって六年に一度の大会だからね。周囲の声に耳を傾けると入ってくるのは闘技大会の話題ばかりだ。

 兄さんはギルド内のそんな雰囲気を無視して真剣に依頼を探している。冬でも温暖なヨジダームの街周辺は、魔物の動きもそれなりに活発なので依頼が途切れることはない。
 今日もゴブリン討伐かなと思いながら依頼票をぼけっと眺めていると声をかけられた。

「失礼。僕はシアンといいます。あなたがルークさんですか?」
「そうだよ。はじめまして」
「あなたが父ウォーロックの推薦で闘技大会に出場すると聞きまして、もしよかったらお手合わせ願いたいのですが……」
 丁寧な口調ながらこちらを観察する表情は「なぜ父は鉄級冒険者なんかを推薦したのか」という疑問がありありと浮かんでいる。
 シアンくんが全く変わっていないことに不思議な安心感を覚えながら、どう答えようか悩んでいると、僕達の間を割って入るような大きな声が響き渡った。

「シアンじゃねぇか!もうこっちに来てたのか!」
「邪魔するなライオネル。僕は今からこいつと手合わせを……」
「魔法は手加減しても怪我させるかもしれないからって、ウォーロック先生に手合わせを禁止されてただろ!すまんなルーク。シアンはいいやつだけど好戦的なところがあって……ほら、いくぞ!」
「気にしてないからいいよ。シアンくん、大会ではよろしくね」
「待て!おい!覚えておけよ」

 シアンくんは最後に捨て台詞のような言葉を僕に残し、ライオネルくんと一緒に去っていった。僕は手を振ってふたりを見送ると、そばで心配そうに見守っていた兄さんに笑いかけた。
「心配かけてごめんね」
「すぐに反応できなくてすまなかった。しかし、あいつは相変わらずだったな。ライオネルがいてくれて助かった」
「似たもの同士って感じだったね」
「ああ。どちらも好戦的だしな」
 結局この日はゴブリン討伐の依頼をこなして一日が終わった。


 シアンくんと久しぶりの対面を果たしてから一月が経った。あれから何度もシアンくんに手合わせを申し込まれたので、一回だけ受けてみた。
 ウォーロックが全ての魔法を叩き込んだと言うだけあって、シアンくんの魔法はお手本のようにきれいだった。
 手の内を見せないよう無難な魔法で対応したけど、あの緻密な魔法の使い方はなかなか厄介だ。隙のない戦い方は魔法に費やした年月を感じさせるもので、すごく勉強になった。

 手合わせ後、どこから話が漏れたのかライオネルくんが鍛練場に飛び込みシアンくんを叱っていた。
 それに対して「アランにしつこく付き纏って何回も手合わせしてるやつに言われたくない」とシアンくんが反論して喧嘩になっていた。
 学生同士の喧嘩というには魔法と棍が飛び交い周囲を巻き込む過激なものだったので、僕と兄さん含め何人かの冒険者で仲裁に入った。取り押さえられてもなお、ギルド職員が止めに入るまでふたりはずっと口喧嘩をしていた。
 予想通り、学院でもあの調子で派手な喧嘩を繰り返していそうだ。あれを仲がいいと形容するウォーロックはかなりの大物だと思う。


 騒がしい日々を過ごしているうちに闘技大会まであと一週間となった。事前に約束した通りウォーロックと話をするため、彼を借家に招待した。
「……というわけでして」
「なるほど。息子が迷惑をかけた」
 リビングのテーブルでウォーロックにこれまでの出来事を話し終えると、彼は申し訳なさそうに頭を下げた。慌てて顔を上げるように促す。
「迷惑じゃないし、むしろ勉強になったよ。シアンくんはきれいな魔法の使い方をするね。ウォーロックそっくりだ」
「そうか」
 僕の発言にウォーロックが嬉しそうに表情を緩める。僕はその様子を微笑ましく眺めながら話を続けた。

「闘技大会だけど、僕達とシアンくん達は順当にいってどこで当たるの?」
「予選の結果にもよるが準決勝か決勝だな。お前達には負担をかけて申し訳ないと思っている。まさか人族の参加が全くないとは思わなかった」
 ウォーロック曰く、僕達が参加する戦士と魔法使いのペア部門は人気が低いらしく主に冒険者か学生が参加するらしい。そのなかでも人族の参加は僕達しかいないようだ。

「魔法使いではルカが、戦士はアイザックが最年少だった。経験の差は不利に働くだろうな」
「まあ、どうにかなるでしょ。僕達もそれなりに経験積んでるし。ね、兄さん」
「そうだな。いくらでも戦いようはある」
「すまない。まさかこんな露骨に長命種ばかり参加することになるとは。お前達との経験差が少なくとも四十年以上……」
「やめて。そのことはあえて意識してないから」
「あ、ああ。すまない。ルカ達の実力なら最後まで残るだろうから問題ないはずだ」

 そう、これは長命種と人族の認識の差みたいなものだ。長命種はその長い寿命ゆえに精神の成長が遅い。つまり成長過程において子どものような無邪気さがあるのだ。
 つい歳下扱いしてしまうが、シアンくんもライオネルくんも僕よりはるかに歳上である。少なくとも祖父母くらいの年齢差はあるだろう。
 なんというか、すごく微妙な気持ちになるけどこれは人族の価値観に基づくものなので割り切っていかないといけない……とわかっているのであえて意識しないように、違和感を無視しているのだ。

「私はお前達の実力を信じている。厳しい戦いになるかもしれないがよろしく頼む」
「もちろんだよ。どうなるかは当日にならないとわからないけど、約束を破るつもりはないよ」
「ありがとう。だが、くれぐれも無理はしないでほしい。もしお前達が怪我をしたらと思うと……」
「大丈夫。いざとなったら兄さんがいるし」
「ああ、任せてくれ」
「お前達兄弟は本当に仲がいいな」

 ウォーロックの言葉は裏表のないもので、特に含みを感じられるものではなかった。でもつい苦笑いで返してしまった。
 その後ウォーロックは僕達と様々な話に花を咲かせて借家を後にした。次に会うのは闘技大会が終わってからになるだろう。その時のことを楽しみに思いながら、僕は闘技大会に向けた鍛練のメニューを組み立て直すことにした。


 ウォーロックを借家に招いた次の日、僕達は連携の練習を終えてリビングにあるソファに並んで座っていた。
「疲れたー!ずっと前から鍛練しているのに全く慣れないや。足が張ってる気がする」
「見せてくれ……たしかに少し張ってる気がするな。準備してくるからここで待ってろ」
 僕が返事を返すと兄さんは二階に上がっていった。程なくして戻ってきた兄さんの手には香油が入った瓶とシーツがあった。
 兄さんの指示に従ってシーツを敷いたソファに横たわった。恥ずかしいけどボトムスも脱いである。少しだけ緊張しながら待っていると兄さんに話しかけられた。

「足触るぞ」
「うんお願い」
 兄さんは香油を手にとると足の裏を絶妙な力加減で押してきた。気持ちよくて声が出そうになる。足の甲や指の間までぬるぬるとした手で揉まれてくすぐったくなるが、なんとか我慢する。
「力加減はどうだ?」
「んっ……気持ちいいよ」
 足の裏が終わったらふくらはぎから膝裏を両手で撫でられる。その手つきはとても優しいもので思わず声が出てしまう。
「あっ……すごい、そこ」
「ここか?」
「んんっ!」
 太ももの裏に手を添えられてぐいっと押されると気持ち良すぎて変な声が出た。慌てて口を押さえる。兄さんは変わらずマッサージを続けている。

「腰も張っているな。下穿きをずらすぞ」
「えっ!別にそこはっ」
「闘技大会に支障があったらいけないからな。念のためだ」
 そのままぐいぐいと腰に体重をかけられる。それはけっして身体の負担になるようなものではなくて、むしろ心地よいものだった。兄さんの手の温度が触れられたところから広がって力が抜けていく。
「んー……」
 口の端からよだれが出そうになって手の甲で拭った。

 兄さんの手が離れてもう終わりかと残念な気持ちになっていると、下穿きの隙間に手を入れて僕のお尻を揉んできた。その手つきは繊細なのに力強かった。
「やっ……ん、ぁっ……は……」
 時折兄さんの指先が際どいところをなぞるせいで声が出るのを抑えられない。いつも使っている香油の匂いに情事を思い起こして、僕の身体はすっかり熱くなっていた。

「鼠蹊部もほぐすから仰向けになってくれ」
「……むり」
 今仰向けになるのはまずい。中心に熱が溜まっていることがバレてしまう。
「これのせいか?」
 そう言って兄さんは僕の中心に触れた。僕は慌てて兄さんのの手を掴んで離そうとしたけれどびくともしなかった。
「あぁっ!やめっ」
 兄さんは力が抜けた僕を簡単に仰向けにさせると、情欲を孕んだ目でこちらを見つめて問いかけた。
「なあ、どこを触ってほしい?教えてくれ」
 頭の片隅でどこか冷静な自分が、足の張りくらいなら回復魔法で一発だったのではないかと語りかけてきたが、それを無視して欲望を口に出すことにした。
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